病態生理学

病態生理学 · P-2-27

バイオインピーダンス分光法による体組成計

Body composition monitor (bioimpedance spectroscopy)

前提:病態
肥満の有病率・原因・定義脂肪組織の機能と機能障害

🧠 全体像: (BIA)は、身体に微弱な電流を流し、電流の通りにくさから体水分量を推定して、脂肪量・などのを間接的に評価する方法である。BIAが直接測定するのはレジスタンスとリアクタンスのみで、の値はそこから推定式を介して算出される。

生体電気インピーダンス分析の原理

  • 、とくに体脂肪量とを推定する。
  • 身体に微弱な電流を流して電圧を測定し、(交流に対する電気抵抗)を算出する。
  • は、体液中の電解質を通る成分であるレジスタンス(R)と、細胞膜が持つ電気容量によるリアクタンス(Xc)に分けられる。
  • 体水分の多くは筋組織に含まれるため、一般にが多いほど体水分量も多く、は低くなる。
flowchart TD
    A["身体に微弱な電流を流す"] --> B["電圧を測定する"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='impedance'>インピーダンス</span>を算出する"]
    C --> D["体水分量を推定する"]
    D --> E["脂肪量・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fat-free mass'>除脂肪量</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscle mass'>筋肉量</span>などを推定する"]

💡 筋組織は脂肪組織より水分と電解質を多く含むため、電流を通しやすい。この組織間の電気的性質の差が、推定の基礎になる。

評価できる指標

指標 内容
・体重・WHR 体格およびの
FM 脂肪量(kg)
PBF (%)
FFM (kg)。FM + FFM = 体重
VFA 。原資料では目安として100 cm²未満が示されている
SMM (kg)
TBW
BMR
その他 タンパク質量・ミネラル量

⚠️ FM・PBF・FFM・VFA・SMM・TBW・BMRなどは直接の測定値ではない。実測されるのはレジスタンスとリアクタンスのみで、これらの値は年齢・性別・身長・体重などを組み込んだ推定式()から算出される。VFAの判定基準も、機器・集団・採用基準に応じて確認する。

推定値のには、次の3つの前提がある1。

前提 崩れるとどうなるか
体液・電解質に有意な異常がない 浮腫・腹水・脱水・透析前後などが動く状況では、推定値と実際のが乖離する
対象に合った推定式を使う(集団・年齢・病態別に検証されたもの) 検証集団と異なる患者に当てはめると誤差が大きくなる。機器ごとに搭載する式も異なるため、機器が違えば同じ人でも値が違う
確立された手順で測定する 電極位置・体位・測定条件のばらつきがそのまま誤差になる

⚠️ ESPENの総説が「妥当に決定できる」としているのは(FFM)と(TBW)までであり、体細胞量・・を分けて求めることや、体液分布が変化した状態で多周波数BIA・バイオを使うことは、なお研究段階と位置づけられている1。臨床での具体的な注意点は測定のを参照。

💡 同じ作業部会の編は、の両極端やの異常がある対象では推定式の正確さが検証されるまで日常の評価に推奨できないとし、BIAでの経過を追えるのはの異常がない 16〜34 kg/m²の対象で、それも慎重に解釈するとしている2。の異常だけでなく、極端なやせ・も推定を狂わせると覚える。

💡 単一周波数BIAは1つの周波数(通常50 kHz)でしか測らないため、細胞内外の水分を分けられない。バイオは多数の周波数で測定し、の電流が細胞膜を通り抜けにくくでは通り抜けるという性質を利用して、とを分離しようとする方法である。ただし上記のとおり、体液分布が乱れた状態でのは確立していない。

位相角

レジスタンスとリアクタンスの比から求める位相角は、推定式を介さない生の測定である。

位相角=arctan⁡ ⁣(XcR)×180π\mathrm{位相角}=\arctan\!\left(\frac{Xc}{R}\right)\times\frac{180}{\pi}

⭐ 細胞膜の健全性や細胞量を反映するとされ、低値は複数の臨床設定で死亡率上昇・術後合併症増加などの予後不良と関連することが報告されている3。

⚠️ ただし、「位相角なら体液の影響を受けない」わけではない。 体液分布が変化しての算出が破綻する患者の評価に使えるとされているのは、レジスタンスとリアクタンスを身長で正規化して2次元プロットするバイオベクトル解析(BIVA)のほうである3。位相角は「推定式を介さない予後指標」、BIVAは「推定式が使えない場面での体液・体細胞量の評価法」と役割を分けて覚える。

まとめ

項目 要点
原理 微弱な電流を流して電圧を測り、を求める。筋組織は脂肪組織より水分と電解質が多く電流を通しやすいので、が多いほど体水分量が多く、は低い
実測値 レジスタンス(体液中の電解質を通る成分)とリアクタンス(細胞膜の電気容量による成分)だけ
推定値 脂肪量・・(脂肪量+=体重)・・・・などは、推定式から算出される
推定の前提 体液・電解質に有意な異常がない、対象に合った推定式、確立された手順。の両極端でも推定は検証されていない。機器が違えば同じ人でも値が違う
多数の周波数で測り、は細胞膜を通りにくくは通り抜ける性質からとを分けようとする。体液分布が乱れた状態でのは確立していない
位相角とBIVA 位相角は推定式を介さない生の測定値で、低値は予後不良と関連する。体液分布が変化しての算出が破綻する患者の評価に使えるのはBIVAのほう

出典

  1. 1.Bioelectrical impedance analysis--part I: review of principles and methods(ESPEN・2004)BIAが妥当に決定できるのは除脂肪量(FFM)と総体水分量(TBW)であり、それも体液・電解質に有意な異常がない対象で、集団・年齢・病態に応じた適切な推定式と確立された手順を用いた場合に限られる。体細胞量・細胞外液・細胞内液の変化の決定や、体液分布が変化した状態での多周波数BIA・バイオインピーダンス分光法の使用は、さらなる研究を要すると述べられている。閲覧 2026-08-14
  2. 2.Bioelectrical impedance analysis-part II: utilization in clinical practice(ESPEN・2004)抄録で確認した。BIAは健常者と水・電解質バランスが安定した患者では、年齢・性別・人種に合った検証済みの推定式を使えばよく機能する。BMIの両極端や体液量の異常がある対象での臨床使用は、推定式の正確さが検証されるまで日常の評価には推奨できない。多周波数BIA・部位別BIAはこうした状況で単一周波数BIAより有利かもしれないがさらに検証が要る。BIAによる体組成の経過観察は、体液量の異常がないBMI 16〜34 kg/m²の対象で可能だが慎重に解釈する。閲覧 2026-09-24
  3. 3.Bioelectrical phase angle and impedance vector analysis - clinical relevance and applicability of impedance parameters(Clinical Nutrition・2012)位相角(PhA)は推定式を介さない生の測定パラメータで、多数の研究がさまざまな臨床設定における死亡・術後合併症に対する予後指標としての意義を示している。一方、体液分布の変化のために体組成の算出が破綻する患者の評価を可能にするのは、レジスタンスとリアクタンスを身長で正規化してプロットするバイオインピーダンスベクトル解析(BIVA)であると位置づけられている。閲覧 2026-08-14