病態生理学

病態生理学 · P-2-28

生体電気インピーダンス測定の臨床応用

Clinical uses of bioelectrical impedance analyzers

前提:病態
肥満の有病率・原因・定義脂肪組織の機能と機能障害

🧠 全体像: 測定は、・・・脂肪量を非侵襲的に繰り返し追跡できる。比較可能な値を得るには、食事、排泄、運動、室温、透析などの条件をそろえることが重要である。

臨床での用途

  • 体に微弱な電流を流して電圧を測り、体の(電気抵抗)を求めてを推定する。
  • 体内の水分の多くは筋肉に含まれるので、が多い人ほど体水分量が多く、は低くなる。脂肪は水分が少なく電気を通しにくい。
  • 非侵襲的にを推定し、次の目的に用いる。
    • の評価
    • 体液状態のモニタリング
    • と脂肪量のの追跡
  • 機器は・体重・/(WHR)とともに、FM、PBF、FFM、VFA、SMM、TBW、BMR、タンパク質量、ミネラル量を表示する。
指標 臨床的にみる内容
FM(脂肪量、kg)・PBF(、%) 脂肪量と
VFA(、cm²) の量。原資料では100 cm²未満を望ましい値としている
FFM(、kg) 脂肪以外の体重。脂肪量+=体重
SMM(、kg)
TBW() と体液状態
BMR()
タンパク質量・ミネラル量 栄養・の補助的評価

💡 ここに並ぶ値のうち、機器が電気的に測っているのは(と体重計で測る体重)であり、脂肪量・・などは推定式から算出した値である。このため、推定式の前提(体内の水分分布が安定していること)が崩れる病態では、の推定値がそろってずれうる(下記)。

測定前の条件

  • 可能であれば空腹時に、排尿・排便後に測定する。
  • 装身具、腕時計、、靴下を外す。
  • 測定前に室温下で20分間安静にする。
  • 測定前20分間は、飲食とを避ける。
  • 患者では、透析治療後に測定する。
flowchart TD
    A["飲食・運動を避ける"] --> B["排尿・排便を済ませる"]
    B --> C["装身具などを外す"]
    C --> D["室温下で20分間安静にする"]
    D --> E["同じ条件で測定し、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='evolution'>経時変化</span>を比較する"]

💡 測定条件をそろえるのは、そのものの変化と、一時的な体液移動による変動を区別しやすくするためである。

測定値が信頼できない病態

⚠️ BIAによるの推定値はの変化に強く影響される。推定式は体内の水分分布が安定していることを前提にしているため、次のような病態では推定値と実際のが大きく乖離しうる1。

病態 何が起こるか
浮腫 が増加し、・を過大評価する
腹水 体幹の水分量増加により測定値が歪む
脱水 体水分量が実際より低下した状態を反映し、結果が変動する
前後 量に応じて体水分量が大きく変わるため、測定のタイミングで結果が変わる

💡 患者で透析治療後に測定するのは、によってが目標体重(ドライウェイト)に近い状態になってから測定し、透析前の過剰体液によるの過大評価を避けるためである。

⚠️ の推定式は(年齢・病態など)ごとに検証されたものであり、検証集団と異なる患者に用いると誤差が大きくなりうる1。搭載する推定式は機器ごとに異なるため、別の機器で測った値をそのまま比較しない。経過を追うときは同一機器・同一条件で測定する。原理の詳細はバイオによる計を参照。

⭐ の推定値がに左右されるのに対し、位相角(レジスタンスとリアクタンスの比から直接求まる生の測定)は推定式を介さず、術後合併症・死亡などの予後指標として多くの臨床設定で報告されている2(算出方法はバイオによる計を参照)。

⚠️ ただし、体液分布が乱れての算出そのものが成り立たない患者の評価に使えるとされているのは、位相角ではなくバイオベクトル解析(BIVA)である2。「生のだから体液の影響を受けない」と読み替えない。

測定を避ける対象

  • 装着患者:微弱電流が体内植込み型電気デバイスに干渉する可能性があるため。
  • 妊娠中の患者:胎児への影響が十分に確立されていないため。

⚠️ 原資料では上記を除外対象としている。実際の可否は、使用機器の添付文書・施設基準に従って判断する。

💡 については、除外の根拠と実測データが食い違い始めている。 植込み型心臓電気デバイス(・)装着患者200例でBIAの前後にデバイスを点検した研究では、測定中の電池電圧・リード抵抗・ペーシング閾値に有意な変化はなく、不適切なも12か月後までのデバイスの変化も認めなかった3。ただし同じ研究自身が、現行の診療指針は装着患者でのBIAを戒めていると述べており、対照群のない単施設の単群研究1本で機器の添付文書や施設基準を上書きすることはできない。心不全の体液評価などBIAの利益が大きい場面で、除外が「絶対」なのか「確認が必要」なのかを意識しておく、という位置づけで覚える。

まとめ

項目 要点
原理 微弱電流でを測る。水分の多い筋肉は電気を通しやすく、脂肪は通しにくい
主な指標 FM・PBF・VFA(脂肪)、FFM・SMM(除脂肪・筋肉)、TBW(体水分)、BMR、タンパク質量・ミネラル量
用途 の評価、体液状態のモニタリング、・脂肪量の追跡
測定条件 空腹時・排尿排便後、装身具を外し、20分安静。直前20分の飲食・運動を避ける。患者は透析後
が落ちる病態 浮腫・腹水・脱水・透析前後などが変動する状態。推定式は検証集団ごと・機器ごとに異なる
位相角とBIVA 位相角は推定式を介さない予後指標。体液分布が乱れた患者の評価に使えるとされるのはBIVA
測定を避ける対象(原資料) 装着患者、妊娠中の患者。実際の可否は機器の添付文書・施設基準に従う

出典

  1. 1.Bioelectrical impedance analysis--part I: review of principles and methods(ESPEN・2004)BIAは体液・電解質に明らかな異常がない対象でのみ体組成の推定値が妥当であり、浮腫・腹水・脱水など体液量が急に変化する病態では推定値の信頼性が低下する。閲覧 2026-08-14
  2. 2.Bioelectrical phase angle and impedance vector analysis - clinical relevance and applicability of impedance parameters(Clinical Nutrition・2012)位相角(PhA)は死亡・術後合併症に対する予後指標として多数の研究で意義が示されている一方、体液分布の変化により体組成の算出が破綻する患者の評価を可能にするのはバイオインピーダンスベクトル解析(BIVA)であると位置づけられている。閲覧 2026-08-14
  3. 3.Bioimpedance analysis is safe in patients with implanted cardiac electronic devices(Clinical Nutrition・2019)抄録で確認。現行の診療指針は電磁干渉を避けるため植込み型心臓電気デバイス(CIED)装着患者でのBIAを戒めていると背景で述べたうえで、CIED装着患者200例でBIAの前後に電池電圧・リード抵抗・ペーシング閾値・心内心電図を記録し、BIA中に有意な変化も不適切なオーバーセンシング・アンダーセンシングも認めず、6か月・12か月後の追跡でもデバイスに変化がなかったと報告した。ClinicalTrials.gov の登録(NCT03045822)では実施施設はクレルモン=フェラン大学病院の1施設で、対照群も無作為化もない単群の研究として登録されている(抄録自体は施設数を書いていない)。閲覧 2026-09-24