病態生理学

病態生理学 · P-2-26

栄養状態の評価法とその長所・短所

Methods to define nutritional status

前提:病態
肥満の有病率・原因・定義

🧠 全体像: ・肥満の評価では、で体格を、とでを、で体脂肪を推定する。単一の指標だけではと脂肪量を区別できないため、複数の方法を組み合わせて解釈する。(栄養不良)の診断も同様に、単一の血液ではなく、スクリーニングと複数基準の組み合わせ(GLIM基準)で行う。

体格指数

()は肥満度の推定に用い、次式で求める。

BMI=体重(kg)身長(m)2\mathrm{}=\frac{\text{体重(kg)}}{\text{身長(m)}^2}
分類 (kg/m²)
<18.5
普通体重 18.5–24.9
25–29.9
1度肥満 30–34.9
2度肥満 35–39.9
3度肥満 ≥40

限界: は筋肉と脂肪を区別できず、の影響を受ける。したがって、同じでもは異なりうる。

💡 この限界から、2025年のに関する国際委員会報告は、を集団レベルのリスク評価・疫学研究・スクリーニングに限って用い、個人では体脂肪の直接測定か、に加えて・・のいずれか1つ以上で過剰な脂肪を確かめるよう勧めている(が40 kg/m²を超える場合は追加の確認を要さない)1。詳しくはを参照。

⚠️ 区分の境界や呼称はガイドライン・地域によって異なる。ここでは提示された数値区分を保持している。

腹囲

は腹部脂肪量の指標であり、を反映する。

測定法

  • との中点付近(臍の約2 cm上)で測定する。
  • 呼気後に腹壁を弛緩させる。
  • 伸縮しない測定テープを床と平行に当てる。

の会議報告は、触知できる最の肋骨の下縁との上縁の中点で、一定の張力(100 g)をかけた伸びにくいテープを用いて測るとしている2。

代謝合併症のリスク 男性 女性
上昇なし 94 cm以下 80 cm以下
上昇 94 cm超〜102 cm 80 cm超〜88 cm
大幅に上昇 102 cm超 88 cm超

上の区分は「の基準」として広く引用される値で、の報告自身は、の値はもともと白人集団の例として示したものでの勧告ではなかったと断っている。国際糖尿病は集団別の値を置き、欧州系では男性94 cm・女性80 cm、南アジア・中国・日本系では男性90 cm・女性80 cmを境界とする2(日本のは別に男性85 cm・女性90 cmを用いる。肥満の・原因・定義を参照)。

⚠️ の測定部位とリスク閾値は採用する基準や集団で異なるため、同じ方法で測定し、その基準に対応する閾値を用いる。

ウエスト・ヒップ比

(WHR)は次式で求める。ヒップ周囲径は臀部が最も突出する高さで測定する。

WHR=ヒップ周囲径\mathrm{WHR}=\frac{\text{}}{\text{ヒップ周囲径}}
  • 原資料が示す高値の目安は男性で>1、女性で>0.8である。
  • WHRには測定・解釈上の限界があるため、のほうが頻繁に使用される。

⚠️ WHRの閾値は採用する基準によって異なる。の報告が挙げる値は男性0.90以上・女性0.85以上で代謝合併症のリスクが大幅に上昇するというもので、男性では上の目安(1)より低く、女性では目安(0.8)より高い2。実際には用いる基準を明示し、その基準に対応する閾値で判定する。

その他の評価法

方法 算出・測定法 評価内容・限界
Broca指数 =(身長cm−100)×0.85 身長からを簡便に推定する
キャリパー法 部、部、腸骨上部、のを測定する から体脂肪量を推定する。測定技術の影響を受ける

指標の使い分け

指標 主に分かること 主な弱点
身長に対する体重 筋肉と脂肪を区別できない
腹部脂肪量と 測定部位・集団別閾値に依存する
WHR 腹部と臀部の相対的な 2か所のを受ける
量 測定者の技術と推定式に依存する

低栄養の診断

(栄養不良)は・肥満とは逆方向の異常であり、単一の血液ではなく、スクリーニングと複数基準の組み合わせで診断する。

血清アルブミンの位置づけ

⚠️ はそのものの指標としては不適切である。半減期が長く(約2〜3週間)数値の変化が遅いうえ、炎症時に肝での産生が抑制されるであるため、は栄養不足そのものよりも炎症・を反映していることが多い(機序の詳細はアルブミンを参照)。半減期がより短いプレアルブミン()も同じ弱点を抱えており、いずれも単独の血液検査でを診断する根拠にはならない。

スクリーニングツール

MUST・NRS-2002・MNAなどの質問紙・簡易評価ツールを、リスクの一次スクリーニングに用いる。体重減少歴、摂取量低下、、疾患の急性度などから「リスクあり」を拾い上げる位置づけであり、これ自体はの確定診断ではない。

GLIM基準

のとして国際的に用いられているのが、GLIM基準(Global Leadership Initiative on Malnutrition)である3。①任意のが検証されたスクリーニングツールでリスクありと判定された対象に対し、②表現型基準と病因基準をそれぞれ1項目以上満たせばと診断するという2段階の枠組みを取る。

基準群 項目 閾値
表現型基準 体重減少 過去6か月以内に5%超、または6か月を超えて10%超
表現型基準 低(kg/m²) 70歳未満で20未満、70歳以上で22未満(アジア人では70歳未満18.5未満・70歳以上20未満)
表現型基準 減少 が検証された測定法で低下
病因基準 食事摂取量低下・消化吸収不良 必要エネルギーの50%以下が1週間超、または何らかの摂取低下が2週間超、または吸収を妨げる慢性消化管疾患
病因基準 炎症・ 急性疾患・外傷、または慢性疾患に関連する炎症

⚠️ の閾値は人種で異なる。 同じ枠組みでもアジア人には別の値が定められているので、欧米向けの20/22をそのまま当てはめない。

💡 減少は、で得られるなどからも評価できる4。GLIMの2019年の原報告はのほかBIA・超音波・・を挙げ、これらが使えない場合はや上腕・下腿の周囲径などので代用するとし、を容易に評価できない場面ではなどの筋力を補助的な代替指標としていた3。⚠️ 2025年の5年目の改訂報告は、の評価に・BIA・・超音波を推奨したうえで、低い筋力はGLIMのの構成要素ではなく、評価の代用にしないと明記した。また方法を問わず、著しい高とはの評価を狂わせうるとしている5。

💡 同じ改訂報告は、体重減少・低・食事摂取量低下/吸収不良の基準は改訂しないとし、炎症・の病因基準は臨床判断で評価してよいとした5。したがって上の表の体重減少・低・食事摂取量の閾値は、2025年の改訂後も変わっていない。

重症度の判定

重症度は表現型基準の程度だけで判定する(病因基準は介入方針と予後の見通しを立てるために使い、重症度の判定には使わない)3。いずれか1項目がその段階を満たせばよい。

表現型基準 Stage 1(中等度) Stage 2(重度)
体重減少 過去6か月以内に5〜10%、または6か月を超えて10〜20% 過去6か月以内に10%超、または6か月を超えて20%超
低(kg/m²) 70歳未満で20未満、70歳以上で22未満 70歳未満で18.5未満、70歳以上で20未満
減少 軽度〜中等度の低下 高度の低下

⚠️ は・と評価項目(体重減少・減少)が重なるため、鑑別・併存を意識する。GLIMの合意報告自身も、これらの症候群との重なりの整理を今後の課題に挙げている。

まとめ

評価法 分かること 主な注意点
身長に対する体重( <18.5、普通 18.5–24.9、 25–29.9、肥満 30以上) 筋肉と脂肪を区別できない。個人の肥満の判定では他の指標や体脂肪測定で確かめる
腹部脂肪量と 測定部位と閾値は基準・集団で異なる(として引用される値は男性94/102 cm、女性80/88 cm)
腹部との相対的な 目安は男性 >1・女性 >0.8。の報告の値は男性0.90以上・女性0.85以上で、のほうがよく使われる
Broca指数・ の簡便な推定、量 は測定者の技術と推定式に依存する
低値は栄養不足そのものより炎症・を反映することが多い 半減期が長くなので、単独ではを診断できない
GLIM基準 の診断(スクリーニング → 表現型基準1つ以上+病因基準1つ以上) 重症度は表現型基準だけで判定する。の閾値はアジア系で別。はの代用にしない

出典

  1. 1.Definition and diagnostic criteria of clinical obesity(Lancet Diabetes & Endocrinology(国際委員会報告)・2025)PMC11870235 の全文で確認した。BMIは集団レベルの健康リスクの代替指標・疫学研究・スクリーニングにのみ用い、個人の健康の指標としては用いないことを推奨する。過剰な脂肪蓄積は、体脂肪の直接測定、またはBMIに加えて年齢・性別・民族に応じた検証済みの基準による身体計測指標(腹囲、ウエスト・ヒップ比、ウエスト・身長比)の少なくとも1つで確かめ、BMIが40 kg/m²を超える場合は追加の確認を要さないとする。閲覧 2026-09-24
  2. 2.Waist circumference and waist-hip ratio: report of a WHO expert consultation, Geneva, 8-11 December 2008(World Health Organization・2011)2026-09-24 にWHO公式PDF(47頁)で確認した。腹囲は触知できる最下位の肋骨の下縁と腸骨稜上縁の中点で、100 gの一定張力をかける伸びにくいテープを用いて測り、ヒップ周囲径は殿部の最も太い部分で床と平行に測る。付録の表A1は「WHOの基準としてよく引用される値」として、腹囲 男性94 cm超・女性80 cm超で代謝合併症のリスク上昇、男性102 cm超・女性88 cm超で大幅な上昇、ウエスト・ヒップ比 男性0.90以上・女性0.85以上で大幅な上昇を挙げる。ただし腹囲の値は2000年のWHO専門家会議報告が白人集団の例として示したもので、WHOの勧告ではなかったと断っている。国際糖尿病連合の腹囲基準は欧州系で男性94 cm・女性80 cm、南アジア・中国・日本系で男性90 cm・女性80 cmと集団別である(報告の表A2は「超」の形で書いている)。閲覧 2026-09-24
  3. 3.GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition – A consensus report from the global clinical nutrition community(Global Leadership Initiative on Malnutrition (GLIM)・2019)低栄養の診断は、任意の妥当性検証済みスクリーニングツールで「リスクあり」を拾い上げたのち、表現型基準(体重減少・低BMI・筋肉量減少)と病因基準(食事摂取量低下/吸収不良・炎症/疾患負荷)をそれぞれ1項目以上満たすかを判定する2段階の枠組み(GLIM基準)で行う。閾値は体重減少が6か月以内5%超または6か月超10%超、低BMIが70歳未満20未満・70歳以上22未満(アジアは18.5未満・20未満)。重症度は表現型基準のみで判定し、Stage 1(中等度、体重減少5〜10%/10〜20%、BMI 20未満・22未満)とStage 2(重度、体重減少10%超/20%超、BMI 18.5未満・20未満)に分ける。病因基準は介入と予後の見通しを立てるために用いる。2026-09-24 に PMC6438340(J Cachexia Sarcopenia Muscle 同時掲載版)の全文で再確認した。筋肉量はDXAのほかBIA・超音波・CT・MRIで測り、使えなければ身体診察や下腿・上腕の筋周囲径で代用する。筋肉量を容易に評価できない場面では握力などの筋力が適切な補助的代替指標になるとする。70歳の境界は表3が「>70」、表4が「≥70」と書き分けている。閲覧 2026-08-14
  4. 4.Bioelectrical impedance analysis--part I: review of principles and methods(ESPEN・2004)BIAはFFM(除脂肪量)などの体組成を推定でき、低栄養の表現型基準(筋肉量減少)を評価する一手段になりうる。閲覧 2026-08-14
  5. 5.GLIM consensus approach to diagnosis of malnutrition: A 5-year update(Global Leadership Initiative on Malnutrition (GLIM)/Journal of Parenteral and Enteral Nutrition・2025)PMC12053077 の全文で確認した(同じ内容が Clinical Nutrition にも同時掲載)。体重減少・低BMI・食事摂取量低下/吸収不良の基準は改訂しないとし、低BMIの閾値を70歳未満20未満・70歳以上22未満(アジア系は18.5未満・20未満)と再掲する。筋肉量の評価にはDXA・BIA・CT・超音波を推奨し、高度な機器が使えなければ下腿・上腕の身体計測や訓練を受けた専門職による身体診察での主観的評価も許容する。ただし方法を問わず、著しい高BMIと体液貯留は筋肉量の正確な評価を乱しうるとする。低い筋力はGLIMの診断アルゴリズムの構成要素ではなく、筋肉量評価の代用にしてはならないと明記する(ただしサルコペニアを疑うなら握力測定は重要)。炎症・疾患負荷の病因基準は臨床判断で評価してよいとする。なお2019年の原報告は、筋肉量を容易に評価できない場面では握力などの筋力が適切な補助的代替指標になるとしていた。閲覧 2026-09-24