公衆衛生学

公衆衛生学 · 03

リスクの推定:相対危険度・寄与危険度・寄与危険度割合・オッズ比

Estimating risk: relative risk, attributable risk, attributable risk fraction, odds ratio

🧠 全体像:曝露と疾患の関連を数値化する指標は、によって使い分ける。では(RR)、では(OR)を用い、(AR)は「その曝露が上どれだけの疾患を引き起こしているか」というインパクトの大きさを表す。

2×2表の基本

曝露と疾患の関連は、次の2×2表を基準に整理する。

疾患あり(+) 疾患なし(−)
曝露あり(+) a b
曝露なし(−) c d

相対危険度

  • とも呼ばれ、で用いる。
  • のリスクとのリスクの比。
RR=a/(a+b)c/(c+d)RR = \frac{a / (a+b)}{c / (c+d)}
RRの値 解釈
RR = 1 曝露と疾患に関連なし
RR > 1 曝露は疾患発生を増加させる(危険因子)
RR < 1 曝露は疾患発生を減少させる()

💡 例:放射線曝露者105人が癌と診断され、非曝露者101人が癌と診断された場合、RR=5となり、曝露者は非曝露者に比べて5倍の疾患発生リスクを持つと解釈する。

寄与危険度

  • ある原因因子の上のインパクトを測る指標。
  • とのリスクの差。
  • での疾患を「ベースラインの期待リスク」とみなして計算する。
AR=aa+b−cc+dAR%=RR−1RR×100%AR = \frac{a}{a+b} - \frac{c}{c+d} \qquad\qquad AR\% = \frac{RR-1}{RR} \times 100\%

💡 例:喫煙者の肺癌リスクが21%、非喫煙者が1%の場合、AR=20%となる(喫煙という曝露がなければ、肺癌リスクは20ポイント低下すると解釈できる)。

⚠️ AR%()は「の中で」曝露に起因すると考えられる割合であり、集団全体(人口)に対する割合=とは別物である。 PAFは曝露のにも依存する。さらに、複数の危険因子について別々に計算したPAFを単純に足すと合計が100%を超えることがある——各PAFは「その因子だけを取り除いた場合」を仮定した計算であり、危険因子どうしが重なり合っている(同じ症例が複数の経路で「予防可能」と数えられる)ため、単純な合算は成り立たない1。

⚠️ (RR)だけを示すと、効果の大きさが実際より大きく見える。 (RRR)はベースラインリスクによらず一定の値になるが、(ARR)と(=1/ARR)はベースラインリスクに応じて大きく変わる。同じRRR25%でも、ベースラインリスクが高い集団ではARR10%・NNT10だが、低い集団ではARR2.5%・NNT40になりうる2。患者に伝えるときは相対指標だけでなく絶対指標(ARR・)を併記する。

オッズ比

  • で用いる関連の指標。
  • 症例群における曝露のと、対照群における曝露のの比。
OR=a/cb/d=a×db×cOR = \frac{a/c}{b/d} = \frac{a \times d}{b \times c}

💡 例:で肺癌患者3020人、健常者255人が喫煙歴ありと回答した場合、OR=8となり、肺癌患者は健常者に比べて喫煙歴を持つが8倍であると解釈する。

⚠️ では・のリスクを直接計算できないため、RRの代わりにORを用いる。疾患がまれ(rare disease assumption。目安としての発生頻度がおよそ10%未満)であれば、ORはRRの近似値とみなせる。 逆にが稀でない(common outcome)場合、ORはRRを1から遠ざける向きに系統的に誇張し、両群のリスクが大きいほどこの乖離は開く3。「稀」であるべきなのはであって曝露ではない点にも注意する。

まとめ

  • RR()はで用いる比の指標であり、のリスクがの何倍かを表す。
  • AR()はとのリスクの差であり、その因子を除去した場合に減らせる(インパクト)を表す。
  • OR()はで用いる指標であり、疾患がまれであればRRの近似値として解釈できる。

出典

  1. 1.An illustration of and programs estimating attributable fractions in large scale surveys considering multiple risk factors(BMC Medical Research Methodology(著者 Simon Rückinger, Rüdiger von Kries, André Michael Toschke)・2009)複数の危険因子について個別に計算した人口寄与危険度割合(PAF)を単純に足し合わせると合計が100%を超えうること。これは危険因子どうしが重なり合っており、1人の症例が複数の経路で「予防可能」と重複して数えられるために生じること閲覧 2026-08-27
  2. 2.Tips for learners of evidence-based medicine: 1. Relative risk reduction, absolute risk reduction and number needed to treat(CMAJ(著者 Alexandra Barratt, Peter C. Wyer, Rose Hatala ら, for the Evidence-Based Medicine Teaching Tips Working Group)・2004)相対リスク減少(RRR)はベースラインリスクが変わっても一定の値を示すため、絶対リスク減少(ARR)やNNT(=1/ARR)が大きく異なる2つの集団でも同じ大きさの効果に見えてしまうこと。高リスク群ではRRR25%・ARR10%・NNT10だが、低リスク群では同じRRR25%でもARRは2.5%・NNTは40になるという数値例閲覧 2026-08-27
  3. 3.When can odds ratios mislead?(BMJ(著者 Huw Talfryn Oakley Davies, Iain Kinloch Crombie, Manouche Tavakoli)・1998)アウトカムが稀でないとき、オッズ比はリスク比を1から遠ざける向きに系統的に誇張すること(=オッズ比がリスク比の近似になるのはアウトカムが稀なときに限られる)。オッズ比をリスク比として読む誤りが臨床文献で広く見られること閲覧 2026-08-27