Surgery

Surgery · B/25

悪性乳腺腫瘍(症状・診断・治療)

Malignant breast tumors (symptoms, diagnosis, treatment)

前提:病態
乳腺の悪性腫瘍癌のグレード分類と病期分類
前提:正常
胸筋部と乳房
画像所見
マンモグラフィ石灰化

🧠 乳癌は病変と浸潤病変に大別されるが、DCISから浸潤癌への進展は一様ではなく非必発的。 診断はトリプルアセスメント(診察+画像+)で進め、B/24で述べた診断アルゴリズムが土台になる。治療は局所治療と、受容体・に基づく全身治療を組み合わせる。1

1. 非浸潤癌

乳管癌in situ

  • 内細胞の悪性増殖で、基底膜への浸潤を伴わない。
  • 基底膜を越えず、を越えて周囲の正常乳腺組織へも広がっていないため
  • しばしばー上のとして発見される。触知腫瘤を伴わないことが多いが、画像上は腫瘤・非腫瘤性病変として評価されることもある。1
  • によりcomedo型・型・型・に亜分類。

乳房Paget病:

  • 基礎にあるDCISがを上行し乳頭の皮膚に及んだもの。
  • 乳頭のと紅斑として発症。
  • ほぼ必ず基礎にを伴う

⚠️ 乳頭の湿疹様変化・をみたら、まずPaget病(=基礎にDCISまたは浸潤癌がある)を疑う。 単なる皮膚炎とされやすいため注意。

小葉癌in situ

  • 小葉内細胞の悪性増殖で、基底膜への浸潤を伴わない。
  • 腫瘤も石灰化も形成しない——通常は生検で偶発的に発見される。
  • 通常、浸潤癌の直接というより将来の乳癌発症リスクを示す病変として扱う。2
  • 治療:

DCISは浸潤癌の非必発的で、LCISは主に将来の乳癌リスクを示す病変として扱う。 いずれも一律の直線的進展モデルでは捉えない。

2. 浸潤性乳管癌

  • 構造を形成する浸潤癌
  • 乳癌における浸潤癌の中で最多の型
  • 硬い腫瘤として触知されうるが、無症候性スクリーニングでとして発見されることも多い。
  • 生検で浸潤癌を確認する。は組織亜型というより臨床病型として扱う。
  • 診断: ー、超音波、MRI、生検。
  • 局所治療: 手術(乳房部分切除術、乳房切除術)、郭清・、放射線療法。
  • 全身治療: 化学療法、

3. 症状

新規の腫瘤・しこり(有痛性、軟性、または円形)、乳房の一部/全体の腫脹(明確な腫瘤を触れなくても)、皮膚刺激/陥凹、乳房/乳頭痛、乳頭(内方陥入)、乳頭/乳房皮膚の発赤・鱗屑・肥厚、(母乳以外の)乳頭分泌。

4. 診断

悪性を疑う所見

35歳超、家族歴陽性、不整な辺縁を持つ硬く可動性のない腫瘤、皮膚変化。

乳癌患者の代表的な3つの受診経路

  1. 無症候性スクリーニングでの異常所見
  2. 患者自身が気づいた乳房腫瘤、乳頭分泌
  3. 明らかな癌の徴候・症状——局所(、リンパ節腫大)または転移性病変としての発症

“Triple diagnosis”(三重診断)アルゴリズム

flowchart TD
  A["トリプルアセスメント"]
  A --> B["①<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Anamnesis'>病歴聴取</span>+乳房診察"]
  B --> C["②<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mammography'>マンモグラフィ</span>ー+超音波<br>必要に応じてMRI"]
  C --> D["③<span class='jp-term jp-term-diagram' title='histology'>組織診</span><br>通常は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='core needle biopsy'>コア針生検</span>"]
  1. +乳房診察
  2. 画像診断(ー+超音波、必要に応じてMRI)
  3. (通常は

トリプルアセスメントは乳腺腫瘤診断の骨格——診察+画像+を統合する。 B/24で述べた→触診→画像→生検と共通する。3

転移の徴候

呼吸困難、、腹部膨満、黄疸、異常。

病期分類

  • 病期評価は局所進展、腋窩病変、遠隔転移の疑いに応じて画像検査を選択する
  • 転移は病期と予後を規定し、腋窩病期評価と全身に影響する

分類 定義
T0 腫瘍なし
T1 <2cm
T2 2〜5cm
T3 >5cm
T4 皮膚または胸壁への進展、あるいはその両方
N1 可動性のあるリンパ節転移
N2 固定性のリンパ節転移
N3 同側転移
M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移が証明される
MX 転移が疑われるが未確定

5. 治療

内科的治療

  • 非転移性疾患に使用——手術後の全身性再発リスクを低減するとして。
  • 局所進行例や手術前縮小を要する症例では術前全身治療としても用いられる。
  • HR陽性乳癌に対してs、SERDs、などを用いる
  • 化学療法: 病期に加えて腫瘍から適応を判断する
  • ER/PR/HER2などのに基づいて選択する4
  • 放射線療法: の疼痛緩和

乳房切除

術式 適応
腫瘍をで切除でき、を保てる場合
乳房切除術(完全切除) 大きな腫瘍、中央部の腫瘍
乳房を切除する。腋窩手術は別に考え、を基本に病期評価する3

💡 局所治療(手術・放射線)と全身治療(化学・ホルモン・)は「腫瘍そのものを取り除く/縮小させる」ことと「目に見えない微小転移を制御する」ことという異なる役割を担う。 転移陽性は後者(全身治療の必要性)を強く示唆する所見として位置づけられる。

まとめ

  • 乳癌は病変と浸潤癌に大別されるが、DCISから浸潤癌への進展は非必発的で、LCISは主に将来リスクを示す病変として扱う。
  • 診断はトリプルアセスメント(診察+画像+)を基本骨格とする。
  • で行い、転移は病期・予後・全身に影響する。
  • 治療は局所治療(手術・放射線)と全身治療(化学療法・)を組み合わせ、LCISに対するのようにリスク低減目的の薬物療法も存在する。

との対比・共通の診断アルゴリズムはB/24: を参照。

出典

  1. 1.Ductal Carcinoma in Situ: State-of-the-Art Review(Radiology・2022)DCISは浸潤癌への非必発的前駆病変で、画像所見と進展が一様でないこと閲覧 2026-08-09
  2. 2.Overview of Breast Cancer Therapy(PET Clinics・2018)乳癌のトリプルアセスメント、乳房温存、腋窩病期評価、術前・術後全身治療閲覧 2026-08-09
  3. 3.Targeted and cytotoxic inhibitors used in the treatment of breast cancer(Pharmacological Research・2024)受容体・分子プロファイルに応じた内分泌療法、分子標的療法、化学療法の選択閲覧 2026-08-09
  4. 4.Lobular Carcinoma in Situ: A 29-Year Longitudinal Experience Evaluating Clinicopathologic Features and Breast Cancer Risk(Journal of Clinical Oncology・2015)LCIS診断後の長期乳癌発症リスクとリスク低減内分泌療法の位置づけ閲覧 2026-08-09