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Disease Atlas · 神経 · 疾患

閉鎖神経障害

Obturator neuropathy

臓器系
神経運動器
科目
Macroscopic Anatomy and Embryology (Macroscopic Anatomy)
トピック
解剖学 6.2:下肢:大腿解剖学 3.7:腹部:神経
鑑別疾患
頸椎・腰椎椎間板ヘルニアによる神経根症

🧠 全体像:障害は、「症状が教科書どおりに出ない」ことがむしろ典型という、教え方が難しいである。はを支配する一方で皮枝の分布はきわめてが大きく、選択的の研究では力が確実に低下していても、のが出るのは2割程度にとどまる(解剖学 6.2・解剖学 3.7)。つまり「のが無いからは無事」という除外の仕方は成り立たない。診断の軸は感覚ではなく力とに置く必要があり、この一点さえ押さえれば、原因(・・分娩・など多岐にわたる)が何であれ評価の骨格は共通する。

原因

は単独で障害されることは稀で、骨盤内での手術操作・出血・腫瘍による圧迫に続発することが多い1。

  • :もっとも重要な原因群である。特に・泌尿器腫瘍に対する骨盤節郭清に伴う損傷は0.2〜5.7%と報告され、ロボット支援術に限れば約0.4%とされる2。の後腹膜郭清・広汎・手術・傍腟欠損修復でも報告がある2。危険因子として、郭清操作時の過度な内側牽引、の誤認、単極の使用、手術時間の延長、位での不適切な体位(が30度を超える場合は屈曲45度以上を保つべきとされる)が挙げられている2。損傷の機序は直達性の切断・、牽引やによる伸展損傷、による、・圧挫、血腫や手術器具による圧迫など多様である2。
  • による絞扼:を通る腸管がを圧迫し、疼痛()やの低下()を来しうる。
  • 分娩:・に伴う骨盤内での圧迫・伸展損傷として報告されている。
  • 股関節手術・:後のセメント漏出による圧迫や、に伴う神経の絞扼が報告されている1。
  • その他:付近の、股関節の、股関節唇に生じた傍などによる圧迫も報告されている。

臨床像

⚠️ の有無で診断を決めない。 最も頻度が高い訴えは〜の疼痛・であるが1、選択的ブロックの研究では皮枝が実在しない例が半数以上に及び、のを示したのは2割にとどまる(解剖学 6.2)。力低下が診断の中心的な所見であり、他の支配神経による代償のため軽度にとどまることもあるが、重度の障害では内転・の消失により・外転位で分回すような歩行を呈する1。腱反射の低下・消失は示唆的な所見だが、健常人でも一定の頻度で反射が乏しいため、との対比が必要である1。が膝より遠位に感覚を送ることは非常に稀である1。

診断

診断は主に臨床的だが、確定にはを用いる。単純X線は正常であり、はの萎縮を検出しうるが神経そのものの異常やトンネルの評価はできない1。では(特に)に所見を認めるが、⚠️ 所見の出現には損傷後2〜4週を要するため、術直後の評価では偽陰性になりうる2。L2〜L4のが正常であれば、によるなど、より近位の病変を除外できる1。診断が不確実な場合は、でのによるが、症状の再現・軽快を通じての関与を裏づける補助検査になる1。腫瘤性病変(腫瘍・血腫)が疑われる場合は・が有用である2。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inner thigh'>大腿内側</span>〜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='groin'>鼠径部</span>痛、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adductor muscle'>内転筋</span>力低下を疑う"] --> B["単純X線・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pelvic mass'>骨盤内腫瘤</span>・骨折を評価"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electromyography'>筋電図</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adductor muscles'>内転筋群</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='denervation'>脱神経</span>所見<br>L2-L4<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paraspinal muscles'>傍脊柱筋</span>は正常か確認"]
    C --> D{"診断が不確実か"}
    D -->|"はい"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='obturator foramen'>閉鎖孔</span>での<span class='jp-term jp-term-diagram' title='local anesthesia'>局所麻酔</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerve block'>神経ブロック</span>で症状再現を確認"]
    D -->|"いいえ"| F["原因(手術操作・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='obturator hernia'>閉鎖孔ヘルニア</span>・<br>血腫・体位など)の除去"]
    E --> F
    F --> G{"術中に気づいたか"}
    G -->|"はい"| H["顕微鏡下での即時神経縫合"]
    G -->|"いいえ"| I["保存的治療:安静・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='physiotherapy'>理学療法</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-inflammatory analgesic'>消炎鎮痛薬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerve block'>神経ブロック</span>"]
    I --> J{"数週間で改善するか"}
    J -->|"いいえ・素因あり・遷延"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surgical decompression'>外科的除圧</span>を検討"]
    J -->|"はい"| L["経過観察・リハビリテーション継続"]

治療

原因の除去が第一である。に伴う損傷を術中に認識した場合は、8-0〜10-0ナイロン糸を用いた顕微鏡下での即時神経縫合が推奨され、早期修復例の多くは6か月以内に完全な回復に至る2。

術後に判明した場合や、・分娩・などによる例では、まず保存的治療を行う——安静、活動の調整、(超音波・干渉波治療などの、軟部組織マッサージ)、・の強化訓練、、である1。神経筋電気刺激やを組み合わせたプログラムも報告されている2。

⭐ 急性発症例は保存的治療で良好な回復を示すが、慢性化した例は改善しにくい。 そのため、疼痛・筋力低下が保存的治療に抵抗し、またはで病変が確認された例、既往手術・骨盤外傷・血腫などの素因を持つ例、遷延または重度の例には、を検討する1。後はを伴う段階的なリハビリテーション計画を実施し、3〜6週での活動復帰が期待できる1。遅延して診断された例でも、適切なリハビリテーションにより良好な転帰が得られうる2。

まとめ

  • 障害は(特に婦人科・泌尿器腫瘍のリンパ節郭清、頻度0.2〜5.7%)、による絞扼、分娩、股関節手術、など多様な原因で生じる。
  • を欠くことが多く、診断は感覚所見ではなく力低下と所見を軸に行う。
  • の所見は損傷後2〜4週かかって現れるため、術直後の評価は偽陰性になりうる。L2〜L4が正常であればを除外できる。
  • 術中に認識できれば顕微鏡下での即時縫合が望ましく、早期修復例の多くは6か月以内に回復する。
  • 術後発見例・非の例はまず保存的治療を行い、抵抗例・素因を持つ例・遷延例にはを検討する。急性期の保存的治療は良好だが、慢性化すると改善しにくい。

出典

  1. 1.Obturator neuropathy(Current Reviews in Musculoskeletal Medicine・2008)閉鎖神経が第2〜4腰神経の前枝から起こり大腰筋内を下行したのち骨盤縁で骨盤内に入り閉鎖孔を通って前枝(長内転筋・薄筋・短内転筋を支配し大腿内側中央部の皮膚感覚も担う)と後枝(外閉鎖筋・大内転筋を支配し膝関節への感覚枝を出す)に分かれること、最も多い症状は大腿内側の感覚異常(錯感覚・感覚低下・疼痛)であり大腿内側〜鼠径部痛が最頻の訴えであること、閉鎖神経が膝より遠位の感覚を担うことは非常に稀であること、内転筋力低下があっても他の神経支配筋が代償するため軽微になりうること、重度の障害では内転・内旋の消失により外旋・外転位での分回し歩行を来すこと、股関節内転筋腱反射の消失は示唆的だが病的ではなく健側との対比が必要なこと、原因として手術・出血・腫瘍による圧迫が報告されていること、診断は単純X線では正常でMRIは内転筋の萎縮を検出しうるが神経自体の異常や線維骨性トンネルの評価はできないこと、確定診断は筋電図でありオブチュレーター孔での局所麻酔ブロックで補強できること、保存的治療(安静・理学療法・消炎鎮痛薬・神経ブロック)は急性期に有効だが慢性例は改善しにくいこと、筋電図または神経ブロックで病変が確認された例・素因(既往手術・骨盤外傷・血腫)を持つ例・遷延例には手術的除圧を考慮すべきこと、術後のリハビリテーションで3〜6週での活動復帰が期待できることを全文(オープンアクセス、PMC2682412)で確認した。閲覧 2026-09-08
  2. 2.Obturator Neuropathy Following Minimally Invasive Pelvic Surgery: A Report of Two Cases(Cureus・2025)閉鎖神経損傷が骨盤内リンパ節郭清に伴う症例で0.2〜5.7%と報告される稀だが見過ごされやすい合併症であること、ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術での頻度が約0.4%であること、婦人科腫瘍の後腹膜郭清・子宮内膜症手術・傍腟欠損修復でも報告されていること、危険因子として郭清時の過度の内側牽引・解剖学的指標の誤認・単極電気メスの使用・手術時間の延長・砕石位での不適切な体位(特に股関節外転30度超では屈曲45度以上を保つべきこと)が挙げられること、損傷機転として直達性外傷(鋭的・鈍的剥離)・牽引や肢位による牽引損傷・エネルギーデバイスによる熱損傷・結紮や圧挫・血腫や器具による圧迫が挙げられること、診断は臨床所見(大腿内側痛・内転筋力低下・歩行異常)を基本とし筋電図で脱神経所見を確認するが変化の出現は損傷後2〜4週かかること、術中に気づいた場合は8-0〜10-0ナイロン糸による顕微鏡下神経縫合の即時修復が推奨されること、術後に気づいた場合は神経筋電気刺激・筋電図バイオフィードバック・筋力強化訓練などの理学療法プログラムを開始すること、早期の術中修復例の多くが6か月以内に完全な運動機能回復を得ること、遅延診断例でも適切なリハビリテーションで良好な転帰が得られうること、報告された2症例(ロボット支援前立腺全摘術後・腹腔鏡下広汎子宮全摘術後)がいずれも6か月で症状完全消失に至ったことを全文(オープンアクセス、PMC12640111)で確認した。閲覧 2026-09-08