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Disease Atlas · 生殖・産婦人科 · 外傷

直腸ボタンホール裂傷

Rectal buttonhole tear

別名
直腸腟中隔裂傷
臓器系
生殖・産婦人科消化器
科目
Obstetrics and Gynecology (Obstetrics)
トピック
産科学 31:産道損傷と子宮破裂
上位概念
会陰裂傷
鑑別疾患
産科的肛門括約筋損傷

🧠 全体像:は、(・)は保たれたまま、直腸粘膜()だけが裂けるという、経腟分娩でまれに起こる特殊な損傷である。学習の核心は一点に尽きる——「粘膜まで及んでいる」からといって自動的に第4度(OASIS)に分類してはならない。第4度はとの両方に及ぶ損傷を指す定義であり、括約筋が無傷なら分類そのものが異なる。見逃せばという重いに至るため、認識すること自体が診療の核心になる。

なぜ「第4度ではない」のか——分類上の位置づけ

(OASIS)の分類(Sultan分類)は、損傷がにどこまで及んでいるかを基準に第3a・3b・3c・4度と細分される。第4度は「(EAS・IAS)との両方」に及んだ損傷と定義される。

⚠️ は、この定義に当てはまらない。 会陰の皮膚・筋・は表面的には保たれたまま、その深部にある直腸粘膜(腟と直腸を隔てる)だけが穴を開けたように裂けるため、への損傷という第3〜4度の分類基準そのものを満たさない。したがって、直腸粘膜の露出・裂傷という所見があっても、括約筋が無傷であれば第4度ではなく、として別個に記録する12。

flowchart TD
    A["経腟分娩後、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='digital rectal examination, DRE'>直腸診</span>を含む系統的診察"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anal sphincter complex'>肛門括約筋複合体</span><br>(EAS・IAS)に及んでいるか"}
    B -->|"はい、かつ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anorectal mucosa'>肛門直腸粘膜</span>も"| C["第4度<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perineal tears'>会陰裂傷</span>(OASIS)"]
    B -->|"はい、粘膜は無傷"| D["第3度<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perineal tears'>会陰裂傷</span>(OASIS)"]
    B -->|"いいえ、括約筋は保たれている"| E{"直腸粘膜だけが<br>裂けているか"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rectal buttonhole tear'>直腸ボタンホール裂傷</span><br>(第4度ではない)"]
    E -->|"いいえ"| G["第1〜2度<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perineal tears'>会陰裂傷</span>"]

💡 なぜこの区別が試験・臨床の両方で重要か。 第3〜4度分類は将来の・肛門内圧の予後と密接に結びついた分類体系であり、括約筋損傷の有無で予後の議論の土台が変わる。を誤って「第4度」と呼んでしまうと、括約筋損傷が無いにもかかわらず括約筋損傷後の予後説明・フォロー(・など)を当てはめてしまい、逆に直腸粘膜単独損傷に固有のリスク()への注意が薄れるという実害がある。

見逃すとどうなるか:直腸腟瘻のリスク

⚠️ は、認識・修復されなければに至りうる。 直腸粘膜の裂傷は会陰表面から見えにくく、が保たれているために外見上は軽症に見えることがあるが、診断・治療が遅れると直腸と腟の間に瘻孔()が形成され、患者の生活の質に深刻な影響を及ぼしうる12。

⭐ すべての経腟分娩は、OASISだけでなく孤立性のを負う危険も持つ。 そのため、縫合を始める前に、だけでなくを含む系統的な診察を全例に行う必要がある1。

危険因子

はまれな合併症だが、次の因子との関連が報告されている2。

  • :母体年齢は重要な危険因子であり、では発生確率が有意に増加する
  • 胎児
  • 急速な胎頭下降

診断:直腸診の重要性

は、会陰・腟の外見上の裂傷が軽度に見えても、を省略すると発見できない。

  • 縫合前に必ずを行う。 の緊張・欠損の有無と、直腸粘膜のの両方を確認して初めて、OASISかかを区別できる1。

修復

修復の原則はOASISの修復と共通する。

  • 手術室で、良好な照明と適切な鎮痛・器具のもとで、訓練を受けたが修復する。
  • 直腸粘膜は・のいずれでもよく、3-0を用いる1。
  • は用いない。 止血目的の縫合であり、を招いて創治癒を妨げる1。
  • 損傷の程度・部位に応じた一次修復と厳格な感染管理が転帰を左右する。自験例の分析では、この方針により通常良好な転帰が得られている2。
  • ⚠️ 修復後にもう一度を行う。 縫合糸がを貫いていないか確認し、貫いていればする——これはOASISの修復と共通する原則である1。

まとめ

  • は、は保たれたまま直腸粘膜()だけが裂ける損傷で、第4度(OASIS)の定義(括約筋+粘膜の両方に及ぶ)を満たさないため、第4度とは別に記録する。
  • すべての経腟分娩はOASISだけでなく孤立性のの危険も持つため、縫合前にを含む系統的診察を全例に行う。
  • ・胎児・急速な胎頭下降・が危険因子として報告されている。
  • 見逃し・診断治療の遅延はという慢性合併症に至りうる。診断の鍵はに頼らずで直腸粘膜のを確認することである。
  • 修復は直腸粘膜を3-0で連続またはし、損傷の程度・部位に応じた一次修復と厳格な感染管理を行う。は避け、修復後はで縫合糸の貫通がないか再確認する。

出典

  1. 1.The Management of Third- and Fourth-Degree Perineal Tears (Green-top Guideline No. 29)(Royal College of Obstetricians and Gynaecologists・2015)肛門括約筋複合体(外肛門括約筋・内肛門括約筋)が保たれたまま直腸粘膜だけが裂けたものは、定義上第4度会陰裂傷ではなく直腸ボタンホール裂傷として記録すべきであり、認識・修復されないと直腸腟瘻に至りうること、すべての経腟分娩がOASIS(第3度・第4度会陰裂傷)または孤立性の直腸ボタンホール裂傷を負う危険を持つため、縫合を始める前に直腸診を含む系統的な診察を全例に行うべきこと、肛門直腸粘膜の修復は連続縫合・結節縫合のいずれでもよく3-0ポリグラクチンを用い8字縫合は組織虚血を招くため避けるべきこと、修復後にもう一度直腸診を行い縫合糸が肛門直腸粘膜を貫いていないか確認すべきこと、英国では2000年4月からの10年間に会陰損傷に関する訴訟が441件あり総額約3,120万ポンド、その85%が会陰損傷の「診断の誤り」に関するものだったことを確認した閲覧 2026-09-06
  2. 2.Advanced maternal age and rectal buttonhole tear in vaginal delivery: a clinical analysis of 4 cases and management experience(Aging Research・2024)直腸ボタンホール裂傷が肛門括約筋は無傷のまま直腸壁損傷を来す稀な周産期合併症であること、母体年齢が重要な危険因子であり高齢妊娠で発生確率が有意に増加すること、胎児巨大児・急速な胎頭下降・器械分娩も危険因子であること、自験4症例の分析から直腸粘膜損傷の程度と部位に基づく一次修復と厳格な感染制御により通常良好な転帰が得られること、診断・治療の遅延は直腸腟瘻の形成につながり患者の生活の質に深刻な影響を与えうることを確認した閲覧 2026-09-06