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Disease Atlas · 生殖・産婦人科 · 外傷

会陰裂傷

Perineal laceration

別名
会陰裂創分娩時会陰裂傷
臓器系
生殖・産婦人科
科目
Obstetrics and Gynecology (Obstetrics)Macroscopic Anatomy and Embryology (Macroscopic Anatomy)
トピック
産科学 31:産道損傷と子宮破裂産科学 19:分娩第3期・第4期と管理解剖学 4.4:骨盤・会陰:会陰
続発疾患
分娩後出血
症状
性交痛
下位分類
産科的肛門括約筋損傷直腸ボタンホール裂傷

🧠 全体像:は第1度から第4度までの連続体で、深さが増すごとに越えていく層が決まっている——皮膚・(第1度)→ (第2度)→ (第3度)→ (第4度)1。この「層の順番」さえ言えれば分類は再構成できる。 ⚠️ 学習上いちばん重要なのは、第3度・第4度=(OASIS)だけが別世界だという線引きである。第1・2度はで修復して大半は問題を残さないが、括約筋を越えた瞬間に、手術室・訓練を受けた・長期追跡・次回分娩様式の相談という別の診療が始まる。⚠️ そしてもう一つの幹が——「切っておけば裂けない」は現行のエビデンスで支持されていない2。

分類——層の順番がそのまま度数になる

Sultanによる分類が国際尿失禁学会とRCOGに採用されている1。

度 越えた層 診療の場
第1度 会陰皮膚および/または
第2度 に及ぶがには及ばない
第3a度 (EAS)の厚さの50%未満 ⚠️ 手術室(OASIS)
第3b度 EASの厚さの50%超 ⚠️ 手術室(OASIS)
第3c度 EASと(IAS)の両方 ⚠️ 手術室(OASIS)
第4度 (EAS・IAS)と ⚠️ 手術室(OASIS)

第3度と第4度を合わせてOASISと呼ぶ1。分類・修復手技・予後・次回分娩の扱いはのノートに置いてある。本ノートは第1〜4度を通した親概念として、・予防・第1〜2度の修復を扱う。

  • 💡 は「人工的な第2度裂傷」である。 だから第1・2度の修復と創の修復は同じエビデンスで語られ、Cochraneレビューの題名も「または第2度裂傷の修復」になっている3。
  • ⚠️ 「肛門上皮」ではなく「」と書く。 の内張りは発生学的由来で異なり、近位は直腸粘膜(円柱上皮)、遠位1〜1.5 cmは修飾された扁平上皮である。RCOGは混乱を避けるため全編での語を用いている1。

⚠️ 「会陰裂傷」で産道損傷を代表させない

⭐ 経腟分娩の損傷は会陰だけに起こるのではない。頸管・腟・外陰(、周囲、を含む)にも生じ、その大半は機能的な悪影響を残さない4。

💡 この分布の理解が、産後の出血診療で効く。 子宮が硬く良好に収縮しているのに出血が続くなら、の4つのTのうち Trauma を疑い、会陰だけを見て終わらせずに頸管まで観察する——との鑑別もここに乗る。

会陰切開——「切れば裂けない」は支持されていない

選択的方針かルーチンか

⭐ これはの学習で最も試験に出る対比である。 12試験6,177人を統合したCochraneレビューが、選択的(必要なときだけ)とルーチン(管理の一部として全例に)を比較している2。

転帰 選択的 vs ルーチン 確実性
重度の会陰・腟損傷 ⭐ 選択的で30%少ない(RR 0.70、95%CI 0.52〜0.94、5,375人、8試験) 低
会陰感染 ほとんど差が無い可能性(RR 0.90、0.45〜1.82、1,467人) 低
5分後7未満 ほとんど差が無い(4試験でイベント0、3,908人) 中等度
長期(6か月以上)の おそらくほとんど差が無い(RR 1.14、0.84〜1.53、1,107人) 中等度
長期(6か月以上)の尿失禁 ほとんど差が無い可能性(平均RR 0.98、0.67〜1.44、1,107人) 低
産後3年の 明らかな差は無かった(RR 0.30、0.06〜1.41、365人、1試験) 低
  • 著者らのは「ルーチンが会陰・腟損傷を減らすという考えは現行のエビデンスではされない」である2。⭐ 選択的方針は害を増やさずに重度損傷を減らす。
  • ⚠️ (・経産)でも術式(正中・正中側)でも、修飾効果は同定されなかった2。「なら切ったほうがよい」も、このレビューのからは出てこない。
  • ⚠️ はの外にある。 を予定した女性を扱った試験は1件175人だけで、重度会陰損傷に明らかな差を示せなかったが検出力不足であった2。だからRCOGはについて別立てで「を考慮する」(推奨度D)としている1。

正中か正中側か

⚠️ はを保護しない。 を3群に分けたで、群は会陰が無傷の群と比べ産後3か月ののが5.5(95%CI 1.8〜16.2)であり、自然裂傷群と比べてもの危険が3倍(3か月、1.3〜7.9)、の危険が2倍(3か月、1.3〜3.4)だった5。

  • ⭐ 決定的なのは「進展しなかった」の比較である。 括約筋まで裂けなかった、すなわち第2度に相当する手術切開だけを取り出しても、自然の第2度裂傷に比べて産後3か月のの危険は3倍(1.1〜9.0)だった5。⚠️ 「切ったから深く裂けた」だけでは説明できない——切開そのものが肛門のを損なっている。
  • ⚠️ 数値の読み方に注意する。 6か月時点ののは1をまたぐ(自然裂傷群との比較で0.7〜11.2、無傷群との比較で0.9〜15.6)5。「3か月では明確、6か月では不確か」と読む。
  • を行う場合は、会陰が伸展した状態でから60度離したが推奨される(推奨度D)1。実際の角度の取り方とでの位置づけはOASISのノートに詳しい。

予防——妊娠中のマッサージと分娩中のマッサージは別物である

⚠️ ここは取り違えが起きやすい。 同じ「」でも、妊娠最終月に本人やパートナーが行うものと、に介助者が行うものでは、対象も結果も違う。

いつ・誰が 何が減ったか 何が減らなかったか
妊娠最終月に女性本人またはパートナー 縫合を要する会陰損傷全体(RR 0.91、95%CI 0.86〜0.96、NNTB 15)、(RR 0.84、0.74〜0.95、NNTB 21)。⚠️ いずれも経腟分娩の既往が無い女性でのみ有意1 ⚠️ 第1度・第2度裂傷も第3〜4度損傷も減らなかった1。度数別の値は第1度が平均RR 0.96(0.78〜1.19)、第2度がRR 0.99(0.85〜1.15)、第3〜4度がRR 0.81(0.56〜1.18)6
に介助者 第4度裂傷は減るかもしれないがが広い(RR 0.26、0.04〜1.61、4試験、低確実性)7 第2度裂傷(RR 1.04、0.89〜1.21、4試験)、(RR 0.97、0.90〜1.05)7

💡 妊娠中のマッサージが減らしたのは「縫合を要する損傷全体」と「」であって、裂傷の度数ではない。 ⚠️ 度数別に見ると差が消えるので、「マッサージで重い裂傷を防げる」とは言えない1。⭐ 減った分のほとんどはが減ったことで説明できる、と原典が明言している6。

⚠️ 二次資料の数字の付け方に注意する。 RCOGガイドラインは「第1度・第2度裂傷にも第3〜4度損傷にも差が無かった(RR 0.81、95%CI 0.56〜1.18)」と1つのRRを2つの転帰に付けて引用しているが、原典(Beckmann 2013、Analysis 1.4)でこのRRが与えられているのは第3〜4度損傷だけである6。💡 「差が無かった」というは変わらないが、数値を引くときは原典の解析番号まで降りる。

分娩第2期の手技——温罨法だけが抜けている

2024年のCochraneレビューが17試験13,695人を統合している7。

手技 第2度裂傷 第3度・第4度裂傷
⭐ vs 対照 ほとんど差が無い可能性(RR 0.94、0.72〜1.21、低) ⭐ おそらく減る(RR 0.46、0.27〜0.79、3試験、中等度) おそらく大きく減る( −0.81、−1.18〜−0.44、中等度)
会陰に手を触れない方針 vs 手を添える方針 ほとんど差が無い可能性(RR 0.73、0.32〜1.64、低) 合算でほとんど差が無い可能性(RR 1.27、0.81〜1.99、低) おそらく差が無い(RR 0.98、0.94〜1.01、中等度)
vs 対照 ほとんど影響しない可能性(RR 1.04、0.89〜1.21、低) 第3度は非常に不確実(RR 0.57、0.16〜2.02) おそらく差が無い(RR 0.97、0.90〜1.05、中等度)
+マッサージ vs 対照 おそらく減る(RR 0.63、0.46〜0.86、中等度) 第3度のみの値。非常に不確実(RR 2.92、0.12〜70.72) —
+マッサージ vs マッサージ単独 ほとんど差が無い可能性(RR 0.95、0.86〜1.06、低) 第3〜4度合算。非常に不確実(RR 0.98、0.06〜15.49) —
  • ⭐ 中等度の確実性で第3・4度裂傷を減らしたのはだけである7。⚠️ ただしは第2度裂傷を減らしていない——重い裂傷にだけ効いているように見える点は覚えておく。
  • ⚠️ 「手を触れない」対「手を添える」は決着していない。 2試験しかなく、どちらの転帰も低確実性で差が出ていない7。
  • ⚠️ レビュー著者自身の総括は「エビデンスは全体として非常に不確実」である。 ・有害事象・女性や医療者の経験を報告した試験がごく少ないと述べている7。⚠️ 個々の行の RR を「確立した効果」として暗記しない。
  • 💡 このレビューが会陰手技をの文脈に置いているのは、が世界のの約27%を占めるからである7。は失血の一因として扱われている。

分娩直後の評価

flowchart TD
    A["経腟分娩の直後"] --> B["説明・鎮痛・良好な照明・体位を整える"]
    B --> C["会陰だけでなく頸管・腟・外陰も観察する"]
    C --> D["縫合を始める前に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='digital rectal examination, DRE'>直腸診</span>を行う"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anal sphincter complex'>肛門括約筋複合体</span>に及んでいるか"}
    E -->|"及んでいる"| F["第3〜4度=OASIS<br>手術室・麻酔・訓練を受けた<span class='jp-term jp-term-diagram' title='operator (person performing the procedure)'>術者</span>へ"]
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perineal muscles'>会陰筋</span>まで"| G["第2度<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='delivery room'>分娩室</span>で層ごとに修復"]
    E -->|"皮膚・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vaginal mucosa'>腟粘膜</span>のみ"| H["第1度<br>出血と辺縁の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synapsis'>対合</span>で判断"]

⚠️ は縫合を始める前に行う。 全経腟分娩がOASISまたは孤立性のを負う危険を持つためで、根拠と訴訟の実測はOASISのノートにまとめてある1。

第1・2度の修復

⭐ 修復法の比較は「かか」に集約される。 創と第2度裂傷を対象に、8か国16試験・登録時8,184人を統合したCochraneレビューがある3。

転帰 vs
⭐ 産後10日までの疼痛 で少ない(RR 0.76、95%CI 0.66〜0.88、9試験)
の使用(皮膚の) で少ない(RR 0.70、0.59〜0.84)
で少ない(RR 0.56、0.32〜0.98)
創の 有意差なし
長期の疼痛 有意差なし
  • 💡 「のほうが痛くない」の中身は短期である。 差が出たのは産後10日までの疼痛・・で、の必要性と長期疼痛には差が無い3。
  • 連続法はの使用量も少ない(1パックに対し結節法は2〜3パック)3。
  • ⚠️ 試験はの技量と訓練の点で異質だったとレビュー自身が述べている3。手技の差が結果に混ざっている可能性を残す。
  • ⚠️ 第1度裂傷を縫合しないという選択について、本ノートの出典は答えを持たない。 上記のレビューは創と第2度裂傷を対象としており、出血が無い浅い第1度裂傷を保存的に扱う運用を直接支持する比較は引いていない。「第1度は縫わなくてよい」と断定して覚えない。

合併症

時期 内容
分娩直後 ⚠️ 出血。子宮収縮が良好でも裂傷から出血が続きうる(のTrauma)
早期 、血腫、創感染・(の感染源のひとつ)
後期 。⚠️ 選択的とルーチンの間では、長期のにおそらく差が無い2
第3・4度に固有 ・、。⚠️ 詳細はOASISへ

⚠️ 産科的裂傷の大半は機能的な悪影響を残さない。 ACOGがこう述べているのは、会陰だけでなく頸管・腟・外陰を含む裂傷全体についてであり、これに対比されているのが「に及ぶかこれを貫く重度」である4。恐れるべき対象を第3・4度に絞れることが、この分類の実務的な価値である。

まとめ

  • は第1〜4度の連続体で、越える層の順番(皮膚・ → → → )がそのまま度数になる。
  • ⭐ 第3・4度=OASISだけが別の診療になる。 手術室・訓練を受けた・長期追跡・次回分娩様式の相談まで含む。
  • は会陰に限らない。頸管・腟・外陰にも起こり、大半は機能的な悪影響を残さない。
  • ⭐ 選択的はルーチンより重度会陰・腟損傷が30%少ない(RR 0.70)。「切れば裂けない」は現行のエビデンスでされない。
  • ⚠️ ではでも正中/正中側でも修飾効果は出ていない。は検出力不足での外にある。
  • ⚠️ は括約筋を保護しない。 進展しなかった切開でも、自然の第2度裂傷に比べ産後3か月のが3倍。ただし6か月時点のは1をまたぐ。
  • ⚠️ 妊娠最終月のマッサージとのマッサージを混同しない。 前者は縫合を要する損傷全体とを減らすが度数別では差が消え、後者は第2度裂傷を減らさない。
  • ⭐ で中等度の確実性をもって第3・4度裂傷を減らしたのはだけ(RR 0.46)。それでも著者らの総括は「エビデンスは全体として非常に不確実」。
  • 第1・2度の修復はが短期の疼痛・・を減らす(RR 0.76)。と長期疼痛には差が無い。
  • ⚠️ 縫合を始める前にを行う。第1度を縫合しない運用は、本ノートの出典では裏づけられていない。

出典

  1. 1.The Management of Third- and Fourth-Degree Perineal Tears (Green-top Guideline No. 29)(Royal College of Obstetricians and Gynaecologists・2015)本ガイドライン(2015年6月、第3版)のPDF全文を自分で取得して確認した。Sultanによる分類が国際尿失禁学会とRCOGに採用されており、第1度=会陰皮膚および/または腟粘膜の損傷、第2度=会陰筋に及ぶが肛門括約筋には及ばないもの、第3度=肛門括約筋複合体に及ぶもの(3a=外肛門括約筋の厚さの50%未満、3b=50%超、3c=外肛門括約筋と内肛門括約筋の両方)、第4度=肛門括約筋複合体(EASとIAS)と肛門直腸粘膜に及ぶものであること、第3度と第4度を合わせてOASISと呼ぶこと、第3度の程度に迷うときは低いほうではなく高いほうへ分類すべきであること。肛門管の内張りが発生学的由来により部位で異なり、近位は直腸粘膜(円柱上皮)、遠位1〜1.5 cmは修飾された扁平上皮であるため、本ガイドラインでは肛門上皮ではなく「肛門直腸粘膜」の語を用いていること。妊娠最終月の会陰マッサージについて、4試験2,497人のCochraneレビューで、女性本人またはパートナーが行うマッサージが縫合を要する会陰損傷全体を減らし(4試験2,480人、RR 0.91、95%CI 0.86〜0.96、NNTB 15[10〜36])、会陰切開も少なくした(4試験2,480人、RR 0.84、0.74〜0.95、NNTB 21[12〜75])が、これらの所見が有意だったのは経腟分娩の既往が無い女性に限られたこと、第1度・第2度会陰裂傷および第3〜4度会陰損傷の頻度には差が見られなかったこと(4試験2,480人、RR 0.81、0.56〜1.18)。⚠️ ただしこの RR 0.81 は本ガイドラインが1つのRRを2つの転帰に付けて引用したもので、原典(Beckmann 2013、Analysis 1.4)では第3〜4度損傷にのみ与えられている値である。会陰切開について、器械分娩では正中側切開を考慮すべきこと(推奨度D)、行う場合は会陰が伸展した状態で正中線から60度離すこと(D)、ルーチンの会陰切開の保護効果の証拠は相反すること(C)を確認した。閲覧 2026-09-04
  2. 2.Selective versus routine use of episiotomy for vaginal birth(Cochrane Database of Systematic Reviews・2017)PMCの全文(PMC5449575)で確認した。12試験6,177人(うち11試験は経腟分娩を予定した分娩中の女性、1試験は器械分娩が見込まれた女性)を統合したレビュー。器械分娩を予定しない女性では、選択的会陰切開の方針により重度の会陰・腟損傷を経験する女性が30%少なかった(RR 0.70、95%CI 0.52〜0.94、5,375人、8 RCT、低確実性)。分娩時出血量の差は不明(平均27 mL少ない、95%CI 75 mL少ない〜20 mL多い、2試験336人、非常に低い確実性)、5分後Apgarスコア7未満はいずれの方針でもほとんど差が無く(4試験、イベント0、3,908人、中等度)、会陰感染もほとんど差が無い可能性がある(RR 0.90、0.45〜1.82、3試験1,467人、低)。長期(6か月以上)の性交痛はおそらくほとんど差が無く(RR 1.14、0.84〜1.53、3試験1,107人、中等度)、長期の尿失禁もほとんど差が無い可能性がある(平均RR 0.98、0.67〜1.44、3試験1,107人、低)。産後3日の中等度〜重度会陰痛の差は不明(RR 0.71、0.48〜1.05、1試験165人、非常に低い)。産後3年の性器脱に明らかな差は無かった(RR 0.30、0.06〜1.41、365人、1試験、低)。⚠️ 経産回数(初産婦対経産婦)と術式(正中対正中側)によるサブグループ解析では修飾効果は同定されなかった。器械分娩を予定した1試験175人では重度会陰損傷に明らかな差を示せなかったが検出力不足であった。著者らは、ルーチンの会陰切開が会陰・腟損傷を減らすという考えは現行のエビデンスでは正当化されないと結論している。閲覧 2026-09-04
  3. 3.Continuous and interrupted suturing techniques for repair of episiotomy or second-degree tears(Cochrane Database of Systematic Reviews・2012)会陰切開創および第2度会陰裂傷の一次修復について、連続縫合と結節縫合を比較した8か国16試験・登録時8,184人を統合したCochraneレビュー。試験は術者の技量と訓練の点で異質であった。連続縫合(全層または皮膚のみ)は結節縫合と比べ産後10日までの疼痛が少なく(RR 0.76、95%CI 0.66〜0.88、9試験)、皮膚の連続皮下縫合では鎮痛薬使用が全体として少なく(RR 0.70、0.59〜0.84)、抜糸も少なかった(RR 0.56、0.32〜0.98)が、創の再縫合の必要性と長期の疼痛には有意差が無かった。著者らは、連続縫合が短期の疼痛・鎮痛薬使用・抜糸を減らし、縫合材の使用量も少ない(連続法1パックに対し結節法2〜3パック)と結論している。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-04
  4. 4.ACOG Practice Bulletin No. 198: Prevention and Management of Obstetric Lacerations at Vaginal Delivery(American College of Obstetricians and Gynecologists・2018)経腟分娩後の裂傷はよくみられること、損傷は会陰だけでなく頸管・腟・外陰(陰唇、陰核周囲、尿道周囲を含む)にも起こりうること、その大半は機能的な悪影響を残さないこと、一方で肛門括約筋複合体に及ぶかこれを貫く重度会陰裂傷は頻度こそ低いものの骨盤底損傷・便失禁・尿失禁・疼痛・性機能障害の危険増加と結び付きやすく、症状が出産後何年も続きうること、本文書の目的が産科的裂傷の予防・同定・修復と会陰切開について根拠に基づく指針を示すことであることを確認した。⚠️ 抄録のみを閲覧しており全文は未取得(発行元のページは有料で取得できなかった)。個別の推奨文・推奨度は本ノートでは引いていない。閲覧 2026-09-04
  5. 5.Midline episiotomy and anal incontinence: retrospective cohort study(BMJ・2000)米国の大学病院で1996年8月〜1997年2月に生児・正期・単胎を経腟分娩した初産婦を、会陰切開を受けた209人、会陰切開は受けず第2〜4度の自然裂傷を負った206人、裂傷が無いか第1度にとどまった211人の3群に分けた後ろ向きコホート研究(追跡6か月、自己申告の便失禁・排ガス失禁が主要評価項目)。会陰切開群は会陰が無傷の群と比べ産後3か月(オッズ比5.5、95%CI 1.8〜16.2)・6か月(3.7、0.9〜15.6)の便失禁の危険が高かった。自然裂傷群と比べると、会陰切開は産後3か月(1.3〜7.9)・6か月(0.7〜11.2)の便失禁の危険を3倍に、産後3か月(1.3〜3.4)・6か月(1.2〜3.7)の排ガス失禁の危険を2倍にした。進展しなかった会陰切開(すなわち第2度に相当する手術切開)でも、自然の第2度裂傷と比べ産後3か月の便失禁の危険が3倍(1.1〜9.0)、排ガス失禁の危険がほぼ2倍(1.0〜3.0)であった。この効果は母体年齢・出生体重・分娩第2期の長さ・器械分娩・分娩合併症とは独立していた。著者らは、正中会陰切開は分娩時に会陰と括約筋を保護せず、肛門の禁制を損ないうると結論している。⚠️ 6か月時点の便失禁の信頼区間は1をまたぐ。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-04
  6. 6.Antenatal perineal massage for reducing perineal trauma(Cochrane Database of Systematic Reviews(Beckmann MM, Stock OM)・2013)PMCの全文(PMC11297413)で確認した。RCOG GTG29 が参照文献33として引用している原典である。妊娠最終4週以上の用手会陰マッサージと対照を比較した4試験2,497人を統合し、縫合を要する会陰損傷全体が9%減り(4試験2,480人、RR 0.91、95%CI 0.86〜0.96、NNTB 15[10〜36])、会陰切開が16%減った(4試験2,480人、RR 0.84、0.74〜0.95、NNTB 21[12〜75])こと、いずれも経腟分娩の既往が無い女性のサブグループでのみ統計学的に有意だったこと。⚠️ 度数別の結果は解析ごとに別々に報告されており、第1度裂傷は平均RR 0.96(95%CI 0.78〜1.19、Tau²=0.04、I²=40%、Analysis 1.2)、第2度裂傷はRR 0.99(0.85〜1.15、Analysis 1.3)、第3度・第4度損傷はRR 0.81(0.56〜1.18、Analysis 1.4)で、いずれも全体でもサブグループでも差が無かった。⚠️ すなわち RCOG が「第1度・第2度裂傷にも第3〜4度損傷にも差が無かった(RR 0.81、0.56〜1.18)」と1つのRRを2つの転帰に付けて引用しているが、原典でこのRRが与えられているのは第3〜4度損傷(Analysis 1.4)だけである。著者らは「縫合を要する会陰損傷の減少は、ほぼ全面的に会陰切開を受けにくくなったことによる」と述べていること、経腟分娩の既往がある女性では産後3か月の疼痛が減った(1試験376人、RR 0.45、0.24〜0.87、NNTB 13)が、器械分娩・性的満足度・尿失禁・便失禁・排ガス失禁には差が無かったことを確認した閲覧 2026-09-04
  7. 7.Perineal techniques during the second stage of labour for reducing perineal trauma and postpartum complications(Cochrane Database of Systematic Reviews・2024)PMCの全文(PMC11514540)で確認した。2024年4月16日までを検索し、分娩第2期の会陰手技を比較した無作為化比較試験17件13,695人を統合したレビュー。産後出血が世界の妊産婦死亡の約27%を占めることを背景として挙げている。会陰に手を触れない(hands off/poised)方針は手を添える方針と比べ、第2度裂傷(RR 0.73、95%CI 0.32〜1.64、2試験、低確実性)にも第3度・第4度裂傷を合算した頻度(RR 1.27、0.81〜1.99、2試験、低)にもほとんど差を生じない可能性があり、会陰痛もおそらくほとんど変わらない(RR 0.98、0.94〜1.01、1試験、中等度)。会陰への温罨法は対照と比べ第2度裂傷にほとんど差を生じない可能性がある一方(RR 0.94、0.72〜1.21、2試験、低)、第3度・第4度裂傷はおそらく減らし(RR 0.46、0.27〜0.79、3試験、中等度)、会陰痛をおそらく大きく減らす(平均差 −0.81、−1.18〜−0.44、1試験、中等度)。分娩第2期の会陰マッサージは第2度裂傷にほとんど影響しない可能性があり(RR 1.04、0.89〜1.21、4試験、低)、第3度裂傷への効果は非常に不確実で(RR 0.57、0.16〜2.02、4試験)、第4度裂傷は減らすかもしれないが信頼区間が広く効果が無い可能性も含む(RR 0.26、0.04〜1.61、4試験、低)。会陰痛はおそらくほとんど変わらない(RR 0.97、0.90〜1.05、1試験、中等度)。温罨法とマッサージの併用は対照と比べ第2度裂傷をおそらく減らす(RR 0.63、0.46〜0.86、1試験、中等度)が第3度裂傷への効果は非常に不確実であり(RR 2.92、0.12〜70.72、1試験)、マッサージ単独との比較では第2度裂傷にほとんど差が無い可能性があり(RR 0.95、0.86〜1.06、1試験、低)第3度・第4度裂傷への効果も非常に不確実である(RR 0.98、0.06〜15.49、1試験)。著者らは、会陰手技が会陰損傷と産後出血を減らす効果についてのエビデンスは全体として非常に不確実であり、産後出血・有害事象・女性や医療者の経験を報告した試験がごく少ないと結論している。閲覧 2026-09-04