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Drug Atlas · B30 Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤

ドニダロルセン

donidalorsen

分類
Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤
科目
Pharmacology
トピック
B30: Immunopharmacology III (Antibodies and fusion proteins)
承認適応
遺伝性血管性浮腫
副作用
注射部位反応

🧠 全体像:ドニダロルセンは、(HAE)の長期予防薬のなかで唯一核酸そのもの()として働く薬である。産生カスケードの出発点である(PKK)のmRNAに直接結合し、RNase H1という酵素にmRNAを分解させることで、タンパク質が作られる前の段階でカスケードを断つ。モノクローナル抗体(・)が「できあがったタンパク質を中和する」のに対し、ドニダロルセンは「タンパク質そのものを作らせない」という一段上流の発想である。

薬効群の中での位置づけ

薬剤 標的・機序 投与頻度
ドニダロルセン PKK mRNAに結合しRNase H1で分解(タンパク質合成を阻害) 4週ごと(8週ごとも可)皮下注
FXIIaへのモノクローナル抗体(できたタンパク質を中和) 月1回皮下注
へのモノクローナル抗体(できたタンパク質を中和) 2〜4週ごと皮下注
欠乏したの補充 週2回など頻回

⭐ 「mRNAを標的にする」ことの意味は、効果発現までの時間差に出る。 抗体は循環中のタンパク質にすぐ結合できるが、ドニダロルセンはPKKタンパク質の産生を減らすことで血中濃度が徐々に下がっていく仕組みのため、効果のは新規タンパク質の分解速度に依存する。

機序

flowchart TD
    A["ドニダロルセン(ASO-GalNAc抱合体)を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subcutaneous administration'>皮下投与</span>"] --> B["肝細胞に取り込まれPKK mRNAに結合"]
    B --> C["RNase H1がPKK mRNAを分解"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prekallikrein'>プレカリクレイン</span>(PKK)タンパク質の産生が減少"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasma kallikrein'>血漿カリクレイン</span>への変換が減少"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high molecular weight kininogen'>高分子キニノーゲン</span>の切断・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bradykinin'>ブラジキニン</span>産生が抑制される"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular permeability'>血管透過性</span>の亢進が抑えられ発作が予防される"]

💡 GalNAc抱合が「肝臓に届ける」仕組みである。 (GalNAc)は肝細胞のアシアロ受容体に高い親和性で結合するため、したASOを効率よく肝細胞へ送り込める。PKKは主に肝臓で産生されるため、このの仕組みがそのまま治療効果につながる。

薬物動態

項目 値・特徴
吸収 後、の中央値は約2時間1
分布 肝臓・腎皮質に主に分布。98%超1
⭐ 終末相で約1か月(初期の相は約5時間)——4週または8週に1回というの長さの根拠1
代謝 オリゴヌクレオチド部分はヌクレアーゼで分解。酵素の基質ではない(代謝物の一部が基質)1
排泄 排泄は投与量の1%未満1

⭐ 半減期が約1か月と長いことが、(:約17日)よりもさらにを延ばせる根拠になっている。

適応

12歳以上の成人・小児における(HAE、I型・II型)発作の長期予防()1。急性発作そのものの治療()には用いない。

24週間のOASIS-HAE試験(90例)では、4週ごとに1回投与した群のHAE発作率(4週あたり)が比81%減少(LS平均0.44 vs 2.26)、8週ごと群でも55%減少した。週4〜24で発作が一度も起きなかった患者の割合は4週ごと群53%、プラセボ群9%であった2。

用法・用量

80 mgを4週ごとにする。8週ごとの投与も考慮可能である1。または介助者による投与が想定されている。投与を忘れた場合は気づいた時点でできるだけ早く投与し、以降は直近の投与日を基準に元のスケジュールへ戻す1。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤またはに対する重篤な過敏反応(アナフィラキシーを含む)の既往1
  • ⚠️ アナフィラキシーを含む過敏反応が報告されている。 全身性皮疹、呼吸困難、胸痛、口周囲の腫脹などの症状が出た場合は投与を中止し、適切な処置を行う1
  • 中等度・重度のでは使用は推奨されない1
  • ⚠️ の低下が観察される。 OASIS-HAE試験では平均9.6%の低下がみられたが、50,000/mm3未満に至った症例は無く、出血イベントとの関連も認められていない1
  • (・・γ-GTP)の上昇がみられることがあるが、多くはの3倍未満にとどまり治療継続中に安定化する1
  • では胎盤を通過しないことが確認されているが、ヒトでの妊娠中投与のデータは無い1

副作用

頻度 内容
高頻度(5%以上) 注射部位反応(4週ごと群24%、紅斑・・疼痛・掻痒・など)、、尿路感染、1
低下(平均9.6%減少)、・・γ-GTP上昇(多くは3×未満)1
重篤・まれ アナフィラキシーを含む過敏反応1

まとめ

  • (PKK)のmRNAを標的とするで、RNase H1を介したmRNA分解によりタンパク質の産生そのものを減らす。「できたタンパク質を中和する」(・)とは一段上流の発想。
  • 12歳以上のHAE(I型・II型)発作の長期予防薬。80 mgを4週ごと(8週ごとも可)にする。
  • 終末相は約1か月と長く、の長さの根拠になっている。
  • OASIS-HAE試験でHAE発作率を比81%(4週ごと投与)減少させた。急性発作の治療には用いない。
  • 禁忌は本剤への重篤な過敏反応の既往のみ。低下・のモニタリングと、アナフィラキシーへの注意が必要。

出典

  1. 1.DAWNZERA (donidalorsen) injection, for subcutaneous use — Full Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration・2025)米国添付文書(初回承認2025年、改訂2025年8月)を確認した。donidalorsenはPKK(プレカリクレイン)mRNAを標的とするASO-GalNAc抱合体で、RNase H1を介したPKK mRNAの分解によりPKKタンパク質産生を減少させ血漿カリクレイン活性化とブラジキニン産生を抑制すること、適応が12歳以上の成人・小児における遺伝性血管性浮腫(HAE)発作の発症抑制(長期予防)であること、用法及び用量が80mgを4週ごとに皮下投与、8週ごとの投与も考慮可能であること、禁忌が本剤または添加物への重篤な過敏反応の既往のみであること、警告としてアナフィラキシーを含む過敏反応があること、中等度・重度の肝機能障害では使用は推奨されないこと、最も多い副作用(頻度5%以上かつプラセボより多い)が注射部位反応(4週ごと群24%)・上気道感染・尿路感染・腹部不快感であること、血小板数低下(平均9.6%減少、50,000/mm3未満の症例なし)と肝酵素上昇(多くは3×ULN未満で安定化)が観察されたこと、終末相消失半減期が約1か月・初期分布相半減期が約5時間であること、CYP酵素の基質ではないこと(一部代謝物がCYP3A4基質)、尿中未変化体排泄は投与量の1%未満であること、妊娠中の動物実験で胎盤を通過しないことが確認されたことを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.DAWNZERA (donidalorsen) — Clinical Studies (OASIS-HAE, NCT05139810)(U.S. Food and Drug Administration・2025)24週間の多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照試験OASIS-HAE(NCT05139810、90例、12歳以上のI型・II型HAE、run-in期に確認発作2回以上)で、週0〜24のHAE発作率(4週あたり)のLS平均が80mg4週ごと群0.44・80mg8週ごと群1.02・プラセボ群2.26であり、プラセボに対する減少率が4週ごと群81%(95%CI 65-89)・8週ごと群55%(95%CI 22-74)であったこと(いずれも統計学的有意)、中等症・重症発作率の減少率が4週ごと群89%・8週ごと群41%であったこと、週4〜24で発作ゼロだった患者割合が4週ごと群53%・8週ごと群35%・プラセボ群9%であったことを確認した閲覧 2026-09-05