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Drug Atlas · B1 Antiplatelet drugs / 抗血小板薬

低分子デキストラン

low molecular weight dextran

分類
Plasma volume expanders / 血漿増量薬Antiplatelet drugs / 抗血小板薬
科目
OtorhinolaryngologyNeurology
トピック
Ménière’s syndrome and Ménière’s disease. Therapeutic optionsG1-03: Differential diagnosis of vertigo and dizziness
承認適応
凍傷
監視検査値
ヘマトクリット

🧠 全体像:(LMD、平均分子量約40,000)は、もともとショックの補助治療・の液・術後予防のために使われてきた(血漿増量薬)である。を増やして血液を薄めるだけでなく、赤血球の凝集を防ぎ、血小板の性を下げ、フィブリンをもろく線溶されやすい構造に変えるという複数の効果を併せ持つ。この「抗血栓作用のある輸液」という性格ゆえに、の治療ではやが使えないときの代替として弱い推奨で位置づけられている。

薬効群の中での位置づけ

効果 内容
血漿増量 により血管内に水分を保持し、を増やす()
赤血球への作用 赤血球表面の陰性を維持・強化し、赤血球同士の凝集()を防ぐ
の低下 上記によりが下がり、末梢の微小循環を通過しやすくなる
抗血栓作用 血小板の性を抑制し、フィブリンの構造を変化させて線溶を受けやすくする(抗凝固薬としての作用ではない)

⚠️ 抗凝固薬(ヘパリンなど)と混同しない。 はを直接阻害するのではなく、血小板の性抑制とフィブリン構造の変化という間接的な機序でを妨げる1。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='LMW dextran'>低分子デキストラン</span>(平均分子量約40,000)を静注"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oncotic pressure'>膠質浸透圧</span>により血管内に水分を保持"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasma volume'>血漿量</span>増加・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemodilution'>血液希釈</span>"]
    A --> D["赤血球表面の陰性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='charged'>荷電</span>を維持"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemagglutinating'>赤血球凝集</span>の抑制・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood viscosity'>血液粘度</span>低下"]
    A --> F["血小板の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adhesion'>粘着</span>性を抑制"]
    F --> G["フィブリン構造が変化し、線溶を受けやすくなる"]
    C --> H["末梢微小循環の血流改善"]
    E --> H
    G --> H
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='frostbite'>凍傷</span>など<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral ischemia'>末梢虚血</span>組織での<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microthrombi'>微小血栓</span>形成を抑える"]

💡 1つの薬が「輸液」と「」の二役を兼ねる。 血漿増量による血流改善と、血小板・フィブリンに対する直接的な作用の両方が組み合わさって、末梢のに効くという発想である1。

適応

米国添付文書の適応は次の3つである1。

  1. 出血・熱傷・手術・外傷によるショックの補助治療
  2. ()の液
  3. 股関節手術などの高リスク手術患者における予防

⚠️ ・めまいの分野では、逆に「もう使わない薬」として登場する。 授業ノートは、やルーチンのを・回転性めまいの現行標準治療ではないと位置づけている——という発想自体は共通するが、これらの領域での使用は古い資料の記載であり、現在の適応ではない。本ノートで扱うへの使用とは、同じ「微小循環を改善する」という発想を共有しつつも、適応としての現在地はまったく別という点を混同しない。

⭐ では、の代替として位置づけられる。 Wilderness Medical Society 2024年版ガイドラインは、()やが使えないか適さない場合にを投与することを弱い推奨・低品質エビデンスとしている。根拠はによる抗血栓作用で、アナフィラキシーのリスクは低く出血リスクも最小限であり、それらを上回る便益があるとされる2。における具体的な用量はこのガイドラインには示されていない。

用法・用量

米国添付文書の一般的な用量は次のとおりである(に特化した用量ではない)1。

適応 用量
ショック 成人・青年:最初の24時間で総量20 mL/kgを超えない。最初の10 mL/kgは可。24時間を超えて継続する場合は1日10 mL/kgまで、最長5日間
予防 手術当日500〜1,000 mL、以後2〜3日間は1日500 mLを追加投与。必要なら最長2週間継続
小児 乳児:5 mL/kg、年長児:10 mL/kg

禁忌・注意

  • 禁忌:への過敏症の既往、著明な止血異常、著明な心不全、高度の乏尿または1
  • ⚠️ 重篤・致死的なが投与初期に起こりうる。 特に未使用者でリスクが高く、の1()を先行投与してリスクを下げる方法が推奨される1。
  • ⚠️ のリスク。 尿量をモニタリングし、腎機能低下患者では推奨用量を超えないようにする1。
  • が一過性に延長しうるため、は30%以上を維持するよう管理する1。
  • 循環・肺水腫のリスクがあり、心不全のある患者では注意する1。

副作用

頻度 内容
軽度 軽度の反応
重篤 重篤な、全身性蕁麻疹、、喘鳴、低血圧、悪心・嘔吐

米国には1964年以降、起因性が94例報告されている1。

まとめ

  • (LMD、平均分子量約40,000)は、血漿増量・抑制・低下・抑制という複数の効果を併せ持つ。
  • ⚠️ 抗凝固薬ではない。 血小板の性抑制とフィブリン構造の変化という間接的な機序でを妨げる。
  • はショックの補助治療・の液・予防の3つ。
  • ⭐ では、・が使えない場合の代替として弱い推奨で位置づけられる(による抗血栓作用が根拠)。
  • 重篤な・・・循環に注意する。

出典

  1. 1.LMD IN DEXTROSE / LMD IN SODIUM CHLORIDE (dextran 40) injection, solution — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed/Hospira, Inc.)・2018)「Revised: 10/2018」の添付文書を取得して確認した。10% LMD(デキストラン40)が、平均分子量約40,000(80%が10,000〜90,000)の低分子デキストランを5%ブドウ糖液または0.9%塩化ナトリウム液に溶解した人工膠質液で、薬理学的には「血漿増量薬(plasma volume expander)」に分類されること、適応が①出血・熱傷・手術・外傷によるショックの補助治療、②体外循環のプライミング液、③股関節手術など高リスク手術患者の静脈血栓症予防の3つであること、作用機序が血漿量増加による血液希釈、赤血球の陰性荷電維持による凝集抑制、血液粘度の低下という複数の効果の組み合わせであり、血栓予防については抗凝固薬としてではなく血小板粘着性の抑制とフィブリン構造の変化(線溶を受けやすい脆いフィブリン網の形成)によること、用量がショックでは成人・青年で最初の24時間に20 mL/kgを超えず最初の10 mL/kgは急速投与可、24時間を超えて継続する場合は1日10 mL/kgまでで最長5日間、血栓症予防では手術当日500〜1,000 mL・以後2〜3日間1日500 mLを追加し必要なら最長2週間継続すること、小児は乳児5 mL/kg・年長児10 mL/kgであること、禁忌がデキストラン過敏症・著明な止血異常・著明な心不全代償不全・高度の乏尿または無尿であること、警告として投与初期(特にデキストラン未使用者)に重篤・致死的なアナフィラキシー様反応が起こりうるためデキストラン1(ハプテン)の予防的投与が推奨されること、浸透圧性腎症のリスクがあり尿量モニタリングと腎不全患者での過量投与回避が必要なこと、出血時間の一過性延長がありヘマトクリットを30%以上に保つべきこと、循環過負荷・肺水腫のリスクがあり心不全患者では注意が必要なことを確認した。閲覧 2026-09-17
  2. 2.What Is New in Altitude- and Cold-Related Illnesses of Travel: Appraisal and Summary of the Updated Guidelines from the Wilderness Medical Society(International Journal of Environmental Research and Public Health・2025)DOIをCrossrefで解決し、題名・誌名・22巻2号284・2025年2月14日が一致することを確認したうえで、Europe PMCの全文(PMC11855094)を読んだ。2024年改訂のWilderness Medical Society凍傷ガイドラインが、全身療法(血栓溶解療法・イロプロスト)が使えないか適さない場合の代替として低分子デキストラン(LMWD)の投与を「弱い推奨・低品質エビデンス」で挙げていること(逐語 "LMWD should be administered when systemic therapies, such as thrombolytics or iloprost, are not available or not feasible (weak recommendation, low-quality evidence).")、根拠が動物実験による抗血栓作用であること、アナフィラキシーのリスクは低く出血のリスクも最小限で、それらを上回る便益があるとされていることを確認した。用量は本ガイドラインでは示されていない。閲覧 2026-09-16