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Lab values · Published

ツァンク試験

Tzanck smear

別名
Tzanck試験ツァンク塗抹
臓器系
皮膚感染症
科目
DermatologyPathology
トピック
皮膚科 1-14:単純ヘルペスと帯状疱疹病理学 C/100:水疱性皮膚疾患(天疱瘡・水疱性類天疱瘡・疱疹状皮膚炎)

🧠 全体像は、水疱底をした検体をその場で染色して顕微鏡で見るである。安価で数分以内に結果が出る一方、感度は病期・検体採取の質・検者の熟練度に強く左右され、陽性でもHSVとVZVを区別できない。現代の位置づけは「確定検査ではなく、結果を待つ間の簡便な補助」であり、確定は(PCR/NAAT)に委ねる。もう一つ知っておくべきことは、この検査が2つの異なる文脈で使われる点である——ヘルペス群(・水痘・帯状疱疹)のを探す文脈と、(ツァンク細胞)を探す文脈は、同じ手技・同じ名前でありながら見ている細胞像が違う。

何を検出しているか

に塗抹し、・ライト染色・などで染めてで観察する12

  • 検体の選び方と手技:新しい(3日未満が目安の)水疱を選び、屋根を鈍のや器具の縁で除去してをこすり取る——屋根ではなく底の細胞を見る点が要となる。治癒過程の病変やした病変は陽性率が落ちる1
  • 染色後に探すもの:ヘルペス群では風船様に膨化したと、が辺縁に押しやられたすりの核・好酸性のではを失った単核の(ツァンク細胞)——大型・円形で核が腫大し、細胞質辺縁がより濃く染まる12
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fresh'>新鮮</span>な水疱を選ぶ<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='crusted lesion'>痂皮化病変</span>は避ける"] --> B["屋根を除去し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='base of a vesicle'>水疱底</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stroke/scratch (stimulus)'>擦過</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='slide'>スライド</span>に塗抹し<br>ギムザ/ライト/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='toluidine blue stain'>トルイジンブルー染色</span>"]
    C --> D{"何が見えるか"}
    D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multinucleated giant cell'>多核巨細胞</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ground-glass nucleus'>すりガラス様核</span>"| E["ヘルペス群を示唆<br>HSVとVZVは区別できない"]
    D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acantholytic cell'>棘融解細胞</span>(単核)"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pemphigus group'>天疱瘡群</span>を示唆"]

天疱瘡との関係——同じ名前が指す2つの検査

」という名前の混乱の由来はここにある。1947年にアルノー・ツァンクが水疱症の診断へ細胞診を導入した際、対象は水疱症全般だった1。以来この名前は、ヘルペス群のを探す文脈と、を探す文脈の両方に使われ続けている。

ヘルペス群(・水痘・帯状疱疹)
見る細胞 単核の(ツァンク細胞)
機序 ウイルスによる によるの喪失
陽性が意味すること HSV・VZVいずれかの感染(型は区別できない) を示唆するが確定には至らない
確定に要する検査 型特異的 生検+

⚠️ 」と「」を混同しない。 同じ検体・同じ染色でも見ている細胞像はまったく別物であり、片方の所見をもう片方の病態の根拠として扱ってはならない。

陽性の意味

  • ヘルペス群が疑われる水疱で陽性・水痘・帯状疱疹のいずれかを示唆するが、この時点でHSVとVZVを区別できない21。型を確定し治療・感染対策を決めるには、型特異的なへ進む。
  • が疑われる水疱で陽性を支持する所見だが、単独では確定診断にならない。を基準とした先行研究では感度81%・特異度87.5%が報告されているが3、単一研究の数値であり施設・検者によって変わりうる。確定には生検とを要する。

陰性の意味

陰性は除外にならない。感度は病期・検体採取の質・染色の質・検者の熟練度に強く依存し、とくに古い病変やした病変では偽陰性が増える1。臨床像がヘルペス群やを強く示唆するなら、陰性の結果だけで除外せず次の検査に進む。

⚠️ 測定上の注意

  • 検者の熟練度に強く依存する。 細胞形態の判読は主観が入りやすく、経験の浅い検者では偽陰性・偽陽性のいずれも増えうる3
  • ・膿疱化した病変では陽性率が落ちる。 発症早期のな水疱を選び、乾燥・が進んだ病変での採取は避ける1
  • 二次的な細菌感染を合併すると細胞像が乱れ、判読がさらに難しくなる。
  • ⚠️ 判定に自信が持てなければ、結果を待たずへ進む。 陰性・不明瞭な所見のままを確定させない。

次に進むべき検査

flowchart TD
    A["水疱性病変を疑う"] --> B{"新生児・免疫不全・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='central nervous system manifestations'>中枢神経症状</span>を伴うか"}
    B -->|"あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Tzanck smear'>ツァンク試験</span>を待たず<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='nucleic acid amplification test, NAAT'>核酸増幅検査</span>を優先"]
    B -->|"なし"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Tzanck smear'>ツァンク試験</span>でスクリーニング"]
    D --> E{"所見は?"}
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multinucleated giant cell'>多核巨細胞</span>"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='type-specific nucleic acid amplification test'>型特異的核酸増幅検査</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='direct immunofluorescence (DIF) / direct fluorescent antibody test (DFA)'>直接蛍光抗体法</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='viral culture'>ウイルス培養</span>で型を確定"]
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acantholytic cell'>棘融解細胞</span>"| G["生検+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='direct immunofluorescence'>直接免疫蛍光法</span>で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pemphigus group'>天疱瘡群</span>を確定"]
    E -->|"陰性・不明瞭"| C

まとめ

  • を染色して顕微鏡で見るで、安価・即時だが感度は病期・手技・検者に強く依存する。
  • ヘルペス群(・水痘・帯状疱疹)ではを、では(ツァンク細胞)を探す——同じ名前の検査だが見ている細胞像も臨床的意味もまったく違う。
  • 陽性でもHSVとVZVを区別できず、型の確定・の決定には型特異的なを要する。
  • 陰性は除外にならない。・検者の熟練度不足は偽陰性の主な原因になる。
  • 新生児・免疫不全・を伴う場合は、の結果を待たずを優先する。

出典

  1. 1.Tzanck smear(DermNet NZ・2015)水疱の屋根を除いて底を擦過する手技、Giemsa染色・トルイジンブルー染色などの染色法、HSV/HZVでは多核巨細胞と好酸性封入体を認めるがHSVとVZVを区別できないこと、天疱瘡では棘融解細胞を認めること、培養・PCR・組織診・電子顕微鏡の普及により現在はあまり実施されなくなったことを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Tzanck smear: A useful diagnostic tool(Indian Journal of Dermatology, Venereology and Leprology (Gupta LK, Singhi MK)・2005)3日未満の新鮮な水疱を選び屋根を除いて底を擦過する手技、Giemsa染色を中心とした染色法、ヘルペス群の多核巨細胞(風船様変性・核の鋳型状嵌合)と天疱瘡の棘融解細胞(Tzanck細胞)の細胞形態の違い、細胞診単独ではHSVとVZVを鑑別できないこと、1947年にTzanckが水疱症の診断のため細胞診を導入した経緯を確認した。閲覧 2026-08-03
  3. 3.Cytomorphological Spectrum and Diagnostic Utility of Tzanck Smear Cytology in Vesiculobullous Skin Lesions(Cureus (Gautam P, Gupta B, et al.)・2025)ツァンク試験の信頼性が手技だけでなく検者の熟練度に依存すること、天疱瘡群では多核巨細胞がまれで棘融解細胞が主体、VZVでは多核巨細胞が特徴的という所見の対比、先行研究(224例)で天疱瘡診断の感度81%・特異度87.5%(組織診・デスモグレイン抗体との比較)が報告されていることを確認した。閲覧 2026-08-03