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Lab values · Published

尿素呼気試験

Urea breath test

別名
UBT
臓器系
消化器感染症
科目
Internal MedicineMedical Microbiology
トピック
内科学 L-45:消化性潰瘍・Helicobacter pylori感染微生物学 2/17:カンピロバクター属とヘリコバクター・ピロリ

🧠 全体像:は、H. pyloriが持つ強力なウレアーゼ活性を、体外から服用させた標識尿素の分解産物として呼気に取り出して見る検査である。菌体そのものを直接検出するわけではないが、菌が今も生きて働いているかを反映するため、血清抗体では区別できない「現感染か既感染か」を判定できる——と並ぶ診断・の標準法である。ただしウレアーゼ活性を見る検査である以上、や菌のウレアーゼ活性そのものを変える薬剤(・・抗菌薬・)の影響を強く受ける——この一点が、他のH. pylori検査法との使い分けを決める。

何を測っているか

¹³Cで標識した尿素(¹³C-尿素)を内服すると、胃内に*H. pylori*が存在する場合、その強いウレアーゼ活性により¹³C-尿素が標識(¹³CO₂)とアンモニアに分解される。生じた¹³CO₂はから吸収されて血中に入り、呼気中に排泄される。は、この呼気中のに含まれる¹³Cの増加率(ベースラインからの差分、単位は‰)を測定する1。

標識には放射性の¹⁴Cと非放射性の¹³Cがあるが、が無く小児・妊婦にも使える¹³C法が現在の国際的な主流である(2015年の対象23試験のうち14試験・61%が¹³C法)2。内視鏡による生検を伴わず、全体のH. pylori存在を反映する面診断法である点が、一か所の生検に依存する・(点診断)との本質的な違いになる1。

基準値と単位

結果は千分率(‰)で表され、は除菌前後で異なる。実臨床で使用される試薬にはユービット錠®とピロニック錠®があり、それぞれ個別のを用いる必要がある1。

場面 感度 特異度
前 2.5〜3.5‰(2.5‰使用時) 96.2〜100% 83.3〜100%
後 3.5〜4.0‰(3.5‰使用時) 66.7〜100% 95.8〜98.8%

後はを引き上げても感度の幅が大きく下がる(66.7%まで低下しうる)——これは治療後にそのものが減少し、生き残った菌のウレアーゼ活性シグナルが弱くなるためで、次項の「測定上の注意」で扱う偽陰性の一因になる1。国際的な(23試験、大部分が除菌前診断が対象)ではプール感度0.96(95%CI 0.95〜0.97)・特異度0.93(95%CI 0.91〜0.94)、 0.985と報告されており2、日本のガイドラインが示す除菌前の数値帯とおおむね整合する。

陽性・陰性の意味

結果 意味
陽性 活動性の現感染(除菌前)、または除菌不成功(除菌後)
陰性 未感染(除菌前)、または除菌成功(除菌後)。ただし近傍の結果・薬剤による偽陰性を除外できていない場合は判定を保留する

⚠️ 近傍の結果は判定を急がない。 で近傍の値が出た場合、偽陽性の可能性があるため2〜3か月以上間隔を空けて再検することが推奨される(この再検査は保険適用外)1。

⚠️ 測定上の注意

⚠️ 偽陽性の原因は「H. pylori以外の」。 ウレアーゼ活性陽性の口腔内細菌・腸内細菌の影響で偽陽性となることがある。とくにでは、H. pylori以外のウレアーゼ活性陽性菌が胃内に増えることで偽陽性が生じうる1。

⚠️ は薬剤ごとに異なる。 抗菌薬や・の内服中は、胃内pHの上昇や静菌作用によりウレアーゼ活性が低下し偽陰性となりうる。抗菌薬は4週間、・は2週間のが必要とされる。この2週間という期間は、中にが陰性だった感染者が2週間の時点で全例再陽性になったという報告に基づく。はよりも偽陰性を生じさせる頻度が高いとも報告されている1。も偽陰性の原因になり、Maastricht VI/Florence合意は除菌後4〜6週の短期検査で抗菌薬とを用いないことを推奨し、は検査の14日前に中止すべきとしている(診断WG Statement 10、合意率96%、Grade A1)3。

⚠️ の時期は薬内服終了後4週以降(日本のガイドラインの表1・Maastricht VI/Florenceのいずれも4〜6週以降としている)1。この期間を守らずに早期判定すると、菌が生き残っていても偽陰性となり「除菌できた」と誤判定しうる。

位置づけ/次に進むべき検査

とは、の診断にもにも使える標準法という点で同格であり、日本ヘリコバクター学会のガイドラインもこの2法を並列に推奨する1。どちらを選ぶかは施設の設備・患者の状況によることが多いが、両者にはできない違いがある。

観点
検出しているもの ウレアーゼ活性(間接的) そのもの(直接的)
必要(2週間) 国産の主要キットは影響を受けにくく不要(2024年版で明記)
必要(2週間。より偽陰性を生じやすい) キットごとの検証が必要とされ、不要は確立していない
抗菌薬 必要(4週間) 必要(4週間、菌量そのものの減少を反映するため)
検体・手技 呼気採取、絶食・体位の指定あり 採便のみ

⚠️ 「が必要」と一括りにしない。 内服を中断できない患者では、2週間を要するより、国産キットなら内服のまま実施できるの方が実務上有利になる場面がある。ただしについてはでもキットごとの影響検証が必要とされ、不要と確立しているわけではない1。

血清抗体とは根本的に異なる——血清抗体は既感染で作られた抗体を見るため何年も陽性が残りうるが、は現在生きている菌のウレアーゼ活性を見るため、除菌成功後は速やかに陰性化する。この違いにより、血清抗体はに使えないが、はの標準法になる。内視鏡時に限られる・に対しては、非侵襲で内視鏡を要さず、全体を反映する点が利点になる。

経時変化とモニタリング

は単回検査で判定する点検査であり、血清抗体のようにな低下を追跡する検査ではない。で陰性と出ても感染を強く疑う場合は、保険診療上さらに他の検査方法で1回のみ再検査が認められている1。近傍の結果は前述のとおり2〜3か月以上あけて同一検査で再検する。薬終了直後に判定してしまうと、生き残った菌の代謝がまだ回復していないだけの偽陰性を「治癒」とするリスクがあるため、期間を空けることが唯一の対策であり、頻回検査で代替することはできない。

まとめ

  • は、¹³C標識尿素を内服し、H. pyloriのウレアーゼ活性で生じた¹³CO₂を呼気から検出する非侵襲的な面診断法である。
  • ・感度・特異度は除菌前後で異なる(除菌前2.5‰で感度96.2〜100%・特異度83.3〜100%、除菌後3.5‰で感度66.7〜100%・特異度95.8〜98.8%)。国際的なではプール感度0.96・特異度0.93と報告されている。
  • の診断にもにも使える標準法であり、と並ぶ。
  • 偽陰性の原因は薬剤による不足が大きい——抗菌薬4週間、・P-CAB2週間のが必要で、はより偽陰性を生じやすい。も偽陰性の原因になる。
  • (国産キット)と異なり、使用中でも実施可能というわけにはいかない——この要件の違いが、施設・患者ごとの使い分けを決める(についてはでもキットごとの検証待ちで、不要とは確立していない)。
  • は薬内服終了後4週以降に行い、近傍の結果は2〜3か月以上あけて再検する。

出典

  1. 1.H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024 第1章「診断」(日本ヘリコバクター学会・2024)PDF全文をpdftotextで抽出して確認した。CQ1-1は除菌治療前後の尿素呼気試験(UBT)を「推奨の強さ:強い(合意率100%)、エビデンスの確実性:B」として推奨する。原理は¹³C標識尿素を内服し、胃内にH. pyloriが存在すればそのウレアーゼ活性で生じた¹³CO₂が血中を経て呼気中に排泄されるのを検出するというもので、胃粘膜全体のH. pyloriの存在を反映する面診断法であること。除菌治療前の適切なカットオフ値は2.5〜3.5‰と報告され、2.5‰をカットオフとすると感度96.2〜100%・特異度83.3〜100%であったこと。除菌治療後の適切なカットオフ値は3.5〜4.0‰と報告され、3.5‰をカットオフとすると感度66.7〜100%・特異度95.8〜98.8%であったこと(実臨床で使う試薬にはユービット錠®とピロニック錠®があり、個別のカットオフ値を用いる必要があるとされる)。ウレアーゼ活性陽性の口腔内細菌・腸内細菌や、自己免疫性胃炎で増えるH. pylori以外のウレアーゼ産生菌により偽陽性となりうること。抗菌薬・PPI・P-CABの内服中は偽陰性となりうるため、抗菌薬は4週間、PPIとP-CABは2週間の休薬が必要とされること(BQ1-6は、PPI休薬中のUBT陰性感染者が休薬2週間で全例再陽性になったとの報告を根拠に挙げ、P-CABはPPIよりも尿素呼気試験の偽陰性を生じさせる頻度が高いとする)。除菌判定は除菌治療薬内服終了後4週以降(BQ1-7の序論および表1では4-6週以降)に行い、カットオフ値近傍の結果は偽陽性の可能性があるため2-3か月以上間隔を空けて再検することが推奨されること。BQ1-6の表1は尿素呼気試験と迅速ウレアーゼ試験を「2週間以上の休薬が必要」に分類する一方、国産キットを用いる便中抗原測定法・培養法・鏡検法・抗体法は「影響を受けにくい」に分類していること。閲覧 2026-09-08
  2. 2.Accuracy of urea breath test in Helicobacter pylori infection: meta-analysis(World Journal of Gastroenterology・2015)尿素呼気試験のプール感度は0.96(95%CI 0.95〜0.97)、特異度は0.93(95%CI 0.91〜0.94)でAUCは0.985であったこと、対象23試験のうち14試験(61%)が¹³C法、9試験(39%)が¹⁴C法を評価していたことを確認した(既存ノート `topics/medical-microbiology-y2/2-17-campylobacter-genus-and-helicobacter-pylori.md` の既存claimを踏襲し、本ノートでは国際的なメタ解析値として国内ガイドラインの数値と併記する)。閲覧 2026-09-08
  3. 3.Management of Helicobacter pylori infection: the Maastricht VI/Florence consensus report(Gut(European Helicobacter and Microbiota Study Group ほか、29か国41名の専門家)・2022)診断ワーキンググループのStatement 10(合意率96%、Grade A1)が、除菌後4〜6週の短期フォローアップ検査では検査の精度を保つため抗菌薬とビスマス製剤を用いず、PPIは検査の14日前に中止すべきとしていることを確認した(既存ノート `diseases/gastritis.md`・`diseases/peptic-ulcer-disease.md` 等の既存claimを踏襲)。閲覧 2026-09-08