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Microbe Atlas · 細菌

Nutritionally variant streptococci

栄養要求性レンサ球菌

分類
G+ 球菌 / Gram+ cocci
性状
Gram陽性 (G+)球菌 Cocci
科目
Cardiology, Heart Surgery, Angiology, Vascular Surgery
トピック
A-10: Infective Endocarditis
原因となる疾患
感染性心内膜炎

🧠 全体像:かつて「」と一括りにされ、Streptococcus adjacens・Streptococcus defectivusという学名まで与えられていた菌群が、その後Abiotrophia属とGranulicatella属という別属に再分類された——属は分かれても、臨床的に束ねて扱うべき理由は今も変わらない。核心は名前どおり「」にある。(ビタミンB6)またはL-システインが無ければ標準培地で発育できず、この一点がの代表的な培養困難菌群としての立ち位置を作っている。

微生物学的な特徴

でに配列し、形態はViridans群レンサ球菌とよく似る。かつては生化学的性状の近さから同じ「レンサ球菌」として扱われStreptococcus adjacens・Streptococcus defectivusとされていたが、その後Abiotrophia属(A. defectiva)とGranulicatella属(G. adiacens・G. elegansなど)の2属に再分類された。

⭐ 同定・培養の核心はただ一つ、である。 (ビタミンB6)またはL-システインを補充しない標準の血液寒天培地ではコロニーを形成しない。黄色ブドウ球菌など、これらの栄養素を産生する他の菌のコロニーのすぐそばだけ小さな衛コロニー(現象)を作るという古典的な性質が、歴史的な同定の手がかりになってきた。

病原性の仕組み

flowchart TD
    A["Abiotrophia属・Granulicatella属<br>(旧称:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fastidious (nutritional requirement)'>栄養要求性</span>レンサ球菌)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pyridoxine (vitamin B6)'>ピリドキシン</span>(ビタミンB6)または<br>L-システインを必須とする"]
    B --> C["補充のない標準培地では発育不能"]
    C --> D["血液培養での発育が遅延・不良"]
    D --> E["培養陰性・培養困難な<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='infective endocarditis, IE'>感染性心内膜炎</span>の代表的原因群"]
    A --> F["口腔・消化管・泌尿生殖器の常在菌"]
    F --> G["歯科処置などによる<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='transient bacteremia'>一過性菌血症</span>"]
    G --> H["損傷した弁内皮への定着"]
    H --> I["亜急性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infective endocarditis, IE'>感染性心内膜炎</span>"]

Viridans群レンサ球菌と同様、莢膜を持たず付着によって損傷弁に居座る戦略をとる。⚠️ ただし「Viridans群と同じように扱ってよい」わけではない。 国際的な症例集積では、部合併症(・・瘻孔)がViridans群レンサ球菌による心内膜炎より有意に多いことが確認されている(の頻度差は有意ではない)1。💡 という一点が、宿主内での抗菌薬への応答にも影を落とすと考えられている——でも菌の増殖・代謝が等の局所濃度に左右されうるため、後述のとおりペニシリン単剤では治療に難渋しやすい。

感染経路と疫学

  • Viridans群レンサ球菌と同じく、口腔・消化管・泌尿生殖器のに由来するが主体で、歯科処置などを契機とするから心臓へ達する
  • 施設内の全体に占める割合は1.51%(2000〜2015年)で、Viridans群レンサ球菌によるもののおよそ10分の1の頻度、群によるものより高い頻度と位置づけられる1
  • の合併はGranulicatella属で有意に多く(28.9% 対 Abiotrophia属10.5%)、の罹患はAbiotrophia属で有意に多い(P<0.001)という属間の偏りがある1

起こす疾患

疾患 特徴
(亜急性) 培養陰性・培養困難な心内膜炎の代表的原因群の一つ2。新規心不全がいずれの属でも最も頻度の高い合併症で、部合併症(・・瘻孔)はViridans群レンサ球菌より多い1
菌血症 心内膜炎以外のとしても分離される

死亡率はAbiotrophia属13.2%、Granulicatella属5.3%で統計的な有意差はなく、死亡に関連する因子は患者の年齢と新規心不全の発症であった1。

診断

⚠️ 「培養陰性=原因不明」ではなく「発育に条件が要る」だけである。 またはL-システインを補充した培地、あるいはでなければ発育しないため、標準的な血液培養だけでは検出が遅れたり陰性に終わったりしうる2。臨床的に心内膜炎を疑うのに通常の培養が陰性のときは、この菌群を念頭に検査室へ菌の可能性を伝え、補充培地での再培養や現象の確認、必要に応じて16S の・を検討する。

治療と予防

⭐ 感受性は菌種によって逆転するほど不均一で、「ペニシリンが効くはず」と決め打ちできない。 132株の解析では、ペニシリン感受性はGranulicatella adiacensで38.9%・Abiotrophia defectivaで10.8%とA. defectivaのほうが低い一方、セフトリアキソン感受性はA. defectivaで100%・G. adiacensで43.3%と逆にG. adiacensのほうが低いという、菌種間で立場が入れ替わる結果であった3。

  • 耐性6%、耐性51%、クリンダマイシン耐性10%と報告され、これらは第一選択にならない3
  • バンコマイシンは全株が感受性( 1 µg/mL)で、感受性が不確実な場面での拠り所になる3
  • 💡 感受性が菌種ごとに不均一なため、の結果が出るまではペニシリンまたはセフトリアキソン単独に絞り込まず、などアミノグリコシドを併用した広めのカバーで開始し、と感受性結果を得てから狭めるという考え方が支持される3

まとめ

  • かつて「(Streptococcus adjacens・S. defectivus)」と呼ばれていた菌群が、Abiotrophia属とGranulicatella属に再分類された。
  • 核心は(ビタミンB6)またはL-システインへの——これが無いと標準培地で発育できず、培養陰性・培養困難な心内膜炎の代表的原因群になる。
  • 心内膜炎の合併症(とくに・・瘻孔などの部合併症)はViridans群レンサ球菌より多く、死亡率はAbiotrophia属13.2%・Granulicatella属5.3%。
  • 抗菌薬感受性は菌種間で逆転するほど不均一(ペニシリンはA. defectivaで低くセフトリアキソンはG. adiacensで低い)で、バンコマイシンは全株感受性。まではアミノグリコシド併用の広めのカバーが支持される。

出典

  1. 1.Epidemiology, Clinical Features, and Outcome of Infective Endocarditis due to Abiotrophia Species and Granulicatella Species: Report of 76 Cases, 2000–2015(Clinical Infectious Diseases・2018)施設内症例12例と文献報告64例(Abiotrophia 38例・Granulicatella 38例)を合わせた計76例の解析。施設内では2000〜2015年の感染性心内膜炎全体の1.51%を占めた。先天性心疾患の合併はGranulicatella群で有意に多く(11例・28.9% 対 Abiotrophia 4例・10.5%)、僧帽弁の罹患はAbiotrophia群で有意に多かった(P<0.001)。新規心不全の発症がいずれの群でも最も頻度の高い合併症で、弁輪部合併症(弁輪部膿瘍・仮性動脈瘤・瘻孔)はViridans群レンサ球菌による心内膜炎より有意に多かった(P=0.008、なお全身性塞栓症の頻度差はP=0.34で有意差なし)。死亡率はAbiotrophia群13.2%(5例)・Granulicatella群5.3%(2例)で有意差はなく(P=0.23)、死亡に関連したのは年齢(P=0.02)と新規心不全の発症(P=0.02)であった。文献的にGranulicatella属・Abiotrophia属による心内膜炎はHACEK群による心内膜炎より頻度が高く、Viridans群レンサ球菌による心内膜炎のおよそ10分の1の頻度と位置づけられる。閲覧 2026-09-08
  2. 2.Blood Culture-Negative Infective Endocarditis: A Review(Cardiology in Review(Kaushik S, et al., 2026, DOI 10.1097/crd.0000000000001361)・2026)血液培養陰性IEが抗菌薬先行投与・発育困難菌・非感染性の類縁疾患から生じること、代表的病原体(Coxiella burnetii、Bartonella属、Brucella属、Tropheryma whipplei、真菌、栄養要求性連鎖球菌)と、血清学的検査・培養延長・切除弁組織を用いた16S/18S PCR・メタゲノム解析(mNGS)が診断収率を上げること閲覧 2026-09-08
  3. 3.Antimicrobial Susceptibilities of Abiotrophia defectiva, Granulicatella adiacens, and Granulicatella elegans(Antimicrobial Agents and Chemotherapy・2016)2008〜2014年に採取された臨床血液分離株132株(Granulicatella adiacens 90株、Abiotrophia defectiva 37株、Granulicatella elegans 5株)の感受性試験。ペニシリン感受性はG. adiacensで38.9%、A. defectivaで10.8%とA. defectivaのほうが低く、逆にセフトリアキソン感受性はA. defectivaで100%、G. adiacensで43.3%とG. adiacensのほうが低いという、菌種間で逆転した傾向を示した。レボフロキサシン耐性6%、エリスロマイシン耐性51%、クリンダマイシン耐性10%であった一方、バンコマイシンは全株が感受性(MIC90 1 µg/mL)であった。感受性がβ-ラクタムの菌種間で予測しにくいため、菌種レベルの同定が治療選択の助けになりうると結論している。閲覧 2026-09-08