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Microbe Atlas · 細菌

Viridans group streptococci

viridans群レンサ球菌

分類
G+ 球菌 / Gram+ cocciStreptococcus
性状
Gram陽性 (G+)球菌 Cocci
科目
Medical MicrobiologyPathologyPathology (Histopathology)Internal Medicine
トピック
2/3: Streptococcus pneumoniae, oral streptococci and cariogenesis. Anaerobic cocci5/5: Normal flora of the oral cavity. Microbes causing infections of the oral cavity (list)5/15: Microbiological diagnosis of bacteriaemia, endocarditis, and sepsis5/1: Bacteria causing skin and wound infections (list) and their diagnosis5/26: Normal flora of the genital tract. Pathogens of sexually transmitted diseases (list)病理学 B/33:感染性心内膜炎(急性・亜急性)病理学 C/31:唾液腺疾患組織病理 H1-097:感染性心内膜炎(僧帽弁)内科学 S-01:心炎
原因となる疾患
感染性心内膜炎口底蜂窩織炎心臓デバイス関連感染性心内膜炎脳膿瘍

🧠 全体像:「viridans(緑色)」は血液寒天培地での——コロニー周囲の緑色——に由来する通称であり、単一の菌種でもな分類群でもない。病理領域の「S. viridans」という表記も群の通称にすぎない。分子生物学的分類では・・・・などに分かれ、莢膜を持たない代わりに「付着」で居座る戦略は共通するが、その先の臨床像は群ごとに違う——・は緩徐な、は、そしてだけは膿瘍形成という異質な性格を持つ。

微生物学的な特徴

でに配列し、口腔・上気道・消化管・女性性器に常在する。を示すが莢膜を持たず、カタラーゼは陰性。

⭐ ・の2点で、同じ性の肺炎球菌(感受性・胆汁・莢膜あり)を除外できる——これが同定の核心。

群 代表菌種 臨床的性格
Mitis群 S. mitis
Sanguinis群 S. sanguinis 心内膜炎。原因菌として教えられるが下記の注記を参照
Mutans群 S. mutans
Salivarius群 S. salivarius
Anginosus群 S. anginosusほか 膿瘍形成という例外

病原性の仕組み

莢膜を持たないぶん、定着にはが要る。はでへ付着しを作る——詳細な機序はS. mutansのページに譲る。血流に入った菌は血小板・フィブリンへ直接付着して損傷弁に居座り、緩徐な疣贅形成に至る。

⚠️ だけは付着でなく組織破壊・膿瘍形成という別の戦略を持つ。 ・などの、菌血症を起こす——「viridans群だから弱毒」と一括りにしない。

⚠️ 「S. mutansとS. sanguinisがの原因菌」という覚え方には反する所見がある。 列の発症を16S 解析で追跡した研究では、S. mutansが乏しい例ではS. salivarius・S. sobrinus・S. parasanguinisが代替の酸産生菌としてと関連し、逆に*S. sanguinis*は・Neisseriaとともにの進行につれて減少した(細菌群集の多様性そのものも健常より低下した)1。⭐ は種の感染症ではなく、酸産生菌が優勢になるの生態的な偏りとして捉えるのが現在の見方である。授業では2菌種で覚えるよう求められることが多いので、両方の立場を押さえる。

感染経路と疫学

口腔・上気道・消化管・女性性器のがを機に病原化するが多い。・歯科処置・など口腔内の些細な創、あるいは好中球減少によるを契機に血流へ入る。

起こす疾患

疾患 特徴
(亜急性) ・が代表。異常弁への緩徐な定着で、S. aureusによる急性型と対をなす
が中心。機序はS. mutansを参照
・菌血症 に特徴的
好中球減少性菌血症 化学療法後のを契機に重症化しうる
・ S. aureusと並ぶ常在菌由来の

診断

血液寒天培地でのコロニーを確認し、・で肺炎球菌と鑑別する。心内膜炎が疑われる場合は抗菌薬開始前に複数セットの血液培養を採取する。

治療と予防

感染性心内膜炎の抗菌薬治療

の感受性判定は感受性が 0.12 µg/mL以下、中間が0.25〜2 µg/mL、耐性が4 µg/mL以上で、viridans群の大半は感受性である。⚠️ 同じ日本循環器学会2026年ガイドラインの中でも、推奨表は感受性を「 0.12 µg/mL未満」、非感受性を「中間 0.12 µg/mL以上0.5 µg/mL未満/耐性 0.5 µg/mL以上」と本文と違う区切りで書いており、境界値は施設の判定基準に照らして確認する2。

状況 レジメン
ペニシリン感受性・ またはアンピシリンを血液培養陰性化日から4週間。代替は・セフトリアキソン・バンコマイシン・
ペニシリン感受性・で5条件を満たす 上記β-ラクタムにを併用して2週間に短縮できる
ペニシリン感受性・ 同じβ-ラクタムを6週間。β-ラクタム使用時は初期2週間の併用も推奨
ペニシリン非感受性(中間・耐性)・ β-ラクタム4週間+初期2週間の併用
ペニシリン非感受性・ β-ラクタム6週間+を全期間併用

⭐ 2週間の短縮が許されるのは、次の5つがすべて揃うときだけである——①疣贅が10 mm以下 ②塞栓症状も遠隔のもない ③手術適応がない ④がない ⑤肝障害・腎障害がない2。

⚠️ 腎障害やがある患者ではの併用を避ける。 β-ラクタムアレルギーでも、アナフィラキシーやでなければ・セフトリアキソンへ切り替えられる(髄膜炎・を合併する例ではは中枢神経への移行が乏しいので選ばない)。重症アレルギーではバンコマイシンまたはを用い、この場合併用の利益は不明で単剤が原則である。⚠️ はviridans群の治療に用いない2。

歯科処置前の予防投与

⚠️ 対象患者の線引きが国によって違う。「欧米では」と一括りにしない。 米国心臓協会の2021年科学的声明は、2007年版の方針を変えず最も転帰が悪くなるリスクが高い群(・に用いた、心内膜炎の既往、未修復のなど)に限って予防投与を提案する——2007年以降にによる心内膜炎が増えたという説得力のある証拠が無かったためである3。これに対し日本循環器学会2026年ガイドラインは高リスク群(推奨の強さ1)に加えて群にも予防投与を提案する(推奨の強さ2、エビデンスの確実性はD)と明記している2。

リスク区分(日本循環器学会2026) 含まれる病態
高リスク 後、心内膜炎の既往、未修復の、短絡や弁逆流が残る修復後の、外科的に作成した体肺短絡、左心補助装置
上記以外の、、後天性弁膜症、、逆流を伴う、植込み型心臓デバイス、弁膜症を来した後

⚠️ 同じ病態でも国によって扱いが逆になる。 植込み型心臓デバイスは日本循環器学会ではとして予防投与の対象に入るが、米国心臓協会は感染の大半がブドウ球菌によることを理由に予防投与を提案しない群に挙げている3。小児にも成人と同じ推奨が適用される2。

発行元 経口可能 β-ラクタムアレルギー
日本循環器学会2026(処置1時間前) アモキシシリン2 g単回(小児50 mg/kg、最大2 g) クリンダマイシン600 mg・アジスロマイシン500 mg・400 mg
米国心臓協会2021(処置30〜60分前) アモキシシリン2 g単回(小児50 mg/kg) 2 g・アジスロマイシンまたは500 mg・ドキシサイクリン100 mg

経口できない場合は、日本では処置30分前にアンピシリン1〜2 g・1 g・セフトリアキソン1 gの静注(アレルギー時はクリンダマイシン600 mg)、米国ではアンピシリン2 gまたは/セフトリアキソン1 gの筋注・静注である23。

⚠️ クリンダマイシンの扱いが2つのガイドラインで逆になっている。 米国心臓協会は2021年に「歯科処置の予防投与にクリンダマイシンはもう推奨しない」と明記した——単回投与でもClostridioides difficile感染を含む反応が他剤より多く重いことを理由とする3。一方、日本循環器学会2026年ガイドラインはβ-ラクタムアレルギー時の選択肢としてクリンダマイシンを残している2。⭐ どちらの国の基準で答えるのかを、設問ごとに確認する。

まとめ

  • 「viridans」は由来の通称で、・・・・の総称。だけ膿瘍形成という例外。
  • 同定は・・・・莢膜なし——肺炎球菌との鑑別点。
  • 莢膜の代わりに付着()と血小板・フィブリン付着(心内膜炎)という「付着」戦略で常在部位に居座る。
  • 治療はペニシリンで4週間・6週間。疣贅10 mm以下など5条件を満たす例だけが併用の2週間短縮の対象になる。
  • 予防投与の対象は国で違う——米国心臓協会2021年は最高リスク群のみ、日本循環器学会2026年は群にも提案する。クリンダマイシンは米国では除外され、日本ではアレルギー時の選択肢として残っている。

出典

  1. 1.Beyond Streptococcus mutans: dental caries onset linked to multiple species by 16S rRNA community analysis(PLoS ONE・2012)Europe PMCの抄録で確認した。乳歯列のう蝕発症を16S rRNA遺伝子解析で追跡した横断・縦断研究で、Streptococcus mutansは多くの被験児で優勢だったが必ずしも存在せず、S. mutansが乏しい例ではS. salivarius・S. sobrinus・S. parasanguinisが代替の酸産生菌としてう蝕と関連したこと、う蝕の進行につれてStreptococcus mitis群・NeisseriaとともにS. sanguinisはむしろ減少し細菌群集の多様性が健常より低下したことを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.JCS 2026 Guideline on the Management of Infective Endocarditis(Circulation Journal(日本循環器学会)・2026)J-STAGEの全文PDFで確認した。ペニシリンGの感受性判定が感受性MIC 0.12 µg/mL以下・中間 0.25〜2 µg/mL・耐性 4 µg/mL以上で、viridans群レンサ球菌の大半が感受性であること。ペニシリン感受性株の第一選択がペニシリンGまたはアンピシリンで、セファゾリン・セフトリアキソン・バンコマイシン・テイコプラニンが代替薬であること。自己弁は血液培養陰性化日から4週間、人工弁は6週間投与し、人工弁ではβ-ラクタム使用時に初期2週間のゲンタマイシン併用も推奨されること。自己弁では①疣贅10 mm以下②塞栓症状・遠隔感染巣なし③手術適応なし④伝導ブロックなし⑤肝腎障害なし の5条件を満たせばゲンタマイシン併用で2週間に短縮できること。ペニシリン非感受性(中間・耐性)株では初期2週間のゲンタマイシン併用を行い、自己弁4週間・人工弁6週間(人工弁では全期間併用)とすること。重症でないアレルギーならセファゾリン・セフトリアキソンへ変更でき、アナフィラキシーなど重症アレルギーではバンコマイシンまたはテイコプラニンを選ぶこと。ダプトマイシンはviridans群の治療には用いないこと。歯科処置前の予防投与(Table 40)は処置1時間前のアモキシシリン2 g単回経口が標準で、小児は50 mg/kg(最大2 g)、β-ラクタムアレルギーではクリンダマイシン600 mg・アジスロマイシン500 mg・クラリスロマイシン400 mg、経口不能例では処置30分前のアンピシリン1〜2 g・セファゾリン1 g・セフトリアキソン1 g静注(アレルギー時はクリンダマイシン600 mg)であること。高リスク群(推奨の強さ1・エビデンスの確実性B)に加えて中等度リスク群にも予防投与を提案し(推奨の強さ2・確実性D)、小児にも成人と同じ推奨を適用すること。高リスクは人工弁置換後・心内膜炎の既往・未修復のチアノーゼ性先天性心疾患・短絡や弁逆流が残る修復後先天性心疾患・外科的体肺短絡・左心補助装置、中等度リスクはそれ以外の先天性心疾患・二尖弁・後天性弁膜症・閉塞性肥大型心筋症・逆流を伴う僧帽弁逸脱・植込み型心臓デバイス・弁膜症を来した心移植後であること。閲覧 2026-09-27
  3. 3.Prevention of Viridans Group Streptococcal Infective Endocarditis: A Scientific Statement From the American Heart Association(American Heart Association (AHA)・2021)ahajournals.org はbot判定で403のため、Internet Archiveの2024-11-28スナップショット(誌上版 Circulation 2021;143:e963–e978 のHTML)の全文で確認した。2007年版の「最も転帰が悪くなるリスクが高い患者群にのみ予防投与」という方針は変更せず維持されたこと(2007年以降にviridans群レンサ球菌による感染性心内膜炎の頻度・罹病率・死亡率が増えたという説得力のある証拠は無かった)。Table 5 の歯科処置前レジメンが処置30〜60分前の単回投与で、経口アモキシシリン成人2 g・小児50 mg/kg、経口不能ならアンピシリン2 gまたはセファゾリン/セフトリアキソン1 gの筋注・静注、ペニシリンアレルギーではセファレキシン2 g・アジスロマイシンまたはクラリスロマイシン500 mg・ドキシサイクリン100 mgであること。同表が「クリンダマイシンは歯科処置の予防投与にはもう推奨されない」と注記し、本文がその理由として単回投与でもClostridioides difficile感染を含む反応が他剤より多く重いことを挙げていること。Table 3 が予防投与を提案する病態として人工弁・経カテーテル弁・輪状縫縮リングやクリップを用いた弁形成・左心補助装置、心内膜炎の既往、未修復のチアノーゼ性先天性心疾患などを挙げ、一方で**植込み型電子デバイス(ペースメーカ等)・完全閉鎖が得られた心房心室中隔閉鎖デバイス・末梢血管グラフトは予防投与を提案しない**としていること。経口不能時はアンピシリン2 gまたはセファゾリン/セフトリアキソン1 gの筋注・静注で、ペニシリンアレルギーかつ経口不能ならセファゾリンまたはセフトリアキソン1 gとすること(アナフィラキシー・血管浮腫・蕁麻疹の既往があればセファロスポリンは用いない)。本文書が診療ガイドラインではなく科学的声明であり、推奨文が suggested で書かれていること。閲覧 2026-09-27