内科学

内科学 · S-01

心炎

Carditis

前提:病態
心筋炎・心筋症感染性心内膜炎(急性・亜急性)
前提:正常
心臓と心膜
微生物
Viridans group streptococci
疾患
急性心膜炎心筋炎
症状
Osler結節
画像所見
遅延造影

🧠 全体像:には、心筋炎、が含まれる。胸痛、心不全、不整脈、発熱という共通症状がある一方、診断法と緊急治療は異なる。心タンポナーデ、劇症型心筋炎、によるは直ちに専門治療を要する。

急性心膜炎

原因にはウイルス・特発性のほか、結核・細菌、、自己免疫疾患、悪性腫瘍、、心臓手術後、放射線、薬剤がある。原因別リスクを病歴から絞り込む。

次の4項目のうち2項目以上で臨床診断する。

診断項目 特徴
胸痛 吸気・仰臥位で増悪し、で軽快
一過性のことがあり反復が必要
心電図変化 広範なST上昇と。局在性ST上昇や変化は心筋梗塞を示唆
新規または増悪する 心エコーで量と循環影響を評価

炎症反応、、心エコーを評価し、心筋障害を伴えば(myopericarditis)を考える。発熱、亜急性経過、大量、タンポナーデ、免疫抑制、外傷、抗凝固中、初期治療不応などは入院評価を要するである1。

治療

  • 特発性・ウイルス性ではアスピリンまたはNSAIDs+が第一選択で、運動を制限する。
  • 副腎皮質ステロイドは第一選択ではなく、自己免疫性、禁忌、難治例などに限定する。
  • 細菌性、結核性、腫瘍性などは原因治療を行う。
  • 心タンポナーデではまたはを行う。

⚠️ は「追加してもよい薬」ではなく標準併用である。 240例のICAP試験で、通常のにを3か月併用すると遷延・再発性が37.5%から16.7%へ減った(0.56、95%CI 0.30〜0.72、4、P<0.001)。72時間後の症状残存(19.2%対40.0%)、入院率(5.0%対14.2%)も減り、有害事象は同等だった21。用量は体重70 kg超で0.5 mgを1日2回、70 kg以下で0.5 mgを1日1回、初発では3か月、初回再発では少なくとも6か月続ける1。多発再発例ではステロイドよりが選ばれうる1。

[!note] 身体所見 、低血圧、はタンポナーデを示唆する。は典型的タンポナーデよりや右室障害を示唆する。

では肥厚・石灰化した心膜がを制限し、右心不全、、を来す。結核、心臓手術、放射線などを検索し、確立した慢性例ではを検討する。

心筋炎

感染、、薬剤・毒物、などで心筋に炎症が起こる。胸痛型、心不全型、不整脈型、型のいずれでも発症する。

flowchart TD
    A["胸痛・心不全・不整脈・ショック"] --> B["ECG・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='troponin'>トロポニン</span>・心エコー"]
    B --> C["冠動脈疾患などを除外"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiac MRI'>心臓MRI</span>で炎症・壊死を評価"]
    D --> E{"高リスクまたは結果が治療を変えるか"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myocardial biopsy'>心筋生検</span>を検討"]
    E -->|"いいえ"| G["支持療法・原因治療・経過観察"]

💡 の読み方には版がある:は2018年に改訂された。 旧版は・早期造影・の3項目のうち2つを求めたが、2018年改訂版はマッピングを取り込み、T2系の所見(心筋時間の延長またはの信号上昇=浮腫)を1つ以上と、T1系の所見(心筋T1上昇・上昇・=)を1つ以上組み合わせることで特異度が上がるとした。片方のみでもによっては診断を支持しうるが、特異度は下がる3。「浮腫(T2)+傷害(T1)の2本立て」と覚える。

⚠️ 関連心筋炎は頻度は低いが致死率が高く、が正常でも起こる。 多施設レジストリで1.14%、発症までのは開始後34日(21〜75日)と早期に集中し、54%は他のを伴わなかった。追跡中46%が重大心血管イベント(心血管死・・心停止・血行動態を損なう)を起こし、そのうち38%はが正常のまま生じた。 1.5 ng/mL以上でリスクは4倍(4.0、95%CI 1.5〜10.9)になる4。「心エコーが正常だから否定できる」ではない。

心不全には標準的心不全治療、不整脈には個別治療を行う。劇症型では補助循環を含むが必要となる。免疫抑制は全例に使わず、巨細胞性、好酸球性、など病型を確認して選択する。回復まで競技運動を避け、再開は症状、、画像、不整脈を再評価して決める。

組織型 特徴
リンパ球性心筋炎 最も一般的。感染後・など
好酸球性/ 薬剤、寄生虫、好酸球増多など。が治療を変える
急速な心不全・難治性不整脈。緊急生検と免疫抑制を要し得る
Chagas心筋炎 Trypanosoma cruzi感染。、、DCMを来し得る

感染性心内膜炎

臨床所見

発熱、、心不全、塞栓、免疫現象を組み合わせて疑う。皮膚・眼所見には次がある。

所見 特徴 機序
手掌・足底の無痛性紅斑 敗血症性
の有痛性結節 免疫複合体性血管炎
の中心 塞栓/免疫現象

急性経過ではStaphylococcus aureus、亜急性では口腔内のレンサ球菌、医療関連・尿路由来ではEnterococcus faecalisなどを考える。、、、、先天性・がリスクとなる。塞栓は脳・脾・腎・冠動脈に及び、免疫複合体により糸球体腎炎を起こし得る。

診断

血液培養は1セットを好気ボトル1本+嫌気ボトル1本とし、3セット以上(最低2セット)を採取してから抗菌薬を開始する。可能なら複数のから採り、汚染が増えるカテーテルからの採血は避ける。💡 は持続的な菌血症を来すので、発熱や悪寒のタイミングに合わせて採る必要はない(採血間隔についての確立した合意も無い)5。3セットという数字は、Duke-ISCVID基準で典型菌なら2セット以上、非典型菌なら3セット以上の陽性がに必要であることに対応している6。やなど不安定な場合も、培養を迅速に採ったうえで治療を遅らせない5。(TTE)をまず行い、陰性でも疑いが高い、・デバイスがある、合併症が疑われる場合は(TEE)を行う。・デバイス感染ではやが補助となる。

は、典型的血液培養、画像による、、素因を統合する。単一の陽性培養だけでと決めない。

⚠️ 2023年には置き換わった(modified Duke → Duke-ISCVID)。 2000年の修正に対する2023年Duke-ISCVID版の主な改訂は次のとおりである6。

改訂 中身
に「Surgical」領域を新設 心臓手術中の直視所見(疣贅・膿瘍・・のなど)。⚠️ 心臓画像・組織学・微生物学による確定的な基準が得られない場合にとなるという条件付きである
画像のを拡大 従来の心エコーに加え、と/を組み込んだ。ただしなどの植込みから3か月以内の異常集積はにとどまる
微生物学的を拡大 Coxiella burnetii・Bartonella属・Tropheryma whippleiの等の核酸検査、Coxiellaの抗phase I IgG >1:800、Bartonellaの IgG ≥1:800
典型菌のリストを拡大 Enterococcus faecalisは常に典型菌。心内がある場合に限り典型菌として扱う菌群(、Corynebacterium striatum・C. jeikeium、Serratia marcescens、Pseudomonas aeruginosa、Cutibacterium acnes、、Candida属など)を新設
血液培養の要件を撤廃 採血の間隔と別という要件そのものを削除した。⚠️ 「簡略化」ではなく撤廃である——別からの採取は最良の実践として今も強く推奨されるが、基準を満たすための要件ではなくなった
素因()を明確化 経カテーテル弁植込み、心臓植込み型電気デバイス(CIED)、既往

旧基準は試験で問われることがあるので消さずに、「と断層画像を取り込んだ版に更新された」と位置づけて覚える。

⚠️ 「Duke-ISCVID/基準」と一括りにしない。2023年に出た基準は2つあり、中身が違う。 の2023年心内膜炎ガイドラインが導入したのは2023 ESC modified Duke criteriaという別の基準である。日本循環器学会の2026年ガイドラインは両者を1つの表で対比したうえで、の増加に照らして適切であるとして2023 Duke-ISCVID基準を採用した5。同表によれば、術中直視所見のをもつのはISCVID版だけで、版はWBC を画像のに残しており、追加されたもISCVID版が・脾膿瘍、版が血行性の骨関節合併症(椎体など)と分かれている5。

治療と手術適応

  • 抗菌薬は起因菌、感受性、自然弁/、腎機能に合わせる。「全例βラクタム+アミノグリコシド」ではない。⚠️ ただし「レンサ球菌なら単剤4週間」と丸ごと覚えない—— 2023の推奨表7はペニシリンへの感受性で2区画に分かれている(下記)7。
  • 手術の3本柱は、心不全、制御不能感染、である。手術の時期は緊急(emergency=24時間以内)/(urgent=3〜5日以内)/非緊急(non-urgent=同一入院中)の3区分で、第3の区分は「退院後の」ではなく同じ入院の中で行うものである7。⚠️ この urgent の日数は一般のの定義で、脳卒中後の手術を扱う Figure 11 だけは「urgent=48〜72時間以内」と別に定義されている7。
  • 膿瘍、、真菌・、大きな疣贅と反復塞栓、重度弁機能障害ではを検討する。

⚠️ の「4週間/6週間の単剤」は、ペニシリン高に限った話である。 2023の推奨表7は・S. gallolyticus群をペニシリンへの感受性で2区画に分けている。単剤の4週/6週を耐性株へそのまま当てはめない7。

区画 (NVE) (PVE) Class/Level
ペニシリン高感受性(penicillin-susceptible) /アモキシシリン/セフトリアキソンを4週間・単剤。合併症が無く腎機能が正常なら併用の2週間も選べる 同薬を6週間・単剤(2週間短縮はには適用できない) I / B
感受性低下〜耐性(susceptible, increased exposure or resistant to penicillin) 同薬4週間+2週間 同薬6週間+2週間 I / B

βラクタムアレルギーではバンコマイシンを4週間・6週間とする(Class I)。⚠️ ここでも感受性の区画で異なる——感受性低下〜耐性株の例に限り、バンコマイシン6週間に2週間を併用する7。

⚠️ 腸球菌の「アンピシリン+セフトリアキソン」を、併用を置き換えた新しい標準と覚えない。 2023の推奨表9は、アミノグリコシド高度耐性でない(non-HLAR)腸球菌の例について「アンピシリンまたはアモキシシリンに、セフトリアキソンを6週間、またはを2週間併用する」を1つの推奨(Class I、Level B)として掲げており、2つの併用は同格である。例・合併症を伴う例・症状が3か月を超える例も同じ2択(Class I、Level B)である7。

⭐ 二剤β-ラクタム併用が「選択すべき組み合わせ」になるのは、アミノグリコシド高度耐性(HLAR)株のときである。 アミノグリコシドのが128 mg/Lを超えるととのが失われるため、この条件下でアミノグリコシドは用いない。HLAR株ではアンピシリンまたはアモキシシリン+セフトリアキソン6週間がClass I(Level B)となる7。💡 の中身——セフトリアキソン自体は腸球菌に抗菌活性を持たないが、アンピシリンとは別の()を占めるため、両者を併せると相補的にが飽和される。

⚠️ この二剤β-ラクタム併用は Enterococcus faecium には無効で、他の腸球菌種での使用経験も乏しい。β-ラクタム耐性のE. faeciumにはバンコマイシン6週間+2週間(Class I)、多剤耐性・株には10〜12 mg/kg/日を単剤では用いずβ-ラクタム(アンピシリン・・)またはと併用する(耐性化の防止)7。

予防投与

について、米国心臓協会は2021年の声明で2007年の方針を見直したうえで変更なしとし、予後が最も悪くなる高リスク患者に限って予防投与を続けるとした。2007年に適応を大きく絞って以降、ビリダンス群レンサ球菌によるの頻度・・死亡率が増えたという確たる証拠は無かった、というのがその根拠である8。

⚠️ この2021年の文書は診療ガイドラインではなく科学的声明(scientific statement)である。 「誰に・どの処置で予防投与を当てるか」を述べる部分——Table 3・4・6 の表題と、個々の適応文(“AP for a dental procedure is suggested for these groups of…”)——は recommended ではなく **suggested(提案する)**で書かれている。適応の強さをこれ以上に読み替えない8。

⚠️ ただし「文書全体が suggested で書かれている」と読み替えるのも誤りである。 のは執筆委員会自身の声で “We continue to recommend VGS IE prophylaxis only for categories of patients at highest risk for adverse outcome” と recommend を用いており、Table 5 の脚注も “Clindamycin is no longer recommended for antibiotic prophylaxis for a dental procedure” である。suggested に留まるのは適応の記述であって、方針そのものの表明ではない8。

⭐ Table 3 の4群は、それぞれ具体的な内訳を持っている。「・既往・・後」の4語だけで覚えると、経カテーテル弁やのような外科的な以外のが漏れる。

群 Table 3 が挙げる内訳
または が入っている、経カテーテル植込み、人工リング・クリップなどのデバイスを用いた、・植込み型人工心臓
の既往 初発・・再発を問わない
未修復の(短絡・導管を含む)、またはデバイスで完全修復した後の6か月間(外科・経カテーテルを問わない)、人工・人工デバイスの部位またはその近傍に遺残欠損がある修復後、外科的または経カテーテル的なないし導管の留置(Melody弁・Contegra導管など)
後 弁膜症を生じた患者

⚠️ 同じ Table 3 は「提案しない」側も閉じた形で列挙している——ペースメーカなどの植込み型電子デバイス、完全閉鎖が得られた中隔欠損閉鎖デバイス、透析用を含む末梢血管・、冠動脈その他の血管、脳室心房短絡、、プレジェット。これらの感染はまれで、起きたときの起因菌の大半がブドウ球菌であり、歯科処置前の予防投与が狙うビリダンス群レンサ球菌ではない、というのが理由である8。

⚠️ 予防投与の対象は日本と欧米で違う。日本で用いるのは日本循環器学会の基準である。 JCS 2026年ガイドラインは「高リスク群に限定する欧米のガイドラインと異なり、日本のガイドラインは高リスク群と群の双方に予防投与を推奨する」と明記している5。

リスク群 該当する心疾患 歯科・口腔外科処置での予防投与
高リスク 術後(経カテーテル弁・・弁を含む)、輪を用いた後、既往、未修復の複雑、で修復し遺残病変のある、体肺短絡術後、 Class I
を含む大半の、後天性弁膜症、、逆流を伴う Class IIa
ペースメーカ・ICDなどの心臓植込み型電気デバイス(リードレスペースメーカと皮下植込み型ICDは除外)、後の弁変性 Class IIb
低リスク (単独)、後6か月以上で遺残短絡のない・・、後、逆流のない、生理的・機能性、弁機能障害を残さない・の既往 Class III(No benefit)

⭐ 2つの表を並べると線引きの違いが見える。 ペースメーカ・ICDなどの心臓植込み型電気デバイスは、AHA 2021では予防投与を提案しない側に明示的に挙がるのに対し8、JCS 2026ではである5。同じ患者が、どちらの文書を読むかで対象になったりならなかったりする。

⚠️ JCS 2026 がから外している「2機種」を取り違えない。 Table 37 の脚注Eは「リードレスペースメーカと(ICD)を除く」としか書いていないが、本文 2.2.2 はこの2機種をリードレスペースメーカと皮下植込み型ICD(subcutaneous ICD)と特定している——リードレスペースメーカでは菌血症が後続のを起こさなかったこと、皮下植込み型ICDでは植込み部位のはあってもに至らなかったことが報告されており、この2つだけが他のCIEDと別のカテゴリに置かれている5。💡 「リードレスICD」ではない——いずれも「リードが心内に無い/血管内に無い」ことで心内膜への菌の定着経路を持たない、という共通点で括られている。

⚠️ 表のリスク群とは別に、「植込み後の一定期間だけ」推奨される予防投与がある。 Table 37 の脚注Aは、閉鎖デバイス留置後6か月以内と経皮的後6か月以内の予防的抗菌薬投与を推奨する。本文2.1.3は、閉鎖後はとともに6か月間の予防投与を推奨したうえで、デバイス感染が6か月を超えて起こることはまれだが閉鎖デバイス留置例で歯科治療後のが報告されているための指導を強調すべきだとし、閉鎖についてははきわめてまれだが6か月の内外どちらでも報告があるとして6か月を超える定期的な予防投与は推奨しないとしている5。⭐ リスク群の表だけを読むとこの時限的な適応は見えない。

⚠️ 低リスクに置かれた単独のには、同じ表が自分で但し書きを付けている。 脚注Fは「も一般人口よりのリスクが高いという報告がある」とし、本文2.1.1もIsolated secundum ASD remains low risk, but… と続ける5。💡 Class III(No benefit)は「予防投与に利益が無い」であって「を起こさない」ではない。

処置の側は4段階に分かれる。Class Iは、出血を伴う侵襲的な歯科処置(、、手術、スケーリング、治療)・・・や心臓デバイスの植込み。⭐ Class IIaは巣に対する(、感染部位の内視鏡的検査・治療)と(とくに例)。Class IIb(「考慮してよいが、高リスク群には投与すべき」)は上部・、胆道手術、経腟分娩・などの処置、、気管支鏡、など広い範囲を含む。Class III(No benefit)は非感染部位への・矯正処置・、・、、挿入・経尿道内視鏡、中心静脈カテーテル挿入。⚠️ 「消化管・呼吸器の処置には要らない」と単純に覚えない——それらの多くはClass IIbであって、高リスク群には投与すべき側である。前版がClass IIbとしていた長期留置中心静脈カテーテルへの定期的な予防投与は、根拠不十分としてこの改訂で削除された5。

レジメンは処置の1時間前にアモキシシリン2 gを単回経口(小児は50 mg/kg、最大2 g)。β-ラクタムアレルギーではクリンダマイシン・・アジスロマイシン、経口できなければアンピシリン・・セフトリアキソン・クリンダマイシンを用いる5。⚠️ 抗菌薬だけでは防げない。 処置直前のブラッシング・洗口による口腔内細菌量の低減と、日頃のの維持が土台にある5。

外来での経口完遂

💡 「入院して6週間」だけが治療ではない。 でを10日以上受けて安定し、レンサ球菌・Enterococcus faecalis・Staphylococcus aureus・が起因菌である成人400例をしたPOET試験では、へ切り替えて外来でする方針が静注継続にであった(主要9.0%対12.1%、群間差3.1ポイント、95%CI -3.4〜9.6)9。安定していること・起因菌が限られること・十分な静注期間を先行させることが条件で、全例に当てはめる話ではない。 2023はこれを踏まえて外来の選択肢を認めている7。

まとめ

  • は4基準中2つで診断し、低リスク例は/アスピリン+が基本である。3か月併用は再発を37.5%から16.7%へ減らす(4)2。
  • 心筋炎はCMRを中心に評価し(2018改訂:T2系1つ+T1系1つ)3、高リスク例やに必要な場合にを行う。関連心筋炎は正常でも起こる4。
  • は血液培養(好気+嫌気で3セット以上)と心エコーが診断の軸で、抗菌薬は起因菌別に選ぶ。は2023年Duke-ISCVID版に更新され、・/・術中直視所見・核酸検査がに入り、採血間隔と別の要件は撤廃された6。が同じ2023年に出した基準は別物で、日本循環器学会2026年ガイドラインはDuke-ISCVID版を採用している5。
  • 腸球菌では、non-HLAR株に対するアンピシリン+セフトリアキソン6週間とアンピシリン+2週間がともにClass I(同格)で、二剤β-ラクタム併用が「選択すべき組み合わせ」になるのはHLAR株のときである。この併用はE. faeciumには無効7。
  • の予防投与は日本と欧米で対象が違う。JCS 2026はだけでなく群(Class IIa/IIb)にも予防投与を推奨し、出血を伴うではアモキシシリン2 gを1時間前に単回経口とする5。AHA 2021(科学的声明。適応を述べる表題と適応文は suggested。ただしのは “We continue to recommend…” と recommend を用いる)が挙げる4群には経カテーテル・人工リング/クリップによる・・短絡や導管・や導管の留置が内訳として入り、逆にペースメーカ等の植込み型電子デバイスや血管は提案しない側に明示される8。
  • タンポナーデ、劇症型心筋炎、によるは緊急対応する。

出典

  1. 1.Diagnosis, Risk Stratification, and Treatment of Pericarditis: A Review(JAMA(Cremer PC, Klein AL, Imazio M, 2024, DOI 10.1001/jama.2024.12935)・2024)急性心膜炎が胸膜性胸痛(約90%)・びまん性ST上昇/PR低下(約25-50%)・新規または増加した心嚢液貯留(多くは少量)・心膜摩擦音(30%未満)の4所見中2つ以上で診断されること、コルヒチン3か月投与が再発を37.5%から16.7%へ減らすこと、初回再発では少なくとも6か月継続すること、多発再発例ではIL-1阻害薬がステロイドより選択されうること閲覧 2026-08-25
  2. 2.A randomized trial of colchicine for acute pericarditis(The New England Journal of Medicine(ICAP trial)・2013)急性心膜炎240例の無作為化試験で、通常の抗炎症治療(アスピリンまたはイブプロフェン)にコルヒチン(体重70 kg超は0.5 mg 1日2回、70 kg以下は0.5 mg 1日1回)を3か月併用すると、遷延・再発性心膜炎が16.7%(プラセボ37.5%、相対リスク減少0.56、95%CI 0.30〜0.72、治療必要数4、P<0.001)に減った。72時間後の症状残存(19.2%対40.0%)、入院率(5.0%対14.2%)も減り、有害事象は同等であった閲覧 2026-08-25
  3. 3.Cardiovascular Magnetic Resonance in Nonischemic Myocardial Inflammation: Expert Recommendations(Journal of the American College of Cardiology・2018)Lake Louise基準の2018年改訂版はパラメトリックマッピングを取り込み、T2系の所見(心筋T2緩和時間の上昇またはT2強調像の信号上昇)を少なくとも1つと、T1系の所見(心筋T1上昇、細胞外容積分画上昇、遅延造影)を少なくとも1つ組み合わせることで心筋炎症の診断特異度が高まるとした。どちらか一方のみでも臨床状況によっては診断を支持しうるが特異度は下がる閲覧 2026-08-25
  4. 4.Myocarditis in Patients Treated With Immune Checkpoint Inhibitors(Journal of the American College of Cardiology・2018)8施設の多施設レジストリで免疫チェックポイント阻害薬関連心筋炎の有病率は1.14%、発症までの期間中央値は開始後34日(四分位範囲21〜75日)であった。併用療法(34%対2%)と糖尿病が危険因子で、54%は他の免疫関連有害事象を伴わなかった。追跡中46%が重大心血管イベントを起こし、そのうち38%は駆出率が正常のまま生じた。トロポニンT 1.5 ng/mL以上でリスクは4倍(ハザード比4.0、95%CI 1.5〜10.9)閲覧 2026-08-25
  5. 5.JCS 2026 Guideline on the Management of Infective Endocarditis(Circulation Journal(日本循環器学会)・2026)全文PDF(J-STAGE)で確認。本ガイドラインは診断基準として2023 Duke-ISCVID基準を採用し(デバイス関連IEの増加により適切と判断)、ESCの2023年ガイドラインが導入した「2023 ESC modified Duke criteria」とは別物であるとしてTable 6で両者の相違を対比している(ISCVIDのみが術中直視所見を大基準に持ち、ESC側はWBC SPECT/CTを画像大基準に残し、追加された血管現象もISCVIDが脳膿瘍・脾膿瘍、ESCが血行性の骨関節合併症と異なる)。予防投与については「高リスク群に限定する欧米のガイドラインと異なり、日本のガイドラインは高リスク群と中等度リスク群の双方に予防投与を推奨する」と明記し、高リスク群(人工弁置換術・経カテーテル弁置換術後、人工弁輪を用いた弁形成術後、IE既往、未修復の複雑チアノーゼ性先天性心疾患、人工材料で修復し遺残病変のある先天性心疾患、体肺短絡術後、補助人工心臓)でClass I、中等度リスク群(二尖弁を含む大半の先天性心疾患、後天性弁膜症、閉塞性肥大型心筋症、逆流を伴う僧帽弁逸脱、ペースメーカ・ICD、心移植後の弁変性)でClass IIa/IIb、低リスク群でClass III(No benefit)とする。処置別では出血を伴う侵襲的歯科処置・扁桃摘出術・アデノイド切除術・人工弁や心臓デバイスの植込みがClass I、上部消化管内視鏡や気管支鏡はClass IIb(ただし高リスク群には投与すべき)、経食道心エコー・尿道カテーテル挿入・中心静脈カテーテル挿入はClass III。前版がClass IIbとしていた長期留置中心静脈カテーテルへの定期的予防投与は根拠不十分として今回削除された。予防投与のレジメンは処置1時間前のアモキシシリン2 g単回経口(小児は50 mg/kg、最大2 g)で、β-ラクタムアレルギーではクリンダマイシン・クラリスロマイシン・アジスロマイシン、経口不能ならアンピシリン・セファゾリン・セフトリアキソン・クリンダマイシン。血液培養は各セットを好気1本+嫌気1本とし3セット以上(最低2セット)を提出、IEは持続的菌血症を来すため発熱時に合わせて採る必要はなく、採血間隔についての確立した合意は無いとする。⚠️ Table 38 には Class IIa の行があり、局所感染巣に対する侵襲的処置(膿瘍ドレナージ、胆道閉塞を含む感染部位の内視鏡的検査・治療)と経尿道的前立腺切除術(とくに人工弁例)が該当する(LOE C)。Class IIb は上部・下部消化管内視鏡、食道静脈瘤硬化療法、食道拡張術、胆道手術、尿道拡張、経腟分娩、腟式子宮全摘、掻爬、人工妊娠中絶、子宮内避妊具の挿入・抜去、心臓カテーテル検査、経皮的血管形成術、皮膚切開、気管支鏡、骨髄穿刺・生検を含み、Class III には非感染部位からの浸潤麻酔・矯正処置・根管治療、喉頭鏡・気管挿管、鼓膜穿孔へのチューブ挿入、経食道心エコー、尿道カテーテル挿入・経尿道内視鏡、中心静脈カテーテル挿入が並ぶ。Table 37 の脚注Eは「Excludes leadless pacemakers and implantable cardioverter defibrillators (ICDs)」と書くが、⚠️ この「もう一方の機種」はリードレスICDではなく**皮下植込み型ICD**である——本文 2.2.2 が "For patients with leadless pacemakers, it has been reported that bacteremia did not cause subsequent IE. … Local implant-site infection has been reported after subcutaneous implantable cardioverter defibrillator (ICD) implantation, yet, similarly, it did not cause IE." と述べ、続けて "Thus, these 2 devices are categorized into a different directory from other CIEDs." と結んでいる。。⭐ Table 37 の脚注Aは「Prophylactic antibiotic administration is recommended within 6 months after placement of a left atrial appendage closure device and within 6 months after percutaneous atrial septal defect (ASD) closure.」とし、本文2.1.3が心房中隔欠損閉鎖後は抗血小板薬とともに6か月間の予防投与を推奨すること(デバイス感染が6か月を超えて起こることはまれだが、閉鎖デバイス留置例で歯科治療後のIEが報告されているため口腔衛生を強調すべきとする)、左心耳閉鎖デバイス植込み後も6か月以内は予防投与を推奨し「Routine prophylaxis beyond 6 months is not recommended.」とすることを確認した。⚠️ 脚注Fは「Reports indicate that ASD (secondary type) also carries a higher risk of IE than the general population (see main text).」で、本文2.1.1も「Isolated secundum ASD remains low risk, but…」と続けており、低リスク(Class III)に置きながら但し書きを付けている閲覧 2026-09-05
  6. 6.The 2023 Duke-International Society for Cardiovascular Infectious Diseases Criteria for Infective Endocarditis: Updating the Modified Duke Criteria(Duke University / International Society for Cardiovascular Infectious Diseases (ISCVID)・2023)全文(PMC10681650)で確認。修正Duke基準(2000年版)から2023年Duke-ISCVID版への改訂点を確認した——(1)心臓手術中の直視所見(疣贅・膿瘍・弁破壊・人工弁の離開など)を新たな大基準「Surgical」として追加したが、これは心臓画像・組織学・微生物学による確定的な基準が得られない場合に大基準となる、(2)心臓CTと18F-FDG PET/CTを画像の大基準に組み込んだ(ただし人工弁等の植込みから3か月以内のPET/CT異常集積は小基準にとどまる)、(3)血液培養の採血間隔と別穿刺部位という要件は「撤廃」された(別穿刺部位は最良の実践として今も strongly recommended だが基準上の要件ではない)、(4)Coxiella burnetii・Bartonella属・Tropheryma whipplei に対するPCR等の核酸検査、Coxiella の抗phase I IgG >1:800、Bartonella の IFA IgG ≥1:800 を微生物学的大基準に追加、(5)典型菌のリストを拡大し、心内人工物がある場合に限り典型菌として扱う菌群(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、Corynebacterium striatum/jeikeium、Serratia marcescens、Pseudomonas aeruginosa、Cutibacterium acnes、非結核性抗酸菌、Candida属)を新設、(6)素因(経カテーテル弁植込み、心臓植込み型電気デバイス、IE既往)を明確化。典型菌は2セット以上、非典型菌は3セット以上の陽性血液培養で大基準を満たす。閲覧 2026-08-25
  7. 7.2023 ESC Guidelines for the management of endocarditis(European Society of Cardiology (ESC)・2023)誌上版(academic.oup.com)は今回も403だが、Internet Archive の2024-04-19スナップショット経由で Milano-Bicocca 大学リポジトリが公開している版(Delgado-2023-Eur Heart J-VoR.pdf、全95頁)を取得し、pdftotext の全文で確認した。①腸球菌(7.8節と推奨表9)——アミノグリコシド高度耐性でない(non-HLAR)腸球菌の自己弁例では「アンピシリンまたはアモキシシリンに、セフトリアキソンを6週間、またはゲンタマイシンを2週間併用する」が1つの推奨(Class I、Level B)として掲げられ、2つの併用は同格である。人工弁例・合併症を伴う自己弁例・症状が3か月を超える例も同じ2択でClass I・Level B。HLAR株ではアンピシリンまたはアモキシシリン+セフトリアキソン6週間がClass I・Level Bで、本文は「this is the combination of choice for treating NVE and PVE caused by HLAR E. faecalis」と述べる。アミノグリコシドMICが128 mg/Lを超える(HLAR)と細胞壁合成阻害薬との殺菌的相乗効果が失われるため、その条件ではアミノグリコシドを用いない。この二剤β-ラクタム併用は E. faecium には無効で、他の腸球菌種での経験も乏しいと明記される。β-ラクタム耐性の E. faecium にはバンコマイシン6週間+ゲンタマイシン2週間がClass I、多剤耐性・バンコマイシン耐性株にはダプトマイシン10〜12 mg/kg/24時間を耐性化防止のため常にβ-ラクタム(アンピシリン・エルタペネム・セフタロリン)またはホスホマイシンと併用する。②推奨表7(口腔レンサ球菌と S. gallolyticus 群)はペニシリン感受性で2区画に分かれる——〈Penicillin-susceptible oral streptococci and Streptococcus gallolyticus group〉ではペニシリンG・アモキシシリン・セフトリアキソンを自己弁4週間・人工弁6週間の単剤で用い(Class I、Level B。合併症のない自己弁例で腎機能が正常なら、ゲンタマイシン併用の2週間治療も選べる)、〈Oral streptococci and Streptococcus gallolyticus group susceptible, increased exposure or resistant to penicillin〉では自己弁4週間・人工弁6週間のいずれにも**ゲンタマイシン2週間を併用する**(Class I、Level B)。単剤4週/6週を耐性株へ広げてはならない。③手術時期の3区分は emergency が24時間以内、urgent が3〜5日以内、non-urgent が同一入院中であり、第3の区分は elective ではない。ただしこの urgent の定義は Figure 10(一般)のもので、Figure 11(脳卒中後の手術)だけは脚注が「Urgent, within 48–72 h」と別に定義している。閲覧 2026-09-07
  8. 8.Prevention of Viridans Group Streptococcal Infective Endocarditis: A Scientific Statement From the American Heart Association(American Heart Association (AHA)・2021)Internet Archive の2024-04-26スナップショット経由で誌上版PDF(Circulation. 2021;143:e963–e978)を取得し、pdftotext の全文(1,401行)で確認した。①Table 3 の表題は「AP for a Dental Procedure: Underlying Conditions for Which AP Is Suggested」で、4群はそれぞれ内訳を持つ——〈人工弁または人工材料〉は人工弁の存在・経カテーテル人工弁植込み・人工リングやクリップ等のデバイスを用いた弁形成・左室補助人工心臓および植込み型人工心臓、〈IEの既往〉は初発・再燃・再発を問わない、〈先天性心疾患〉は未修復のチアノーゼ性CHD(姑息的短絡と導管を含む)・人工材料またはデバイスで完全修復した後の6か月間(外科・経カテーテルを問わない)・人工パッチや人工デバイスの部位またはその近傍に遺残欠損がある修復後・外科的または経カテーテル的な肺動脈弁ないし導管の留置(Melody弁、Contegra導管など)、〈心移植後に弁膜症を生じた患者〉。②同じ Table 3 は予防投与を提案しない対象として、ペースメーカ等の植込み型電子デバイス、完全閉鎖が得られた中隔欠損閉鎖デバイス、透析用を含む末梢血管グラフト・パッチ、冠動脈その他の血管ステント、脳室心房短絡、下大静脈フィルター、プレジェットを明示的に列挙し、本文はこれらの感染がまれで大半がブドウ球菌によることを理由に挙げる。③本文書は診療ガイドラインではなく科学的声明である。⚠️ ただし「文書全体が suggested で書かれている」と読むのは誤りで、suggested なのは適応を述べる部分——Table 3・4・6 の表題と個々の適応文(例「AP for a dental procedure is suggested for these groups of」)——に限られる。抄録の CONCLUSIONS は執筆委員会自身の声で「We continue to recommend VGS IE prophylaxis only for categories of patients at highest risk for adverse outcome」と recommend を用い、Table 5 の脚注も「Clindamycin is no longer recommended for antibiotic prophylaxis for a dental procedure」である。④2007年に適応を絞って以降、低・中等度・高リスクのいずれの群でもVGS IEの頻度・罹病率・死亡率が増えたという説得力のある証拠は無いとして、方針を変更しないと結論している。閲覧 2026-09-07
  9. 9.Partial Oral versus Intravenous Antibiotic Treatment of Endocarditis(The New England Journal of Medicine(POET trial)・2019)レンサ球菌・`Enterococcus faecalis`・`Staphylococcus aureus`・コアグラーゼ陰性ブドウ球菌による左心系心内膜炎で、静注抗菌薬を10日以上受けて安定した成人400例を無作為化したPOET試験で、経口へ切り替える方針は静注継続に非劣性であった(主要複合エンドポイント9.0%対12.1%、群間差3.1ポイント、95%CI -3.4〜9.6)閲覧 2026-08-25