病理学

病理学 · B/33

感染性心内膜炎(急性・亜急性)

Infective endocarditis (acute and subacute)

タグ
High-yield / ポイント
応用トピック
感染性心内膜炎感染性心内膜炎の外科的治療心炎
微生物
HACEK groupViridans group streptococci
疾患
感染性心内膜炎
症状
線状出血

🧠 全体像:は急性と亜急性を「起因菌の」と「もとの弁の状態」の組み合わせで対比すると覚えやすい——健康な弁を強毒菌が急速に破壊するか、もともと異常な弁に弱毒菌がゆっくり住み着くか。疣贅は局所のと遠隔へのという2方向のリスクを同時に持つ点が合併症理解の鍵になる。

概念

は、(菌血症を介した)心臓弁・心内膜への微生物侵入で、疣贅 — フィブリン・血小板・炎症細胞・壊死debris・微生物からなる脆い塊 — を生じる。急性と亜急性に分類される。

急性と亜急性

急性 亜急性
起因菌 高(S. aureus) 低()
弁 もとは正常な弁 もとから異常な弁
経過 急速、死亡率約50% 、抗菌薬で回復
  • 他の起因菌:群()。培養・血清学的検査で起因菌が特定できない例が約10%ある(国際前向きコホートで2,781例中277例)1。
  • → しばしば()病変2。

💡 この急性・亜急性という時間軸の対比は、現在は起因菌と感染様式(・・医療関連・)による分類へ位置づけを移しつつある。 25か国58施設・2,781例の国際前向きコホート(ICE-PCS、2000〜2005年)では最多起因菌が黄色ブドウ球菌(31.2%)となり、77.0%が発症30日以内の早期に受診し、古典的な身体所見は少なかった(入院時の脾腫11%、8%、5%、3%)。は全体で17.7%だった。著者らは「21世紀初頭のは急性疾患としての性格が強く、黄色ブドウ球菌の割合が高い」としている1。

⚠️ この時間軸分類は試験で問われ続けるため消さないが、現行の実地臨床では/(・後期型)/デバイス関連/関連という感染様式の枠組みで整理される。

発生機序と素因

微生物が循環に入り(歯科・外科手技、、カテーテル、消化管の)→ 心内膜に付着。素因: 、(ジェット病変)、、、、(好中球減少、免疫不全、悪性腫瘍、糖尿病、、)。

💡 心内膜炎は「(後1年未満)」と「後期型(1年以降)」で起因菌の重心が違う。 歴のない確定心内膜炎537例の国際コホート(ICE-PCS)では、()が16%を占め、その48%が後60〜365日というやや遅めの時期に発症していた。の頻度は群38%がS. aureus群23%・群20%より高く、株の68%がであった3。

形態

  • 脆く、大きく、破壊的な疣贅が弁を変形させる。心筋へびらんし → 。
  • → 敗血症性塞栓 → 転移性(敗血症性)梗塞。
  • 治癒 → 線維化、石灰化、弁の変形。

臨床像と合併症

  • 非特異的:発熱、、体重減少、脱力、(約90%)、脾腫(亜急性)。ただし現代の国際コホートでは、入院時に新たなを聴取したのは48%、脾腫は11%にとどまった1。
  • 診断:血液培養と心エコーなどの画像を組み合わせる。1994年初版・2000年修正版を経て、2023年には2つの改訂版が並立している。
    • 2023年Duke-ISCVID版:心臓手術中の直視所見が(臨床)に加わり、・/が画像のに組み込まれ、血液培養の採血間隔と別々のという要件は撤廃された4。
    • 2023年修正基準:画像のに・/に加えて白血球シンチ()を含める。の定義には採血間隔(12時間超、または最初と最後の採血を1時間以上あける)を残している5。
  • 合併症: 免疫複合体性糸球体腎炎(血尿)、(点状出血、、)、(・)、(脳、腎、肺)、不整脈。修正基準のでも、は塞栓性の、・・糸球体腎炎はとして別の項目に分けられている5。

💡 ポイント: 急性 = S. aureus が正常弁に(強、死亡率約50%)、亜急性 = が異常弁に(歯科処置後)。疣贅 → 、。 → 。診断 = 血液培養、90%で。合併症:糸球体腎炎、塞栓()、()。

まとめ

  • は菌血症を介した心臓弁・心内膜への微生物侵入で疣贅(フィブリン・血小板・炎症細胞・微生物の脆い塊)を生じる。
  • 急性はがもとは正常な弁を急速に破壊し(死亡率約50%)、亜急性は低菌()がもとから異常な弁にゆっくり定着する。
  • 素因は、、、、、免疫不全などの。では病変が多い。
  • 疣贅は()とによる・転移性梗塞の両方のリスクを持つ。
  • 診断は血液培養と画像を組み合わせたで、2023年にはDuke-ISCVID版と修正基準が並立する。は約90%で聴取されるとされるが、現代のコホートでは新規の48%・脾腫11%と古典的所見は少ない。合併症に、点状出血・・などの所見、・などのがある。

出典

  1. 1.Clinical presentation, etiology, and outcome of infective endocarditis in the 21st century: the International Collaboration on Endocarditis-Prospective Cohort Study(Archives of Internal Medicine・2009)25か国58施設の確定感染性心内膜炎2,781例(2000〜2005年、成人、自己弁72.1%)を検討した国際前向きコホート(ICE-PCS)で、最多起因菌は黄色ブドウ球菌31.2%、77.0%は発症30日以内の早期に受診し古典的な臨床所見は少なかった(抄録「with few of the classic clinical hallmarks of IE」)。全文(PMC3625651)の Table 3 で入院時の脾腫11%(284/2662)、Osler結節3%、Janeway病変5%、線状出血8%、新規の心雑音48%(1068/2232)を、本文で培養・血清学的検査陰性のIEが10%(277/2781)であること、院内死亡率が17.7%であることを確認した。著者らは21世紀初頭のIEが急性疾患としての性格を強め黄色ブドウ球菌の割合が高いと結論した。閲覧 2026-09-23
  2. 2.Infective Endocarditis in Patients With a History of Intravenous Drug Abuse(Cureus(Bursy M, et al., 2025, DOI 10.7759/cureus.91270)・2025)静注薬物使用歴のある感染性心内膜炎患者では右心系、とくに三尖弁が優位に侵され、黄色ブドウ球菌が突出して多く、グラム陰性菌・真菌の頻度も他の背景の患者より高いことを確認した。閲覧 2026-09-24
  3. 3.Coagulase-negative staphylococcal prosthetic valve endocarditis--a contemporary update based on the International Collaboration on Endocarditis: prospective cohort study(Heart (British Cardiac Society)・2009)静注薬物使用歴のない確定人工弁心内膜炎537例(ICE-PCS、2000〜2005年)の解析で、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)が16%(86例)を占め、そのうち48%(33/69例)は弁置換後60〜365日の間に発症していた。心内膿瘍の頻度はCoNS群38%が黄色ブドウ球菌群23%・viridans群レンサ球菌群20%より高く、CoNS株の68%がメチシリン耐性であった。閲覧 2026-09-24
  4. 4.The 2023 Duke-International Society for Cardiovascular Infectious Diseases Criteria for Infective Endocarditis: Updating the Modified Duke Criteria(Duke University / International Society for Cardiovascular Infectious Diseases (ISCVID)・2023)Duke基準は1994年初版・2000年の修正版(modified Duke)を経て2023年にDuke-ISCVID版へ改訂された。心臓手術中の直視所見が新たな大基準(臨床)に加わり、心臓CTと18F-FDG PET/CTが画像の大基準に組み込まれ、血液培養の採血間隔・別穿刺部位の固定要件は削除された。閲覧 2026-09-24
  5. 5.2023 ESC Guidelines for the management of endocarditis(European Society of Cardiology (ESC)・2023)誌上版HTML(Internet Archive の2023-11-06取得分)で、ESCが独自の「2023 ESC modified diagnostic criteria」(Table 10)を示していることを確認した。大基準は血液培養(2セットから典型菌=口腔レンサ球菌・Streptococcus gallolyticus・HACEK群・黄色ブドウ球菌・Enterococcus faecalis、または12時間超あけた2セット以上陽性か、最初と最後を1時間以上あけた3セットすべて/4セット以上の過半数が陽性の持続菌血症、Coxiella burnetii)と画像(心エコー・心臓CT・18F-FDG PET/CT・白血球シンチ SPECT/CT)、小基準では Janeway病変・結膜出血・感染性動脈瘤などを塞栓性の血管現象に、糸球体腎炎・Osler結節・Roth斑・リウマトイド因子を免疫学的現象に分けている。判定は確診=大基準2つ/大基準1つ+小基準3つ以上/小基準5つ、疑診=大基準1つ+小基準1〜2つ/小基準3〜4つである。人工弁心内膜炎の早期・後期の区別は起因菌の違いによるが、予後には発症時期より周術期との関連や起因菌が重要とも述べる。2025年の訂正(doi 10.1093/eurheartj/ehae877)の内容は未確認。閲覧 2026-09-23