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Microbe Atlas · 細菌

HACEK group

HACEK群

分類
G− 球桿菌 / Gram− coccobacilli
性状
Gram陰性 (G−)球桿菌 Coccobacilli通性嫌気性 Facultative
科目
PathologyPediatrics
トピック
B/33: Infective endocarditis (acute and subacute)3-35: Acute hematogenous osteomyelitis in children
原因となる疾患
化膿性関節炎(敗血症性関節炎)感染性心内膜炎骨髄炎

🧠 全体像:群はHaemophilus・Aggregatibacter・Cardiobacterium・Eikenella・Kingellaの5属の頭文字をとった便宜的な総称で、単一の分類群を指す学名ではない——このノートにgenusフィールドが無いのはと同じ理由による。5属を束ねるのは病原性の強さではなく、口腔咽頭の常在菌でありながら発育が極めて遅く、特殊な培地・を要求するという培養上の性質である。臨床上の核心は、この「発育の遅さ」が歴史的にの代表的原因とされてきた点にある——ただし現代のでは標準の5日間の培養期間内に検出できるため、真に培養不能なのではなく「培養に時間がかかる」菌群として理解し直す必要がある1。

微生物学的な特徴

いずれもグラム陰性で、の一員として定着する。形態は属ごとに異なり、単一の形態像では覚えられない。

属 代表菌種 形態 手がかり
Haemophilus H. parainfluenzaeなど 球桿菌 H. influenzaeと同属だが、群として扱われるのは主に非莢膜の口腔内定着種
Aggregatibacter(旧Actinobacillus) A. actinomycetemcomitans 球桿菌 に定着し、旧分類の「」との関連が強い
Cardiobacterium C. hominis の桿菌 心内膜炎の原因としては最もまれ
Eikenella E. corrodens 直〜わずかにした桿菌 寒天培地表面を「浸食する」が特徴。ヒトからの検出で知られる
Kingella K. kingae 短桿菌〜球桿菌、対または 幼小児(4歳未満)の咽頭に定着し、小児の骨・症の起因菌として近年重要性が増している

💡 共通点は「培養の要求性が高いこと」に尽きる。 、(Eikenella corrodensは特に)を要求し、一般細菌より発育が遅い。ただし培養期間を延ばす必要は無い——現行の自動血液培養装置では標準の5日間の培養期間内に検出できるので、「群を疑う」と検査室へ伝える意味はの依頼にはない1。

病原性の仕組み

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Haemophilus, Aggregatibacter, Cardiobacterium, Eikenella, Kingella'>HACEK</span>群<br>口腔咽頭の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='normal flora'>常在フローラ</span>"] --> B["歯科処置・不良な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral hygiene'>口腔衛生</span>による<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='transient bacteremia'>一過性菌血症</span>"]
    B --> C["心臓弁・心内膜への付着"]
    C --> D["亜急性の経過で<br>大きく可動性の高い疣贅を形成"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infective endocarditis, IE'>感染性心内膜炎</span><br>塞栓症のリスクが高い"]
    A --> F["Kingella kingaeは幼小児で<br>咽頭から血行性に播種"]
    F --> G["小児の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='septic arthritis'>化膿性関節炎</span>・骨髄炎"]

いずれも黄色ブドウ球菌のような強い組織破壊性の毒素は持たず、付着を軸にゆっくり定着するという点でViridans群レンサ球菌の心内膜炎と似た戦略をとる。・という常在からを介して心臓へ到達し、既存のがなくても定着しうる。

⚠️ 「群=」という古い図式をそのまま覚えない。 発育の遅さゆえに旧式の培養法では検出できないことが多く、原因不明の心内膜炎の代表格とされてきたが、現代のでは標準の5日間の培養期間内に検出でき、群を狙ったはむしろ不要とされている1。

感染経路と疫学

  • 5属とも口腔咽頭の常在菌で、として歯科処置・不良なを契機にを起こす
  • Aggregatibacter actinomycetemcomitansは侵襲性()との関連が強く、そのものがになりうる
  • Eikenella corrodensは口腔内フローラであると同時に、ヒトや、拳を握った状態で歯に当たって生じる外傷によるの起因菌としても知られる
  • Kingella kingaeは4歳未満の幼小児の咽頭に高頻度に定着し、保育施設など集団生活を介して伝播しうる。培養での検出感度が低く、などの普及により従来考えられていたより頻度の高い小児感染症の起因菌であることが分かってきた

起こす疾患

疾患 特徴
亜急性の経過で、大きく可動性の高い疣贅と塞栓症を伴いやすい。既存が無くても発症しうる
Aggregatibacter actinomycetemcomitansは、旧分類で「」と呼ばれていた病型の代表的な関連菌。⚠️ 2017年のWorld Workshopでこの区分は廃され、相当する臨床像は現行分類のGrade C(破壊がの沈着量から予想される程度を上回る/早期発症を示唆する臨床像)へ移っている
感染 Eikenella corrodensはヒト・拳の外傷部から検出されるの一員
・骨髄炎 Kingella kingaeは4歳未満の小児で重要な起因菌

診断

  • 血液培養:・で発育させる。現行のでは標準の5日間の培養で検出でき、検出までの中央値は2〜3日である1。群を疑う場合は検査室へその旨を伝える
  • 培養が陰性でも臨床像・画像所見から疑いが残る場合は、疣贅組織やの・を検討する
  • Eikenella corrodensは寒天培地表面に「浸食する」を形成する点が同定の手がかりになる

治療と予防

  • セフトリアキソンまたはアンピシリン/が第一選択で、には一般に感受性である。βラクタマーゼ産生株がありうるため、心内膜炎のような侵襲性感染にペニシリン・アンピシリン単剤は用いない23
  • 一部のHaemophilus・Aggregatibacter株はβラクタマーゼを産生しうるため、アンピシリン単剤はとして避ける
  • としての治療期間・手術適応は他の起因菌と同様の枠組みで判断する
  • 予防は歯科衛生の維持が基本で、など最高リスク群における歯科処置前のはViridans群レンサ球菌と共通の適応基準に従う

まとめ

  • 群はHaemophilus・Aggregatibacter・Cardiobacterium・Eikenella・Kingellaの頭文字による総称で、単一の分類群ではない——単一属を持たないためgenusフィールドは無い。
  • 共通点は口腔咽頭常在の弱毒グラム陰性菌であることと、発育が遅く特殊な培地・を要するという培養上の性質にある(培養期間の延長は要らない)。
  • 歴史的にの代表格とされてきたが、現代のでは通常5日以内に検出できる。
  • Aggregatibacterは(旧分類の「」。現行分類ではGrade Cに相当する)、Eikenellaはヒト感染、Kingella kingaeは4歳未満の小児の・骨髄炎という属ごとの個性を持つ。
  • 治療はセフトリアキソンまたはアンピシリン/が第一選択で、βラクタマーゼ産生株を考慮しアンピシリン単剤は避ける。

出典

  1. 1.Utility of extended blood culture incubation for isolation of Haemophilus, Actinobacillus, Cardiobacterium, Eikenella, and Kingella organisms: a retrospective multicenter evaluation(Journal of Clinical Microbiology(American Society for Microbiology)・2006)4施設の検討で、HACEK群は現行の自動血液培養装置と培地を用いれば標準の5日間の培養期間内に十分検出できること、検出までの平均・中央値が3.4日・3日(12年間の解析では2.6日・2日)であったこと、延長培養を特別に依頼した血液培養407件からはHACEK群も他の細菌も検出されず、HACEK群を狙った延長培養は不要と結論されたことを確認した閲覧 2026-08-25
  2. 2.HACEK Infections(Merck Manual Professional Edition・2024)HACEK群が自己弁心内膜炎の最大5%を占めるグラム陰性桿菌性心内膜炎の代表的な原因群であること、弱毒・発育の遅い要求性の高い菌群であること、セフトリアキソンおよびアンピシリン/スルバクタムが現在の第一選択薬であることを確認した。閲覧 2026-08-10
  3. 3.Epidemiological Insights into HACEK Bacteria: A Seven-year Retrospective Analysis at a Tertiary Care Center in Türkiye(Medeniyet Medical Journal・2025)HACEK群にはβラクタマーゼ産生株がありうるため心内膜炎などの侵襲性感染にペニシリン・アンピシリンは推奨されないこと、HACEK群は一般に第三世代セファロスポリンおよびフルオロキノロンに感受性で、セフトリアキソンが第一選択、シプロフロキサシンがβラクタム薬の代替に位置づけられることを確認した閲覧 2026-08-25