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Andrews-Fisch分類

Andrews-Fisch classification

別名
Fisch分類Andrews staging
臓器系
耳鼻咽喉科腫瘍
科目
Otorhinolaryngology
トピック
耳鼻咽喉科 38:上咽頭疾患とアデノイド増殖症の症状耳鼻咽喉科 43:口腔・咽頭の良性腫瘍と前癌病変
適用疾患
若年性鼻咽腔血管線維腫

🧠 全体像:は、(JNA)の進展範囲をI〜IV期に分けるである。特徴はを(IIIb期)と(IV期)で分けることにあり、これがとの最大の違いになる。1989年に到達法の手術成績とともに提唱されたもので、著者らが明言した目的は「が病変へ到達する術式を選ぶのを助ける」ことだった1。硬膜を破っているかどうかで手術の性質そのもの(頭蓋外で完結するか、硬膜の処理と再建を伴うか)が変わるため、そこに境界を置いている。

目的と適用場面

内容
目的 腫瘍のによる。到達法(術式)の選択を助ける
評価の種類 解剖学的進展範囲の分類。点数を加算するスコアではない
対象 造影CT/でJNAと診断された患者
使う場面 決定前の病期確認、術式の選択、施設間・論文間での重症度の共有
評価しないもの 組織学的悪性度(JNAは病理学的には良性)、腫瘍の血管分布・塞栓後の残存血流

⚠️ 病期は画像所見のみで決める。JNAは血管に富み生検が禁忌であるため、診断からまで非侵襲的な画像評価で完結する。

構成要素と配点

I〜IV期の4段階で、III期とIV期がそれぞれ2つに細分され、実質6区分になる23。

病期 進展範囲
I 鼻腔・上咽頭腔に限局
II 、または・・への浸潤(を伴う)
IIIa への進展または眼窩浸潤。はない
IIIb 頭蓋内・の進展(傍部)
IVa 頭蓋内・の進展。・・視交叉への浸潤はない
IVb 頭蓋内・の進展で、・・視交叉への浸潤がある

⭐ 境界の置き方を3つ覚えると全体が繋がる。 IIIaとIIIbを分けるのは頭蓋内へ入ったか、IIIbとIV期を分けるのは硬膜を破ったか、IVaとIVbを分けるのは・・視交叉に届いたかである。

💡 なぜ硬膜で切るのか。 にとどまる腫瘍は頭蓋底の骨と硬膜の外側で処理でき、髄液腔を開かずに済む。へ入っていれば、切除に硬膜の切開と再建が加わり、・髄膜炎・脳の直接損傷という別種の危険が生じる。進展範囲がわずかに違うのではなく、手術が別の手術になる——この分類が硬膜を境界に選んだ理由はここにある。

解釈とカットオフ

病期が上がるほど、鼻腔・上咽頭→・副鼻腔→・眼窩→→という順に進展し、必要な到達法が大きくなる。原著が報告したのは大きな腫瘍(III・IV期)に対する到達法の成績で、14人が治癒し、1人に生じた再発は2回目の手術で全摘され、放射線治療を要したのはに浸潤していた1人だけだった1。

⭐ とは現在も最も広く使われる2つで、いずれも術式選択・再発・転帰とよく相関するとされる2。

内視鏡下経鼻手術を受けた34例での検証では、の必要性・術中輸血・術後遺残に対するがAndrews分類で0.851/0.844/0.783となり、(0.714/0.703/0.681)を上回った3。を・まで分けている分、進展範囲だけを見る分類より予測に効いていると解釈できるが、34例の単施設研究であり差の由来まで検証されているわけではない。

3つの分類はそれぞれ別の問いに答える

JNAのが併存するのは優劣がついていないからではなく、答えている問いが違うからである。

分類 答える問い 決め手 判定できる時点
腫瘍はどこまで広がっているか 進展範囲の7段階(IA〜IIIB) 画像診断の時点
どの到達法で腫瘍に届くか がかか 画像診断の時点
出血・・遺残がどれだけ起こりそうか 塞栓後の残存血管分布との経路 術前・塞栓のあと

💡 したがって、術式を組み立てる段階ではAndrews-Fisch、周術期のリスクを見積もる段階ではUPMCという使い分けになる。は進展範囲の記述が最も細かいため、症例報告・文献での共通言語として残っている。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ が普及する前の分類である。 従来のAndrews-Fisch・はいずれも主に腫瘍の大きさと進展範囲に基づいており、と内視鏡下経鼻手術が標準になった現在の予後因子——塞栓後にから残る血流——を評価対象に含まない3。同じ34例の検証で、その血管分布を取り込んだは3つのすべてでAndrews分類を上回った( 0.893/0.880/0.863)3。

⚠️ 細分の粒度が実際の症例分布と噛み合わないことがある。 上記34例の内訳はI期1例・II期6例・IIIa期7例・IIIb期8例・IVa期0例・IVb期10例で、IVa期は1例も無かった3。へ入った10例はすべてIVb期、つまり・・視交叉のいずれかへも及んでいたことになる(この施設には進行例が集まる紹介がある点に注意する)。

⚠️ 「II期」だけでは分類が特定できない。 のII期はへの進展を3段階に細分した区分だが、のII期はと副鼻腔浸潤をまとめた1段階で、指す範囲が違う。症例を参照・記載するときはどの分類のどの病期かを必ず明示する。

⚠️ 病期のラベルで画像を代用しない。 進展・の有無はと予後を直接左右するため、病期の記載を鵜呑みにせず造影MRIそのもので確認する。

まとめ

  • はJNAをI〜IV期(IIIa/IIIb・IVa/IVbを含め実質6区分)に分ける進展範囲ので、目的は到達法の選択である。
  • IIIaとIIIbはの有無、IIIbとIV期は硬膜を破っているか、IVaとIVbは・・視交叉への浸潤の有無で分かれる。
  • へ入ると手術が別種のもの(硬膜の切開と再建、の危険)になるため、そこが分類の主軸に置かれている。
  • と並ぶ2大分類だが、時代の検証では、残存血管分布を取り込んだの方が周術期の予測精度で上回る。
  • 分類ごとに答える問いが違う。術式の組み立てにはAndrews-Fisch、周術期リスクの見積もりにはUPMCを使う。

出典

  1. 1.The surgical management of extensive nasopharyngeal angiofibromas with the infratemporal fossa approach(The Laryngoscope・1989)抄録で確認した内容。大きな若年性鼻咽腔血管線維腫が頭蓋底の主要血管・脳神経との位置関係と再発しやすさのために治療上の難題であること、本分類が腫瘍の増殖パターンに基づく分類として「術者が病変へ到達する術式を選ぶのを助けるため」に提唱されたものであること、報告そのものは大きな腫瘍(class III・IV)を側頭下窩到達法で切除した成績であり、14人が治癒し1人に再発が生じて2回目の手術で全摘されたこと、手術合併症は軽微で死亡例が無かったこと、放射線治療を要したのは海綿静脈洞への浸潤があった1人だけだったことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-08-20
  2. 2.Juvenile Nasopharyngeal Angiofibroma(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)Staging 節で確認した内容。Andrews-Fisch分類のI期が鼻腔・上咽頭腔に限局、II期が翼口蓋窩または副鼻腔への浸潤、IIIa期が側頭下窩への進展または眼窩浸潤、IIIb期が頭蓋内・硬膜外の傍トルコ鞍部への進展、IV期が硬膜内進展でありIVaとIVbを分けるのが海綿静脈洞・下垂体窩・視交叉への浸潤の有無であること、Andrews-Fisch分類はRadkowski分類と並んで最も広く使われる2つの分類でありいずれも術式選択・再発・転帰とよく相関すること、すべての分類が第一義的には解剖学的進展範囲で病期を決めていること、UPMC分類がより新しく内視鏡手術に合わせた分類として2010年に導入されたことを確認した。閲覧 2026-08-20
  3. 3.Juvenile Nasal Angiofibromas: A Comparison of Modern Staging Systems in an Endoscopic Era(Journal of Neurological Surgery Part B: Skull Base・2016)全文(Table 1・Table 6・Table 7・Discussion)で確認した内容。Andrews分類の各期の定義(I は上咽頭に限局、II は翼口蓋窩または上顎洞・篩骨洞・蝶形骨洞への浸潤で骨破壊を伴う、III は側頭下窩または眼窩への浸潤でIIIAが頭蓋内進展なし・IIIBが硬膜外(傍トルコ鞍部)進展、IV は頭蓋内・硬膜内腫瘍で海綿静脈洞・下垂体窩・視交叉への浸潤の有無で細分)、内視鏡手術を受けた34例における病期分布(Andrews分類でI期1例・II期6例・IIIA期7例・IIIB期8例・IVA期0例・IVB期10例)、4分類の予測精度(分割手術・術中輸血・術後遺残に対するAUCがAndrews 0.851/0.844/0.783、Radkowski 0.714/0.703/0.681、Onerci 0.830/0.766/0.810、UPMC 0.893/0.880/0.863)、従来のRadkowski・Andrews分類が主に腫瘍の大きさと進展範囲に基づき内視鏡切除の時代以前に採用されたものであることを確認した。なおTable 1のIV期の欄は細分の記号がいずれも「IVB」と印字されているが、同表の記述内容とStatPearlsの記載からIVA(浸潤なし)・IVB(浸潤あり)が正しいと判断した。閲覧 2026-08-20