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UPMC分類

UPMC staging system

別名
UPMC stagingピッツバーグ分類
臓器系
耳鼻咽喉科腫瘍
科目
Otorhinolaryngology
トピック
耳鼻咽喉科 38:上咽頭疾患とアデノイド増殖症の症状耳鼻咽喉科 43:口腔・咽頭の良性腫瘍と前癌病変
適用疾患
若年性鼻咽腔血管線維腫

🧠 全体像:は、(JNA)の病期を「腫瘍がどこまで広がったか」ではなく、術前塞栓のあとにから腫瘍へ残る血流があるかと、頭蓋内へ入る経路が内側か外側かという2点で分ける。と内視鏡下経鼻手術が標準になった時代に、切除の成否を決めるのは腫瘍の大きさや副鼻腔の占拠ではなく血管だという観察から作られた1。したがってこの分類は画像診断の時点では確定せず、・塞栓を済ませてから決まる。

目的と適用場面

内容
目的 周術期の危険(出血量・の必要性)と術後遺残・再発の予測
評価の種類 進展範囲+血管分布による。点数を加算するスコアではない
対象 術前と枝の塞栓を行ったうえで切除するJNAの患者
判定の時点 術前塞栓のあと(塞栓前には最終病期を決められない)
使う場面 術式・到達法の設計、輸血・の準備、患者・家族への説明
評価しないもの 腫瘍の大きさそのもの、副鼻腔浸潤の広がり(に重み付けを下げている)

💡 なぜ大きさと副鼻腔浸潤を捨てたのか。 手術では、腫瘍の大きさと副鼻腔病変の広がりは完全切除できるかどうかの予測因子として重要度が低いことが分かった1。副鼻腔はで到達しやすい領域である。一方、残せば出血し遺残するのは塞栓の届かない血管に養われた部分である。は、予測に効かない軸を落として効く軸だけを残した分類だといえる。

構成要素と配点

判定に使うのは造影CT/による進展範囲と、術前・塞栓後の残存血管分布の2つである2。

病期 進展範囲 塞栓後の残存血管分布
I 鼻腔、の内側部 規定なし
II 副鼻腔、の外側部 なし
III 頭蓋底の、眼窩・への進展 なし
IV 頭蓋底の、眼窩・への進展(IIIと同じ) あり
V 。V(M) は内側進展、V(L) は外側進展(に対する腫瘍の位置) あり

⭐ III期とIV期は進展範囲がまったく同じで、違いは塞栓後に血流が残っているかどうかだけである。 この分類のが最も端的に出ているのがここで、「同じ広がりの腫瘍でも、血管が違えば別の手術になる」と宣言している。

💡 「残存血管分布あり」とは何か。 通常はの枝を術前に塞栓するが、腫瘍が頭蓋底・頭蓋内へ及ぶとからも栄養されるようになる3。の枝は術前塞栓に適さないことがあり、その場合は出血・脳卒中の危険が高まる3。したがって「残存血管分布」とは、実質的に塞栓では止めきれない出血源が残っているという意味になる。検証研究では腫瘍への残存血流5%未満を完全塞栓と定義している2。

💡 V期の内側・外側は到達法を直接指定する。 内側進展には前方(経鼻)到達法、外側進展には外側到達法の追加が必要になる2。病期のラベルがそのまま術式設計の指示になっている点が、進展範囲だけの分類との実務上の差である。

解釈とカットオフ

内視鏡下経鼻手術を受けた34例では、病期が上がるにつれて周術期の負担が段階的に増えた2。

項目 I期(1例) II期(5例) III期(5例) IV期(11例) V期(12例)
術中出血量の中央値 40 mL 136 mL 422 mL 1231 mL 4501 mL
術中輸血 0 0 1 6 11
0 0 0 0 6
術後遺残 0 0 0 2 8
術後 2日 2日 3.2日 2.8日 7.9日

⭐ 進展範囲が同じIII期とIV期の間で、出血量の中央値が422 mLから1231 mLへ跳ね上がる。 と大量出血が集中するのはV期で、病期と術中出血量の相関はSpearmanの順位相関係数で0.84だった2。原著でも、残存血管分布に相当するIV期・V期は出血量・複数回手術の必要性・遺残または再発腫瘍と強く相関している1。

💡 なぜ残存血管分布が「」を予測するのか。 血管支配の領域ごとに手術を区切る「一度に一つの出血源」という方針が取られるためである。枝が養う領域を先に切除し、と支配の部分は別の段階で扱う3。塞栓できない血管が残っているほど、この区切りが増える。

なぜRadkowskiより予測が当たるのか

・術中輸血・術後遺残に対するを4分類で比べると、が3項目すべてで最も高い2。

分類 術中輸血 術後遺残
(本ノート) 0.893 0.880 0.863
0.851 0.844 0.783
Onerci分類 0.830 0.766 0.810
0.714 0.703 0.681

差は精度の高低ではなく設計の違いから来る。は進展範囲だけを7段階に細分した分類で、も術前塞栓も普及する前に作られた。予測したい(出血する・分割になる・遺残する)を決めているのが血管である以上、血管を見ていない分類は原理的に上限がある。はその血管を病期の軸そのものに据えた——だからこの3つのに限っては当たる。

⚠️ これは「が一番よい分類だ」という意味ではない。 比べたはいずれも周術期の負担であり、どの到達法を選ぶかという問いにはの外の区別が、進展範囲を細かく記述するにはが、それぞれ依然として答えている。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 術前・塞栓術ができなければ適用できない。 IV期とV期の判定に塞栓後の残存血流が要るためで、検証研究の著者ら自身がこのを明記している2。検証研究の著者らは、・塞栓が行えない施設では(I・II期)を塞栓なしで切除しうるとしている。

⚠️ 塞栓によって病期が動く。 塞栓がすると残存血管分布が消え、IV期の腫瘍がIII期相当(残存血管分布なし)へ下がる2。いつ判定した病期なのかを記載しなければ、同じ患者の病期が食い違う。

⚠️ 根拠は単施設・34例で、進行例に偏っている。 対象の82%に術前から頭蓋底のがあり、著者らは紹介を認めている。追跡期間の中央値も13.8か月と短く、遺残病変の再増大を語るには不十分である2。

⚠️ 合併症そのものの予測には使えない。 同じ研究で合併症の解析は検出力不足だった。ただし視力喪失・頸動脈の犠牲・という最も重篤な転帰はいずれもV期に生じており、V期を「出血が多い病期」ではなく「不可逆な合併症が起こりうる病期」として扱う2。

⚠️ 病期は術式を保証しない。 到達のために翼突管の拡大など頭蓋底の削除を要することがあり、塞栓に適さないの枝があれば出血・脳卒中の危険が高まる3。病期のラベルではなく、の所見そのものをが確認する。

まとめ

  • はJNAをI〜V期に分けるで、進展範囲に加えて術前塞栓後にから残る血流を軸に据えている。
  • III期とIV期は進展範囲が同じで、残存血管分布の有無だけで分かれる。V期はで、内側(M)・外側(L)が到達法を指定する。
  • 腫瘍の大きさと副鼻腔浸潤は、では完全切除の予測に効かないために重み付けを下げている。
  • 34例の検証で病期は術中出血量と強く相関し(Spearmanの順位相関係数0.84)、・術中輸血・術後遺残の予測精度で他の3分類を上回った。
  • 塞栓ができない施設では適用できず、塞栓によって病期が下がるため、いつ判定した病期かを必ず記載する。

出典

  1. 1.A new endoscopic staging system for angiofibromas(Archives of Otolaryngology–Head & Neck Surgery・2010)抄録(Objective・Design・Setting・Patients・Intervention・Main outcome measures・Results・Conclusions)で確認した内容。本分類が経鼻内視鏡手術への術式変化・頭蓋内進展の経路・内頸動脈からの血管支配の程度を反映させる目的で作られたこと、対象が1998年から2008年にピッツバーグ大学医療センターで経鼻内視鏡手術を受けた若年性鼻咽腔血管線維腫の患者であること、主要評価項目が推定出血量・手術回数・腫瘍再発であること、頭蓋底の骨侵食が74%に認められたこと、外頸動脈枝の塞栓後に内頸動脈からの残存血管分布が51%に認められたこと、UPMC分類のIV期・V期に相当する残存血管分布が出血量・複数回手術の必要性・遺残または再発腫瘍と強く相関したこと、経鼻内視鏡手術では腫瘍の大きさと副鼻腔病変の広がりが完全切除の予測因子として重要度が低いこと、本分類が頭蓋底進展の経路と血管分布という2つの予後因子を取り込んでおり内視鏡・開放手術のどちらにも適用可能であること、他の病期分類と比べて周術期合併症(出血量・複数回手術)と腫瘍再発の予測に優れることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-08-20
  2. 2.Juvenile Nasal Angiofibromas: A Comparison of Modern Staging Systems in an Endoscopic Era(Journal of Neurological Surgery Part B: Skull Base・2016)全文(Table 1・Table 5・Table 7・Methods・Discussion)で確認した内容。UPMC分類の各期の定義(I は鼻腔・翼口蓋窩内側、II は副鼻腔・翼口蓋窩外側で残存血管分布なし、III は頭蓋底の骨侵食・眼窩・側頭下窩への進展で残存血管分布なし、IV は同じ進展範囲で残存血管分布あり、V は頭蓋内進展かつ残存血管分布ありで内側進展をM・外側進展をLとする)、完全塞栓を腫瘍への残存血流5%未満と定義したこと、34例の病期別の術中出血量中央値(I期40 mL・II期136 mL・III期422 mL・IV期1231 mL・V期4501 mL、p<0.0001)と術中輸血(0・0・1・6・11例)・分割手術(0・0・0・0・6例)・術後遺残(0・0・0・2・8例)・術後在院日数(2・2・3.2・2.8・7.9日)、UPMC分類と術中出血量の相関がSpearman r=0.84(p<0.0001)であったこと、4分類の予測精度(分割手術・術中輸血・術後遺残に対するAUCがUPMC 0.893/0.880/0.863、Andrews 0.851/0.844/0.783、Onerci 0.830/0.766/0.810、Radkowski 0.714/0.703/0.681)、内側進展には前方到達法・外側進展には外側到達法の追加が必要になること、術前塞栓により残存血管分布の無いIII期へ病期を下げられること、術前血管造影・塞栓術が行えない施設では本分類を適用できないこと、対象34例の82%に術前の頭蓋底骨侵食があり進行例に偏った紹介バイアスがあること、追跡期間中央値が13.8か月と短いこと、合併症の解析は検出力不足であったが視力喪失・頸動脈の犠牲・髄液漏といった最も重篤な転帰はV期に生じたことを確認した。閲覧 2026-08-20
  3. 3.Juvenile Nasopharyngeal Angiofibroma(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)Staging 節と Treatment / Management 節で確認した内容。UPMC分類が2010年にピッツバーグ大学医療センターの研究グループにより内視鏡手術に基づいて導入された最も新しい分類で、5段階に分け、術前塞栓後に主に内頸動脈から残る残存血管分布をより重視すること、腫瘍の大きさと副鼻腔浸潤は切除後の転帰の予測因子として限定的とみなされ重み付けが下げられていること、V期が内側進展と外側進展で細分されること、大きな腫瘍では両側の外頸動脈枝が関与し頭蓋内進展があると内頸動脈からも栄養されること、血管支配の領域ごとに手術を分割する「一度に一つの出血源」という方針が出血量を抑えうること、外頸動脈枝の領域を先に切除し頭蓋内進展と内頸動脈支配部分を後に扱うこと、術前塞栓に適さない内頸動脈の枝があると出血・脳卒中の危険が高まること、到達のために翼突管(翼突骨管)の拡大など頭蓋底の削除を要する場合があることを確認した。閲覧 2026-08-20