スコア体系ノート一覧へ

Scores · Published

修正WHO予後スコア

Modified WHO prognostic scoring system for GTN

別名
FIGO/WHO予後スコアWHO予後スコア(GTN)
臓器系
生殖・産婦人科腫瘍
科目
Gynecology
トピック
婦人科 38:胞状奇胎婦人科 39:絨毛癌
構成:画像所見
砲弾状陰影
適用疾患
妊娠性絨毛性疾患(胞状奇胎・絨毛癌)

🧠 全体像は、予後を眺めるための指標ではなく次に何を打つかを決めるである。と診断された患者の8つの予後因子を採点し、合計点で低リスク()と高リスク()に分ける——この境界を越えると治療戦略そのものが変わる。もう一つの誤解しやすい点は、(I〜IV、解剖学的な広がり)とWHOスコア(予後因子の点数)は別物で、臨床記載では両者をコロンで併記する(例:Stage III:7)ことである1。病期は「どこまで広がっているか」、スコアは「化学療法にどれだけ抵抗しやすいか」を表し、片方だけではを決められない。

目的と適用場面

内容
目的 GTNのを予測し、単剤か多剤かのを決める
対象 GTNと診断された患者
使う場面 化学療法開始前、と併せて1回算出する
評価しないもの そのもの、・ETT(後述)、治療開始後の反応そのもの
表すもの 病変の解剖学的な広がり の予測因子の合計点
表記 ローマ数字 I〜IV アラビア数字 0点〜

臨床記載ではこの2つを併記し、Stage III:7 のように病期の後にコロンで点数を続ける1

⚠️ そのものには使わない。 GTNへ進展して初めて適用する1除去後の経過は本スコアではなく、hCG推移によるで追う(後述)。

構成要素と配点

8因子をそれぞれ0・1・2・4点で採点し合計する。すべての因子に4段階が揃っているわけではない——年齢・の種類・の3因子には4点の区分が存在しない1。空欄になる段階は「該当なし」と明記する。

年齢

0点 1点 2点 4点
40歳未満 40歳以上 該当なし 該当なし

の種類

0点 1点 2点 4点
流産 該当なし

からの間隔(月)

0点 1点 2点 4点
4未満 4〜6 7〜12 12超

(IU/L)

0点 1点 2点 4点
10³未満 10³〜10⁴未満 10⁴〜10⁵未満 10⁵以上

(子宮を含む、cm)

0点 1点 2点 4点
3未満 3〜4 5以上 該当なし

⚠️ 0点の基準(3cm未満)はFIGOの表そのものには明記が乏しく、NCI PDQの表で確認した値である2

転移部位

0点 1点 2点 4点
脾・腎 消化管 肝・脳

肺転移は転移のなかで最も予後良好な部位(0点)とされ、胸部単純X線・CTでは多発円形結節であるを呈することが多い。

の数

0点 1点 2点 4点
該当なし 1〜4 5〜8 8超

0点の基準は原表に明記がなく、転移を認めない症例(多くはIの子宮)では転移部位・の数のいずれも実質0点として扱われる。

0点 1点 2点 4点
該当なし 該当なし 2剤以上不応

解釈とカットオフ

合計点 リスク区分 治療
0〜6点 低リスク メトトレキサートなど)
7点以上 高リスク など)

低リスク(0〜6点)は単剤、高リスク(7点以上)はが標準治療である23

💡 スコア13点以上は近年「」と呼ばれる(従来の研究では12点超を用いたものもある)4。出血やそのものによる治療開始早期の死亡リスクが高く、通常量のをいきなり始めず低用量のを経てからへ移行する運用が広がっている。この13点という境界は近年のFIGOの指針と近年の研究で確立してきたもので、それ以前は12点超を用いた研究が多かった4。⚠️ 区分の境界が文献によって動くため、「」という語を引用するときはどの閾値によるかを確認する。

hCGのモニタリング

治療開始前に一度だけ算出し、単剤か多剤かを決めるためのである。治療を開始したあとの反応判定は、スコアの再計算ではなく血中hCGの推移で行う2

奇胎除去後のから奇胎後GTNの診断に至る流れは側で扱う。GTN治療後は、hCGが正常化してからもさらに1〜3コースのを行い、その後も定期的なhCG追跡を継続するのが標準である2。治療中のは治療抵抗性・再発を疑う所見であり、この時点で病期・スコアを再評価して薬剤変更や多剤化を検討する。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 版がある。 現行のFIGO/修正WHOスコアは、1983年のWHO予後スコアをFIGOが2000年に改訂して解剖学的病期と組み合わせた版であり、2021年のFIGO Cancer Report改訂でも同じ枠組みが踏襲されている。原型の1983年WHO分類とFIGO2000システムの間でリスク分類のは97%であった3。現行の8因子スコア自体も、前向き検証や各因子の重み付けの検証を経ずにコンセンサスとして導入されたものである5

⚠️ 低リスク(0〜6点)と判定されても、に不応となる例が25〜30%存在し、抵抗率はスコアが上がるほど高くなる。なかでもスコア5〜6の低リスク例では、過去に70〜80%という高い抵抗率が報告されたことがある5

⚠️ hCG値・の測定は測定系・施設差の影響を受けうる。などによる偽陽性hCGを治療抵抗性・再発と誤認しないよう注意する。

⚠️ (ETT)には使わない。 由来でhCG産生がに比して軽度なことがあり化学療法感受性も異なるため、これらの腫瘍にはのみを付与しリスクスコアは適用しない3。治療は手術()が中心となる。

⚠️ そのものには使わない。GTNへ進展して初めて適用する。

まとめ

  • は、GTN患者を低リスク()と高リスク()に分け治療戦略を決めるである。
  • (解剖学的な広がり)とWHOスコア(予後因子の点数)は別の指標で、Stage III:7 のように併記する。
  • 年齢・の種類・からの間隔・治療前hCG・・転移部位・の数・の8因子を0/1/2/4点で採点する。年齢・の種類・には4点の段階がない。
  • 合計0〜6点は低リスク、7点以上は高リスク。13点以上は「」として、を挟む運用が広がっている(従来の研究では12点超を用いたものもあり、閾値は文献で動く)。
  • そのもの、および・ETTには使わない。
  • 治療開始後の反応判定はスコアの再計算ではなく、hCGの推移で行う。低リスクでも25〜30%はに不応となる。

出典

  1. 1.Diagnosis and management of gestational trophoblastic disease: 2021 update(FIGO(International Journal of Gynecology & Obstetrics, FIGO Cancer Report 2021)・2021)Table 2に年齢・先行妊娠の種類・先行妊娠からの間隔・治療前hCG・最大腫瘍径・転移部位・転移巣の数・先行化学療法の失敗の8因子×0/1/2/4点の配点表があること、合計6点以下を低リスク・7点以上を高リスクとする基準、FIGO病期とWHOスコアを"Stage II:4"のようにコロンで併記する運用、および本スコアがGTNに対して用いられ胞状奇胎そのものには適用されないことを確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.Gestational Trophoblastic Disease Treatment (PDQ) — Health Professional Version(National Cancer Institute (PDQ)・2024)Stage Information for Gestational Trophoblastic Disease節の表で最大腫瘍径0点が3cm未満と明記されていること、低リスク(0〜6点)は単剤化学療法・高リスク(7点以上)は多剤併用化学療法が標準治療であること、Management of Hydatidiform Mole節で奇胎除去後は週1回のhCG追跡から正常化後は月1回6か月の追跡へ移行すること、Treatment Option Overview節でGTN治療後はhCG正常化後さらに1〜3コースの地固め化学療法を行うことを確認した閲覧 2026-08-04
  3. 3.Gestational Trophoblastic Disease(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)Staging節でPSTT・ETTには病期のみを付与しリスクスコアは適用しないと明記されていること("A risk factor score is not applicable in these cases")、原型の1983年WHO分類とFIGO2000システムの間でリスク分類の一致率が97%であったこと、低リスク(<7点)は単剤メトトレキサートまたはダクチノマイシン・高リスク(≧7点)は多剤併用化学療法が適応となることを確認した閲覧 2026-08-04
  4. 4.PREDICT-GTN 1: Can we improve the FIGO scoring system in gestational trophoblastic neoplasia?(International Journal of Cancer・2023)低リスク患者の25〜30%が単剤化学療法に抵抗性を示しFIGOスコアが上がるほど抵抗率が上がること、なかでもスコア5〜6の低リスク患者では過去に70〜80%という高い抵抗率が報告されていたこと、現行のFIGOスコアが8因子について前向き検証や重み付けの妥当性検証を経ずに専門家コンセンサスとして2000年に導入されたものであることを確認した閲覧 2026-08-04
  5. 5.Clinical Characteristics and Prognostic Factors in Patients with Gestational Trophoblastic Neoplasia: A Single-Center Study Comparing Ultra-High-Risk and Other Risk Groups(Cancers (Basel) — MDPI・2025)超高リスクGTNは近年の基準ではFIGOスコア13点以上と定義され(従来の研究では12点超を用いたものもあった)、FIGOの更新された指針に沿う区分として多剤併用化学療法の対象に位置づけられていること、超高リスク群の5年全生存率が56%で、低リスク群96%・高リスク群80%より有意に低いこと(log-rank検定 p<0.001)を確認した閲覧 2026-08-04