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Symptoms · Published

Bandl輪

Bandl's ring

別名
病的収縮輪バンドル輪
臓器系
生殖・産婦人科
科目
Obstetrics
トピック
産科学 22:児頭骨盤不均衡とその影響
関連疾患
子宮破裂難産(陣痛異常・児頭骨盤不均衡)

🧠 全体像は「症状」ではなく、分娩の進行中に手で確認する所見である。正常な分娩でも、収縮して肥厚する子宮上部と、伸展して菲薄化する子宮下部の境界は存在するが、骨盤の中に隠れていて腹壁の外からは触れない。この境界が臍高付近まで異常に上昇し、腹壁の外から溝として触知・視認できるようになった時点で、それはであり、切迫を示す産科救急所見に変わる。所見の名前を覚えることより、この所見を認めた瞬間に何を止め、何を始めるかを反射的に判断できることが要点である。

定義と用語の整理

の子宮は、収縮のたびに短縮・肥厚する子宮上部(能動的に収縮する部分)と、引き伸ばされて薄くなる子宮下部節(産道として拡張していく部分)に分かれる1。両者の境界は正常な分娩にも存在し、と呼ばれるが、骨盤の中に位置し腹壁からは触知・視認できない。

  • 児頭が下降できないまま陣痛が続くでは、この境界が臍高付近まで異常に上昇し2、腹壁上に斜めに走る溝として触知・視認できるようになる3
  • この段階に達したものだけをと呼ぶ。は連続した現象であり、境界がどこまで上昇したかが両者を分ける3
  • Bandlは人名であり、という名称自体は翻訳しない。

病態生理

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cephalopelvic disproportion, CPD'>児頭骨盤不均衡</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='abnormal rotation of the fetal head'>回旋異常</span>などで<br>児頭が下降できず<span class='jp-term jp-term-diagram' title='obstructed labor'>閉塞性分娩</span>が続く"] --> B["子宮上部筋層が収縮のたびに<br>短縮・肥厚する"]
    A --> C["子宮下部節が持続的に<br>伸展・菲薄化する"]
    B --> D["上部と下部の境界(収縮輪)が<br>臍高付近まで上昇する"]
    C --> D
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Bandl ring (pathologic retraction ring)'>Bandl輪</span>として<br>腹壁上に触知・視認できる"]
    E --> F["下部子宮節の破綻が迫り<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='uterine rupture'>子宮破裂</span>切迫に至る"]

💡 収縮輪が上昇するのは、子宮全体が均等に収縮しているのではなく、上部だけが力を出し続け、下部だけが引き伸ばされ続けるという不均等な負荷の結果である。境界が上がるほど、破裂に近い子宮下部節が長く薄く引き伸ばされていることを意味する。

⚠️ 緊急性

⚠️ を認めた時点で、切迫として扱い、直ちに緊急分娩の準備に入る。 時間をかけた保存的経過観察を行わず、オキシトシンなどを投与していれば直ちに中止する。多くは緊急帝王切開に至る3

ではの上昇と並行して次の所見が進行しやすく、併せて確認する3

随伴所見 意味
の停止 そのものの停止所見
強い 児頭が長時間、狭い産道で圧迫され続けている
母体の頻脈発熱・脱水 遷延した分娩による疲労・
下降した児頭による尿道圧迫。を要する
・胎便排出 が既に始まっている

紛らわしいもの

  • 満たされた膀胱や腸管ガスは下腹部を挙上・膨隆させる2。このと見誤ることがあるため、で膀胱を空にしたうえで再評価する4
  • の緊張や、肥満体型での腹壁の皺も、腹壁上を横走する溝として誤認されやすい。安静時に力を抜かせたうえで、の停止など他のの所見を併せて確認する。
  • 判断に迷うときは経過観察に時間を使わない。を疑う所見が他にも揃っていれば、確定を待たずに緊急分娩の方向に倒す。

その所見自体への介入か、原疾患の治療か

そのものを消す処置は存在しない。輪は閉塞の結果であって原因ではなく、唯一の対応は原因である閉塞を解除すること、すなわち分娩を完了させることである。

まとめ

  • が臍高付近まで異常に上昇し、腹壁上に触知・視認できるようになったものであり、切迫を示す産科救急所見である。
  • 子宮上部の短縮・肥厚と子宮下部の伸展・菲薄化という不均等な負荷が、境界を押し上げる機序で生じる。
  • 認めた時点で保存的経過観察を行わず、を中止して緊急分娩(多くは帝王切開)の準備に入る。、母体の頻脈・発熱・脱水、・胎便を併せて確認する。
  • 満たされた膀胱、の緊張、肥満体型での腹壁の皺は紛らわしく、で膀胱を空にしてから再評価する。
  • 自体を消す処置はなく、唯一の対応は閉塞の解除=分娩の完了である。

出典

  1. 1.Abnormal Labor in Obstetrics: Recognition and Management(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)Etiology/Risk factors節で、Bandl輪は遷延・停止分娩に稀に伴う所見として挙げられ、収縮性の厚い子宮上部節と菲薄化した子宮下部節の境界にできる収縮輪であることを確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.Bandl's ring: a comprehensive review(International Journal of Reproduction, Contraception, Obstetrics and Gynecology・2026)Bandl輪は児頭骨盤不均衡・胎位異常・巨大児などによる正常な子宮retractionの破綻から生じ、子宮上部節の進行性の肥厚と子宮下部節の菲薄化の境界が異常に上昇した所見であること、随伴所見としてcaput succedaneum・molding、母体の疲労・脱水・発熱・頻脈、膀胱膨満、胎児心拍異常・胎便がみられること、認めた時点で子宮収縮薬を直ちに中止し緊急帝王切開を行うべきで子宮収縮薬の継続・器械分娩は禁忌であることを確認した閲覧 2026-08-04
  3. 3.Labour and Delivery Care Module: 9. Obstructed Labour — 9.3.2 Bandl's ring(OpenLearn Create (The Open University) — HEAT Ethiopia・2024)9.3.2節で、Bandl輪は子宮上下節の境界にできる陥凹で臍高付近に位置し正常分娩では触知・視認されないと記載されていること、下腹部は満床の膀胱や腸管ガスによっても膨隆しうると記載されていることを確認した閲覧 2026-08-04
  4. 4.Labour and Delivery Care Module: 9. Obstructed Labour — 9.4 Management of obstructed labour(OpenLearn Create (The Open University) — HEAT Ethiopia・2024)9.4節で、閉塞の原因が満床の膀胱によると疑う場合はカテーテルを用いて膀胱を排液すると記載されており、児頭が深く嵌入している例ではこの導尿自体が難しいことがあると付記されていることを確認した閲覧 2026-08-04