Biophysics

Biophysics · 28.05

呼吸の生体力学(biomechanics)―コンプライアンスと閉塞性・拘束性疾患

Biomechanics of respiration — compliance, obstructive/restrictive disease

応用トピック
急性呼吸窮迫症候群の病態・症状・診断・治療呼吸機能検査:静的・動的肺気量

🧠 は、を変えたとき肺容積がどれだけ変わるかを表す。 呼吸のしにくさは、肺を拡げるための弾性負荷と、気道を通して空気を動かす抵抗負荷に分けると理解しやすい。

コンプライアンスと弾性

CLC_L は圧力―の傾きである。

CL=ΔVΔPtpC_L=\frac{\Delta V}{\Delta P_{tp}}

CLC_L が小さい肺は硬く、同じ容積を増やすのに大きなが必要である。逆数はで、元の形へ戻ろうとする強さを表す。これは応力―関係を呼吸器へ応用した考え方だが、肺の圧力―容積関係にはがあり、一定の定数だけでは表せない。

表面張力とサーファクタント

ΔP=2γr\Delta P=\frac{2\gamma}{r}

肺胞内面の液体はγ\gamma によって面積を小さくしようとする。肺胞を単純な球面として近似したの式では、同じなら半径 rr が小さいほど肺胞を保つのに必要なが大きい。実際の肺胞は互いに連結しており、を、とくに小さくなった肺胞で低下させることで虚脱を防ぎ、を高める。

サーファクタント不足では肺胞を開く圧力が増え、が起こりやすい。単に「肺胞が小さいから潰れる」のではなく、を下げる仕組みが失われた結果として圧力負荷が増す。

閉塞性と拘束性の違い

病態 主な物理的変化 呼吸への影響 代表的な測定傾向
閉塞性 の増大、呼気時の気道虚脱 空気を速く吐きにくい が低下、RV増加を伴いうる
肺・胸壁コンプライアンスの低下 肺を十分に拡げにくい TLCとVCが低下、は保たれやすい

では気道半径の低下が流れを制限し、疾患では線維化などにより圧力―の傾きが小さくなる。だけでなく、時間内にどれだけ吐けたかを合わせて評価する。

病態から測定値まで

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='shortness of breath / breathlessness'>息切れ</span>"] --> B{"主要な負荷はどこか"}
  B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='airway resistance (Raw)'>気道抵抗</span>増大"| C["呼気流量が低下"]
  C --> D["閉塞性パターン<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='FEV1/FVC ratio'>1秒率</span>低下・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='air trapping'>空気捕捉</span>"]
  B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reduced vascular compliance'>コンプライアンス低下</span>"| E["同じ吸気量に大きな圧力が必要"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='restrictive pattern'>拘束性パターン</span><br>TLC・VC低下"]

肺気腫ではが弱くコンプライアンス自体は高くなる一方、呼気時に気道を開いておく力が不足して閉塞性変化を示す。したがって「コンプライアンスが高いほど正常」とは限らない。

まとめ

  • コンプライアンスは変化に対する容積変化で、低いほど肺は拡げにくい。
  • を促し、サーファクタントはそれを下げて肺胞を安定化する。
  • は主に流れの抵抗、疾患は主に弾性負荷の増大として区別する。
  • 、流量、圧力―容積関係を組み合わせて病態を読む。