Pulmonology

Pulmonology · 04

呼吸機能検査:静的・動的肺気量

Lung function measurements static and dynamic lung volumes

前提:正常
肺気量・死腔・肺胞換気呼吸の生体力学―コンプライアンスと閉塞性・拘束性疾患ガス交換・肺循環・換気血流比
応用トピック
慢性閉塞性肺疾患と肺気腫
検査値
スパイロメトリー経横隔膜圧最大吸気圧・最大呼気圧体プレチスモグラフィ鼻腔吸気圧

🧠 全体像は、①で気流、②測定で拘束・、③で肺胞‐毛細血管ガス移動を評価する。は、単一の数値でなく組合せで判定する。

肺気量と肺容量

指標 定義 教科書的目安
(TV) 1回の量 500 mL
安静吸気後に追加で吸える量 3,100 mL
安静呼気後に追加で吐ける量 1,200 mL
(RV) 最大呼気後も肺内に残る量 1,200 mL
(IC) TV + IRV 3,600 mL
ERV + RV 2,400 mL
(VC) IRV + TV + ERV 4,800 mL
VC + RV 6,000 mL

実測値は年齢・身長・性別などに対応する参照式から予測値とを求め、zスコアと併せて判定する。固定の「予測値80%」だけで正常・異常を決めない。付近の値は測定の不確かさとを含めて解釈する。1

スパイロメトリー

後にできるだけ速く強く呼出し、容量‐を得る。

指標 意味 主な読み方
後にできる総量 低下はを示唆するが、それだけでは証明できずTLCで確認する1
(forced expiratory volume in 1 second: FEV₁) 最初の1秒に呼出した量 閉塞・拘束の双方で低下しうる
FEV₁/FVC LLN未満なら
中の最大流量 が高い
呼気中間流量(FEF₂₅–₇₅) FVC中央50%の平均流量 変動が大きく単独診断に使わない

模式図の例では、正常はFEV₁ 4.0 L/FVC 5.0 L(80%)、閉塞性は1.3/3.1 L(42%)、は2.8/3.1 L(90%)である。実臨床ではこの例示値ではなくLLNとzスコアを用いる。

フロー・ボリューム曲線に現れる形

パターン 形態の要点
正常 鋭いPEF後、滑らかな下降脚
喘息・COPD 呼気脚が下に凹む(scooping)
肺気腫 著しい凹み、流量低下、増大
吸気・呼気脚とも平坦化
主に吸気脚が平坦化
主に呼気脚が平坦化
肥満・神経筋疾患・線維症 形は比較的保たれるがループ全体が小さい

閉塞性と拘束性

所見
FEV₁ 正常〜↓
FEV₁/FVC ↓(LLN未満) 正常〜↑
FVC/VC 正常〜↓
RV・FRC で↑ 正常〜↓
TLC 正常〜↑ ↓(拘束確定)
通常正常
コンプライアンス 肺気腫で↑ 肺実質性で↓、胸郭外性では正常の場合あり
DLCO 肺気腫で↓、喘息・で正常〜↑ ILDで↓、胸郭・神経筋性で比較的保たれる
flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spirometry'>スパイロメトリー</span>"] --> B{"FEV₁/FVCがLLN未満?"}
  B -->|"はい"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='obstructive ventilatory defect'>閉塞性換気障害</span>"]
  C --> D["必要に応じて<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchodilator'>気管支拡張薬</span>反応を評価"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lung volume'>肺気量</span>・DLCOを追加"]
  E --> F{"RV/TLC・FRC/TLCが高値?"}
  F -->|"はい"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='air trapping'>エアトラッピング</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperinflation'>過膨張</span>を支持"]
  F -->|"いいえ"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lung volume'>肺気量</span>が正常でも閉塞は否定しない"]
  G --> Q{"DLCO低値?"}
  H --> Q
  Q -->|"はい"| R["肺気腫など肺胞<span class='jp-term jp-term-diagram' title='capillary bed'>毛細血管床</span>の障害を示唆"]
  Q -->|"いいえ"| S["喘息・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic bronchitis'>慢性気管支炎</span>などを<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical signs'>臨床所見</span>と統合"]
  B -->|"いいえ"| I{"FVC低値?"}
  I -->|"はい"| J["拘束を疑いTLC測定<br>非特異的パターンや<span class='jp-term jp-term-diagram' title='air trapping'>エアトラッピング</span>も再評価"]
  J --> K{"TLC低値?"}
  K -->|"はい"| L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='restrictive ventilatory impairment'>拘束性換気障害</span>"]
  L --> M{"DLCO低値?"}
  M -->|"はい"| N["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interstitial lung disease, ILD'>間質性肺疾患</span>など肺実質性"]
  M -->|"いいえ"| O["胸郭・神経筋・肥満など肺外性"]
  K -->|"いいえ"| P["非特異的パターン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='air trapping'>エアトラッピング</span>を再評価"]

体プレチスモグラフィ

密閉室内でを利用してガス量を測定する。では直接測れないRV・FRC・TLC、を評価でき、の確定、胸郭内ガス量の測定に有用である。検査には呼吸操作への協力が必要であり、「に協力できない患者向け」ではない。

圧‐流量ループは、正常、上気道などの中枢性閉塞、不均一な気道閉塞、喘息のような対称性閉塞、肺気腫にみられる呼気時虚脱で形が異なる。TLC低下はを確定するが、だけで肺実質性・胸壁性・神経筋性を断定はできない。神経筋性では呼気筋力低下によりRVが増えることがあり、別途測定したと合わせて判断する。

一回呼吸法DLCO

は、微量COと不活性を吸入し、約10秒息止め後の呼気濃度から肺胞‐毛細血管移動を測る。KCOは単位量あたりのCO移動係数で、DLCO = KCO × VAの関係にある。ただしVAが低下するとKCOはに上昇するため、正常または高値のKCOを「低いで補正すればDLCOは正常」と解釈してはならない。1

DLCO 閉塞あり 拘束あり 換気障害なし
低下 肺気腫 ILD、肺切除 肺血管疾患、肺塞栓、肺高血圧、貧血、早期ILD
正常 、喘息、 神経筋・胸膜・胸郭障害、肥満 健常者
上昇 喘息でみられることがある 肥満でみられることがある 、肺胞出血、左→右シャントなど

、COHb(喫煙など)、吸入を考慮して解釈する。VAとKCOはDLCOの構成要素として確認し、VA/TLCが著しく低ければ不均等換気による検査ガスの分布不良も疑うが、VAでDLCOを機械的に「補正」しない。1

アレルギー検査とアナフィラキシー

  • はヒスタミン陽性対照と陰性対照を置く。
  • アレルゲン(allergen-specific IgE)はと曝露歴に合わせて選択し、皮膚試験困難例や全身反応リスクが高い例で有用である。
  • アナフィラキシーでは蕁麻疹、喘鳴、呼吸困難、頻脈、低血圧を来しうる。第一選択は大腿外側へので、ステロイドは救命治療の代替ではない。

まとめ

  • FEV₁/FVC低下は閉塞、TLC低下は拘束を示す。
  • 曲線の形、、DLCOを組み合わせて疾患局在を考える。
  • 固定比や予測値80%のみで判断せず、LLN・zスコアと検査品質を確認する。

出典

  1. 1.ERS/ATS technical standard on interpretive strategies for routine lung function tests(European Respiratory Society / American Thoracic Society・2022)LLNとzスコアによる換気障害の判定、およびDLCO・VA・KCOの統合的解釈閲覧 2026-08-02