Cardiology

Cardiology · B-19

体外循環と人工心肺装置の理論・実際

Theory and practical implementation of extracorporeal circulation and the heart-lung machine

前提:病態
抗凝固薬
前提:正常
心臓のポンプ機能と心拍出量の調節呼吸器系のガス交換と肺循環血液凝固・線溶・生理的抗凝固機構

🧠 全体像は、血液を体外へ導き、酸素化・除去・温度調節などを行って体内へ戻す。ECMOは重症心肺不全を一定期間支える装置、CPBは心臓手術中に心肺機能を代行して静止したを作る装置である。

体外循環回路

とは、患者の循環から血液を取り出し、処理した後に循環へ戻す手技である。体外で血液を運ぶ装置全体をという。

方法 主目的 代表的な使用場面
ECMO(extracorporeal membrane oxygenation) 弱った心臓・肺の補助 心臓手術後、
CPB(cardiopulmonary bypass) 手術中の循環・ガス交換代行との確保

ECMO

ECMOは小型化したであり、が血液をへ送り、肺のガス交換、方式によっては心臓の循環機能も代行する高度生命維持療法である。

VA-ECMOとVV-ECMO

方式 支持する機能
静脈動脈ECMO(veno-arterial ECMO; VA-ECMO) などからし、ポンプとを通した後、末梢型ではから・大動脈へ逆行性、中枢性型では 心機能と肺機能;を維持
静脈静脈ECMO(veno-venous ECMO; VV-ECMO) 静脈系からし、酸素化後に静脈系へ 主に肺のガス交換
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='large venous cannula'>大口径静脈カニューレ</span>から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood drainage (ECMO outflow from patient)'>脱血</span>"] --> B["ポンプ"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membrane oxygenator'>膜型酸素化装置</span>"]
    C --> D["CO2除去・酸素化"]
    D --> E["VA:大動脈へ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood return (ECMO inflow to patient)'>送血</span><br>VV:静脈へ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood return (reinfusion to the patient)'>返血</span>"]
    E --> F["循環・ガス交換を補助"]

VA-ECMOは肺のガス交換とを同時に補助でき、選択された難治性などで用いる。ただし、早期ルーチン導入が保存的初期戦略より転帰を必ず改善するとはいえず、原因、回復可能性、合併症と橋渡し目標を評価して選択する。1 一方、VV-ECMOは患者自身の心拍出でを全身へ送るため、主にガス交換を補助する。

利点と欠点

利点 欠点・合併症
完全な循環補助と酸素化 が基本だが、原資料の「最大約1週間」は固定上限ではなく、回復・と合併症で期間を個別化
による末梢挿入 が必要
比較的導入しやすく、患者搬送が可能 、膜の寿命の
、出血、溶血、血栓塞栓症、感染、敗血症

⚠️ 強力な循環補助である一方、血液が異物表面に接触するため出血と血栓の両方が問題となり、末梢挿入ではにも注意する。

人工心肺装置

CPBは、拍動する心臓では手術が難しいため、心臓手術中に循環・酸素化を代行して心停止下のを作る。

  1. が右心房、大静脈、またはへ静脈を置く。
  2. で静脈血を体外へ導く。
  3. 血液をろ過し、冷却・加温を行い、で酸素化する。
  4. 機械ポンプにより、の動脈からを体内へ戻す。
  5. 回路内凝固を防ぐためヘパリンを投与し、抗凝固効果を監視して回路・患者条件に調整する。終了後はを避けながら硫酸塩で作用を拮抗する。2

模式図の主経路は、静脈カニューレ → 静脈リザーバー → ポンプ → 膜型酸素化装置/熱交換器 → 動脈カニューレ である。へ空気/酸素を供給してCO₂除去と酸素化を調整し、を介して血液温を制御する。は一般的なCPB回路に加わり得る構成要素だが、この模式図自体には明示されていない。リザーバーはの変動を受ける一方、回路全体で空気混入、血液損傷、凝固・炎症反応を管理する必要がある。

低体温法

低体温を用いる場合はCPB回路で血液を冷却し、と全身のを減らす。原資料の28–32°Cはの一例であり、通常の成人心臓手術の全例をこの温度にするわけではない。ほぼ正常体温、軽度/中等度/高度低体温を手術内容、循環停止の要否、臓器保護とから選択し、も慎重に行う。

💡 CPBの構成要素は「 → ろ過・温度調節 → 膜型酸素化 → ポンプ」。低体温は臓器の酸素消費を下げ得るが、利益と適温は術式・循環・臓器保護法に依存する。3

適応

  • CABG。
  • 心臓/置換術。
  • 大きな中隔欠損

まとめ

  • ECMOとCPBはいずれもで血液を処理してする。
  • VA-ECMOは循環と酸素化、VV-ECMOは主に酸素化を支える。
  • CPBは中の静止を作り、・酸素化・温度調節・ポンプを代行する。
  • ヘパリンによる抗凝固、による拮抗、低体温による低下が実施上の要点である。

出典

  1. 1.Extracorporeal Membrane Oxygenation in the Therapy of Cardiogenic Shock: Results of the ECMO-CS Randomized Clinical Trial(Circulation・2023)急速に悪化する心原性ショックで早期ルーチンVA-ECMOが直ちに開始する保存戦略より主要転帰を改善しなかったこと閲覧 2026-08-09
  2. 2.STS/SCA/AmSECT Clinical Practice Guidelines: Anticoagulation During Cardiopulmonary Bypass(Society of Thoracic Surgeons / Society of Cardiovascular Anesthesiologists / American Society of ExtraCorporeal Technology・2018)人工心肺中のヘパリン抗凝固とプロタミン拮抗を標準化し患者・回路条件へ調整すること閲覧 2026-08-09
  3. 3.Role of Hypothermia in Adult Cardiac Surgery Patients: A Systematic Review and Meta-analysis(Journal of Cardiothoracic and Vascular Anesthesia・2022)成人心臓手術の人工心肺中低体温による臓器保護効果が術式・温度戦略に依存すること閲覧 2026-08-09