Dermatology

Dermatology · 2-17

第一期梅毒と鑑別診断

Primary Syphilis and Differential Diagnosis

前提:病態
トレポネーマ属
疾患
梅毒

🧠 全体像は、が侵入部位で増殖し、無痛性潰瘍であると所属リンパ節腫脹を来す早期梅毒である。典型像だけに頼らず、病変からの直接検出と血清学的検査を組み合わせ、疑えば結果を待つ間にも感染拡大を防ぐ。1

感染から発症まで

梅毒は主に性的接触で、粘膜や微小損傷から感染する。、血液曝露も起こり得る。感染リスクは性的指向ではなく、感染者との接触様式、パートナー数、で覆われない病変への曝露などで評価する。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Treponema pallidum'>梅毒トレポネーマ</span>が皮膚・粘膜から侵入"] --> B["局所で増殖し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphatic'>リンパ行性</span>・血行性に播種"]
  B --> C["潜伏期:おおむね10〜90日"]
  C --> D["侵入部位に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulcus durum / chancre'>硬性下疳</span>"]
  D --> E["無治療でも数週で自然消退し得る"]
  E --> F["感染は残存し第二期・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='latent syphilis'>潜伏梅毒</span>へ進行"]

典型的な臨床像

所見 特徴 注意点
初期 暗赤色の丘疹・から始まる 陰部、肛門周囲、口腔など接触部位に生じる
境界明瞭で底が清浄、軟骨様に硬い無痛性潰瘍 多発、疼痛性、非性など非典型例もある
所属リンパ節腫脹 両側性・弾性硬・通常無痛、化膿しにくい 病変出現後に目立つことがある

典型例でも潰瘍が自然消退するため、「治癒した」と判断してはならない。口腔・直腸・子宮頸部など、本人が気づきにくい部位の病変もある。

鑑別診断

疾患 鑑別の手掛かり
有痛性の群生小水疱・びらん・浅い潰瘍、再発性
有痛性で軟らかく、汚い膿性底をもつ潰瘍。圧痛を伴う化膿性リンパ節炎
一過性の小潰瘍後に疼痛性リンパ節腫脹または
同一部位に反復し、薬剤曝露と時間的関連がある
外傷・悪性腫瘍 経過、、出血、治癒遅延を確認し、必要なら生検

外見だけでは確定できず、複数感染が併存することもあるため、必要に応じて、淋菌、クラミジアも検査する。

診断

  1. 診断の標準は(RPR・VDRL)とトレポネーマ検査(TPPA・TPHA・EIAなど)を組み合わせた血清学的検査である。2
  2. 潰瘍・滲出液では、利用できれば、またはで病原体を直接検出する。直接検出法の利用可能性は施設により異なり、口腔内検体の暗視野法はトレポネーマとの鑑別が困難である。13
  3. ごく早期には血清反応が陰性になり得る。臨床的疑いが強ければ治療を考慮し、短期間で再診・再検査する。3
  4. 神経、眼、耳症状があれば病期にかかわらずを評価する。

治療とフォロー

第一期・第二期・の第一選択は、G(benzathine benzylpenicillin)240万単位の単回投与である。4 妊娠中に胎児感染を確実に予防できる治療はペニシリンのみで、アレルギーがあれば後に投与する。神経・眼・は別レジメンの水性結晶静注を要する。

治療後は一過性の発熱、悪寒、頭痛、筋痛を来す(Jarisch–Herxheimer reaction)を説明する。早期梅毒では約4人に1人にみられ、多くは治療後12時間以内に出現して短時間で軽快する。これはペニシリンアレルギーではない。5 RPRまたはVDRLの力価を同じ検査法で追跡し、パートナーへの通知・検査・治療と、感染性病変が治癒しパートナー治療が完了するまでの性行為回避を行う。

⚠️ 古い連日少量ペニシリン療法やを挟む反復療法は、現在の標準治療ではない。

まとめ

  • の典型は無痛性で硬いであるが、非典型例も多い。
  • 潰瘍が自然消退しても感染は持続する。
  • 直接検出と2系統の血清検査を組み合わせ、ごく早期の偽陰性を考慮する。
  • 早期梅毒はG 240万単位筋注1回が標準である。

出典

  1. 1.Syphilis in Dermatology: Recognition and Management(2023)第一期梅毒の典型像は一過性の無痛性硬性下疳であり、診断では直接検出法も利用できるがトレポネーマ検査と非トレポネーマ検査による血清学的検査が優先されることを確認した。閲覧 2026-08-13
  2. 2.CDC Laboratory Recommendations for Syphilis Testing, United States, 2024(2024)梅毒の血清学的診断では非トレポネーマ検査とトレポネーマ検査をアルゴリズム内で併用し、直接検出法は発展途上の補助的手段であることを確認した。閲覧 2026-08-13
  3. 3.Is dark-field microscopy still useful for the primary syphilis diagnosis in the 21st century?(2022)第一期梅毒の初期には血清学的検査が陰性になり得て、暗視野顕微鏡による直接検出が早期診断を補うことを確認した。閲覧 2026-08-13
  4. 4.Treatment of syphilis: a systematic review(2014)早期梅毒ではベンザチンペニシリンG 240万単位の筋注単回投与を支持するエビデンスがあり、ペニシリンGが治療の中心であることを確認した。閲覧 2026-08-13
  5. 5.Jarisch-Herxheimer Reaction After Benzathine Penicillin G Treatment in Adults With Early Syphilis: Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial(2025)早期梅毒へのベンザチンペニシリンG投与後、約4人に1人で短時間のヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応が起こり、多くは12時間以内に発症することを確認した。閲覧 2026-08-13