Genetics

Genetics · 2.4

細胞遺伝学 II

Cytogenetics II

タグ
W3Practice / 実習
疾患
WAGR症候群Williams症候群プラダー・ウィリー症候群

🧠 このセミナーは「を見て、で正しく記述できるか」を鍛える実技編として読む。 前半は・トリソミー・)のと実例、後半は(欠失・重複・・転座・)のの略号を、実際の症例カリオグラムに当てはめて読み解く。

数的染色体異常の種類

の一種。

分類 定義
(n)の正確な倍数 (n):配偶子、(2n):体細胞
の倍数ではない (2n−2)、(2n−1)、トリソミー、
(異常) セット全体の倍加

常染色体トリソミーの核型表記

核型 疾患
47,XX+21 または 47,XY+21
47,XX+13
47,XY+18
47,XY+16 最も頻度の高い常染色体トリソミー——生存不可能で流産に至る

「最も頻度の高い常染色体トリソミー」は生きて生まれてこない。 47,+16はの原因として最多の常染色体トリソミーだが、な胎児として出生することはない——「頻度が高い=臨床でよく見る」わけではなく、ゆえに臨床現場では「見えない」トリソミーであるという

性染色体数的異常の核型表記

核型 疾患
47,XXY (M-FISH:ピンク=X特異的プローブ、緑=Y特異的プローブで確認)
47,XXX トリプルX症候群
45,X
47,XYY ダブルY症候群(“superman”、Jacobs症候群)
69,XXY ——

構造的染色体異常のISCN命名法

が定める略号を核型記述に用いる。

略号 意味 略号 意味
del 欠失 add 付加
der dn de novo(非遺伝性、新生変異)
dup 重複 fra
ins 挿入 dic
inv idic
i / iso mar
p / q mos モザイク
qh+ 周囲過剰(多型) mat / pat
r rcp 相互
rob rea 再構成
t 転座 rec 組換え染色体
tel テロメア ter
UPD trp 染色体分節の

💡 qh+は「病気」ではなく「多型」。 1番・9番・16番・Y染色体は周囲に過剰なをもつ集団内変異を示すことがあり(例:Yqh+、1qh+、9qh+、16qh+)、これは臨床的意義のないとして扱われる——のようにみえても病的意義をもたない例。

構造的染色体異常の実例

核型表記 異常 疾患・所見
46,XY,dup(7)(q11.2q22) 重複
46,XY,del(5)(p13) 02-2-chromosomal-aberrations参照)
46,XX,del(1)(q24q31) 正常(臨床的意義なし)
46,XY,del(15q11-q13)
46,XY.ish del(7)(q11.23q11.23) FISHで検出された ウィリアムズ症候群遺伝子を含む領域の欠失)

症例:プラダー・ウィリー症候群

15番染色体の(46,XY,del(15q11-q13))による——欠失領域は5Mb未満で、(分解能約5Mb)ではをもって検出できない。臨床像:、手足が小さい(acromicria)、による肥満。

⚠️ はG分染では見逃されうる——FISHでの確認が必須。 のような5Mb未満の欠失は通常のの分解能限界(約5Mb)を下回るため、臨床的に強く疑う場合は特異的プローブ+15q領域内の2つの異なるユニーク配列プローブを用いたFISHで確認する必要がある。

逆位の2型

特徴
inv(7) FISHプローブの色の並び順が変化することで検出
inv(9)(p11q13) ヒトゲノムで最初に十分に文書化された構造多型の1つ、一般集団に高頻度に存在し増加と関連

転座

vs t(7;21)(q;p)は、の総量が変化しなければ「」と呼ばれる——世代を超えて伝達されるとの子孫を生むリスクを負う。

は転座の臨床的意義を象徴する教科書的一例(02-2-chromosomal-aberrations参照)。 t(9;22)(q34;q11)により、9番染色体のABL(アーベルソンマウス白血病原、チロシンキナーゼ)が22番染色体のBCR(break point cluster)に隣接し、BCR-ABL融合タンパクを生む——の分子基盤。/M-FISHで9番(白)・22番(紫)の重なり合う蛍光シグナルとして検出できる。

ロバートソン転座とダウン症候群の家系伝達

flowchart TD
  A["母親:45,XX,t(14;21)(q;q)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='balanced'>均衡型</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Robertsonian translocation'>ロバートソン転座</span>保因者"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gametogenesis'>配偶子形成</span>"]
  B --> C["トリソミー21配偶子 → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='Down syndrome'>ダウン症候群</span>児"]
  B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monosomy'>モノソミー</span>21配偶子 → 流産"]
  B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='balanced translocation'>均衡型転座</span>保因の配偶子 → 健康(保因者)"]
  B --> F["正常配偶子 → 健康"]

実例: 46,XY,t(14;21)+21——前で示された母親(45,XX,t(14;21)(q;q)、保因者)から生まれた児の核型。保因者のでは、トリソミー型()・型(流産、miscarriage)・保因(健康だがを伴いうる)・正常型(健康)の4通りの帰結が生じうる。

環状染色体・等腕染色体

の例: 46,XX,r(14)(p11.2q32)——異常な複製の帰結として、連結した2つの・重複した1つの・2つの環に分離、という複数のパターンが生じうる。

の例: 47,XX,i(X)(p)——i(X)(p)はX染色体のみからなる。47,X,i(Xq),Y(の亜型)のように、が組み合わさる症例もある。

まとめ

  • 数的染色体異常はの一種で、)・)に分類され、47,+16は最も頻度の高い常染色体トリソミーだが必ず流産に至る。
  • を記述する国際で、del/dup/inv/t/r/i/robなどの略号を核型表記に組み込む。qh+は病的意義のない
  • (15q11-q13欠失)・ウィリアムズ症候群(7q11.23欠失)はG分染の分解能限界(約5Mb)を下回るで、FISHによる確認が必須。
  • 転座は量不変)とに分かれ、(BCR-ABL融合)はその臨床的意義を象徴する。保因者のはトリソミー・保因・正常型という4通りの帰結を生む。
  • は異常な複製パターン(連結環・重複環)を、は特定の腕のみからなる染色体を生む——いずれも核型表記から機序を読み解く実技力が問われる。