組織学

組織学 · 13.5

内分泌:びまん性内分泌系

Endocrine system — Diffuse endocrine

疾患
G細胞過形成

🧠 びまん性は「独立した腺を作らず、上皮の中に単独の細胞としてバラに散らばるの集合体」と覚える。 甲状腺や副腎のように“塊”を作るとは対照的に、消化管・気道の上皮に1個ずつ紛れ込んでホルモンを分泌する——「塊の内分泌」と「散在する内分泌」という対比がこの分野の出発点。

びまん性内分泌系の概念

びまん性は、消化管・気道などの上皮内に単独で散在する(, enteroendocrine cells)の総称で、かつてはAPUという概念でまとめられていた。

flowchart TD
  A["びまん性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endocrine system'>内分泌系</span>(DNES)の細胞"]
  A --> B["消化管の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='enteroendocrine cell, EEC'>腸内分泌細胞</span>"]
  A --> C["気道の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='small granule cells'>小顆粒細胞</span>"]
  A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='islet'>膵島</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='enteroendocrine cells'>内分泌細胞</span>(局所的には塊を形成するが由来は共通)"]

消化管の腸内分泌細胞:分泌様式

は分泌の方向によって2種類に分けられる。

型 分泌の方向 特徴
頂端面が管腔に接し、の化学的刺激(栄養素など)を直接感知して分泌 消化管に多い(、I細胞など)
頂端面が管腔に接せず、容物ではなく機械的伸展・神経性・血流側からの刺激に応答 の産生細胞(X/A様細胞)など

代表的な腸内分泌細胞とホルモン

細胞 分泌ホルモン 主な作用
の促進(09-4-stomach)
膵分泌の促進
I細胞 () 分泌・の促進(10-4-gallbladder)
ソマトスタチン 他の分泌の抑制

⚠️ の代表例としてを挙げない。 のは、ヒト・イヌ・ツパイのいずれでも頂端が管腔に達する典型的な錐体形を示し、に分類される1。のはっきりした例はの産生細胞(X/A様細胞)で、管腔に届かないかわりに血流側の栄養素を感知する受容体(T1R3)を備えている2——「管腔を味わう」と「血液を味わう」という対比で覚えるとよい。

⭐ DNEは形態学的に「上皮の中に1個ずつ紛れ込んでいる」ため、H&Eでは周囲の・と区別がつきにくく、(00-3-immunolabeling-molecular)による特異的マーカー(など)の染色で初めて可視化できる——「塊を作る」と違い肉眼的な構造物として認識できない点が、DNESという概念そのものの存在理由になっている。

💡 かつてのAPUD概念(アミン前駆体を取り込みしてアミン・を産生するという生化学的な共通性でまとめる考え方)は、現在では発生学的な単一起源を意味しないことが分かっている——DNEは内胚葉由来の消化管上皮由来のものと、神経堤由来(副腎髄質のなど、13-3-adrenal-suprarenal)のものが混在しており、「機能的な共通性」でまとめられた分類であって「単一起源の細胞群」ではない点を混同しないよう注意。

⚠️ APUD概念のどこが否定されたのかを具体的に押さえる。 Pearseの当初の主張は「APUD系列の細胞はすべて神経堤由来である」という単一の発生起源の仮説だった。これを検証したのがウズラ‐ニワトリ実験で、菱脳部の神経管(を含む)をウズラのものに置換しても、のA細胞・B細胞・にはウズラ核マーカーが現れず、菱脳を切除しても全種類の細胞が形成された3。胚での一連の研究を通じ、消化管はでも他の外胚葉でも中胚葉でもなく内胚葉から生じることが明確になっている4。したがって否定されたのは「起源」であって、「アミン前駆体を取り込む」という生化学的性質や、など共通マーカーで括れるという事実そのものではない——だからこそ機能的枠組みとしてのDNESは今も使われる。

まとめ

  • びまん性は消化管・気道などの上皮内に単独で散在するの総称で、かつてAPUと呼ばれた。
  • は容物を直接感知すると、機械的・神経性刺激に応答するに分けられる。
  • ()・()・I細胞・(ソマトスタチン)が代表的。
  • DNEは免疫染色でなければ可視化できず、発生学的には内胚葉由来・神経堤由来が混在する機能的分類である。APUD概念のうち否定されたのは「全て神経堤由来」という起源仮説で、消化管は内胚葉由来である。

出典

  1. 1.Co-localization of xenopsin and gastrin immunoreactivity in gastric antral G-cells(Histochemistry・1986)ヒト・イヌ・ツパイの胃前庭部粘膜でガストリン免疫反応陽性のG細胞は典型的な錐体形をとり開放型に分類される閲覧 2026-08-24
  2. 2.T1R3 is expressed in brush cells and ghrelin-producing cells of murine stomach(Cell and Tissue Research・2010)マウス胃粘膜のグレリン産生内分泌細胞は管腔に達しない閉鎖型で、T1R3を発現し管腔ではなく血流側から化学的入力を受けると考えられる閲覧 2026-08-24
  3. 3.An experimental investigation into the possible origin of pancreatic islet cells from rhombencephalic neurectoderm(Journal of Embryology and Experimental Morphology・1979)ウズラ‐ニワトリキメラで菱脳部神経管を置換しても膵島のA細胞・B細胞・D細胞にウズラ核マーカーは現れず、膵島内分泌細胞は菱脳神経外胚葉由来ではなく内胚葉由来である閲覧 2026-08-24
  4. 4.Gut endocrine cells in birds: an overview, with particular reference to the chemistry of gut peptides and the distribution, ontogeny, embryonic origin and differentiation of the endocrine cells(Progress in Histochemistry and Cytochemistry・1999)ニワトリ・ウズラ胚を用いた実験から、Pearseのアミン前駆体取り込み脱炭酸系列に含められてきた消化管内分泌細胞は神経堤でも他の外胚葉でも中胚葉でもなく内胚葉から生じることが明確に示された閲覧 2026-08-24