組織病理学

組織病理学 · H2-017

多発性骨髄腫(肋骨)

Myeloma multiplex – ribs

描出疾患
多発性骨髄腫

🧠 全体像:(multiple myeloma)は、でが増殖し、と臓器障害を生じる全身性のである。肋骨の多発性は、腫瘍細胞による破骨細胞活性化と骨芽細胞抑制を反映する。

肋骨病変の読み方

2本の肋骨に複数の小さながみられる場合、形質細胞腫よりも全身性骨髄腫の多発性に合う。

観察点 病理学的意味
多発する小さな 骨髄腫に典型的な打ち抜き状の
病変周囲のが乏しい に対する反応性骨形成が弱い
の破壊 腫瘍性形質細胞の増殖と破骨細胞活性化
肋骨痛・圧痛 やを反映
荷重に耐えられないほど骨強度が低下した状態
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clonal plasma cells'>クローン性形質細胞</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Intraosseous'>骨髄内</span>増殖"] --> B["RANKLなどの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone resorption'>骨吸収</span>促進シグナル"]
    B --> C["破骨細胞活性化"]
    A --> D["骨芽細胞機能抑制"]
    C --> E["局所的な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone resorption'>骨吸収</span>"]
    D --> E
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteolytic lesion'>溶骨性病変</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone pain'>骨痛</span>・高Ca血症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pathologic fracture'>病的骨折</span>"]

💡 が乏しいのは、骨芽細胞側が止められているからである。 未治療の形質細胞をで比較すると、で骨の局所病変を検出できなかった36例と検出できた137例(対照45例)を約1万遺伝子中57遺伝子の発現パターンで区別でき、骨芽細胞分化の阻害因子であるWntシグナル拮抗因子DKK1の産生がの存在と関連していた1。破骨細胞が亢進する一方で骨芽細胞が抑えられるため、修復反応としての反応性骨形成()が乏しいままになる。

腫瘍生物学

腫瘍性形質細胞は、完全な免疫グロブリンまたはを単クローン性に産生する。腫瘍の一部ではを巻き込む転座がみられ、代表例はt(11;14)による CCND1、t(4;14)による FGFR3 と NSD2、t(6;14)による CCND3 の制御異常である。共通する結果は経路の活性化だが、すべての症例が同じ転座を持つわけではない。が低いにもかかわらず1・D2・D3のいずれかの発現亢進はほぼ全例でみられ、t(4;14) のようにD型サイクリン遺伝子を直接巻き込まない転座でもCCND2高発現へ収束する2。

全身への影響

機序 主な転帰
骨髄置換 、血小板減少、正常白血球産生低下
正常免疫グロブリン抑制 反復する細菌感染
の過剰 、
単クローン性軽鎖沈着 AL、
高Ca血症、脱水、腎障害の増悪

腎障害をだけで説明しない。骨髄腫ではが重要であり、高Ca血症、脱水、感染、薬剤、などが重なりうる。腎生検を受けた190例では、関連病変が73%(33%、22%、21%)を占め、は9%にとどまった3。

診断の位置づけ

形態だけで、骨髄腫、活動性骨髄腫を区別できない。骨髄中の、血清・尿M蛋白、、画像所見、を統合する。活動性骨髄腫の現行診断は、臓器障害を示すと高進展リスクのを含むSLiM-に基づく。IMWGは2014年に、が無ければ骨髄腫とされていた患者のうち、ほぼ確実にへ進展することが検証されたを持つ群を、治療を要するの定義へ取り込んだ4。詳しい基準と骨髄像は H2-013: で確認する。

まとめ

  • 肋骨の多発性は、破骨細胞活性化と骨芽細胞抑制の組み合わせで生じる。
  • M蛋白は腫瘍性形質細胞が産生し、骨髄抑制、免疫不全、腎障害を伴いうる。
  • 溶骨像だけで活動性骨髄腫を確定せず、骨髄、蛋白検査、画像、SLiM-を統合する。

出典

  1. 1.The role of the Wnt-signaling antagonist DKK1 in the development of osteolytic lesions in multiple myeloma(The New England Journal of Medicine・2003)未治療多発性骨髄腫の精製形質細胞の遺伝子発現プロファイルで、MRIで骨の局所病変を検出できなかった36例と検出できた137例(対照45例)を約1万遺伝子中57遺伝子の発現パターンで区別でき、骨芽細胞分化の阻害因子であるWntシグナル拮抗因子DKK1の骨髄腫細胞による産生が溶骨性病変の存在と関連していたこと閲覧 2026-08-24
  2. 2.Cyclin D dysregulation: an early and unifying pathogenic event in multiple myeloma(Blood・2005)多発性骨髄腫では増殖能が低いにもかかわらず、ほぼ全例でサイクリンD1・D2・D3のいずれかの発現亢進・調節異常がみられること。転座はCCND1(11q13)やCCND3(6p21)を直接、あるいはCCND2を標的とするMAF(16q23)・MAFB(20q11)を介して調節異常を起こし、t(4;14)を伴う例と伴わない例のいずれもCCND2高発現を示しうること。すなわち単一の転座で全例を説明できず、サイクリンD経路の異常が共通の早期事象であること閲覧 2026-08-24
  3. 3.Clinicopathologic correlations in multiple myeloma: a case series of 190 patients with kidney biopsies(American Journal of Kidney Diseases・2012)多発性骨髄腫で腎生検を受けた190例では、パラプロテイン関連病変が73%を占め、内訳は軽鎖円柱腎症33%、単クローン性免疫グロブリン沈着症22%、アミロイドーシス21%であったこと。パラプロテイン非関連病変は25%で、その最多が急性尿細管壊死9%、次いで高血圧性細動脈硬化6%、糖尿病性腎症5%であったこと閲覧 2026-08-24
  4. 4.International Myeloma Working Group updated criteria for the diagnosis of multiple myeloma(International Myeloma Working Group / The Lancet Oncology・2014)MGUS・くすぶり型・症候性骨髄腫の境界に、骨髄クローン性形質細胞60%以上/血清遊離軽鎖比100以上(増加側FLC 100 mg/L以上)/MRI局所病変2個以上というSLiM基準を追加し、CRABが無くてもこれらを満たせば治療対象の骨髄腫(骨髄腫定義事象)と診断すると定めた。閲覧 2026-08-24