組織病理学

組織病理学 · H2-018

脾臓の結節性リンパ系浸潤

Nodularis lymphoid infiltratio – spleen

🧠 全体像:脾臓に不整な淡色結節が多発する場合、(Hodgkin lymphoma)やびまん性B細胞リンパ腫を含むリンパ系腫瘍の浸潤を考える。ただし、肉眼的な「結節」だけでは腫瘍型やの組織学的亜型を確定できない。

肉眼像と用語

所見 解釈
赤褐色の脾実質 残存するを反映
不整な灰白色・淡色結節 腫瘍性リンパ系細胞の、壊死、線維化などを考える
結節の多発・融合 進行した脾浸潤でみられうる
斑状の 歴史的にと表現されることがある

斑岩脾は、暗赤色の脾実質に灰白色から黄白色の腫瘍結節、壊死、線維化が混在する斑状の肉眼像を指す。形を単に「ソーセージ状」と覚えるより、色調の異なる病変が斑岩のように混在する所見として理解する。

診断への流れ

flowchart TD
    A["脾臓の結節性リンパ系浸潤"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='architecture'>組織構築</span>と細胞像を評価"]
    B --> C["大型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aberrant cell type'>異型細胞</span>が散在し反応性背景が豊富"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hodgkin lymphoma, HL'>ホジキンリンパ腫</span>を検討"]
    B --> E["大型B細胞が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sheet-like'>シート状</span>・びまん性に増殖"]
    E --> F["DLBCLを検討"]
    B --> G["反応性濾胞構築が保たれる"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reactive hyperplasia'>反応性過形成</span>を検討"]
    D --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Immunophenotype'>免疫表現型</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical stage (cTNM)'>臨床病期</span>を統合"]
    F --> I
    H --> I

主な鑑別

病態 細胞・構築 の要点
少数のホジキン細胞・と多彩な反応性背景 陽性、CD15はしばしば陽性、PAX5は弱陽性1
大型がびまん性または結節状に増殖 CD20、PAX5などB細胞マーカーを評価
極性やマントル層を伴う濾胞構築 を支持する所見
など小型B細胞リンパ腫 既存濾胞を中心とするの状浸潤との。浸潤を伴う cyclin D1・CD43で、IgD・の染色パターンで、CD23・CD43でを除外
・感染性肉芽腫 上皮性細胞集塊や 、感染検索などを病態に応じ追加

⚠️ 「結節性」は大型細胞の腫瘍だけの所見ではない。 は、既存濾胞を中心とするの状浸潤にのが付き、程度の異なる浸潤を必ず伴うという基本像をとる。ただしこの状パターンと辺縁帯様分化はやでも高頻度にみられ、やでも起こるため、パターンだけでは決まらない。鑑別に効くのは結節を構成する細胞の細胞学的組成(の、の性、のとの混在、の小型リンパ球と前リンパ球の)と免疫染色である2。

💡 脾のリンパ系腫瘍は分類体系ごとに整理が変わっている。 -HAEM5(2022)は脾のB細胞リンパ腫・白血病を、(HCL)、(SMZL)、著明な核小体を伴う脾B細胞リンパ腫/白血病(SBLPN)、脾原発びまん性小型B細胞リンパ腫(SDRPL)の4病型に再編した3。SBLPNは、旧来のとCD5陰性を置き換えて新設された病型で、類似の形態を示すごくまれなの症例も吸収している3。⚠️ 同じ2022年の(ICC)はこの統合を行わず、とを別々の病名のまま維持しているため、分類名を書くときは-HAEM5とICCのどちらの体系に拠るかを添える4。

⚠️ 形態だけでこの4病型を分け切れるわけではない。 -HAEM5は骨髄について、SDRPLが洞内優位パターン、SMZLとSBLPNがより多様な、HCLが化を伴う典型的なびまん性パターンをとると整理し、標本が無いと各病型の区別が常にできるとは限らないと明記している3。脾の結節性リンパ系浸潤という所見から病型名まで一気に降りない。

脾臓は二次リンパ器官であり、を一律に「節外病変」と呼ぶのは正確でない。リンパ腫の型とに従って位置づける。

移植後や先天性・後天性免疫不全を背景とする場合は、関連を含む免疫不全関連も鑑別に加える。病変の名称は免疫状態、発症時期、検査、組織型を統合して決める。

結節硬化型との関係

は、太いで区切られた結節とを特徴とする。脾臓に結節があること自体は「」を意味しない。亜型診断には、代表性のある組織での形態、ホジキン細胞・、背景細胞、線維化、の確認が必要である。は H2-014:・、DLBCLは H2-011: で確認する。

まとめ

  • 脾臓の淡色結節はリンパ腫浸潤を示唆するが、肉眼像だけで腫瘍型を決めない。
  • 斑岩脾は、赤褐色実質と灰が混在する歴史的な肉眼表現である。
  • 状の浸潤はの基本像だが、・などでも起こるため、細胞学的組成と免疫染色で決める。
  • -HAEM5の脾B細胞リンパ腫・白血病は4病型(HCL・SMZL・SBLPN・SDRPL)で、旧「」は著明な核小体を伴う脾B細胞リンパ腫/白血病(SBLPN)に改称された。ICCは旧名を維持しているので、体系を明示して書く。
  • の診断には、線維帯、裂隙細胞、が必要である。

出典

  1. 1.Monoclonal antibodies in the diagnosis of Hodgkin's disease. The search for a rational panel(The American Journal of Surgical Pathology・1988)ホジキン病69例のリンパ節生検の検討で、結節硬化型と混合細胞型ではリード・シュテルンベルグ細胞とホジキン細胞のほぼ全例がCD15(Leu-M1)とCD30(Ber-H2)の両方に陽性であった一方、結節性リンパ球優位型のlymphocytic and histiocytic細胞はLN-1全例陽性・EMA多くで陽性でCD15・CD30は陰性という異なる表現型を示したこと閲覧 2026-08-24
  2. 2.A marginal zone pattern may be found in different varieties of non-Hodgkin's lymphoma: the morphology and immunohistology of splenic involvement by B-cell lymphomas simulating splenic marginal zone lymphoma(Histopathology・1998)脾辺縁帯リンパ腫は既存濾胞を中心とする白脾髄の微小結節状浸潤に辺縁帯B細胞の辺縁層が付き、程度の異なる赤脾髄浸潤を必ず伴うこと。同じ微小結節状パターンと辺縁帯様分化は濾胞性リンパ腫・マントル細胞リンパ腫で高頻度に、リンパ形質細胞性リンパ腫・慢性リンパ性白血病でもより低頻度にみられ、鑑別は結節を構成する細胞の細胞学的組成(脾辺縁帯リンパ腫の二相性、マントル細胞リンパ腫の単調性、濾胞性リンパ腫の中心芽細胞と中心細胞の混在、慢性リンパ性白血病の小型リンパ球と前リンパ球の多形性)と免疫染色(マントル細胞リンパ腫はcyclin D1・CD43陽性、濾胞性リンパ腫はIgD欠如やKi-67染色パターン、慢性リンパ性白血病はCD23・CD43陽性)によること閲覧 2026-08-24
  3. 3.The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Lymphoid Neoplasms(World Health Organization Classification of Tumours Editorial Board・2022)Europe PMC の fullTextXML(PMC9214472)で全文を確認した。WHO-HAEM5 の脾B細胞リンパ腫・白血病ファミリーは有毛細胞白血病(HCL)・splenic B-cell lymphoma/leukaemia with prominent nucleoli(SBLPN)・脾原発赤脾髄びまん性小型B細胞リンパ腫(SDRPL)・脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)の4病型からなること。SBLPN は「hairy cell leukaemia variant」と「CD5-negative B-cell prolymphocytic leukaemia」を置き換える新病型で、類似の形態を示すごくまれな脾辺縁帯リンパ腫の症例も吸収したこと。⚠️ 脾摘標本が無いと各病型の区別が常にできるとは限らないと明記していること。骨髄では SDRPL が洞内優位パターンを示すのに対し、SMZL と SBLPN はより多様な増殖パターンをとり、HCL は細網線維化を伴う典型的なびまん性パターンを示すこと。略号は全文を通じて SBLPN の1通りだけで、SLPN は0回である。閲覧 2026-09-08
  4. 4.Untangling hairy cell leukaemia (HCL) variant and other HCL-like disorders: Diagnosis and treatment(Journal of Cellular and Molecular Medicine・2024)Europe PMC の fullTextXML で全文を確認した。WHO第5版(WHO-HAEM5、2022年)が脾リンパ腫・白血病を①有毛細胞白血病②脾辺縁帯リンパ腫③著明な核小体を伴う脾リンパ腫(本総説の表記はSLPN/SBLPN、HCL-VとCD5陰性B前リンパ球性白血病を置き換えたもの)④脾原発赤脾髄びまん性リンパ腫の4病型に再編した一方、逐語で「On the contrary, B-PLL and HCL-V were maintained in the clinical International Consensus Classification」と述べ、国際コンセンサス分類(ICC)ではB-PLLとHCL-Vが維持されたとしていること。有毛細胞白血病がCD103・CD25・CD123に一貫して陽性でBRAF V600E変異を95〜100%に認め単球減少を伴うのに対し、脾辺縁帯リンパ腫はこれらの免疫マーカーが通常陰性でBRAF野生型であること。⚠️ 本総説はHCL-VとB-PLLをまとめることの是非が議論中であるとして、あえてSBLPNではなくHCL-Vの語を用いると明記している。SLPNは本総説独自の略記であり、WHO-HAEM5の本文には現れない。閲覧 2026-09-08