組織病理学

組織病理学 · H2-019

肺アスペルギルス症(HE染色)

Aspergillosis (HE) – LUNG

描出疾患
アスペルギルス症

🧠 全体像:肺(pulmonary aspergillosis)は、と既存肺構造によってアレルギー型、慢性型・、侵襲型に分かれる。HE染色で鋭角に二分岐する隔壁菌糸を捉え、血管壁への侵入、血栓、があれば侵襲性病変を考える。

病型の比較

病型 主な背景 組織侵入
喘息、嚢胞性線維症 原則としてなし
結核などによる既存空洞 菌糸塊が空洞内に存在し、通常は組織侵入に乏しい
慢性肺 、 緩徐な局所進展を伴いうる
侵襲性肺 遷延性好中球減少、造血幹細胞・臓器移植、強い免疫抑制 肺実質と血管へ侵入し、播種しうる

既存空洞内のを「膿瘍」と同一視しない。は壊死物質、粘液、菌糸が空洞内で塊となった病変であり、病変とは病態が異なる。

HE染色で確認する所見

所見 意義
幅が比較的そろった菌糸 糸状菌感染を示唆
隔壁を持つ菌糸 Aspergillusに合う形態
およそ45度の鋭角二分岐 典型的だが単独では菌種を確定できない
壊死組織内の菌糸網 活動性の組織侵入を示唆
血管壁内の菌糸 血管侵襲の直接所見
血栓・出血・梗塞 血管侵襲に続く組織障害
flowchart TD
    A["分生子を吸入"] --> B["肺胞・気道に到達"]
    B --> C["好中球・マクロファージによる排除不全"]
    C --> D["菌糸発芽・肺実質侵入"]
    D --> E["血管壁侵入"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombus formation'>血栓形成</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemorrhagic infarction'>出血性梗塞</span>"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hematogenous Spread'>血行性播種</span>"]
    G --> H["脳・腎・心臓などの病変"]

診断と安全性

菌糸のは重要だが、Fusariumなど他の糸状菌も類似しうる1。組織形態に加え、培養、、血清またはの2、画像、免疫不全の背景を統合する。侵襲性病変が強く疑われる免疫不全者では、確定を待つ間に治療開始が必要となることがある。での確認はの、微生物学的全体像はを参照する。

💡 「形態だけで確定しない」の実測値。 単一施設10年の後ろ向き検討では、培養が陽性で同時に外科病理標本が得られた47例のうち、形態から正しく同定できたのは37例(79%)にとどまり、10例(21%)が誤同定だった。内訳は隔壁のある菌糸との取り違え、の誤認などで、誤りは形態的類似・用語の不適切な使用・真菌学の知識不足から生じていた。精度は先行抗真菌薬の有無ともの使用とも相関せず、観察者によらなかった1。も補助にとどまり、血清での感度・特異度は0.5 ODIで82%・81%、1.5 ODIで61%・93%と、閾値を上げるほど感度が落ちる2。

侵襲性肺の初期治療は通常を中心に考え、やなどを患者背景、薬物相互作用、臓器機能、菌種・感受性に応じて選ぶ34。播種例では敗血症性ショックを含む重篤な全身状態へ進みうる。

まとめ

  • HE染色では隔壁を持つ鋭角二分岐菌糸を探す。
  • 血管壁侵入、血栓、梗塞はの中心所見である。
  • と侵襲性病変を区別し、形態だけで菌種を確定しない。

出典

  1. 1.Challenges and pitfalls of morphologic identification of fungal infections in histologic and cytologic specimens: a ten-year retrospective review at a single institution(American Journal of Clinical Pathology・2009)培養陽性かつ同時に外科病理が行われた47例のうち組織・細胞形態から正しく同定できたのは37例(79%)で、10例(21%)は隔壁のある菌糸と無隔壁菌糸、酵母形の取り違えなど形態的類似による誤同定だった。精度は先行抗真菌薬の有無(P=.14)とも特殊染色の使用(P=.34)とも相関しなかった閲覧 2026-08-24
  2. 2.Galactomannan detection for invasive aspergillosis in immunocompromised patients(Cochrane Database of Systematic Reviews・2015)血清ガラクトマンナンの診断精度は54研究5660例のメタ解析でカットオフ0.5 ODIのとき感度82%・特異度81%、1.0 ODIで感度72%・特異度88%、1.5 ODIで感度61%・特異度93%であり、単独では確定にも除外にも不十分閲覧 2026-08-24
  3. 3.Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Aspergillosis: 2016 Update by the Infectious Diseases Society of America(Infectious Diseases Society of America・2016)慢性肺アスペルギルス症と侵襲性肺アスペルギルス症の診断、治療薬、治療期間閲覧 2026-08-02
  4. 4.Diagnosis and treatment of invasive pulmonary aspergillosis in critically ill intensive care patients: executive summary of the German national guideline (AWMF 113-005)(German national guideline group・2025)重症患者の侵襲性肺アスペルギルス症ではCTと気管支肺胞洗浄を用いて診断し、ボリコナゾールまたはイサブコナゾールを第一選択とすることを確認した。閲覧 2026-08-09