組織病理学

組織病理学 · H2-083B

胞状奇胎

Mola hydatidosa

描出疾患
妊娠性絨毛性疾患(胞状奇胎・絨毛癌)

🧠 全体像:(hydatidiform mole)は異常受精により生じるで、絨毛の水腫性腫大と栄養膜増殖を示す。とでは遺伝学、胎児成分、形態、持続性病変リスクが異なる。

発生

flowchart TD
    A["母体核を欠く<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ovum'>卵子</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paternal'>父性</span>ゲノムのみの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diploid'>二倍体</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complete hydatidiform mole'>全胞状奇胎</span>"]
    D["正常<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ovum'>卵子</span>への二精子受精など"] --> E["二<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paternal'>父性</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='triploid'>三倍体</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='partial hydatidiform mole'>部分胞状奇胎</span>"]
項目
核型 多くは由来 多くは二
胎児成分 形成しない 認めうる
絨毛 びまん性水腫、血管に乏しい 水腫性・線維性絨毛が混在
栄養膜 びまん性・増殖 ・軽度〜中等度
p57 陰性 陽性
持続性病変(奇胎後GTN) 部分奇胎より高く、約20% 全奇胎より低く、1〜4%1

の多くは一精子受精後の染色体重複で46,XXとなり、二精子受精による46,XYもある。部分奇胎は69,XXYに限らず、ほかの核型もありうる。

💡 p57は「ほぼ」当たるが、例外の向きを覚えておく。 前向き2217例の検討ではの99.8%(563/564)がp57陰性、の99%(481/486)が陽性だった。例外は11番染色体が残存した全奇胎(p57陽性)と、11番染色体を失った部分奇胎(p57陰性)で、いずれもで決着する。p57は・発現遺伝子なので、部分奇胎と非奇胎流産はどちらも陽性となり両者を区別できない2。

臨床と管理

高いβ-、妊娠週数に比して大きい子宮、、甲状腺機能亢進、、両側卵巣のを来しうるが、例では典型像を欠くことも多い。821例をp57とSTR genotypingで再評価したでは、超音波単独の全体正確度は44.38%(全奇胎の感度44.33%、部分奇胎37.5%)、形態のみのでも65.97%(59.11%、κ=0.364)にとどまった3。

生殖年齢の両端では発症リスクが上がるが、年齢だけで診断しない。

吸引法で子宮内容を除去し1、定量β-が正常化するまで、さらに病型とに沿って追跡する。除去後にが正常化した17,424例の全国コホートでは、その後GTNを発症したのは0.2%(31例)で、56日未満で正常化した群ではさらに低かった(0.25)4。追跡中は新規妊娠によるβ-上昇と区別できるよう避妊する。β-の停滞・などではを評価する。詳細はを参照する。

まとめ

  • 全奇胎は・p57陰性、部分奇胎は二・p57陽性が基本である。
  • 絨毛水腫と栄養膜増殖の分布を比較する。
  • 除去後はβ-を追跡し、持続性病変を見逃さない。

出典

  1. 1.Diagnosis and Surgical Treatment of Hydatidiform Mole(Diagnostics・2025)胞状奇胎の治療の第一選択は吸引法による子宮内容除去である。奇胎後の妊娠性絨毛性腫瘍(GTN)は全胞状奇胎の約20%、部分胞状奇胎の1〜4%に発生し、除去後の連続hCG測定による追跡が必須である。挙児希望がない例や奇胎後GTNの高リスク例では子宮全摘が適応となりうる。閲覧 2026-08-24
  2. 2.Refined diagnosis of hydatidiform moles with p57 immunohistochemistry and molecular genotyping: updated analysis of a prospective series of 2217 cases(Modern Pathology・2021)前向き2217例のうち2080例(94%)が分類可能で、全胞状奇胎の99.8%(563/564)がp57陰性、部分胞状奇胎の99%(481/486)がp57陽性だった。例外として母性11番染色体が残存した全奇胎はp57陽性、母性11番染色体を失った部分奇胎はp57陰性となる。genotypingを行った全奇胎153例中5例は両親性(家族性両親性奇胎)で非奇胎と誤分類されうる。閲覧 2026-08-24
  3. 3.Reappraisal and refined diagnosis of ultrasonography and histological findings for hydatidiform moles: a multicentre retrospective study of 821 patients(Journal of Clinical Pathology・2025)組織学的に胞状奇胎が疑われた821例をp57免疫染色とSTR genotypingによる精密診断を基準として再評価すると、超音波単独の全体正確度は44.38%(全奇胎の感度44.33%、部分奇胎37.5%)、原病理の形態診断のみの全体正確度は65.97%、一致率59.11%(κ=0.364)にとどまった。p57とDNA genotypingを日常診断に組み込むべきである。閲覧 2026-08-24
  4. 4.Monitoring complete hydatidiform molar pregnancies after normalisation of human chorionic gonadotrophin: national retrospective population study(BMJ Medicine・2025)英国2施設の全国コホート17,424例(全胞状奇胎除去後にhCGが正常化した患者)で、その後GTNを発症したのは0.2%(31例)のみだった。hCGが56日未満で正常化した群ではリスクがさらに低く(相対リスク0.25)、確認のための正常hCG 1回で追跡を終えても安全と考えられる。閲覧 2026-08-24