組織病理学

組織病理学 · H2-098B

浸潤性乳癌(非特殊型)の肉眼像

Invasive carcinoma – NST (image)

描出疾患
乳癌

🧠 全体像:「」という疾患名だけでは、標本固有の腫瘤径、性状、周囲組織との関係を確定できない。診断では、実際に観察できる肉眼・組織所見に基づいて評価する。

診断できる範囲を守る

根拠 判断できること 判断できないこと
疾患名のみ NSTが学習対象であること 個々の標本の腫瘤径、性状、周囲組織への進展範囲
肉眼形態 境界不明瞭で硬い腫瘤という一般的性状 実際の色調、壊死・出血の有無
組織形態 腺管形成、、の一般像 標本固有のグレード、、断端の状態

形態的根拠が示されていない状態で、腫瘤の色調、壊死の有無、などの個別所見を推定してはならない。

💡 「浸潤癌かどうか」は比較的ぶれず、その先の細目がぶれる。 米国8州の病理医115人が乳腺生検240症例を判定した研究では、パネルの参照診断とのは浸潤癌で96%と最も高く、84%、48%と、判断が細かくなるほど落ちた1。浸潤癌という大枠の判定は形態所見に基づけば安定するが、グレード・・断端といった細目は標本を実際に見なければ決まらない。

flowchart TD
    A["乳房腫瘤・触知病変"] --> B["肉眼で境界・硬さ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cut surface'>割面</span>を確認"]
    B --> C["組織で腺管形成・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pattern of invasion'>浸潤様式</span>を確認"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='desmoplastic stroma'>線維形成性間質</span>の有無を確認"]
    D --> E["NSTとして評価"]

一般的な確認項目

項目 NSTで典型的な方向性
肉眼 境界不明瞭、灰白色〜黄白色、硬い
触知 により硬い腫瘤として触れる
随伴病変 しばしばを併存する
発生年齢 50歳以降の女性に多い

💡 グレードは肉眼像からも病名からも出てこない。 は腺管形成の割合・核の程度・規定視野面積での分裂像数という3項目を半定量的に採点し、その合計から3段階を導く方式で、1,831例の解析でグレードIはII・IIIより有意に良好な生存を示した(P<0.0001)2。3項目ともでしか採点できないため、肉眼所見や疾患名からグレードを補うことはできない。

これらは疾患一般の確認項目であり、対象標本での実際の所見は個別に確認する必要がある。組織学的特徴・診断・治療の詳細は()、組織型分類全般は乳腺の悪性腫瘍を参照する。

まとめ

出典

  1. 1.Diagnostic concordance among pathologists interpreting breast biopsy specimens(JAMA(Elmore JG, Longton GM, Carney PA, et al.)・2015)米国8州の病理医115人が乳腺生検240症例(浸潤癌23、非浸潤性乳管癌73、異型過形成72、異型を伴わない良性72)を判定し6,900件の診断を得た研究で、専門家パネルの参照診断との全体一致率は75.3%(95%CI 73.4〜77.0)だったこと。カテゴリー別では浸潤癌96%(95%CI 94〜97)、非浸潤性乳管癌84%(95%CI 82〜86)、異型過形成48%(95%CI 44〜52)、異型を伴わない良性87%(95%CI 85〜89)であったこと閲覧 2026-08-24
  2. 2.Pathological prognostic factors in breast cancer. I. The value of histological grade in breast cancer: experience from a large study with long-term follow-up(Histopathology(Elston CW, Ellis IO)・1991)Bloom-Richardson法を改良したNottingham法の組織学的グレードが、腺管形成の割合・核多形性の程度・規定視野面積での正確な分裂像数という3つの形態学的特徴を半定量的に評価し、それぞれの点数の合計から3段階の分化度を導く方式であること。1973年以降に登録された原発手術可能乳癌2,200例超のうちグレード判定された1,831例で、グレードIの患者はグレードII・IIIより有意に良好な生存を示したこと(P<0.0001)。プロトコルを一貫して適用すれば再現性のある結果が得られること。組織学的グレードは腫瘍径・リンパ節病期とともに多因子のNottingham prognostic indexを構成すること閲覧 2026-08-24