Immunology

Immunology · 9.1

抗腫瘍免疫

Antitumor immunity

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W13Lecture / 講義
応用トピック
がん免疫療法の基礎
検査値
CEA

🧠 抗腫瘍免疫は「3つのE」——排除・平衡・——という一本道として読む。 はまず慢性炎症として始まり(「腫瘍とは治らない傷である」)、自然免疫・獲得免疫がまず腫瘍細胞を排除しようとするが(Elimination)、排除しきれない腫瘍細胞は免疫系との膠着状態に入り(Equilibrium)、最終的ににより排除に抵抗性の腫瘍クローンが選択され臨床的な腫瘍として顕在化する(Escape)。この3段階のどこに介入するかが、免疫療法のそのものになる。

腫瘍形成と慢性炎症

慢性炎症はの第一段階。創傷治癒()と(慢性炎症)は、関与する細胞(マクロファージ・肥満細胞・好酸球・線維芽細胞・血小板・内皮細胞)、サイトカイン(CXCL1,2,3,5,8、VEGF、bFGF、TGF-β、PDGF)、基質分解機構(MMP-2、MMP-9、uPA)を共有する。

「腫瘍とは治らない傷である(tumors are never-healing wounds)」——腫瘍学の有名な比喩。 創傷治癒のプログラムが炎症の収束とともに終了するのに対し、腫瘍はこの修復プログラムを乗っ取り、に「治癒しようとし続ける」状態を維持することで自らの増殖・血管新生・浸潤をする。

①排除

自然免疫による腫瘍認識

NK細胞・γδT細胞は細胞ストレス分子を認識する:①ULBP1,2,3(UL16結合タンパク)→NK細胞・γδT細胞の活性化、②MICA(MHC class I関連鎖A)→NKG2Dを介したNK細胞活性化。あるいは、獲得免疫からの回避を逆手にとる形で——MHC発現の消失KIR阻害の解除としてNK細胞が検出する。

殺傷機構: /分泌→アポトーシス、TNF分泌→アポトーシス、FasL-Fas接触→アポトーシス、IFN-α/IFN-γ分泌→アポトーシス(IFN-γはさらにTc/Th1応答を増幅)。Th1したM1マクロファージはを与えTNFでアポトーシスを誘導する。

樹状細胞による危険信号の認識

DAMP 効果
細胞外DNA・RNA DC活性化・成熟
DC成熟
HMGB1(クロマチンタンパク) DCの抗原取り込み・提示
HSP70・HSP90 DCの
DCの貪食

獲得免疫による腫瘍抗原の分類

定義 抗原の例 由来・腫瘍
TAA( 正常遺伝子の再活性化・(正常細胞でも発現) CEA 胎児性抗原、大腸癌
HPV E6/E7 腫瘍ウイルス抗原、
Her2/Neu、 異常抗原、多種のがん
NY-ESO-1/LAGE-1 がん精巣抗原、多種のがん
Melan-A/MART-1 系統限定抗原、
p53、Ras 変異抗原、多種のがん
MUC1 抗原(異常)、
Ig、TCR 抗原、B/T細胞白血病リンパ腫
TSA( 正常細胞には発現しない(例:変異抗原)

⚠️ CD8+ T細胞は腫瘍を直接認識できないという根本的なジレンマ——がその解決策。 ナイーブCD8+T細胞はリンパ節でMHC-Iに載った抗原しか認識しないが、腫瘍由来抗原がAPCに取り込まれると通常はとしてMHC-IIで提示されてしまい、CD8+T細胞には認識されない。この矛盾を解決するのが——特別な条件下でDCがをMHC-Iに載せてCD8+T細胞に提示できる。ただしこれにはCD4+Th1細胞によるCD40L経由の「DCライが前提条件になる——CD8+T細胞だけでは腫瘍を排除できず、Th1細胞の協力が不可欠である所以。

エフェクター機構: T細胞介在性溶解(主にCD8+、/またはFasL-Fas経路)、抗体介在性(、ADCC=FcγRIII経由のNK細胞・マクロファージ活性化——ただし固形腫瘍でのADCCの役割は疑問視されている)。

②平衡

臨床的に顕在化した腫瘍でも、免疫応答は続いている。

💡 T細胞浸潤は予後そのものを予測する——「イムノスコア」の考え方。 大腸癌では腫瘍へのT細胞浸潤の程度が無症状生存期間と相関する。浸潤の乏しい「免疫学的に冷たい(cold)」弱腫瘍から、様の炎症性浸潤を伴う「免疫学的に熱い(hot)」腫瘍まで幅があり、後者はしばしば良好な予後と相関する。

③逃避——7つの機構

# 機構 内容
1 異常な浸潤の動員 正常時(M1マクロファージ・NK・NKT・γδT・CD8+Tc・CD4+Th・成熟DC)→腫瘍排除。異常時(M2マクロファージ・MDSC・肥満細胞・CD25+FoxP3+ Treg・未成熟DC)→腫瘍
2 免疫抑制性サイトカイン産生 IL-10、TGF-β、VEGF
3 抗原提示の阻害 DCの貪食・遊走・MHC発現・分子(CD80/86)発現の阻害。IDO・誘導によるTrp/Arg(T細胞の鍵となる代謝物)枯渇→CD8+T細胞の・アポトーシス、Treg分化、傍観者DCの寛容化
4 T細胞応答の阻害 局所(IDO・IL-10・TGF-β・VEGFによる活性化/阻害)と全身(T伝達への干渉)の両方
5 抗原・脱落・ MHC-I発現低下(CD8+T細胞から隠れる)、抗原/抗体エンドサイトーシス、、物理的バリア(免疫特権的な難浸透性の)、による免疫系の
6 がん幹細胞による防御 腫瘍は不均一だががん幹細胞のみが新規能をもつ(新モデル、旧来の確率論的モデルに代わる)。CSCは①非、②溶解に抵抗性
7 持続する不成功な抗腫瘍免疫応答が、必然的に抵抗性の腫瘍細胞変異体を選択する

」は自然選択そのもの——免疫系自身が最も手強い腫瘍クローンを「育てて」しまう。 排除に成功しない不完全なは、感受性の高い腫瘍細胞クローンを除去する一方で、抵抗性クローンを生き残らせ増殖させる——これが7つのすべての土台にある進化的な論理。

抗腫瘍免疫療法

10種の主要アプローチ:①モノクローナル抗体、②、③、④サイトカイン療法、⑤支持療法、⑥予防的ワクチン接種/療法、⑦、⑧腫瘍ワクチン、⑨養子T細胞療法、⑩ウイルス療法。

FDA承認サイトカイン・関連療法の例

分類
サイトカイン IFN-α、IL-2、TNF-α、G(M)-CSF
支持療法 、G(M)-CSFによる骨髄・好中球保護
予防的療法 HPVワクチン、HBVワクチン(抗腫瘍ウイルスワクチン)、抗菌薬(抗腫瘍細菌療法)、NSAID(炎症抑制、FAP・
免疫系

腫瘍特異的抗体療法:HER2の例

HER2(ヒト受容体2)で、乳癌の5例に1例(最も悪性度の高い腫瘍群)で遺伝子の余剰コピーが存在し、抗体療法の標的になる。抗体の作用機序は多岐にわたる:シグナル拮抗、シグナル誘導、溶解、ADCC、/毒素/との複合体化()。

免疫チェックポイント阻害

現在の腫瘍治療の主力。PD-L1特異的抗体などが代表例(ではPD-1・PD-L1・CTLA-4が主要標的)。

💡 (basal cell carcinomaの治療薬)は「慢性炎症をに変換する」という発想の薬。 TLR7であるは、PAMPsを介して腫瘍誘発性の慢性炎症をへと転換する——(TLR、BCG、その他のPAMPs)を用いた腫瘍免疫療法の一例。

CAR-T細胞療法(現行の抗腫瘍免疫療法)

CAR(、chimeric antigen receptor)T細胞は、TCRの代わりにscFv(一本鎖可変断片)を抗原認識部位として使う——抗原提示やを必要としないという点で、通常のTのルールを完全にバイパスする。との併用療法も現行の重要な治療戦略。

まとめ

  • は慢性炎症として始まり(「治らない傷」)、抗腫瘍免疫は排除→平衡→という3段階(3つのE)で進行する。
  • 排除では自然免疫(NK/γδTのULBP-NKG2D/MICA-NKG2D認識、missing self認識)とDCのDAMP認識が初動を担い、獲得免疫はTAA/TSAという分類とCD8+T細胞の(DCライ必須)を介して腫瘍を攻撃する。
  • 平衡状態ではT細胞浸潤の程度が予後と相関し(イムノスコア)、「熱い」腫瘍と「冷たい」腫瘍のスペクトラムが存在する。
  • は7つの機構(異常浸潤・免疫抑制性サイトカイン・抗原提示阻害=IDO/・T細胞応答阻害・抗原/脱落・がん幹細胞・)からなり、は不完全なが抵抗性クローンを選択する自然選択そのもの。
  • 免疫療法はモノクローナル抗体(HER2等)・免疫阻害・等)・(scFvでMHC非依存的に認識)まで多層にわたり、併用療法が現行の戦略の中心。