微生物学 · 1/4
細菌細胞壁の構造
Structure of the bacterial cell wall
🧠 細胞壁の「機能」はグラム陽性・陰性で共通だが、「層の数と厚み」が逆転する——ここにグラム染色の原理と抗菌薬の効きやすさの両方が宿る。 ペプチドグリカン層peptidoglycan layer ペプチドグリカン層(peptidoglycan layer)peptidoglycan layer(ペプチドグリカン層) が厚い菌(グラム陽性)はクリスタルバイオレット crystal violet クリスタルバイオレット(crystal violet) crystal violet(クリスタルバイオレット) を保持して紫に染まり、薄い菌(グラム陰性)は色素が洗い流されサフラニンで赤く染まる。同じ厚みの差が、ペニシリンやリゾチーム lysozyme リゾチーム(lysozyme) lysozyme(リゾチーム) への感受性の違いにも直結する。
細胞壁の機能
動物細胞と異なり、グラム陽性菌・陰性菌のいずれも細胞質と核を保護する層を複数持つ(1/3参照)。細胞壁の機能Functions of the bacterial cell wall 細胞壁の機能(Functions of the bacterial cell wall)Functions of the bacterial cell wall(細胞壁の機能) は以下の4つ。
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細胞に剛性stiffness剛性(stiffness)stiffness(剛性)を与え、特徴的な形を保持する。
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浸透圧の変化があっても細胞を破裂させない(細胞内浸透圧は細胞外よりはるかに高い)。
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バクテリオファージbacteriophage バクテリオファージ(bacteriophage)bacteriophage(バクテリオファージ) の付着部位を提供する——外表面のテイコ酸 teichoic acid テイコ酸(teichoic acid) teichoic acid(テイコ酸) がその足場 scaffold 足場(scaffold) scaffold(足場) となる。
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鞭毛・線毛・性線毛sex pilus性線毛(sex pilus)sex pilus(性線毛)などの表面付属構造の土台となる(これらはすべて壁から生じ、壁を越えて伸びる)。
壁の基本構造(3層)
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細胞質膜cytoplasmic membrane細胞質膜(cytoplasmic membrane)cytoplasmic membrane(細胞質膜):血漿と細胞壁の間にある二重層 bilayer 二重層(bilayer) bilayer(二重層) のリン脂質膜。哺乳類mammal 哺乳類(mammal)mammal(哺乳類) 細胞と異なりコレステロールなどステロール を含まない。
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ペプチドグリカン層peptidoglycan layerペプチドグリカン層(peptidoglycan layer)peptidoglycan layer(ペプチドグリカン層):N-アセチルグルコサミン N-acetylglucosamineアセチルグルコサミン(N-acetylglucosamine) N-acetylglucosamine(アセチルグルコサミン) とN-アセチルムラミン酸 N-acetylmuramic acid, NAMアセチルムラミン酸(N-acetylmuramic acid, NAM) N-acetylmuramic acid, NAM(アセチルムラミン酸) という2種類の二糖 disaccharide 二糖(disaccharide) disaccharide(二糖) が繰り返し連なった構造で、各NAMから4個のアミノ酸からなる側鎖が伸びる。隣接するペプチドグリカン同士のアミノ酸側鎖は共有結合で架橋され、安定した網目 fishnet 網目(fishnet) fishnet(網目) 構造を形成する。この架橋反応は細胞質膜 cytoplasmic membrane 細胞質膜(cytoplasmic membrane) cytoplasmic membrane(細胞質膜) 内側に存在するトランスペプチダーゼtranspeptidaseトランスペプチダーゼ(transpeptidase)transpeptidase(トランスペプチダーゼ) 酵素によって触媒され、この酵素はペニシリン によって阻害される(1/16)。
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外膜とリポ多糖 lipopolysaccharide (LPS)リポ多糖(lipopolysaccharide (LPS)) lipopolysaccharide (LPS)(リポ多糖):二重層 bilayer 二重層(bilayer) bilayer(二重層) のリン脂質膜で、最外層 outer layer 外層(outer layer) outer layer(外層) にLPSを含む。グラム陰性菌にのみ存在する。
⭐ ペプチドグリカン は本ノート全体で繰り返し登場する用語なので、ここで定義を固定する——NAGとNAMの二糖 disaccharide 二糖(disaccharide) disaccharide(二糖) 繰り返し単位+アミノ酸側鎖の架橋からなる網目 fishnet 網目(fishnet) fishnet(網目) 状の高分子で、細菌に特有(ヒト細胞には存在しない)の構造。この「ヒトに存在しない」という一点が、βラクタム系・グリコペプチド系Glycopeptides グリコペプチド系(Glycopeptides)Glycopeptides(グリコペプチド系) 抗菌薬の選択毒性 selective toxicity 選択毒性(selective toxicity) selective toxicity(選択毒性) の根拠になる。
架橋様式の違い:ペンタグリシン架橋の有無
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グラム陽性菌:側鎖どうしがペンタグリシン架橋pentaglycine bridgeペンタグリシン架橋(pentaglycine bridge)pentaglycine bridge(ペンタグリシン架橋) (Staphylococcus aureus の場合:L-アラニン alanine アラニン(alanine) alanine(アラニン) -D-グルタミン酸-L-リジン L-lysine L-リジン(L-lysine) L-lysine(L-リジン) -D-アラニン D-alanine D-アラニン(D-alanine) D-alanine(D-アラニン) +ペンタグリシン架橋 pentaglycine bridgeペンタグリシン架橋(pentaglycine bridge) pentaglycine bridge(ペンタグリシン架橋))を介して結合する。ペニシリンはこの部位に結合する。
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グラム陰性菌:ペンタグリシン架橋 pentaglycine bridge ペンタグリシン架橋(pentaglycine bridge) pentaglycine bridge(ペンタグリシン架橋) を持たず(E. coli の場合:L-アラニン alanine アラニン(alanine) alanine(アラニン) -D-グルタミン酸-メソ-ジアミノピメリン酸 meso-diaminopimelic acidジアミノピメリン酸(meso-diaminopimelic acid) meso-diaminopimelic acid(ジアミノピメリン酸)-D-アラニン D-alanine D-アラニン(D-alanine) D-alanine(D-アラニン) が直接架橋 cross-bridge直接架橋(cross-bridge) cross-bridge(直接架橋))、この構造の違いに加えて外膜がバリアとなるため、ペニシリンGbenzylpenicillinペニシリンG(benzylpenicillin)benzylpenicillin(ペニシリンG)は作用しにくい。
💡 臨床的には、グラム陰性菌がペニシリンG benzylpenicillin ペニシリンG(benzylpenicillin) benzylpenicillin(ペニシリンG) に抵抗性を示す主因は「架橋様式の違い」そのものよりも、外膜の透過障壁+βラクタマーゼ産生(1/23)の寄与が大きい。この講義の説明は「なぜ架橋部位に薬が届きにくいか」の第一歩の理解として押さえておく。
💡 架橋様式の対比そのものは現行の知見と一致する。 グラム陽性の S. aureus は側鎖3位のL-リジン L-lysine L-リジン(L-lysine) L-lysine(L-リジン) とD-アラニン D-alanine D-アラニン(D-alanine) D-alanine(D-アラニン) の間をペンタグリシンが橋渡しし、E. coli では3位がメソ-ジアミノピメリン酸 meso-diaminopimelic acid ジアミノピメリン酸(meso-diaminopimelic acid) meso-diaminopimelic acid(ジアミノピメリン酸) で、その遊離アミノ基 amino group アミノ基(amino group) amino group(アミノ基) が隣接鎖のD-アラニン D-alanine D-アラニン(D-alanine) D-alanine(D-アラニン) と直接結合する1。ただし架橋アミノ酸・層の厚み・架橋度は菌種ごとの幅が大きく、「グラム陽性=ペンタグリシン」は S. aureus を代表例とした要約である。
グラム陽性 vs グラム陰性の細胞壁比較
| 項目 | グラム陽性 | グラム陰性(Gram−) |
|---|---|---|
| 内側細胞質膜 cytoplasmic membrane細胞質膜(cytoplasmic membrane) cytoplasmic membrane(細胞質膜) | + | + |
| ペプチドグリカン層peptidoglycan layerペプチドグリカン層(peptidoglycan layer)peptidoglycan layer(ペプチドグリカン層) | +(厚い、50〜60層、架橋も密。S. aureus の実測では高密度層19 nm) | +(薄い、1〜2層) |
| 外膜(LPS含む) | − | + |
| ペリプラズム空間periplasmic spaceペリプラズム空間(periplasmic space)periplasmic space(ペリプラズム空間) | −(古典的記述。実際には膜と壁の間に低密度帯が存在する——後述の⚠️) | + |
| ポーリンporin ポーリン(porin)porin(ポーリン) チャネル | − | + |
| エンドトキシンendotoxinエンドトキシン(endotoxin)endotoxin(エンドトキシン) | − | +(Lipid A) |
| テイコ酸teichoic acidテイコ酸(teichoic acid)teichoic acid(テイコ酸) | + | − |
| リゾチームlysozyme リゾチーム(lysozyme)lysozyme(リゾチーム) 感受性 | 感受性 | 抵抗性 |
| ペニシリン感受性 | 感受性 | 抵抗性 |
| エキソトキシン産生 | + | + |
| 染色特性 | クリスタルバイオレットcrystal violet クリスタルバイオレット(crystal violet)crystal violet(クリスタルバイオレット) を保持(紫色) | クリスタルバイオレットcrystal violet クリスタルバイオレット(crystal violet)crystal violet(クリスタルバイオレット) が洗い流され、サフラニンに染まる(赤色) |
グラム陽性菌の壁は細胞質膜cytoplasmic membrane 細胞質膜(cytoplasmic membrane)cytoplasmic membrane(細胞質膜) +ペプチドグリカン層 peptidoglycan layerペプチドグリカン層(peptidoglycan layer) peptidoglycan layer(ペプチドグリカン層)の2層のみからなり、ペプチドグリカン層peptidoglycan layer ペプチドグリカン層(peptidoglycan layer)peptidoglycan layer(ペプチドグリカン層) が厚く(50〜60層)架橋も密なため、クリスタルバイオレットcrystal violet クリスタルバイオレット(crystal violet)crystal violet(クリスタルバイオレット) 染色に強く結合する。グラム陰性菌の壁は外膜・ペリプラズム空間periplasmic spaceペリプラズム空間(periplasmic space)periplasmic space(ペリプラズム空間)・細胞質膜cytoplasmic membrane細胞質膜(cytoplasmic membrane)cytoplasmic membrane(細胞質膜)の3層構造で、ペプチドグリカン層peptidoglycan layer ペプチドグリカン層(peptidoglycan layer)peptidoglycan layer(ペプチドグリカン層) は薄い(1〜2層)が、代わりにテイコ酸 teichoic acid テイコ酸(teichoic acid) teichoic acid(テイコ酸) を欠き、ムレインリポタンパクmurein-lipoproteinムレインリポタンパク(murein-lipoprotein)murein-lipoprotein(ムレインリポタンパク) が外膜とペプチドグリカン層 peptidoglycan layer ペプチドグリカン層(peptidoglycan layer) peptidoglycan layer(ペプチドグリカン層) をつなぐ。
⚠️ グラム陽性菌にも、膜と壁の間の「ペリプラズムperiplasm ペリプラズム(periplasm)periplasm(ペリプラズム) 様空間」がある。 凍結水和 hydration 水和(hydration) hydration(水和) 切片のクライオ電顕 electron microscopy, EM 電顕(electron microscopy, EM) electron microscopy, EM(電顕) で見ると、S. aureus の外被は細胞膜のすぐ外に低密度の内壁帯16 nm、その外に高密度の外壁帯19 nm(ペプチドグリカン+テイコ酸 teichoic acid テイコ酸(teichoic acid) teichoic acid(テイコ酸) の網)という二層 epiblast/hypoblast 二層(epiblast/hypoblast) epiblast/hypoblast(二層) 構造をとる。原形質分離させると内壁帯だけが広がって膜小胞 membrane vesicle 膜小胞(membrane vesicle) membrane vesicle(膜小胞) で満たされることから、内壁帯には壁の高分子網が無く、実質的にペリプラズム空間 periplasmic space ペリプラズム空間(periplasmic space) periplasmic space(ペリプラズム空間) であると結論 conclusion 結論(conclusion) conclusion(結論) された2。B. subtilis でも同様に内壁帯22 nm・外壁帯33 nmが観察されている3。表の「グラム陽性にペリプラズム periplasm ペリプラズム(periplasm) periplasm(ペリプラズム) は無い」は薄切 sectioning 薄切(sectioning) sectioning(薄切) 標本に基づく古典的記述であり、試験ではこの対比のまま問われうるが、実像real image 実像(real image)real image(実像) は「外膜に囲まれていないだけで空間はある」である。
💡 グラム陽性/陰性の二分に収まらない菌がある。 抗酸菌(Mycobacterium)はペプチドグリカンにアラビノガラクタン arabinogalactan アラビノガラクタン(arabinogalactan) arabinogalactan(アラビノガラクタン) を介してミコール酸mycolic acidミコール酸(mycolic acid)mycolic acid(ミコール酸)が共有結合した厚い脂質層 lipid layer 脂質層(lipid layer) lipid layer(脂質層) を持ち、この層のためにグラム染色が入りにくく、抗酸染色Ziehl-Neelsen 抗酸染色(Ziehl-Neelsen)Ziehl-Neelsen(抗酸染色) で同定する4。マイコプラズマMycoplasmaマイコプラズマ(Mycoplasma)Mycoplasma(マイコプラズマ)(Mycoplasma)は細胞壁そのものを完全に欠き、ペプチドグリカン合成能を持たないためβラクタム系が無効である5。系統に沿って分けるなら、染色性ではなく膜の枚数——単膜のモノデルム(グラム陽性型)と二重膜のディデルム(グラム陰性型)——という区分のほうが整合的だという整理も提案されている6。
テイコ酸とリポテイコ酸(グラム陽性菌のみ)
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テイコ酸teichoic acidテイコ酸(teichoic acid)teichoic acid(テイコ酸):ペプチドグリカン層 peptidoglycan layer ペプチドグリカン層(peptidoglycan layer) peptidoglycan layer(ペプチドグリカン層) に密接に結合し、リゾチームlysozyme リゾチーム(lysozyme)lysozyme(リゾチーム) から細菌を保護する。抗原決定基antigenic determinant 抗原決定基(antigenic determinant)antigenic determinant(抗原決定基) (エピトープ)としても働く。
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リポテイコ酸lipoteichoic acidリポテイコ酸(lipoteichoic acid)lipoteichoic acid(リポテイコ酸):テイコ酸 teichoic acid テイコ酸(teichoic acid) teichoic acid(テイコ酸) と脂質が結合してペプチドグリカン層 peptidoglycan layer ペプチドグリカン層(peptidoglycan layer) peptidoglycan layer(ペプチドグリカン層) 内に存在し、自己融解autolysis 自己融解(autolysis)autolysis(自己融解) 壁酵素(ムラミダーゼ)の調節因子として働く。
LPS構造(グラム陰性菌のみ)
LPSは外側から次の3部分からなる。
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外側炭水化物鎖(O抗原O antigen (somatic antigen)O抗原(O antigen (somatic antigen))O antigen (somatic antigen)(O抗原)、O-specific side chain):オリゴ糖 oligosaccharide オリゴ糖(oligosaccharide) oligosaccharide(オリゴ糖) 単位からなり、抗原決定基antigenic determinant 抗原決定基(antigenic determinant)antigenic determinant(抗原決定基) として働く。
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コア多糖core polysaccharideコア多糖(core polysaccharide)core polysaccharide(コア多糖):水溶性。
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Lipid A:多数の脂肪酸鎖を持つ二糖 disaccharide二糖(disaccharide) disaccharide(二糖)。ヒトに対して毒性を持ち、「グラム陰性菌のエンドトキシン endotoxinエンドトキシン(endotoxin) endotoxin(エンドトキシン)」として知られる(詳細は1/27)。
外膜にはさらにポーリンタンパクporinポーリンタンパク(porin)porin(ポーリンタンパク) と呼ばれる膜貫通複合体があり、栄養素の通過を可能にする。
⚠️ 免疫系がグラム陰性菌を溶解すると、Lipid Aを含む外膜断片が血中に放出される。 Lipid Aの毒性により、発熱・下痢、さらには致死的なエンドトキシンendotoxin エンドトキシン(endotoxin)endotoxin(エンドトキシン) ショック(敗血症性ショック) を引き起こしうる。
flowchart TD
A["ペニシリンが細胞壁に到達"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transpeptidase'>トランスペプチダーゼ</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penicillin-binding protein'>PBP</span>)に結合"]
B --> C["ペプチドグリカンの架橋反応が阻害される"]
C --> D["壁の強度が低下する"]
D --> E["浸透圧に耐えられず<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacteriolysis (lysis)'>溶菌</span>(lysis)"]
まとめ
- 細胞壁は剛性 stiffness 剛性(stiffness) stiffness(剛性) の付与・浸透圧保護・ファージ結合・表面付属構造の土台という4機能を持ち、細胞質膜cytoplasmic membrane細胞質膜(cytoplasmic membrane)cytoplasmic membrane(細胞質膜)・ペプチドグリカン層peptidoglycan layerペプチドグリカン層(peptidoglycan layer)peptidoglycan layer(ペプチドグリカン層)・(グラム陰性のみ)外膜の3層で構成される。
- ペプチドグリカンはNAG+NAMの二糖 disaccharide 二糖(disaccharide) disaccharide(二糖) 繰り返し+アミノ酸側鎖の架橋からなり、架橋はトランスペプチダーゼ transpeptidase トランスペプチダーゼ(transpeptidase) transpeptidase(トランスペプチダーゼ) が触媒し、ペニシリンに阻害される。
- グラム陽性菌は厚いペプチドグリカン+ペンタグリシン架橋 pentaglycine bridge ペンタグリシン架橋(pentaglycine bridge) pentaglycine bridge(ペンタグリシン架橋) +テイコ酸 teichoic acid テイコ酸(teichoic acid) teichoic acid(テイコ酸) を持ち、グラム陰性菌は薄いペプチドグリカン+メソ-ジアミノピメリン酸 meso-diaminopimelic acid ジアミノピメリン酸(meso-diaminopimelic acid) meso-diaminopimelic acid(ジアミノピメリン酸) 架橋+外膜/LPSを持つ——この違いがグラム染色・リゾチームlysozyme リゾチーム(lysozyme)lysozyme(リゾチーム) 感受性・ペニシリン感受性のすべてを説明する。
- LPSはO抗原 O antigen (somatic antigen)O抗原(O antigen (somatic antigen)) O antigen (somatic antigen)(O抗原)・コア多糖core polysaccharideコア多糖(core polysaccharide)core polysaccharide(コア多糖)・Lipid Aの3部分からなり、Lipid Aがエンドトキシン endotoxin エンドトキシン(endotoxin) endotoxin(エンドトキシン) として発熱・下痢・敗血症性ショックseptic shock 敗血症性ショック(septic shock)septic shock(敗血症性ショック) を引き起こす。
- テイコ酸teichoic acidテイコ酸(teichoic acid)teichoic acid(テイコ酸)・リポテイコ酸lipoteichoic acid リポテイコ酸(lipoteichoic acid)lipoteichoic acid(リポテイコ酸) はグラム陽性菌のみが持ち、リゾチームlysozyme リゾチーム(lysozyme)lysozyme(リゾチーム) 防御と自己融解酵素 autolysin 自己融解酵素(autolysin) autolysin(自己融解酵素) の調節を担う。
- グラム陽性・陰性の二分は例外を抱える——抗酸菌はミコール酸 mycolic acid ミコール酸(mycolic acid) mycolic acid(ミコール酸) 層でグラム染色が入りにくく、マイコプラズマMycoplasma マイコプラズマ(Mycoplasma)Mycoplasma(マイコプラズマ) は細胞壁を欠きβラクタムが無効。またクライオ電顕 electron microscopy, EM 電顕(electron microscopy, EM) electron microscopy, EM(電顕) ではグラム陽性菌にもペリプラズム periplasm ペリプラズム(periplasm) periplasm(ペリプラズム) に相当する低密度帯(S. aureus で16 nm)が確認されている。
出典
- 1.Peptidoglycan structure and architecture(FEMS Microbiology Reviews・2008)ペプチドグリカンの架橋様式(グラム陽性のペンタグリシン架橋とグラム陰性のメソ-ジアミノピメリン酸直接架橋)と、層の厚み・架橋度が菌種で大きく異なること閲覧 2026-08-26
- 2.Native cell wall organization shown by cryo-electron microscopy confirms the existence of a periplasmic space in Staphylococcus aureus(Journal of Bacteriology・2006)グラム陽性の S. aureus でも細胞膜の外側に低密度の内壁帯16 nm(ペリプラズム空間に相当)があり、その外に高密度のペプチドグリカン・テイコ酸層19 nmが乗る二層構造をとる閲覧 2026-08-26
- 3.Cryo-electron microscopy reveals native polymeric cell wall structure in Bacillus subtilis 168 and the existence of a periplasmic space(Molecular Microbiology・2005)B. subtilis 168 では細胞膜の外に低密度の内壁帯22 nm(ペリプラズム空間)と高密度の外壁帯33 nm(ペプチドグリカン・テイコ酸網)が観察される閲覧 2026-08-26
- 4.The envelope of mycobacteria(Annual Review of Biochemistry・1995)抗酸菌はペプチドグリカンにアラビノガラクタンを介してミコール酸が共有結合した厚い脂質層を持ち、グラム染色の陽性・陰性の枠に収まらない外被構造をとる閲覧 2026-08-26
- 5.Molecular biology and pathogenicity of mycoplasmas(Microbiology and Molecular Biology Reviews・1998)マイコプラズマは細胞壁を完全に欠き、ペプチドグリカン合成能を持たないためβラクタム系抗菌薬が無効である閲覧 2026-08-26
- 6.A phylum level perspective on bacterial cell envelope architecture(Trends in Microbiology・2010)細菌の細胞外被は染色性ではなく膜の枚数で分けるほうが系統に合い、単膜(モノデルム)と二重膜(ディデルム)という区分が提案されている閲覧 2026-08-26