Medical Microbiology

Medical Microbiology · 1/21

グリコペプチドと膜機能を障害する抗菌薬

Glycopeptides and antimicrobial drugs altering the membrane functions

🧠 細菌の「外被」を破壊する2つの戦略——膜そのものにのように挿入して穴を開ける(脂質ペプチド・環状ポリペプチド系)か、をブロックする()か。 どちらも標的は細胞壁・細胞膜という細菌特有の防御構造であり、ペプチドグリカン合成阻害薬の仲間として理解すると位置づけがはっきりする。

⚠️ 本ノートの主な出典は「膜機能を障害する抗菌薬(脂質ペプチド・環状ポリペプチド系)」を扱ったもので、バンコマイシンなど)自体の詳細な各論は含まれていなかった。ペプチドグリカン鎖末端のD-Ala-D-Ala に結合しを阻害するであり、(VRE・VISA・VRSAなど)を含む詳細は抗菌薬耐性の機構(例)およびバンコマイシンを参照。

膜機能を障害する抗菌薬の全体像

  • 作用様式:
  • 共通する考え方:細菌の細胞膜(または外膜)に物理的に挿入・結合し、膜の透過性を変化させることで細胞内容物を漏出させ(leakage)、細菌を死に至らせる
flowchart TD
    A["膜を標的とする抗菌薬"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lipopeptides'>リポペプチド系</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='daptomycin'>ダプトマイシン</span>"]
    A --> C["環状ポリペプチド系<br>Polymyxin (<span class='jp-term jp-term-diagram' title='colistin'>コリスチン</span>)"]
    B --> D["グラム陽性菌の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytoplasmic membrane'>細胞質膜</span>に挿入・凝集"]
    D --> E["膜電位の脱分極<br>イオン漏出 → 細胞死"]
    C --> F["グラム陰性菌の<br>外膜LPS・リン脂質に結合"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membrane permeability'>膜透過性</span>の亢進<br>内容物漏出 → 細胞死"]

リポペプチド系抗菌薬——ダプトマイシン

天然由来の

  • 機序:細胞膜に不可逆的に挿入され凝集する。この凝集が膜のを変化させ、イオンが漏れる孔(ホール)を作り、膜電位の脱分極とイオン勾配の破壊を引き起こし、細胞死に至る
  • スペクトル:グラム陽性菌に有効。グラム陰性菌は——薬剤が細胞壁を通過してまで到達できないため
  • :多剤耐性のブドウ球菌・レンサ球菌・腸球菌に対して使用される

環状ポリペプチド系抗菌薬——ポリミキシン

  • 機序:表面活性を持つ物質。のように細菌膜に挿入され、外膜のおよびリン脂質と相互作用することで細胞透過性を高め、最終的に細胞死に至る
  • スペクトル:グラム陰性桿菌に対する。グラム陽性菌は
  • 毒性:強い腎毒性を起こしうるため、全身投与は限定的で、・眼感染症・皮膚感染症などの局所治療に用いられることが多い
  • 代表薬colistin

ダプトマイシンとポリミキシンの比較

特徴
分類 リポペプチド 環状ポリペプチド
標的膜 グラム陽性菌の グラム陰性菌の外膜
機序 膜への挿入・凝集→脱分極 様の膜破壊
グラム陰性菌 グラム陽性菌
主な用途 多剤耐性グラム陽性菌感染 多剤耐性グラム陰性菌感染(局所中心)
主な毒性 (比較的少ない) 腎毒性が強い

まとめ

  • 膜機能を障害する抗菌薬は、細胞膜・外膜に物理的に挿入・結合して透過性を変化させ、内容物を漏出させることでに働く。
  • (リポペプチド)はグラム陽性菌のに挿入し脱分極を起こす。グラム陰性菌には細胞壁透過性の問題で
  • (環状ポリペプチド)はグラム陰性菌の外膜LPSに結合して膜を破壊するが、腎毒性が強く全身投与は限定的。
  • (バンコマイシンなど)は本ノートの主題である「膜機能障害薬」とは異なり、ペプチドグリカン合成阻害薬に分類される点に注意。