Neuroanatomy

Neuroanatomy · 19

識別性感覚の伝導路(後索・内側毛帯系)

Tracts of the epicritic sensibility (posterior funiculus/medial lemniscus)

応用トピック
感覚系の診察(Sensory system examination)脊髄損傷の症候感覚障害の神経解剖学的基盤脊髄障害の症候脊椎・脊髄損傷の診察と手術適応
症状
感覚性運動失調

🧠 後索-は「同側を高く上行し、延髄でまとめて交叉する」経路——レベルで即座に交叉)とは交叉位置が正反対である。 この一点の違いが、脊髄片側病変で「同側の・振動覚・は障害されるのに、対側の痛覚・温度覚が障害される」という古典的なパターンを生む。

識別性感覚・固有受容感覚とは

は、、振動覚、関節・筋の位置と動きの感覚を含む。

部位 経路
体幹・四肢 受容器 → → 視床VPL核 → 皮質
頭部 受容器 → → 視床VPM核 → 皮質

体幹・四肢からの経路:後索-内側毛帯系

  • 1次ニューロン
  • 中枢枝は後根から脊髄に入り、同側の後索を上行してに達する(第1シナプス
  • からが生じ、脳幹を上行する。は脳幹の正中寄りに位置し、視床のVPL核で終止する(第2シナプス
  • 投射により、)の内側・上方部へ到達する

は下肢由来のみ、は上肢由来のみを運ぶ。 そのためT3〜T6レベルよりにはは存在しない。

頭部からの経路:背側三叉神経毛帯

  • ニューロンが1次ニューロン
  • 中枢枝はで終止する(第1シナプス
  • からが生じ、視床VPM核で終止する(第2シナプス
  • 視床から皮質()へ投射する
flowchart TD
  A["受容器(Meissner小体・Pacini小体・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscle spindle'>筋紡錘</span>など)"] --> B["1次ニューロン:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dorsal root ganglion (DRG)'>後根神経節</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pseudounipolar'>偽単極</span>)"]
  B --> C["同側後索を上行<br>(下肢→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fasciculus gracilis'>薄束</span>、上肢→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fasciculus cuneatus'>楔状束</span>)"]
  C --> D["延髄:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gracile nucleus'>薄束核</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cuneate nucleus'>楔状束核</span>で2次ニューロンとシナプス"]
  D --> E["2次ニューロンの軸索が延髄<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sensory decussation'>内側毛帯交叉</span>で交叉"]
  E --> F["対側の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medial lemniscus'>内側毛帯</span>を上行→視床VPL核"]
  F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postcentral gyrus'>中心後回</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary somatosensory cortex'>一次体性感覚野</span>(内側・上方部)"]

脊髄小脳路:意識に上らない固有受容フィードバック

複雑な運動を協調させるために、小脳は末梢からの感覚フィードバックを必要とする。このフィードバックの多くは脊髄小脳路が担い、視床・皮質を経由せず小脳へ直接向かう(=意識に上らない)。

  • (dorsal spinocerebellar tract, Flechsig路)
    • T9〜L3背側核(dorsal nucleus、Clark-Stilling核)が末梢からの・固有受容入力を受ける
    • Clark-Stilling核から起始し、同側を上行する
    • を経て脊髄小脳に終止する
  • (ventral spinocerebellar tract, Gowers路)
    • L3〜S4から起始する
    • 軸索はすぐに交叉し、対側を上行してに達する
    • 再び交叉し、脊髄小脳に終止する(=二重交叉)
    • がともに下肢由来の情報を運ぶのに対し、上半身由来の固有受容・刺激を、を介して脊髄小脳へ運ぶ
    • 交叉しない(

💡 Gowers路だけが二重交叉する理由。 は脊髄で一度交叉し対側を上行したのち、で再度交叉して結局は起始と同側のに終止する——小脳は各半球が同側の身体を制御するため、最終的にはに情報を戻す必要がある。

非侵害性入力は視床(体幹・四肢はVPL、頭部はVPM)を介してへ(局在の)、同時に小脳(脊髄小脳)へも向かう(を組み立てるための感覚フィードバック)。この非侵害性入力を運ぶ(厚い髄鞘)は、Lamina III・IVに終止する。

体性局在

とは、身体上の一点とCNS内の一点が対応する点対点の配列である。後索とでは、この配列が逆転している。

伝導路 外側 内側
後索( 由来(、上肢) 由来(、下肢)
(脊髄視床路) 由来 由来(内側に向かうほど新しく加わった線維)

⚠️ の逆転が生むパターン。 では由来線維が最も外側(表層)を、由来線維が最も内側を通る。そのため脊髄の中心部から広がる病変(例:など)では、後から加わる内側=領域の温痛覚が先に障害され、最領域の温痛覚は保たれやすい——「」として知られる古典的所見。

感覚ホムンクルス

  • 膝より下の下肢は、内側面に投射する
  • 皮質の凸面(外側面)には、それ以外の身体部位がに配列される

ゲートコントロール説

Lamina IIIにあるは、)・)・の線維から等しく入力を受ける。

  • (厚い髄鞘)はAδ・より伝導が速いため、に先に到達し、を活性化する
  • このが、遅れて到達する由来の(の)入力を抑制する
  • はLamina IIIに達し、弓にも寄与する

💡 が説明する現象。 触覚()を活性化すると、痛覚()が抑制される——ぶつけた場所を思わずさすると痛みが和らぐのは、この機序による。「を活性化する→を抑制する」という一行に要約できる。

原始感覚 vs 識別性感覚:総まとめ比較

項目 (後索-
伝える情報 、熱感、痛覚 、振動覚、覚、
主な線維 Aδ・ Aα・
1次ニューロン
2次ニューロン所在 を含む) 延髄の(体幹・四肢)/橋の(頭部)
交叉部位 脊髄、侵入したレベルで速やかに交叉 延髄)または橋()——体幹・四肢では同側をかなり高く上行してから交叉
交叉後の 対側の前外(脊髄視床路) 対側の
3次ニューロン所在 視床VPL(頭部はVPM)+ 視床VPL(頭部はVPM)
終止する皮質部位 の内側・上方部(頭部由来は

交叉位置の違いこそが最大の試験ポイント。 は「早く・低く」(レベル)、後索-は「遅く・高く」(延髄)交叉する。この非対称性のために、脊髄片側病変では同側のの障害と、対側の(痛覚・温度覚)の障害というが生じる。

まとめ

  • ・振動覚・)は、体幹・四肢では後索-、頭部では系により伝えられる。
  • 2次ニューロンは同側の後索(=下肢、=上肢)を上行し、延髄のでシナプスしたのちに交叉し、対側のとして視床VPLに至る——交叉位置はよりはるかに高い(延髄)。
  • 脊髄小脳路(=二重交叉、)は、意識に上らない固有受容フィードバックを小脳(脊髄小脳)へ送る。
  • 後索とが逆転しており(後索:下肢が内側/:下肢()が外側)、これが脊髄病変でのパターン(例:)を説明する。
  • :速い)がを介して遅い・痛覚)を抑制するため、触覚刺激で痛みを和らげられる。
  • と後索-は同じ3ニューロン構成を共有するが、交叉位置(レベル vs 延髄)が正反対であり、これが両者の臨床的鑑別点となる。