Obstetrics

Obstetrics · 03

妊娠に伴う生理的変化(腎・内分泌系)

Physiologic changes in pregnancy (renal system, hormonal changes)

前提:正常
腎循環・糸球体濾過副腎皮質の機能甲状腺ホルモンの産生と作用カルシウム代謝
疾患
シーハン症候群
検査値
コルチゾール結合グロブリン

🧠 全体像:妊娠中の腎臓は「血管拡張でGFRを上げる」一方、尿路は「プロゲステロンと子宮圧迫で拡張する」。では胎盤・下垂体・甲状腺・副腎が母体代謝を胎児優先へ組み替えるため、非妊娠時のをそのまま当てはめない。

腎・尿路の解剖学的変化

  • 腎盂・・尿管は第1三半期から拡張し、右側で目立ちやすい。
  • 原因はプロゲステロンによる平滑筋弛緩、子宮による機械的圧迫、右方回旋などである。
  • 生理的水腎・水尿管は産後も数週残り、通常は時間とともに改善する。
  • により、から腎盂腎炎へ進展しやすくなる。
  • 膀胱は子宮により腹側・頭側へ移動するため、帝王切開時には位置を意識する。

腎血流と糸球体濾過

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='relaxin'>レラキシン</span>・NOなどによる腎血管拡張"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal plasma flow, RPF'>腎血漿流量</span>増加"]
    B --> C["GFRが約40〜50%増加"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serum creatinine'>血清クレアチニン</span>・BUN低下"]
    C --> E["糖・アミノ酸などの濾<span class='jp-term jp-term-diagram' title='overload'>過負荷</span>増加"]
    E --> F["軽度糖尿が生じうる"]
項目 妊娠時の変化 解釈
妊娠早期から増加 中期に最大
GFR 約40〜50%増加 非妊娠時と同じCrでも異常を疑う場合がある
低下 は血清Crで行う
BUN 低下 濾過増加と希釈による
軽度なら生理的にありうる GDMを除外する必要はある
蛋白尿 少量増える 300 mg/24時間以上または相当値は病的評価

⚠️ 妊娠中はの式が妥当でないため、腎機能はの推移で評価する。

膀胱機能

  • ・GFR増加と子宮圧迫により頻尿が生じる。
  • は増え、が起こりうる。・産後は排尿状況を確認し、必要時に膀胱を空にする。
  • 満杯の膀胱はを妨げ、産後尿閉・障害を助長しうる。

レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系

  • 腎、子宮、胎盤由来のレニンが増え、II・アルドステロンも上昇する。
  • Na・水を保持し、増加を支える。
  • 正常妊娠ではプロゲステロン、、NOなどによりIIへの血管反応性が低下するため、RAAS活性化がそのまま全身血管収縮を意味しない。
  • ではこの血管抵抗性低下が失われ、血管収縮・が目立つ。

甲状腺

変化 機序・読み方
増加 エストロゲンで肝産生・が増え、総T4・総T3が上昇
TSH一過性低下 hCGの弱いTSH様作用。特に第1三半期
遊離T4 妊娠初期に軽度上がり、その後低下傾向
甲状腺サイズ ヨード充足地域では大きな腫大は通常ない
約10〜30%増加

胎児甲状腺が十分に機能する前は母体T4が神経発達に重要である。「母体甲状腺ホルモンはほぼ胎盤を通らず、すぐreverse T3になる」と単純化しない。

カルシウム・副甲状腺・ビタミンD

  • アルブミン低下により総Caは低下するが、Caは通常保たれる。
  • 1,25-ジヒドロキシビタミンD(calcitriol)が増え、腸管Ca吸収を促進する。
  • 胎児骨格形成の需要に合わせ、PTH・PTHrP・カルシトニンが時期に応じて調節される。
  • 総Ca低値だけで低Ca血症と診断せず、アルブミン補正またはCaを確認する。

下垂体・副腎・代謝

下垂体

  • エストロゲン刺激による乳細胞過形成で、下垂体は生理的に増大する。
  • プロラクチンが上昇し、乳腺を授乳へ準備する。
  • は分娩時大量出血・低血圧によるであり、単なる下垂体が原因ではない。

副腎・糖代謝

  • と総コルチゾールが増加する。
  • 、プロゲステロン、コルチゾールなどが妊娠後半のインスリン抵抗性を高める。
  • 母体は脂肪利用を増やし、胎児へブドウ糖・アミノ酸を供給する。の代償が不十分ならGDMとなる。

まとめ

  • とGFRは妊娠早期から約40〜50%増え、血清CrとBUNは低下する。
  • 尿路拡張・は生理的だが、腎盂腎炎リスクを高める。
  • RAASは活性化する一方、正常妊娠ではIIへの血管反応性が低下する。
  • TBG増加で総甲状腺ホルモンは上昇し、TSH・遊離T4は妊娠期別基準で解釈する。
  • 下垂体増大、コルチゾール上昇、インスリン抵抗性は胎児への栄養供給を支える適応である。