Physiology

Physiology · 7.6

カルシウム代謝。骨と成長の生理学。

Calcium metabolism. The physiology of bone and growth.

応用トピック
生命を脅かす電解質異常(Na・K・Ca)の補正閉経カルシウム代謝異常骨粗鬆症尿路結石症低Ca血症・高Ca血症骨軟化症とくる病妊娠に伴う生理的変化(腎・内分泌系)生理的成長・身体計測・正常発達小児慢性腎臓病vitamin D欠乏症とくる病カルシウム・リン代謝の内分泌疾患、くる病副甲状腺手術

🧠 Ca²⁺代謝は「PTH(parathyroid hormone、速い・腎臓中心)と(遅い・腸中心)が同じに対して時間差で協調する」2段構えの防御として理解する。骨のリモデリングも同じ論理の延長——PTH・はいずれも骨芽細胞にのみ作用しRANKL/OPG比を操作することで、間接的に破骨細胞の活性を制御する。「ホルモンは骨芽細胞に、骨芽細胞が破骨細胞に」という一方向の指令系統がこの領域全体を貫く軸。

カルシウム・リン酸代謝

カルシウム

細胞内(細胞質)[Ca²⁺]=100nM、細胞外(血漿)[Ca²⁺]=1.1〜1.4mM(遊離型)、2.1〜2.8mM(総量)。厳密に制御される——濃度の増減いずれも問題を来すため狭い範囲に維持しなければならない。

リン酸

細胞外[Pi]=0.8〜1.5mM。Ca²⁺とPiは骨の最も主要な鉱物相=を構成する。同じホルモン群(PTH=、calcitriol=ビタミンD、カルシトニン)により調節される。

調節を担う3臓器: ①骨、②腎臓、③消化管。腎濾過量の2%が尿中に排泄される。

循環Ca²⁺の3つの形態

形態 割合
遊離Ca²⁺ 45%(1.0〜1.3mM)
蛋白結合Ca²⁺ 45%(1.0〜1.3mM)——蛋白から解離すると[Ca²⁺]遊離型↑
(リン酸・クエン酸・HCO3⁻)との複合体 10%

総量=2.2〜2.6mM。遊離Ca²⁺が調節されるべき活性型。

ホルモン

1. PTH

主細胞がPTHの合成・プロセシング・分泌を担う。副甲状腺(500mg)は甲状腺の後面に位置する。

PTHの合成: ①プレプロPTH(115アミノ酸)→N末端からが除去。②プロPTH(90アミノ酸)——ER内。③PTH(84アミノ酸)——内。

PTH分泌の調節:

  1. 血漿/EC[Ca²⁺]: 血漿[Ca²⁺]が低下するとPTH分泌が増加し、その逆も成り立つ。Ca²⁺センサー=Ca²⁺——EC[Ca²⁺]を感知するPM受容体。7回GPCRでGqを活性化する。ミリモル範囲でCa²⁺イオン(リガンド)に結合する——だが極めて高い特異性。Gq共役のためCa²⁺シグナル([Ca²⁺]IC↑)・PKC活性化を誘導し、PTH分泌を↓させる。

⚠️ CaSRの変異(親和性↓、受容体がCa²⁺イオンに結合できない)は「」を引き起こす。 受容体が親和性低下のため、より高いCa²⁺濃度域で機能するようシフトする——結果としてCa²⁺は再び調節されるが、より高い濃度域で(家族性=変異、=Ca²⁺範囲↑、低カルシウム尿=腎でのCa²⁺再吸収↑)。

  1. (ビタミンD): CaSR発現を増加させることでPTH遺伝子発現を減少させる。
  2. [Pi]血漿の上昇: PTH発現が増加する(PiがCa²⁺と結合し遊離Ca²⁺の低下を引き起こすため)。

PTHの効果

PTHは(血漿中に溶解——を必要としない)。半減期4分(速い調節)。PTHは腎臓・骨に対し2種の受容体(PTH1R・PTH2R)を介して作用する。PTH1Rが最重要でGs共役作用(cAMP↑)が可能。PTH1R発現:腎臓・骨。

腎臓:

  • ①1α-水酸化酵素の活性化——合成を助け腸管Ca²⁺吸収を増加させる。②管腔側Na⁺/PiコトランスポーターのエンドサイトーシスによりPi再吸収を減少(トランスポーターが移動して除去される)→Pi排泄↑。
  • TAL+ Ca²⁺再吸収が増加する。PTH→Gs→cAMP↑を介しECaC()が活性化される。(Ca²⁺)が細胞内でCa²⁺を結合しさらなるCa²⁺再吸収を駆動する。Ca²⁺は基底外側でCa²⁺-ATPase(PMCA)とNa⁺/Ca²⁺により細胞外へ汲み出される。

骨(骨芽細胞): は骨芽細胞に位置する。骨からのCa²⁺・Pi動員↑(血漿[Ca²⁺]・[Pi]↑)。

PTH効果のまとめ:

Ca²⁺ Pi
腎臓 再吸収↑ 排泄↑
動員↑ 動員↑
血漿濃度 ↑↑

PTH関連ペプチド: PTHとは異なる遺伝子にコードされるが、生物活性を担うN末端13アミノ酸が同一——PTH1Rを活性化しうる(結果:PTH様効果、例えばPTH関連ペプチドの合成増加は[Ca²⁺]↑をもたらす)。分泌源: 授乳中の乳腺(母乳は多量のCa²⁺を含む)、発達過程(多くの細胞がPTH関連ペプチドを分泌——発達にCa²⁺が必要なため)、腫瘍細胞→(腫瘍細胞存在の指標となりうる)。

2. カルシトリオール

化学名:1,25-ジヒドロキシビタミンD(1,25-dihydroxyvitamin D))。

flowchart TD
  A["7-デヒドロコレステロール(皮膚のコレステロール由来)"] -->|"UV光"| B["ビタミンD3(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cholecalciferol'>コレカルシフェロール</span>)+食事由来ビタミンD2"]
  B -->|"25α-水酸化酵素(肝臓、非制御性)"| C["25α-水酸化ビタミンD"]
  C -->|"1α-水酸化酵素(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal proximal tubule'>腎近位尿細管</span>、制御性)"| D["1,25-ジヒドロキシビタミンD(calcitriol、活性ホルモン)"]
  C -->|"24α-水酸化酵素"| E["24,25-水酸化ビタミンD(不活性)"]

ホルモン産生の調節: PTH、[Ca²⁺]血漿↓、[Pi]血漿↓はいずれも1α-水酸化酵素活性を促進する(→calcitriol産生↑)。自体は負のフィードバックで1α-水酸化酵素を抑制し、24α-水酸化酵素(不活性化経路)を促進する。

の効果: ——血漿により運ばれる。核内を形成し遺伝子発現を制御する。

の発現部位:

  • 消化管(小腸): Ca²⁺吸収↑(ECaC・など全蛋白の発現↑)、Pi吸収↑(トランスポーター発現↑)。
  • 腎臓: Ca²⁺・Pi再吸収↑、1α-水酸化酵素活性↑、24α-水酸化酵素活性↑。
  • 骨(骨芽細胞): 短期効果——Ca²⁺・Pi動員(骨量を減少)。長期効果——正常な骨発達に必要(Ca²⁺・Pi吸収——正常骨量の維持)。

血漿カルシウムイオン濃度調節のまとめ

短期反応: →PTH↑→Ca²⁺再吸収↑+回転↑→血中[Ca²⁺]↑。

長期反応: が長期化する場合、食事からの継続的なCa²⁺入力が必要となる。小腸からのCa²⁺吸収↑が必要——PTHはこれを直接刺激できない。しかしPTHはビタミンD産生(CYP1α経由)を↑させることができ、これが食事からのCa²⁺吸収↑をもたらし血中[Ca²⁺]を維持する。

⚠️ ビタミンD欠乏=くる病: 長期のビタミンD欠乏は消化管からのCa²⁺・Piにより骨の未石灰化を来し、の変形を来す。により心・の問題を来しうる。「Angolkór=英国病」——日照不足(内因性ビタミンD産生なし)+(外因性ビタミンD入力↓)によりビタミンD欠乏が生じることに由来する。

3. カルシトニン

甲状腺のC細胞により合成される(32アミノ酸)。生理的重要性は疑問視されている。

調節: PTHと逆——[Ca²⁺]が上昇するとカルシトニン分泌も増加する。破骨細胞の活性を抑制→骨形成↑→[Ca²⁺]血漿・[Pi]血漿↓。

Paget病——破骨細胞が非常に高い活性を示す病態で、カルシトニン(破骨細胞抑制薬)が治療に用いられうる。サケ由来カルシトニンが使用される(活性がより高いため——海洋生物は[カルシトニン]が高い)。

低カルシウム血症・高カルシウム血症

低カルシウム血症([Ca²⁺]EC/血漿 < 1.0mM)——高カルシウム血症よりも重篤な病態

原因:

  1. PTHなし: 通常甲状腺摘出時に副甲状腺(甲状腺後面の4腺)も影響/摘出されることによる。PTHなし→[Ca²⁺]血漿↓。
  2. ビタミンD(calcitriol)なし: 長期的にはCa²⁺貯蔵(骨)が枯渇→[Ca²⁺]血漿↓。
  3. ——H⁺↓(pH↑)、H⁺は通常アルブミンに結合している。H⁺がアルブミンから解離すると、遊離Ca²⁺が代わりにアルブミンに結合する→遊離[Ca²⁺]↓→

なぜは問題を来すか: 血漿[Ca²⁺]の変化は(+Na⁺チャネル)のを変化させる——閾値がより陰性側にシフトする。血漿[Ca²⁺]低下によりがより陰性になる分だけ、過程全体がわずかに早く生じる→神経細胞の感受性が増す→AP発生がより容易になる。

重度のでは骨格筋の収縮を検出することがある。影響部位:収縮/)、感覚神経(灼熱感・)、自律/植物神経(心血管効果——徐脈/頻脈、血圧変化+消化管系)。

高カルシウム血症

にも影響するが、局所脱分極が(常に)AP誘発に十分大きいため問題は生じない。

原因: PTH↑(例:PTH産生性腫瘍)、PTH関連ペプチド↑(腫瘍細胞などが産生)。

で起こること: [Ca²⁺]EC/血漿↑はCaPi塩のを生成する→腎臓、肺・皮膚のでの結石形成。

骨の生理学

骨の種類

  1. 緻密(皮質)骨(cortical bone、): 全骨の80%を占める。骨の機能単位=(Volkmann管・Haversian管、骨細胞、骨芽細胞など)。
  2. 全骨の20%を占め、椎体・内部に存在。表面積がより大きい→骨形成・吸収の回転が速い→(表面積が大きいためでの速度がより速い)。

骨の形成

骨形成は骨芽細胞(線維芽細胞に類似)に関連する。骨芽細胞は多数の蛋白を分泌する:

  • I型コラーゲン(collagen type I、分泌蛋白の90%)、(osteocalcin、Glaタンパクファミリー、ビタミンK依存性蛋白——Ca²⁺・に結合)、(同じくCa²⁺・に結合)、
  • 調節蛋白
  • 酵素: 骨形成時は不活性——活性化には環境変化が必要()。

形成の2相

骨芽細胞はと環境(間質)を隔てる層を形成する。

1. 形成: osteoid=骨の蛋白基質——骨の鉱物成分()のの場を提供する。骨芽細胞から分泌されたコラーゲンしらせん構造()となる。所要期間10〜14日。

2. 石灰化: 数週間(3〜4週)を要する。から放出されたPi基の付加による(Ca5(PO4)3OH)の形成。が蛋白基質に・構築される(——負に帯電した蛋白表面がCa²⁺・・(毒物として使われる金属も)陽性のものを結合できる)→骨のを与える。約6週間を要する。この過程で骨芽細胞は骨塊(基質)内に封入され骨細胞となる——調節蛋白・酵素も同時に閉じ込められを形成する。

骨の吸収

吸収は骨量が分解・消失する過程。破骨細胞が吸収を担う。破骨細胞はに由来し、分化・活性化にM-CSF・RANKリガンド・IL-6を要する。

  • 破骨細胞は巨大な細胞で骨表面に付着する。
  • 付着後、細胞はし、吸収腔の形成により間質と骨塊を分離する。
  • プロトンポンプが頂端表面へH⁺をリソソーム酵素(TRAP=酸性ホスファターゼ, tartrate-resistant acid phosphatase)とともに分泌する。
  • H⁺と酸性ホスファターゼが骨からのCa²⁺・Piの放出を引き起こす(→血中へ)——同時に骨芽細胞由来の酵素・調節蛋白の放出も引き起こす(に組み込まれ吸収が起こるまでしていた酵素・蛋白が放出・活性化され、吸収腔に入り破骨細胞・を調節する)。

骨の再形成(2種類)

1. モデリング: 負荷/ストレスの変化の存在下で生じる——新たな負荷を感知するために骨の構造が変化する必要がある=構造が変わる。

機序: 機械的刺激により誘導される——骨小管内の体液移動が骨への負荷変化に応じて生じる。体液流の変化が(休止中の)骨細胞により感知され、骨芽細胞へ再活性化する。骨芽細胞→破骨細胞→吸収→形成→骨の新構造。

2. リモデリング: 負荷の変化なし、刺激なし。それでも継続的な吸収・形成が起こる——機能:構造は同じままだが「骨の更新」が生じる。

機序: 刺激なしで破骨細胞により開始される。破骨細胞が骨表面に付着→活性化→吸収開始。吸収の結果、深さ20μmのトンネルが形成される(14日)。14日後、破骨細胞は死滅する→帰結:骨表面の損傷=深さ20μmのトンネル→骨芽細胞がこの損傷を検出→蛋白・産生、石灰化を開始→骨形成→新素材による同一構造の新しい骨。

5〜10年ごとに全ての骨が完全にリモデリングされる。 では表面積が大きいため速い——破骨細胞が表面に付着する確率が高く、より短期間で更新が起こる。

まとめ: 継続的な吸収と形成があるが、両者は釣り合っている(速度は同一)。吸収=Ca²⁺・Piが放出される——このバランスは変化しうる→吸収・形成はホルモン調節下にある。

リモデリングの急性ホルモン調節

バランスを変化させる(吸収速度↑、骨からより多くのCa²⁺・Piを放出)ために:

1. PTH、 骨芽細胞のみに作用し、RANKリガンドとOPGの分泌を誘導する。

  • RANKリガンド: 破骨細胞表面のRANK(核κB活性化受容体, receptor activator of nuclear factor κB)に結合→活性化・分化→破骨細胞吸収↑→[Ca²⁺]・[Pi]血漿↑。PTHは骨芽細胞にRANKLを産生させることで間接的に破骨細胞を刺激し・[Ca²⁺]/[Pi]血漿の上昇を促す。
  • OPG(, osteoprotegerin): 破骨細胞に作用しその活性を抑制する。

RANKL:OPG比が破骨細胞活性を決定する。 比が高ければ破骨細胞活性↑、低ければ↓——この比がこの領域全体の調節ロジックの核心。

2. カルシトニン: 破骨細胞に直接作用しその活性を抑制する。

3. グルココルチコイド: コルチゾール・合成GC(医薬品)は骨芽細胞に作用しRANKL:OPG比を↑させる→破骨細胞活性化(吸収)↑。GCの長期使用→(骨総量↓)→骨折。

4. エストロゲン: GCと逆の効果——RANKL↓、OPG↑(比↓)→症発症を抑制する。エストロゲン↓(閉経)時は比↑→症↑。

5. 炎症: ・腫瘍細胞もRANKLを発現しうる→破骨細胞活性↑()→局所的な([Ca²⁺]血漿↑=)→X線画像で容易に検出可能→腫瘍などの存在を示唆する所見となる。

まとめ

  • 血漿Ca²⁺はCaSRが感知しPTH分泌を逆相関的に調節する。PTHは腎臓(Ca²⁺再吸収↑・Pi排泄↑)と骨(動員↑)に速効的(半減期4分)に作用し、長期的には産生↑を介してを促進する2段構えの機構を持つ。
  • は皮膚UV/食事由来ビタミンDが肝臓の25α-水酸化・腎臓の1α-水酸化(PTH・低Ca²⁺/Piで促進)を経て活性化される作動性で、腸・腎・骨でCa²⁺/Pi吸収・再吸収を促進する。
  • 骨は骨芽細胞(形成:形成→石灰化)と破骨細胞(吸収:H⁺・TRAPによる)の継続的なバランスで維持され、モデリング(負荷変化に応じた)とリモデリング(同一構造の更新、5〜10年周期)の2種の再形成機構を持つ。
  • ホルモンはすべて骨芽細胞のRANKL:OPG比を操作することで間接的に破骨細胞活性を制御する(PTH/GC↑→比↑→吸収↑、エストロゲン/カルシトニン→比↓または直接抑制→吸収↓)——この一方向の指令系統が調節全体の軸となる。