産科学

産科学 · 18

分娩第1期・第2期と管理

Stages of delivery. Management of the first and second stage

前提:正常
胎児期と胎盤:分娩
疾患
肩甲難産

🧠 全体像:分娩第1期は規則的収縮による頸管変化から全開大まで、第2期は全開大から児娩出までである。時間の固定値だけで異常とせず、母児状態、、・回旋を連続評価し、生理的進行を支えながら必要な介入を選ぶ。

分娩開始と妊娠週数

分娩は、規則的子宮収縮に伴い頸管・開大が進行し、胎児・胎盤の娩出へ至る過程である。少量の血性粘液であるや破水が先行することがある。

区分 妊娠週数
早産 37週0日未満
37週0日〜38週6日
39週0日〜40週6日
41週0日〜41週6日
42週0日以降

分娩第1期

規則的収縮による頸管変化の開始から、(約10 cm)までをいう。

相 頸管・収縮 現行の考え方
潜伏期 頸管軟化・と緩徐な開大 が大きく、母児が安定していれば時間のみで帝王切開としない
開大が加速し胎児が下降 6 cmから基準を適用する

古典的は4 cm付近からの急速なS字状開大と、1.2 cm/時・1.5 cm/時を示した。現在は進行がより緩徐であることが分かり、この固定速度を分娩停止の診断に用いない1。

入院時評価

  • 妊娠週数、陣痛、破水時刻、出血、、既往歴
  • 血圧、脈拍、体温、呼吸、疼痛、脱水
  • と超音波による・、胎児心拍
  • ・、、破水の有無
  • 産科リスクに応じた血算、血液型・抗体、尿検査など

分娩進行を妨げるを避ける。低リスク分娩で一律の絶食・持続は不要で、施設方針と緊急手術リスクに応じて・食事を個別化する。

母児監視と支持的ケア

  • 低リスク例では間欠的胎児心拍聴取、高リスク例やオキシトシン使用時は連続CTGを用いる。
  • 母体バイタル、出血、疼痛、尿量、陣痛を定期評価する。
  • 付き添い、自由な体位、歩行、呼吸法、、希望に応じた鎮痛を支援する。
  • 回数は必要最小限とし、特に破水後は感染リスクを考える。
  • は誘発・増強で分娩時間を短縮し得るが、固定とリスクを確認して行う。など感染症の管理はウイルス量と現行プロトコルで個別化する。

活動期停止

6 cm以上、破水後に、十分な子宮活動が4時間、またはオキシトシン下の不十分な活動が6時間続いても開大しない場合をとする。3P、すなわち陣痛、産道、胎児を再評価する。

分娩第2期

から児娩出までである。子宮収縮にが加わり、屈曲、下降、内回旋、伸展、を経て娩出する。

進行評価

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='full cervical dilation'>頸管全開大</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bearing down'>努責</span>開始"]
    B --> C["胎児心拍、下降、回旋、収縮を反復評価"]
    C --> D{"下降・回旋が進むか"}
    D -->|"はい"| E["母体の体位と自発的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bearing down'>努責</span>を支援"]
    D -->|"いいえ"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='position'>胎向</span>、骨盤、収縮、鎮痛、疲労を再評価"]
    F --> G{"安全な経腟介助の条件を満たすか"}
    G -->|"はい"| H["熟練者による吸引・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='forceps delivery'>鉗子分娩</span>を検討"]
    G -->|"いいえ"| I["帝王切開"]
  • 遷延第2期の目安は、開始後、で3時間超、で2時間超である12。
  • 、、進行、母児状態を踏まえ、これを超えても下降・回旋が続く場合は個別に延長できる。
  • 十分な時間が経過していなくても、回旋・下降が全くなく、適切な収縮・でも進まなければ早期に停止と判断し得る。

児娩出の原則

  • 全開大を確認してからを開始し、息を止め続ける方法を一律に強制せず、本人の感覚と胎児心拍に合わせる3。
  • 会陰を支持し、を制御する。Ritgen変法は選択的に用いる。
  • はルーチンで行わず、、、娩出困難など必要時に限定する4。
  • 後はを確認する。緩ければ頭上へ外し、きつい場合はや必要時の処置を選ぶ。
  • 羊水や分泌物のルーチン吸引は不要で、気道閉塞がある場合に限る。
  • は過度な牽引を避けて娩出し、抵抗があればとして対応する。

会陰切開の方向

方法 特徴
修復しやすく疼痛が比較的少ないが、・直腸側へ延長しやすい
中側切開 括約筋方向への延長を減らし得るが、出血・疼痛・修復負担が増え得る

必要時は十分な鎮痛下に行い、時の角度を考慮して括約筋から離す。

まとめ

  • 第1期は分娩開始から全開大、第2期は全開大から児娩出までである。
  • は6 cmからとし、古典的な1時間当たり開大速度を一律に要求しない。
  • 第2期は時間だけでなく、胎児下降・回旋、母児状態、と鎮痛を統合して判断する。
  • 、適切な監視、必要最小限の介入が安全な経腟分娩を支える。

出典

  1. 1.Contemporary patterns of spontaneous labor with normal neonatal outcomes(Obstetrics and Gynecology・2010)米国19施設・62,415例(単胎・正期・自然発来・頭位・経腟分娩・正常新生児転帰)のConsortium on Safe Laborデータで、頸管開大は6 cm以降に加速し4〜6 cmの進行は従来の教育より遅いこと、初産婦の分娩第2期は硬膜外あり3.6時間・なし2.8時間が95パーセンタイルであったことを報告した。閲覧 2026-08-26
  2. 2.Safe Prevention of the Primary Cesarean Delivery: ACOG and SMFM Change the Game(Journal of Perinatal Education・2014)2014年のACOG/SMFM Obstetric Care Consensus(米国)は、経産婦で少なくとも2時間、初産婦で少なくとも3時間の努責を許容し、硬膜外鎮痛使用時はさらに1時間追加できるとした。第2期遷延そのものは新生児転帰不良との関連が乏しいとも述べる。閲覧 2026-08-26
  3. 3.Pushing/bearing down methods for the second stage of labour(Cochrane Database of Systematic Reviews・2017)硬膜外鎮痛下の21試験を統合したCochraneレビューで、遅延いきみは即時いきみと比べて分娩第2期の時間を平均56分延長させる一方、自然経腟分娩を増やし、臍帯血pH低値の頻度を増やした(1試験に基づく)。いきみの種類・タイミングともルーチンで特定の方法を推奨する明確な根拠はないとした。閲覧 2026-08-26
  4. 4.Selective versus routine use of episiotomy for vaginal birth(Cochrane Database of Systematic Reviews・2017)12試験・6177例を統合したCochraneレビューで、器械分娩を予定しない経腟分娩では選択的会陰切開が重度会陰・腟裂傷を約30%減らし(低確実性)、児のアプガースコアや会陰感染に明確な差はなく、ルーチン会陰切開が裂傷を減らすという従来の想定は現行のエビデンスで支持されないと結論した。閲覧 2026-08-26