病態生理学

病態生理学 · P-2-10

腎疾患 症例2

Kidney disease, Case 2

前提:病態
急性腎不全の原因と全身的影響

🧠 64歳男性の・頻尿・細小・夜間排尿・。 鍵になる所見は、尿の赤血球とが多く、塩・白血球が陰性で、腎機能が保たれていることである。は結石症を示唆するが、結石は画像でまだ確かめられていない。この年齢の男性のは、などの悪性腫瘍を除外するまで「結石のせい」と決めない。

症例提示

:

  • 64歳男性、GP受診
  • 頻尿(30分〜1時間ごと)
  • が細い
  • 夜間排尿()
  • 間欠的腹痛

追加情報:

  • 家族から、しばしばトイレに行くと指摘
  • ときにあり
  • ときに尿色が濃い
  • 早朝に起きて排尿する

検査(血液):

  • ナトリウム (Na⁺): 139 mmol/L
  • カリウム (K⁺): 4.2 mmol/L
  • 尿素: 4.1 mmol/L
  • クレアチニン: 90 μmol/L
  • 血糖: 5.3 mmol/L
  • eGFR (CKD-EPI): 80 mL/min/1.73m²

検査(尿)— 試験紙:

  • ビリルビン: 陰性
  • : 0.2 mg/dL
  • ケトン: 陰性
  • ビタミンC: 陰性
  • 血糖: 陰性
  • 蛋白: 30 mg/dL
  • RBC: 35 RBCs/uL
  • pH: 5.5
  • 塩: 陰性
  • 白血球 (LEU): 陰性
  • 比重: 1.025
  • 度:
  • 色調: 赤色

尿沈渣:

  • 赤血球 (RBC): 22.4 /uL
  • 白血球 (WBC): 2.5 /uL
  • 結晶: 14.7
  • : 1.6
  • CaOx 二物: 12.4
  • : 0
  • : 0
  • 非上皮細胞: 2
  • 上皮細胞: 8
  • 細菌: 3
  • 粘液: 71.4

主要所見と解釈

引用 / 値 解釈
“結晶: 14.7”、CaOx一物1.6 + 二物12.4 (主に二物)が多く、尿がカルシウムにであることを示し、症を示唆する。ただしだけでは結石の存在は確定しない。確定には画像が要り、超音波が第一選択、結石の正確な評価にはが基準とされる1
比重 1.025、 。尿量が少ないと溶質が濃くなり、結晶がしやすい条件になる
“”、尿RBC 35/µL(試験紙)、沈渣RBC 22.4/µL 。結石による尿路で説明できる可能性があるが、結石が確かめられるまでは他の原因(下の行)を除外する
64歳男性の ⚠️ NG12 の推奨1.6.4は、45歳以上で尿路感染を伴わない説明のつかないを、を疑う紹介の対象とする(についても推奨1.6.6が同じ条件を置く)2。本例は塩・白血球が陰性で尿路感染の所見に乏しく、結石も画像で確かめられていないため、この条件に照らして評価する
塩陰性、白血球陰性、細菌3のみ 感染所見に乏しく、血尿/の主因は尿路感染症()とは考えにくい。ただし塩は還元能を持つ菌(大腸菌など)でしか陽性化しないため、腸球菌などの塩非産生菌による感染は本所見だけでは除外できない
“頻尿 … 細小 … … ” /(例: や)を示唆。 NG12 の推奨1.6.2は、またはのある男性で、前立腺癌の評価として()検査とを考慮するとしている2
“”、“間欠的腹痛” 膀胱または尿管結石に一致する恥骨上・
クレアチニン 90 µmol/L、 80、尿素 4.1 腎機能は保たれており、現時点で高度は乏しい(本例のは、2021年改訂で人種係数が撤廃された-EPI式による3)

要点整理

  • 見立て: ()による血尿と症状が疑われる。は結石を示唆するが証明ではなく、画像(超音波が第一選択、が基準)で確かめる1。
  • 結晶タイプ: カルシウム(一物 + 二物)で、最も一般的な結石成分。
  • ⚠️ 悪性腫瘍の除外: 45歳以上の説明のつかないは、 NG12 では・を疑う紹介の対象である2。結石が確かめられるまで、血尿を結石だけで説明しない。
  • 感染の否定: 塩・白血球陰性かつ細菌少数で、尿路感染症()の可能性は低い。
  • 病態生理: 尿の → 結晶凝集 → 結石形成 → (血尿)と。
  • 腎機能: 保たれており、高度閉塞は現状示唆されない。
  • 画像と管理の現在地: 結石の画像診断は超音波が第一選択、が結石評価の基準とされ、の第一選択は()である1。によるはかつて広く行われたが、英国24施設1,167例のSUSPEND試験では4週以内に追加処置を要さなかった割合が群・群・プラセボ群で差が無く、ルーチン使用は支持されなかった4。一方で2025年のガイドラインは、尿管結石の選ばれた患者では考慮しうるとしている1。
  • 臨床背景: 64歳男性の頻尿・細小・は結石だけで説明せず、の併存やも鑑別に加える。のある男性では検査とも考慮する2。

出典

  1. 1.European Association of Urology Guidelines on the Diagnosis and Treatment of Urolithiasis(European Urology・2025)抄録で確認した。診断は病歴・生化学・画像の組合せにより、画像は超音波が第一選択(first-line modality)、結石の正確な評価には低線量CTが基準(gold standard)とされること。疼痛管理の第一選択は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)で、オピオイドは二次的な選択肢とすること。α遮断薬による排石促進療法は尿管結石の選ばれた患者で考慮しうる(may be considered for selected patients)とすること閲覧 2026-08-26
  2. 2.Suspected cancer: recognition and referral (NICE guideline NG12)(National Institute for Health and Care Excellence (NICE)・2026)NICE公式サイトの推奨ページ(2026年4月15日更新版)で確認した。推奨1.6.4は、45歳以上で尿路感染を伴わない説明のつかない肉眼的血尿、または尿路感染の治療成功後も持続・再発する肉眼的血尿がある人を、膀胱癌の疑いとして紹介(suspected cancer pathway referral)する対象とし、推奨1.6.6は同じ条件を腎癌にも置くこと。推奨1.6.2は、夜間頻尿・頻尿・排尿開始遅延・尿意切迫・尿閉などの下部尿路症状、勃起障害、または肉眼的血尿のある男性で、前立腺癌の評価として前立腺特異抗原(PSA)検査と直腸診を考慮するとすること閲覧 2026-09-24
  3. 3.New Creatinine- and Cystatin C-Based Equations to Estimate GFR without Race(New England Journal of Medicine・2021)人種はeGFR推算式において生物学的ではなく社会的な構成概念であるとして、人種を含まない新しいクレアチニン式(CKD-EPI 2021)を開発した閲覧 2026-08-26
  4. 4.Medical expulsive therapy in adults with ureteric colic: a multicentre, randomised, placebo-controlled trial(The Lancet・2015)英国24施設で単発尿管結石1,167例をタムスロシン400 μg・ニフェジピン30 mg・プラセボに無作為化したSUSPEND試験では、4週以内に追加処置を要さなかった割合はプラセボ80%・タムスロシン81%・ニフェジピン80%で差が無く、排石促進療法のルーチン使用は支持されなかった閲覧 2026-08-26