病態生理学

病態生理学 · P-2-11

腎疾患 症例3

Kidney disease, Case 3

前提:病態
急性腎不全の原因と全身的影響

🧠 27歳女性の2日間で進行する、嘔吐、39.5 °Cの発熱、脈拍120/分。 鍵になる所見は、両側に強い圧痛、著明な(白血球 >500/µL)、塩の強陽性、沈渣の多数の細菌である。これを上部尿路の細菌感染、すなわちと解釈する。治療は、敗血症に当たるかどうかで経験的抗菌薬を選び、嘔吐で内服できるかを確かめ、尿培養の結果で絞り込む。

症例提示

:

  • 27歳女性、救急外来受診
  • 2日間の経過
  • 進行する
  • T: 37.9 °C
  • 直近6時間で2回嘔吐
  • 3か月前に膀胱炎既往
  • それ以外は健康

診察・評価:

  • 顔面紅斑
  • T: 39.5 °C
  • P: 120/min
  • BP: 104/68 mmHg
  • 心血管・呼吸: 正常
  • 腹部: 全体に圧痛、とくに両側で強い
  • 音: 正常

検査(尿):

  • 比重: 1.020
  • pH: 5–6
  • 白血球(/µL): > 500
  • 塩: 陽性(強陽性)
  • 蛋白: 0.3–1 g/L
  • 血糖: 正常
  • ケトン体: 陰性
  • : 正常
  • ビリルビン: 陰性
  • (赤血球/µL): 約50

尿沈渣: 多数の細菌、均一な形態の赤血球、白血球、細胞。

主要所見と解釈

引用 / 値 解釈
“進行性 … とくに両側” 側腹部痛/は上部尿路(腎)病変を示唆
T 39.5 °C、P 120/min、嘔吐 高熱・頻脈を伴う全身感染で、単純膀胱炎より腎盂腎炎に合致
T 39.5 °C、P 120/min、BP 104/68 mmHg 敗血症(感染による臓器障害)かどうかの判定が経験的抗菌薬の選択の出発点になる。 2025 は敗血症をの定義(2点以上の上昇)で扱い、やで推定的に拾いうるとする1。本例の記録には呼吸数・意識状態・臓器障害の検査(、乳酸、血小板など)が無く、は104 mmHgなので、この症例文だけでは敗血症と判定も除外もできない。これらを追加で評価する
直近6時間で2回の嘔吐 を服用できるかが治療経路を左右する。 2025 が静注から経口への切り替えを提案する条件は、臨床的に改善し、を服用でき、有効ながあることである1
尿白血球 > 500/µL、塩「強陽性」 + 塩陽性で、細菌性(多くはグラム陰性桿菌)尿路感染を示唆する。ただし試験紙の陽性だけでは感染を確定できず(除外に強く、確定に弱い)2、尿培養でと感受性を確かめる
沈渣: “多数の細菌と白血球” 活動性細菌感染を確認
“3か月前の膀胱炎既往” 尿路感染を起こしやすい背景を示す。腎盂腎炎の多くは膀胱からので起こる
蛋白 0.3–1 g/L、均一な形態の赤血球 軽度蛋白尿と非(赤血球)で、より感染性病態に整合

要点整理

  • 診断: 急性腎盂腎炎()。
  • 局在の手掛かり: + 高熱 + 全身症状は、下部尿路感染症()・膀胱炎と区別する。
  • 尿所見: 著明な、強い塩陽性、細菌尿で細菌感染を裏づける。
  • 病態生理: 多くは膀胱から尿管を介して腎実質へする。3か月前の膀胱炎は尿路感染を起こしやすい背景として意味がある。
  • 血尿の性状: (非)赤血球で、より感染性病変に一致。
  • 治療の組み立て: 2025 はをとして扱う。経験的抗菌薬は敗血症か否かで選び、尿培養の同定・感受性が出たら標的を絞った薬へ切り替える。有効な治療で改善していれば、フルオロキノロン5〜7日または非フルオロキノロン7日の短期治療を、10〜14日より提案している(いずれも条件付き推奨)1。本例は嘔吐があるので、内服できなければ静注で始め、改善して内服できるようになった時点で経口へ切り替える。
  • 経過観察の要点: ⚠️ 適切な抗菌薬治療を開始しても48〜72時間で・臨床的改善が得られない場合は、単純な腎盂腎炎からなどの局所合併症への進展を疑い、超音波・造影CTによる画像評価を追加する。 2025 も、速やかに改善しない患者では感染源のコントロールを要するが残っていないかの評価を考慮するとしている1。💡 ただし従来の分類で単純性とされる市中感染の腎盂腎炎(女性)では、治療開始72時間を超えてしない例が約3割を占め、それ自体は必ずしも耐性菌や合併症を意味しない、との報告がある3。発熱の遷延単独ではなく、全身状態の悪化や臨床的改善の欠如を伴う場合に画像評価を検討する。

出典

  1. 1.Clinical Practice Guidelines by Infectious Diseases Society of America: 2025 Guideline on Management and Treatment of Complicated Urinary Tract Infections–Selection of Antibiotic Therapy for Complicated Urinary Tract Infections(Infectious Diseases Society of America・2025)IDSAの公式ページの本文で確認した。急性腎盂腎炎を複雑性尿路感染症に含めて扱い、経験的抗菌薬の選択はまず敗血症か否かという重症度で導くことを提案していること(条件付き推奨、エビデンスの確実性は非常に低い。敗血症はSepsis-3の定義で、SOFAスコア2点以上の上昇で同定し、qSOFAやSIRSのようなスクリーニング手段で推定的に同定しうるとする)。尿培養の同定・感受性の結果が出たら、広域の経験的治療を続けるより標的を絞った有効な抗菌薬へ切り替えることを提案していること。初期に静注で治療し、臨床的に改善し、経口薬を服用でき、有効な経口薬がある場合は、経口薬へ切り替えることを提案していること。有効な治療で改善している場合は、フルオロキノロン5〜7日(条件付き、中等度)または非フルオロキノロン7日(条件付き、非常に低い)の短期治療を10〜14日の長期治療より提案していること。速やかに臨床的改善がみられない患者では、感染源のコントロールを要する病巣が残っていないかの評価を考慮するとしていること閲覧 2026-09-24
  2. 2.The urine dipstick test useful to rule out infections. A meta-analysis of the accuracy(BMC Urology・2004)抄録で確認した(1990〜1999年の70文献のメタ解析)。亜硝酸塩の精度は妊婦(診断オッズ比165)と高齢者(108)で高く、白血球エステラーゼは泌尿器科患者で高いこと。陰性的中率は家庭医療を除くすべての集団で両検査とも高いこと。結論は、亜硝酸塩と白血球エステラーゼがともに陰性なら試験紙単独で感染の存在を除外するのに有用とみられる一方、両検査を組み合わせた感度は集団により68〜88%で陽性結果は確認を要し、陽性結果による試験紙単独での感染の確定(rule in)は検査前確率が高くても疑わしいとするもの閲覧 2026-08-26
  3. 3.Prolonged fever is not a reason to change antibiotics among patients with uncomplicated community-acquired acute pyelonephritis(Medicine・2019)抄録で確認した。単純性市中感染急性腎盂腎炎の女性843例のうち29%が抗菌薬開始後72時間を超えて解熱せず(非応答群)、非応答群と応答群とで起炎菌の薬剤感受性パターンに有意差はなく、72時間を超える発熱は不良な治療転帰と関連しなかったとして、発熱遷延のみを理由に広域抗菌薬へ変更するのは感受性結果が出るまで控えるべきだと報告している閲覧 2026-08-26