小児科学

小児科学 · 37

甲状腺疾患

Disease of the thyroid gland

前提:正常
甲状腺ホルモン(T3/T4)の産生と作用
疾患
先天性甲状腺機能低下症

🧠 全体像:は出生時に無症状でも不可逆的なを残しうるため、から血清・fT4確認、早期開始までを途切れさせない。小児甲状腺機能亢進症ではGraves病が中心で、新生児では母体受容体抗体のを考える。12

先天性甲状腺機能低下症

原因・症状

甲状腺形成異常(無形成、低形成、異所性)とが主因。母体、過剰/不足ヨウ素、母体抗体、早産などでは一過性となりうる。

母体T4の影響で出生時は目立たず、、傾眠、、便秘、低体温、、嗄声、、、粗造・、腹部膨満・、が徐々に出現する。

スクリーニング・治療

地域プログラムが定める時期に乾燥血液(必要によりT4)でスクリーニングし、異常時は血清・fT4を緊急確認する。原発性では高値+fT4低値。中枢性ではが低値・正常・軽度高値でもfT4低値となる。1

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='newborn screening'>新生児スクリーニング</span>異常"] --> B["血清<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid-stimulating hormone'>TSH</span>・fT4を確認"]
    B --> C{"fT4低値/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid-stimulating hormone'>TSH</span>明確高値か"}
    C -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='levothyroxine, LT4'>レボチロキシン</span>を直ちに開始"]
    D --> E["原因画像は治療を遅らせず実施"]
    E --> F["頻回に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thyroid-stimulating hormone'>TSH</span>・fT4、成長・発達を追跡"]

単剤を診断後直ちに開始する。初期量は10〜15 µg/kg/日を基本とし、重症度とに応じ調整する。/超音波は原因同定に有用だが治療を遅らせない。鉄・Ca・大豆などは吸収を妨げるため同時投与を避ける。13

新生児甲状腺機能亢進症

多くはGraves病母体の受容体刺激抗体がして起こる。母体が甲状腺摘除/後でもTRAbが残ることがある。胎児・新生児で頻脈、甲状腺腫、、発汗、、体重増加不良、心不全、を生じうる。母体により発症が生後数日遅れることがある。

ハイリスク児は母体TRAb、臍帯/新生児TRAb、・fT4/T3を計画的に追跡し、初回の甲状腺機能が正常でも出生後に反復評価する。症候性では/、必要時β遮断薬を用い、重症例のヨウ素・ステロイドは専門管理とする。母体抗体消失に伴い多くは一過性だが、期間を1〜3か月と固定しない。2

小児Graves病

体重減少、暑がり、発汗、頻脈、振戦、甲状腺腫、、、睡眠・学業変化、成長加速、を認める。低値、fT4/T3高値、TRAb陽性で診断する。4

  • 第一選択は/の長期療法。発熱・ではを疑い中止して血算、黄疸・では肝障害評価を行う。4
  • は重篤な肝障害のため小児では原則使用しない。4
  • 頻脈・振戦には一時的β遮断薬を用いる。
  • または全摘術は、寛解不良、副作用、、大きな甲状腺腫、、年齢などを統合し専門チームで選ぶ。「10歳超は、5歳未満は手術」と単純化しない。4
  • ⚠️ 小児のの扱いは成人の線引きより厳しい。 ETA 2022は活動性のがある場合はを避け、のでも・増悪の予防にステロイドを併用することを、強い推奨(エビデンスの質は高い)として置いている。活動性のではよりが望ましいとも述べる。成人の線引き(中等症〜重症かつ活動性で回避、軽症の活動性ならステロイド併用)をそのまま小児へ持ち込まない。4
  • 小児のは成人と機序が同じで頻度も27〜63%と同程度だが、徴候は(中央値72%)と(中央値53%)が中心で、運動障害やはまれ、多くは軽症に経過する。4

発熱、著明な頻脈、心不全、意識変容、消化器症状を伴うはを要する。

まとめ

  • は出生時無症状でもスクリーニングで拾い、血清確認後直ちにを開始する。
  • 原因画像のために治療を遅らせない。
  • 新生児甲状腺機能亢進症は母体TRAbによることが多く、母体治療歴だけでリスクを除外しない。
  • 小児Graves病は/が第一選択で、を避ける。

出典

  1. 1.Congenital Hypothyroidism: A 2020-2021 Consensus Guidelines Update-An ENDO-European Reference Network Initiative Endorsed by the European Society for Pediatric Endocrinology and the European Society for Endocrinology(2021)先天性甲状腺機能低下症のスクリーニング、血清確認、レボチロキシン早期開始と継続的追跡を確認した。閲覧 2026-08-13
  2. 2.Management of Neonates Born to Mothers With Graves' Disease(2016)Graves病母体から出生した児のTRAbによるリスク層別化、出生後の反復甲状腺機能評価、メチマゾールを中心とする治療を確認した。閲覧 2026-08-13
  3. 3.Congenital Hypothyroidism: Screening and Management(2023)先天性甲状腺機能低下症の初期治療として、レボチロキシン10〜15 µg/kg/日を用いる推奨を確認した。閲覧 2026-08-13
  4. 4.2022 European Thyroid Association Guideline for the management of pediatric Graves' disease(2022)全文(PMC9142815)で確認した。小児Graves病ではメチマゾール/カルビマゾールによる3年以上の長期用量調整療法を第一選択とし、プロピルチオウラシルを避ける。放射性ヨウ素については逐語「RAI therapy should be avoided in the presence of active Graves’ orbitopathy (GO). In the case of inactive GO, a course of steroids should be given concurrently in order to prevent relapse/exacerbation」で、本ガイドラインの表記 (1,ØØØØ) は方法の節の凡例により強い推奨・エビデンスの質が高いことを意味する。本文はさらに「Thyroid surgery is preferable to RAI treatment in active GO」と述べる。⚠️ 成人のATA 2016(中等症〜重症かつ活動性で回避、軽症の活動性はステロイド併用を考慮)より厳しい線引きである。小児の眼症の頻度は27〜63%で成人と同程度、機序も同一で、徴候は眼瞼後退(中央値72%・範囲23〜91%)と眼球突出(中央値53%・範囲4〜92%)が中心、運動障害と視神経症はまれで多くは軽症に経過する閲覧 2026-08-13