小児科学

小児科学 · 2-17

新生児蘇生とApgarスコア

Neonatal Life Support and the Apgar Score

前提:正常
胎児循環肺気量・肺胞換気
スコア
アプガースコア

🧠 全体像:出生時蘇生で最も重要なのは有効な肺換気である。は蘇生開始の判断基準ではなく、出生後状態を標準化して記録する尺度である。

出生前準備と出生直後

  • ハイリスク分娩をし、役割分担、機器、家族への説明を行う。
  • 直ちに蘇生を要しなければ、臍帯を少なくとも約60秒遅らせる1。は児で害があり得るため一律に行わない2。
  • は乾燥・・保温、32週未満では乾かさずラップと放射保温を用い、36.5〜37.5℃を目標にする1。
  • 色調、筋緊張、呼吸、心拍を約60秒以内に評価する。

新生児蘇生の流れ

flowchart TD
    A["出生・保温・刺激・気道を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutral position'>中間位</span>"] --> B["呼吸と心拍を評価"]
    B -->|"無呼吸・喘ぎ"| C["5回の初期換気"]
    C --> D["胸郭挙上と心拍上昇を確認"]
    D -->|"胸郭が動かない"| E["マスク・頭位・顎挙上・2人法・気道器具を修正"]
    D -->|"有効換気30秒後も心拍<60/分"| F["胸骨圧迫3:換気1・酸素100%"]
    F --> G["30秒ごと再評価"]
    G -->|"心拍<60/分が持続"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='umbilical veins'>臍静脈</span>路・アドレナリン・可逆原因評価"]
  • 自発呼吸のある早産児ではCPAPを検討する。
  • 💡 があっても、活気のない児への一律のは行わない。ルーチン吸引は換気開始を遅らせるため推奨されない13。
  • 酸素はでは空気から、早産児では低濃度から開始し、右上肢でする。代表的目標は2分約65%、5分約85%、10分約90%である1。
  • 胸郭が動く有効換気を30秒行う前に胸骨圧迫へ進まない。
  • 薬剤用量は最新のアルゴリズムと施設換算表で確認する。「ブドウ糖250 μg/kg」という表記は単位上不適切で、遷延した蘇生でのブドウ糖投与はブドウ糖250 mg/kg(10%ブドウ糖液2.5 mL/kg)静注が目安である1。低血糖補正は濃度・mL/kgで管理する。
  • 10〜20分反応がない場合のは、在胎週数、可逆原因、蘇生の質、家族の価値観を含めチームで個別に判断する1。

Apgarスコア

項目 0点 1点 2点
皮膚色 蒼白・全身チアノーゼ 体幹桃色・ 全身桃色
心拍 なし 100/分未満 100/分以上
刺激反応 なし 顔をしかめる 咳・くしゃみ・活発な反応
筋緊張 弛緩 四肢軽度屈曲 活発な運動
呼吸 なし 緩徐・不規則 良好・力強い

1分・5分で評価し、5分値が7未満なら通常5分ごとに20分まで反復する。低値は状態不良を示すが、単独で仮死の原因や個人の長期神経予後を診断しない4。💡 コホート(スコットランド、生産約103万例)では5分Apgar 0〜3点が・の上昇と強く関連したが、この関連の強さは在胎週数により異なりで最も強かった5。

まとめ

  • の核心は胸郭挙上を伴う換気である。
  • 低心拍が続く時は、まず換気の有効性を修正する。
  • Apgarは記録・経時評価用であり、蘇生開始を遅らせない。

出典

  1. 1.European Resuscitation Council Guidelines 2021: Newborn resuscitation and support of transition of infants at birth(European Resuscitation Council・2021)出生後の遅延臍帯結紮(少なくとも60秒)、在胎週数別の開始酸素濃度(32週以上21%、28〜31週21〜30%、28週未満30%)とSpO2目標(2分65%・5分85%・10分90%)、有効換気30秒後も心拍60未満なら胸骨圧迫3対換気1・酸素100%とすること、アドレナリン静脈内10〜30 μg/kg、遷延蘇生時のブドウ糖静注250 mg/kg(10%ブドウ糖液2.5 mL/kg)、活気のない児への一律の気管内吸引を推奨しないことを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Association of Umbilical Cord Milking vs Delayed Umbilical Cord Clamping With Death or Severe Intraventricular Hemorrhage Among Preterm Infants(JAMA・2019)在胎23〜31週の早産児474例を対象とした無作為化試験(安全性シグナルのため早期中止)で、臍帯ミルキング群は遅延臍帯結紮群より重症脳室内出血の頻度が有意に高く(8%対3%)、特に在胎23〜27週の群で顕著であった(22%対6%)ため、極早産児への一律の臍帯ミルキングは推奨されないことを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Part 5: Neonatal Resuscitation: 2020 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care(2020)新生児蘇生における初期処置、換気開始、ルーチン吸引の回避、体温管理、遅延臍帯結紮の原則を確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Committee Opinion No. 644: The Apgar Score(2015)Apgarスコアは出生直後の状態と蘇生への反応を記録する指標であり、単独で仮死の診断や個人の神経学的予後予測には使えないことを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Apgar score and the risk of cause-specific infant mortality: a population-based cohort study(The Lancet・2014)スコットランドの単胎生産約103万例のコホートで、5分Apgarスコア0〜3点は正期産児で早期新生児死亡が対照(7〜10点)比359.4倍(95%CI 277.3-465.9)、乳児死亡50.23倍と関連したが、関連の強さは在胎週数によって異なり正期産で最も強かったことを確認した。閲覧 2026-08-27