Physiology

Physiology · 1.6

興奮性細胞における活動電位の発生:細胞間の共通点と相違点。活動電位の伝導。

The development of the action potential in excitable cells: similarities and differences between distinct cells. Conduction of the action potential.

応用トピック
生命を脅かす神経疾患の集中治療(脳卒中・ギラン・バレー症候群)麻酔科学VI:区域麻酔痙攣・てんかん重積状態の救急治療小児のけいれん、熱性けいれん

🧠 活動電位は「が先に開き、少し遅れてが開く」というタイミングのずれだけで、脱分極→再分極→()のすべてを説明できる。 この共通ロジックの上に、細胞ごとに異なるチャネル(、funnyチャネルなど)が加わることで、神経・骨格筋・心筋・平滑筋それぞれの個性的な波形が生まれる、という「共通土台+細胞特異的な追加要素」の構図で覚える。

活動電位の定義と特徴

の膜に生じる、急速・一過性・自己伝播性の電気的興奮。グレイド電位(1-05-the-development-of-the-resting-membrane-potential-the-development-and-properties)と3点で異なる。

活動電位(AP) グレイド(電気緊張)電位
振幅 大きい・一定 刺激の強さに比例して変動
伝播 減衰せず軸索全長を伝わる 距離とともにに減衰
全か無かの アナログ的

活動電位発生の基本機構(ニューロンの場合)

flowchart TD
  A["静止:K+透過性高・Na+透過性低(Em=-70mV)"]
  A --> B["刺激による脱分極が閾値-50mVに到達"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voltage-gated'>電位依存性</span>Na+チャネル開口(活性化ゲート)<br>Na+流入→急速脱分極(+35~40mV)"]
  C --> D["Na+チャネルの不活性化ゲートが遅れて閉鎖"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voltage-gated'>電位依存性</span>K+チャネル開口(活性化は遅い)<br>K+流出→再分極"]
  E --> F["K+チャネルが開いたまま→過分極(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='afterhyperpolarization'>後過分極</span>)約-87mV"]
  F --> G["K+チャネル閉鎖→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resting membrane potential'>静止膜電位</span>に復帰"]
  • :閾値約−50mV、速い活性化+不活性化あり。
  • (遅延 delayed rectifier):閾値約−50mV、遅い活性化、不活性化なし。
  • ニューロンの活動電位全体は約3msで完結する。

イオン電流の定量的裏付け

学的に書き直すと、Iion=gion×(EmEion)I_{ion} = g_{ion} \times (E_m - E_{ion})(gは、E_ionは式で算出)。

  • 脱分極初期はgNaのがEmをE_Naへ引き寄せる。
  • gNa上昇は一過性(不活性化ゲートの遅延閉鎖)で、遅れてgKが上昇するため、比は0に達せず再びEmはE_Kへ引き戻される=再分極。
  • 再分極後もgKが高いまま残るためが生じ、gKがベースラインに戻るとEmも静止値に戻る。

不応期

種類 機序 意味
の不活性化ゲートが閉じている どれほど強い刺激でも新たなAPは発生しない
K⁺透過性上昇による 通常より強い刺激があれば新たなAPが発生しうる

⭐ 「=Na⁺チャネルの不活性化」「=K⁺による」という原因の違いは頻出。前者は刺激の強さに関係なく不応、後者は強い刺激なら克服できる点が対照的。

細胞ごとのAPの違い

1. 心筋細胞のAP

で約150ms、で約300msと、神経のAP(数ms)よりはるかに長い。を持ち、それに応じても長い。

flowchart TD
  A["Phase 0:Na+流入による急速脱分極(+20mVまで)"]
  A --> B["Phase 1:Na+不活性化+一過性K+チャネル開口による初期再分極"]
  B --> C["Phase 2:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plateau'>プラトー</span><br>L型Ca2+チャネル(DHP型)流入とK+流出が拮抗<br>内向き<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rectification'>整流</span>K+チャネルの働きでK+流出を抑制"]
  C --> D["Phase 3:Ca2+透過性低下+K+透過性上昇→再分極"]
  D --> E["Phase 4:静止電位-85mVへ(電気的拡張期)"]

💡 Phase 2のCa²⁺流入は、SR上のからのCa²⁺誘発性Ca²⁺放出を引き起こし、を強化する。 これは単なる電気現象ではなく、収縮力を増強する仕組みでもある。

2. 洞房結節のAP

安定した静止電位ももなく、によって自発的に発火する。内向きK⁺チャネルを欠くため、電位はあまり負側に深くならない。

  • Phase 0: “funnyチャネル”(If、hyperpolarization-activated current)を介した緩徐なNa⁺流入で緩やかに脱分極→閾値でT型・L型VDCCが活性化しCa²⁺流入により完全脱分極。
  • Phase 3: 遅延K⁺によりおよそ−65mVまで再分極。
  • Phase 4(電位, pacemaker potential): 再分極が進み約−50mVに達すると内向きNa⁺チャネルが緩やかに開き始め、funny電流が再び閾値まで脱分極させる——これが・心拍数決定の本体。Phase 4の傾きが急なほどAP発生頻度(心拍数)が上がる(2-01-impulse-generation-and-conduction-in-the-heart-mechanism-of-pacemaker-potential参照)。

3. 骨格筋のAP

神経のAPと形はよく似るが、再分極がやや遅い。は約5ms。脱分極=VG Na⁺チャネル開口、再分極=Na⁺チャネル閉鎖+VG K⁺チャネル開口、過分極=VG K⁺チャネルの働き、という機構は神経とほぼ同じ。

4. 平滑筋のAP

神経のAPに比べ振幅が小さくが長く、Ca²⁺依存性が非常に高い

  • 静止Emは一定でなく、−40〜−80mVの間で振動するを示す。(interstitial cells of Cajal、GI管壁の2つの筋層間に存在する)が発生させ、を介して平滑筋層へ伝播する(頻度は胃で約3/分、十二指腸で約12/分)。
  • だけでは弱い収縮しか起こらないが、の電位が閾値を超えるとAPが重畳し、収縮力が増強される(APのピーク数が多いほど収縮が強い)。
  • 脱分極=L型VDCC、再分極=遅延性=Ca²⁺活性化K⁺チャネル。

活動電位の伝導

隣接部位が閾値に達して新たなAPが発火する連鎖反応として、APは減衰せずに軸索を伝わる。は2因子で決まる。

因子 効果 理由
太いほど速い 抵抗は断面積に反比例するため
あるほど速い( 髄鞘(myelin sheath:=PNS、=CNS)が膜抵抗を上げ膜容量を下げ、を減らす
  • 髄鞘は1〜2mm間隔で(非髄鞘部)により中断され、そこでのみの出入りが起こる。APはから次のへ「跳躍」する=
  • 定常電位が1/e(約37%)まで減衰する距離。が大きいほどは速い。が太いほど内部抵抗(internal resistance, R_IC)が下がり、髄鞘が厚いほど膜抵抗(membrane resistance, R_membrane)が上がる——どちらもを増大させる方向。

⚠️ 臨床:を阻害し、として活動電位発生を止める。 また血漿Ca²⁺濃度はに影響する:[Ca²⁺]↑は閾値をより正側(発火しにくく)に、[Ca²⁺]↓は閾値をより負側(発火しやすく)にシフトさせる(が起こりやすい機序)。

まとめ

  • APは(速い活性化・不活性化あり)とK⁺チャネル(遅い活性化・不活性化なし)のタイミングのずれで脱分極→再分極→を作る。
  • はNa⁺チャネル不活性化、はK⁺によるが原因。
  • 心筋はL型によるを持ちが長い。SA結節はfunnyチャネルによるを持つ。平滑筋はCajal細胞由来のの上にAPが重畳する。
  • )で決まる。はNa⁺チャネル阻害薬、血漿Ca²⁺はを左右する。