Traumatology

Traumatology · 06

頭蓋・脳外傷の初期治療と院内診断

Primary and immediate care of skull and brain injuries, in-hospital diagnostic examination methods

前提:病態
頭蓋内圧亢進の病理(浮腫・ヘルニア・水頭症)
前提:正常
中枢神経・神経解剖:脳室と脳脊髄液
疾患
外傷性脳損傷
症状
頭蓋内圧亢進
スコア
グラスゴー昏睡尺度

🧠 全体像の初期治療では、そのものを元に戻すことより、低酸素・低血圧・・頭蓋内圧亢進によるを防ぐことが重要である。保護を伴うABCDE、反復神経診察、適応に基づく頭部、必要時の早期介入を並行する。

病院前・救急初期対応

flowchart TD
    A["安全確認・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='causation'>受傷機転</span>"] --> B["A:気道確保+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cervical vertebra'>頸椎</span>保護"]
    B --> C["B:換気・酸素化"]
    C --> D["C:出血制御・循環維持"]
    D --> E["D:GCS・瞳孔・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Motor response, M'>運動反応</span>"]
    E --> F["E:全身観察・低体温予防"]
    F --> G["反復評価しつつCT・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurosurgery'>脳神経外科</span>へ"]

ABCDEの要点

項目 評価・介入
A:気道 気道開通を確認し、損傷を疑って頭頸部を中間位で保護する
B:呼吸 酸素化・換気を評価し、低酸素を直ちに是正する
C:循環 外出血を制御し、を病態に応じて用い低血圧を避ける
D:神経 Glasgow昏睡尺度(Glasgow Coma Scale:GCS)、瞳・左右差・、四肢運動を記録する
E:全身 頭部以外の致死的損傷を検索し、低体温を防ぐ

GCS 8以下、気道防御反射消失、換気不全、進行する意識低下では、適切な薬剤と保護下にを行う。でも低血圧の原因をだけと考えず、胸腹部・骨盤・の出血を検索する。

二次性脳損傷を防ぐ生理学的目標

  • 低酸素血症と低血圧を避ける。酸素投与と換気は血液ガス・で調整する。
  • 重症では、を50〜69歳で100 mmHg以上、15〜49歳および70歳超で110 mmHg以上に保つことが死亡低下の目安として提案される。これは、低血圧の閾値を一律90 mmHgとせず年齢層別に定義し直した解析(15〜49歳では110 mmHg未満を低血圧とする)に基づく。1
  • 不要なを避け、電解質・を補正する。糖含有液を一律禁忌とするのではなく、高血糖と低血糖の双方を避ける。
  • 頭蓋内圧亢進が疑われ、循環が安定していれば頭部を正にしてベッド頭側を約30°挙上する。
  • 予防的な長時間のは脳虚血を招き得る。切迫時の一時的救命措置などに限定する。

神経学的評価

GCS 重症度 臨床的意味
13〜15 軽症 正常に近くてもを否定できず、危険因子を評価する
9〜12 中等症 早期CTと厳密な反復観察が必要
3〜8 重症 気道管理、、頭蓋内圧管理を検討

鎮静薬、麻痺薬、アルコール、低血糖、低体温などGCSを修飾する因子も併記する。GCS総点だけでなくE・V・M各項目、瞳孔、局在徴候を記録し、時間変化を見る。

頭蓋内圧亢進では意識低下、頭痛・嘔吐、、局在徴候を認める。高血圧、徐脈、不規則呼吸からなるは晩期・切迫所見である。

画像診断

頭部単純CT

急性期の第一選択で、頭蓋骨骨折・硬膜下・くも膜下・、脳浮腫、徴候を迅速に評価する。

成人では、初診時GCS 12以下、受傷2時間後もGCS 15未満、または徴候、外傷後けいれん、局在神経症状、反復嘔吐などは緊急CTの代表的適応である。・健忘に年齢65歳以上、凝固異常、危険な、長いを伴う場合もCTを考える。抗凝固薬・使用は薬剤と他の危険因子を含めて判断する。Canadian CT Head Rule、NICE、CHIPなど複数の検証済み規則があり、と感度・特異度が異なるため、施設が採用する規則を一貫して用いる。2

💡 「軽症ならCT不要」「中等症以上なら全例同じ時刻にCT」という単純化はしない。年齢別に検証されたと地域ガイドラインを用いる。

追加画像

検査 適応
頸動脈・損傷、解離、、血管近傍の穿損傷を疑う場合
MRI CTで説明できない神経障害、(diffuse axonal injury:DAI)、脳幹・、亜急性期評価
頭蓋単純X線 CTが普及した現在、頭蓋内損傷の除外には用いず、役割は限定的

その他の院内検査とモニタリング

  • 血算、電解質、腎肝機能、血糖、凝固、血液型・、血液ガスを病態に応じて行う。
  • けいれんまたは非けいれん性てんかん重積を疑う場合はを用いる。
  • 重症では、CT所見、診察、を統合して頭蓋内圧(intracranial pressure:ICP)モニタリングを検討する。脳室内カテーテルは測定とが可能である。
  • GFAP、UCH-L1などの血液は一部地域で軽症のCT適応判断を補助するが、神経診察やCTを置き換えず、検査承認と施設手順に従う。

持続的なICP上昇では20〜25 mmHg前後が治療開始の目安に用いられるが、な単一閾値ではない。上昇の、CT、と合わせて判断する。3

けいれん予防

中等症〜重症でも、薬を投与するか否かの根拠は限定的で、全例への強い推奨ではない。用いる場合はまたはフェニトイン系薬を選択肢とし、原則7日以内の短期投与とする。晩期てんかんを防ぐ目的の漫然とした長期予防投与は行わず、損傷型、出血、手術、EEG、薬剤有害事象、施設プロトコルで個別化する。4

反復観察と悪化徴候

GCS、瞳孔、四肢運動、呼吸数、心拍数、血圧、体温、を系統的に反復記録する。GCS低下、特にの低下、、新たな麻痺、増悪する頭痛、反復嘔吐、けいれんは直ちに再評価し、再CTと介入を検討する。

まとめ

  • 初期治療の中心は、保護を伴うABCDEと低酸素・低血圧の回避である。
  • GCS総点だけでなく、各項目、瞳孔、運動、時間変化を記録する。
  • 急性期画像の第一選択は頭部で、危険因子に基づいて適応を決める。
  • けいれん予防、ICPモニタリング、は全例一律ではなく、重症度と施設手順で選択する。

出典

  1. 1.External validation of computed tomography decision rules for minor head injury: prospective, multicentre cohort study in the Netherlands(BMJ・2018)成人軽症頭部外傷のCT適応には複数の検証済み臨床判断規則があり、感度と特異度が異なること閲覧 2026-08-09
  2. 2.Redefining hypotension in traumatic brain injury(Injury・2012)中等症〜重症頭部外傷では低血圧の最適な収縮期血圧閾値が年齢層で異なり、15〜49歳では従来の90 mmHgではなく110 mmHg未満を低血圧とみなすべきであること閲覧 2026-08-13
  3. 3.Intracranial pressure thresholds in severe traumatic brain injury: we are not sure(Intensive Care Medicine・2018)ICPの単一閾値には限界があり、持続時間や画像・臨床所見と統合すべきこと閲覧 2026-08-09
  4. 4.Guidelines for Seizure Prophylaxis in Adults Hospitalized with Moderate-Severe Traumatic Brain Injury: A Clinical Practice Guideline for Health Care Professionals from the Neurocritical Care Society(Neurocritical Care・2024)中等症から重症TBIの発作予防は弱い推奨にとどまり、用いる場合は短期投与とすること閲覧 2026-08-09