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Disease Atlas · 循環器 · 疾患

動静脈瘻

Arteriovenous Fistula

別名
AVF
臓器系
循環器腎・泌尿器
科目
Cardiology, Heart Surgery, Angiology, Vascular SurgeryInternal Medicine
トピック
循環器内科 B-17:腎・内臓血管の閉塞性・動脈瘤性疾患と人工動静脈瘻・血液透析アクセス内科学 S-24:腎代替療法―透析と腎移植
鑑別疾患
動静脈奇形
合併症
心不全
症状
腫脹四肢痛血管雑音スリル

🧠 全体像:(AVF)は、動脈と静脈がを介さず単一の交通路で直接つながった状態である。()が「先天性の(nidus)」であるのに対し、AVFは大部分が後天性——外科的に作られるが臨床上もっとも頻度が高く、次いでカテーテル穿刺などの医原性・が続く(先天性AVFはまれ)。学習の軸は二つ:①血行動態(低下→増加→になりうる「動脈が静脈へ素通りする」という一点)と、②としての(作製部位・成熟・合併症・やカテーテルとの使い分け)である。

病態:動静脈瘻とは

AVFは、動脈と静脈がを介さず直接吻合した交通路である。先天性の血管分化異常である(動脈と静脈がnidusを介して吻合する)とは異なり、AVFの大部分は後天性に生じる1。

flowchart TD
    A["動脈と静脈の異常な直接交通"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='capillary bed'>毛細血管床</span>を経由しない短絡"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral vascular resistance'>末梢血管抵抗</span>の低下"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stroke volume'>一回拍出量</span>・心拍出量の代償性増加"]
    D --> E{"短絡量は大きいか"}
    E -->|"大きい・慢性"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-output heart failure'>高拍出性心不全</span>"]
    B --> G["静脈側に動脈圧が伝わる"]
    G --> H["静脈壁の拡張・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venous hypertension'>静脈高血圧</span>"]
    B --> I["瘻より末梢の灌流が相対的に不足(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='steal phenomenon'>盗血現象</span>)"]
    I --> J["皮膚<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cold sensation'>冷感</span>・虚血症状"]

💡 との違いは「nidusの有無」と「先天性か後天性か」の2点で覚える。 はの血管分化異常によるを介した多発性の吻合網であるのに対し、AVFは単一の動脈と単一の静脈が直接つながった一本の交通路であることが多い(循環器B-17)。

分類:後天性と先天性

分類 代表例
後天性(大多数) 用に外科的に作製されるAVF、()、医原性(カテーテル穿刺・生検・手術操作)
先天性(まれ) 、大動脈-下大静脈瘻、、、冠動脈瘻、肝

⭐ 臨床で「」と言うとき、最も頻度が高いのは用にに作製されたAVFである。 次いで、カテーテル穿刺後の医原性AVFが実地で遭遇しやすい。

血行動態と臨床像

動脈血がを経ずに静脈へ直接流入することで、が低下しが代償性に増加する。短絡量が大きく慢性に持続すると、高拍出性心不全に至りうる1。

  • 機能している瘻の診察:なと、でのの機械様雑音()——収縮期・拡張期の両方にわたって聞こえる点が単純なと異なる1
  • の徴候:瘻より末梢側の静脈圧上昇による静脈瘤様拡張、腫脹、疼痛1
  • :瘻へ血流が奪われることによる皮膚・の・虚血性の痛み1
  • 重症例:、瘻を用手圧迫すると反射性に徐脈を来すNicoladoni-Israel-Branham徴候1

⚠️ 患者の23%がAV短絡を有し、症候群は最大6%に生じる1。原因不明のを診たら、や外傷・カテーテル手技歴の有無を確認する。

Schobinger分類は、瘻の進行度をStage 1(休止:無症候)→ Stage 2(拡大:増大・拍動を触知)→ Stage 3(破壊:疼痛・潰瘍・)→ Stage 4(:心不全)の4段階で評価する1。早期に気づくほど転帰が良い。

血液透析アクセスとしてのAVF

では、通常上肢の動脈と静脈を吻合して動脈化した静脈を作り、そこへ2本の針(用の、用の)を穿刺してへ血液を導く(循環器B-17)。

術式 部位
- 前腕。第一選択
- 上部
上腕-basilic静脈転位瘻 深部のbasilic静脈をへ転位(1期法・2期法)

成熟には一般に6〜8週間を要し(KDOQIの「Rule of 6’s」では6週間後に評価)、開存率はAVFで3〜5年・AVで1〜2年、感染率はAVFの方が低い2。毎回の触知・聴取を欠かさず、消失や急な変化は血栓症・狭窄として緊急評価する(循環器B-17)。

💡 バスキュラーアクセスの考え方は「Fistula First」の画一適用から患者ごとのESKD Life-Planへ移った。 「管AVFが原則として望ましい」という自体は変わらないが、現在は血管温存・作製計画・合併症時対応・アクセス継承までを含めて個別に設計するP-L-A-Nアプローチが推奨されている3。

医原性AVF

・など動脈穿刺を伴う手技の合併症として、穿刺部(多くは大腿部)に医原性AVFが生じうる。心房細動への404例の前向き研究では、大腿部6.4%のうちが2.0%(8例)を占め、反復歴(3.09)と経験6か月未満(3.42)が独立した危険因子だった4。

  • 8例中6例(75%)はせず保存的経過観察に抵抗性で、圧迫やなどの塞栓術で治療され、外科手術を要した例はなかった4
  • 無症候の小さな医原性AVFはしうるため、まず超音波での経過観察を優先し、症候性・拡大傾向・症状を伴う場合にまたはへ進む

診断

  • :での低抵抗性の高流速血流、瘻部での・高流速信号1
  • CTA/MRA:関与する静脈がの早期から造影される所見1
  • :解剖学的評価と治療計画のだが侵襲的1

治療

flowchart TD
    A["AVFの診断"] --> B{"症候性か、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spontaneous closure'>自然閉鎖</span>が期待できるか"}
    B -->|"無症候・小規模・医原性"| C["超音波での経過観察"]
    B -->|"症候性・拡大傾向"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endovascular treatment'>血管内治療</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stent-graft'>ステントグラフト</span>・コイル・塞栓物質)"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endovascular treatment'>血管内治療</span>が不成功・不適応か"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surgical repair'>外科的修復</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autologous'>自家</span>静脈<span class='jp-term jp-term-diagram' title='graft'>グラフト</span>・人工<span class='jp-term jp-term-diagram' title='graft'>グラフト</span>・バイパス)"]
    E -->|"いいえ"| G["経過観察へ移行"]

(・コイル塞栓・注入)は回復が速く術後疼痛が少ないため第一選択になりつつあり、(静脈・人工・バイパス)はや血栓症のリスクを伴う1。透析用AVFでは、狭窄・血栓症を起こしたアクセスに対しても(・)が第一選択となることが多い。

合併症

  • :慢性の大きな短絡による心負荷の増大1
  • 症候群:瘻より末梢の虚血。透析用AVFでは前腕瘻はの約半分の頻度にとどまる2
  • :、1
  • 出血:動脈圧に晒され薄壁化した静脈の破裂1
  • 透析用AVFに特有の合併症:による成熟不全(50%以上の狭窄が主因)、血栓症(最多の合併症)、繰り返す穿刺による瘤形成、中心静脈カテーテル既往による中枢静脈狭窄2

まとめ

  • AVFは動脈と静脈がを介さず単一の交通路で直接つながった状態で、先天性のnidusを持つAVMとは異なり大部分が後天性(透析用作製・・医原性)である。
  • 血行動態の本質は「動脈血が静脈へ素通りする」ことで、低下・増加を経てに至りうる一方、瘻より末梢ではによる虚血が生じうる。
  • 用AVFはの第一選択で、成熟に6〜8週間を要し、AVより開存率・感染率で優れるが、狭窄・血栓症・成熟不全・瘤形成に注意する。バスキュラーアクセスの考え方は画一的な「Fistula First」から患者ごとのESKD Life-Planへ移行している。
  • カテーテル穿刺などの医原性AVFは大腿部で頻度が高く、多くは超音波での経過観察や低侵襲なで管理でき、外科手術を要することはまれである。
  • Schobinger分類(Stage 1〜4)で進行度を評価し、症候性・拡大傾向の瘻は、不成功例はへ進む。

出典

  1. 1.Arteriovenous Fistula(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2022)動静脈瘻(AVF)が動脈と静脈の異常な直接交通であり、先天性血管分化異常であるAVMとは異なり大部分が後天性(透析用の外科的作製・外傷性・医原性)であること、動脈血が毛細血管床を経ずに静脈へ流入することで末梢血管抵抗低下と一回拍出量増加が生じ高拍出性心不全に至りうること、機能的な瘻では触知可能なスリルと連続性の機械様雑音を聴取すること、静脈高血圧により静脈瘤様拡張・疼痛・腫脹を、盗血現象により皮膚冷感・指趾の変色を来しうること、高拍出性心不全患者の23%がAV短絡を有し盗血症候群は最大6%に生じること、Schobinger分類(Stage1休止〜Stage4代償不全)で重症度を評価すること、血管内治療(ステントグラフト・コイル・シアノアクリレート)が低侵襲な第一選択となりつつあることを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.Dialysis Fistula(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)透析用AVFの標準術式が橈骨動脈-橈側皮静脈瘻(Brescia-Cimino、前腕遠位部)・上腕動脈-橈側皮静脈瘻(Kaufmann)・上腕-basilic静脈転位瘻であり、成熟評価に6〜8週間を要すること(KDOQIのRule of 6'sでは6週間後に評価)、AVFの開存率が3〜5年であるのに対しAVグラフトは1〜2年にとどまること、AVFはグラフトより感染率が低いこと、成熟不全の主因が吻合部の50%以上の狭窄であること、盗血症候群は前腕瘻でグラフトの約半分の頻度にとどまることを確認した閲覧 2026-09-05
  3. 3.Hemodialysis Vascular Access: Core Curriculum 2025(American Journal of Kidney Diseases・2025)血液透析のバスキュラーアクセス選択が、全患者に自己血管AVFを一律優先する旧来の「Fistula First」から、患者ごとの予後・血管温存・合併症時対応・アクセス継承までを計画するESKD Life-Plan(P-L-A-Nアプローチ)へ移行したこと、「自己血管AVFが原則として望ましい」という結論自体は維持されつつも画一的な適用ではなく個別化された選択が推奨されることを確認した閲覧 2026-09-05
  4. 4.Incidence, Predictors, and Management of Femoral Vascular Complications Following Catheter Ablation for Atrial Fibrillation: A Systematic Duplex Ultrasound Study(Biomedicines (MDPI)・2025)心房細動へのカテーテルアブレーション404例の系統的デュプレックス超音波研究で、大腿部血管合併症全体が6.4%に生じそのうち医原性動静脈瘻が2.0%(8例)を占めたこと、反復アブレーション歴(オッズ比3.09)と術者経験6か月未満(オッズ比3.42)が独立した危険因子であったこと、8例中6例(75%)は保存的経過観察に抵抗性で自然閉鎖せず、超音波ガイド下圧迫2例・塞栓術1例で治療され外科手術を要した例はなかったことを確認した閲覧 2026-09-05