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Disease Atlas · 呼吸器 · 先天性疾患

先天性肺葉性過膨張

Congenital lobar overinflation

別名
先天性肺葉性気腫Congenital lobar emphysemaCLECLO
臓器系
呼吸器小児
科目
Pediatrics
トピック
小児科 2-13:先天性横隔膜ヘルニアと肺発生異常小児科 2-36:新生児呼吸適応障害と肺疾患
鑑別疾患
先天性横隔膜ヘルニア先天性肺気道奇形(CPAM)
症状
頻呼吸喘鳴

🧠 全体像:は、気管支軟骨の欠損・低形成による「ball valve(ボールバルブ)効果」で呼気時に空気が閉じ込められ、を壊さないままがする発生異常である。かつては「先天性性気腫」と呼ばれたが、肺胞破壊を伴う後天性の肺気腫とは機序が異なるため、「」という呼称が現在は好まれる。学習の軸は2つ——①(CPAM)との鑑別は「嚢胞か、の異常か」で分ける、②症候性・重症例はが標準だが、軽症・無症候例ではも選択肢という、CPAMと似た構図の論点がある。

病態生理

罹患するの軟骨が部分的に欠損・低形成であるため、吸気時には気道が広がって空気が流入する一方、呼気時には気道が虚脱して閉塞するball valve効果が生じる1。これにより空気が内に閉じ込められ続け、の破壊を伴わないまま全体がしていく。

flowchart TD
    A["罹患<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lobar bronchus'>葉気管支</span>の軟骨欠損・低形成"] --> B["吸気時は気道が開き空気が流入"]
    B --> C["呼気時は気道が虚脱し閉塞<br>(ball valve効果)"]
    C --> D["空気が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lobe'>肺葉</span>内に閉じ込められる"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar wall'>肺胞壁</span>を壊さないまま<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lobe'>肺葉</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperinflation'>過膨張</span>"]
    E --> F["隣接肺の圧迫・縦隔の対側偏位"]

💡 「」という旧称に引きずられない。 成人のにおける肺気腫はの破壊(の融合)を本質とするが、本疾患は肺胞の数・壁構造は保たれたまま、だけが過剰という点でまったく異なる病態である。この違いが、現在「」という呼称が好まれる理由でもある。

⚠️ 軟骨欠損の原因が特定できない特発性の症例が多い。 気管支の外からの圧迫(、など)が二次的にball valve機序を作ることもあり、この場合は「二次性」のとして区別される。

疫学・好発部位

新生児10,000〜30,000人に1人と稀な疾患で、男女比は約3:1と男児に多い1。

罹患には明瞭な偏りがある。

罹患 頻度
左 43%(最多)
32%
右 21%
下葉 2%(稀)

⭐ 、とくに左が最も多く侵される。 下葉の罹患は稀であり、下葉優位の性病変をみたときはCLE以外の鑑別(による二次性圧迫や、後天性の異物によるなど)をより強く考える1。

症状

症状発現の時期には幅があり、約33%が出生時、約50%が生後6か月以内に症候化する1。

  • 呼吸窮迫、喘鳴、チアノーゼ
  • 摂食困難、
  • 反復する呼吸器感染
  • 身体所見:患側の、での音(高音)

⚠️ に急激な呼吸窮迫を来す症例と、乳児期以降まで無症候・軽症で経過する症例の両方がある。 CPAMと同様、無症候例では管理方針が一様に決まらない。

画像所見

胸部X線では、したの透過性亢進(過剰による黒っぽい陰影)と、それに伴う縦隔の対側偏位が特徴的である1。生後早期はが排出しきれず、一時的に不透過性(白っぽい)陰影として見えることがあり、この時期の1枚だけで「嚢胞性病変ではない」と即断しない。では罹患の、隣接肺の性、血管影の減少(相対的な血流の乏しさ)をより詳細に評価できる。

鑑別

との鑑別が最も重要で、「嚢胞か、の過剰か」が軸になる1。

(CPAM)
病態 気道の軟骨欠損によるの過剰 レベルの気道の異常増殖
画像 した、嚢胞壁を欠く 嚢胞性・の腫瘤として描出される
血管影 により相対的に減少 病変内部に血管影を欠く

治療

は症状の程度で分かれる。

  • 軽症〜中等症・無症候例:と定期的な経過観察1。
  • 重症・症候性例:罹患の術が標準治療である1。37例の外科症例シリーズでは死亡例が無く、術後合併症は13.5%(5例)と報告されている1。

⚠️ 無症候例に対する切除の要否には一様な合意が無い。 2000〜2021年の単施設では、症候性CLE患児23例のうち12例がを受けており、症候性であってもを選ぶ実地の判断が一定数存在することがうかがえる2。CPAMの無症候例をめぐる議論(切除を推す立場と経過観察を推す立場の併存)と同じ構図が、CLEにも当てはまる。

flowchart TD
    A["新生児〜乳児期に呼吸器症状<br>または偶発的な画像所見"] --> B["胸部X線・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>で評価"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperinflation'>過膨張</span>した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lobe'>肺葉</span>か<br>嚢胞性病変か"}
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperinflation'>過膨張</span>・血管影減少"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='congenital lobar overinflation'>先天性肺葉性過膨張</span>を考える"]
    C -->|"嚢胞性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='solid mass'>充実性腫瘤</span>"| E["CPAMを考える"]
    D --> F{"症状の程度"}
    F -->|"軽症〜無症候"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conservative management'>保存的管理</span>・経過観察"]
    F -->|"重症・進行性の呼吸窮迫"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lobectomy'>肺葉切除</span>術"]

まとめ

  • は、気管支軟骨の欠損・低形成による「ball valve効果」で呼気時に空気が閉じ込められ、を壊さないままがする発生異常である。
  • 新生児10,000〜30,000人に1人、男女比約3:1。左43%が最多で、下葉罹患は2%と稀である。
  • 約33%が出生時、約50%が生後6か月以内に症候化する。呼吸窮迫・喘鳴・チアノーゼ・などを来す。
  • 胸部X線での透過性亢進と縦隔対側偏位が特徴。CPAMとは「嚢胞か過剰か」で鑑別する。
  • 軽症〜無症候例は、重症・症候性例は術が標準治療。ただし症候性であっても非手術管理を選ぶ実地の判断があり、無症候例への切除の要否には一様な合意が無い。

出典

  1. 1.Congenital Lobar Emphysema (Congenital Lobar Overinflation)(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)先天性肺葉性過膨張(先天性肺葉性気腫、CLE/CLO)が気管支軟骨の欠損・低形成に由来する「ball valve効果」により呼気時の空気閉塞と肺胞の過膨張を来す発生異常であり、肺胞壁の破壊を伴わない点が肺気腫と異なること、新生児10,000〜30,000人に1人の頻度で男女比約3:1と男児に多いこと、罹患肺葉は左上葉43%・右中葉32%・右上葉21%・下葉2%の順に多いこと、症状発現は約33%が出生時・約50%が生後6か月以内であること、症状として呼吸窮迫・喘鳴・チアノーゼ・哺乳困難・慢性咳嗽・反復する呼吸器感染があり患側の呼吸音減弱を伴うこと、胸部X線で過膨張した肺葉の透過性亢進と縦隔対側偏位が特徴でCTがより詳細な評価に有用であること、鑑別として先天性肺気道奇形(嚢胞病変の有無で区別)・肺炎(抗菌薬で改善し過膨張を伴わない)・緊張性気胸(横隔膜圧排所見を欠く点で区別)・先天性横隔膜ヘルニア(腸管ガス像の有無で区別)が挙げられること、軽症〜中等症は保存的管理と経過観察の方針となり重症例では罹患肺葉切除術が標準治療であること、37例の外科症例シリーズでは死亡例が無く術後合併症は13.5%(5例)であったことを確認した閲覧 2026-09-07
  2. 2.The long-term outcomes of symptomatic congenital lobar emphysema patients(Pediatric Pulmonology・2023)2000〜2021年に単施設で治療された症候性の先天性肺葉性気腫患者を対象とした後方視的研究であり、症候性CLE患児23例のうち12例が非手術的(保存的)管理を受けたことを確認した。⚠️ 全文は取得できておらず、確認できたのは検索エンジンが提示した抄録相当の要約に記載された対象規模と管理群の内訳までである閲覧 2026-09-07