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Disease Atlas · 呼吸器 · 先天性疾患

先天性肺気道奇形

Congenital pulmonary airway malformation

別名
CPAMCCAM先天性嚢胞性腺腫様奇形
臓器系
呼吸器小児
科目
Pediatrics
トピック
小児科 2-13:先天性横隔膜ヘルニアと肺発生異常小児科 2-36:新生児呼吸適応障害と肺疾患
鑑別疾患
気管支原性嚢胞胸膜肺芽腫先天性横隔膜ヘルニア先天性肺葉性過膨張
続発疾患
胎児水腫
症状
頻呼吸発熱
適応薬
ベタメタゾン

🧠 全体像:(CPAM)は、レベルの気道が過剰に増殖して嚢胞性・の腫瘤を作り、正常肺を置き換える発生異常である。旧称は(CCAM)で、2002年ので現在の名称と5型立てになった1。⭐ 臨床のは3つ——①は病変の大きさ(CVR)がのリスクを決める、②はとの圧迫がを決める、③その後は無症候例をどうするかという、いまだの出ていない問題が残る。⚠️ とは「と交通するか」「血流をどこから受けるか」で分ける。

名称と分類

は病変の由来部位に沿って5型を並べる1。

型 由来 形態 押さえどころ
0型 気管支型 気管支型の気道が豊富なのみで隔てられる1 かつてと呼ばれた。極めて稀で生存困難
1型 気管支・型 径2 cmを超える胞1 最も多い型
2型 型 多発する小嚢胞1 他の(など)の合併が多い
3型 ・肺胞型 。後期胎児肺に似たで隔てられた構造の過剰1 大きく、を来しやすい
4型 末梢の薄壁・しばしばの嚢胞1 との異同が議論されている

⚠️ 画像診断名と名を混同しない。 病理学的な分類は切除後・剖検後にしか確定せず、同一症例に複数病変の組織像が混在することもある。出生前・出生後の画像だけで型を断定しない。

は全の5〜18%を占め、は10万人あたり30〜42例1、先天性肺奇形全体では出生2,500人に1人とされる2。

肺分画症・気管支原性嚢胞との区別

との交通 ある(異常な気道が主体) 無い1 無い(閉鎖した嚢)
動脈血流 胸部またはから1
位置 任意の。正常肺を置換する 内型は主に左下葉、外型は独自の胸膜を持ち通常は左下葉の下方(15%は)1 約50%は近傍の縦隔1
壁の構成 非機能肺組織 +の軟骨1

⭐ 画像でを探すことが決定打になる。 造影CTやで大動脈からのが見えれば分画症の要素がある。⚠️ 両者は排他的ではない——分画症とCPAMが混在する病変はと呼ばれ、でしばしばみられる1。

出生前——大きさが予後を決める

⭐ CVR(CPAM volume ratio)がの予測指標である。 病変の長径・幅・深さを掛け合わせて0.52を乗じ(と仮定して体積を求める)、これをで除して妊娠週数を補正する3。

💡 CVRという略号の展開は資料によって揺れる。 一般には CPAM volume ratio だが、全体を CTM と略す資料では CTM volume ratio と書かれる1。指しているのは同じ指標なので、略号の展開の違いを別物と読まない。

CVR 意味
1.6未満 94%、のリスク3%未満と報告されている1
1.6超 のリスクが80%増加すると予測される群1。頻回ので追跡する

⚠️ 1.6ちょうどはどちらの区分にも入らない。 引用元が「1.6未満」「1.6超」と書き分けているためで、境界値そのものを扱った報告ではない。

12研究をまとめたでは、1.6の診断に対する0.86(95%CI 0.72〜0.93)・0.90(95%CI 0.88〜0.93)・S0.93と報告された3。⚠️ は1.6だけではない。 同じは2.0・1.68・1.26という値も報告されていることを挙げており3、1.6という数字をな境界として覚えない。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fetal ultrasonography'>胎児超音波</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intrathoracic'>胸腔内</span>の嚢胞性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='solid mass'>充実性腫瘤</span>"] --> B["CVRを算出<br>(長径×幅×深さ×0.52÷<span class='jp-term jp-term-diagram' title='head circumference'>頭囲</span>)"]
    B --> C{"CVRの大きさ"}
    C -->|"小さい"| D["定期的な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fetal ultrasonography'>胎児超音波</span>で経過観察<br>多くは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='third trimester'>妊娠後期</span>に相対的に縮小する"]
    C -->|"大きい"| E["頻回の超音波で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydrops fetalis (fetal hydrops)'>胎児水腫</span>を監視"]
    E --> F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydrops fetalis (fetal hydrops)'>胎児水腫</span>を来したか"}
    F -->|"来していない"| E
    F -->|"来した"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fetal therapy'>胎児治療</span>を検討<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='microcystic'>微小嚢胞性</span>病変では母体への副腎皮質ステロイド投与<br>大きな<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unilocular cyst'>単房性嚢胞</span>では<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thoracoamniotic shunt'>胸腔羊水腔シャント</span>"]
    D --> H["出生後に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>で評価"]
    G --> H
    E --> H

⚠️ CVRが大きくても、多くの病変はに相対的な大きさを減じる。 を来していない限り、直ちにへ進むわけではない。

⭐ の第一手は母体への副腎皮質ステロイド投与である。 妊娠中期の投与により一部のが退縮し、が改善してが高まることが示されている1。機序としては、ステロイドが病変内でのの産生を減らし、その再吸収を高めると説明されている1。

⚠️ ただし適応は病変の形態で分かれる。 ステロイドが適応となるのは病変であり、病変が反応するかは不明である1。大きなに対してという別の手段が並ぶのは、この効き方の違いに対応している。

出生後の評価と管理

されていれば、症状が無くても出生後に造影CTで病変の範囲・の有無を確認する。胸部X線だけでは病変を見落とすことがある。

  • 症候性(・・反復する感染)では切除が方針として定まっている。
  • ⚠️ 無症候例の扱いには国際的な合意が無い。 悪性化と感染のリスクを重視してを選ぶ立場と、手術合併症を避けて経過観察する立場が並存する。

⭐ 成人になってから見つかる症例の実態が、この論争の材料になっている。 1947〜2024年の653研究・成人980例をまとめた系統的レビューでは、いずれもを受けておらず、手術時の平均年齢は39.4±15.7歳、74.4%が症状を契機に発見されていた2。CPAMとでは肺炎が最も多い症状で、30%超がを経験していた2。さらに成人の11.7%で切除時に腫瘍を伴い、CPAMでは20%超が肺腫瘍を伴っていたため、著者らは無症候例を含む成人全例への切除を推奨している2。

⚠️ この数字を小児にそのまま当てはめない。 対象は「成人まで診断されずに残り、多くは症状が出て手術に至った」集団であり、された無症候の乳児とは母集団が違う。

⭐ 母集団を揃えた側のデータが、反対向きのを支えている。 無症候のCPAMを保存的に管理した10研究・298例をまとめた2026年の系統的レビューでは、87%が例で、経過観察中に合併症を来したのは16%(49例)——最も多いのは肺炎とであった。20%(58例)が合併症・病変の増大・保護者の希望のいずれかで最終的に切除に至ったが、に悪性所見は1例も無く、死亡例も報告されなかった4。

⚠️ ただしこのレビュー自身が限界を明示している。 追跡期間は研究間で12〜96か月とばらつきが大きく、はVである4。著者らのも「中期的な追跡の範囲ではの安全性が支持され、重篤な有害転帰のリスクは低い」という射程で、生涯にわたる悪性化リスクを否定したものではない。

💡 2つの系統的レビューが逆向きのに達しているのは、見ている集団が違うからである。 成人まで残った症例を数えれば感染と腫瘍の負担が重く見え2、された無症候例を中期追跡すればが安全に見える4。⚠️ どちらの数字も、相手の集団に対する反証にはならない。 2026年のレビューの著者ら自身も、この情報が患者・家族との十分な情報に基づく安全なを助けることを目的として掲げている4。

小児期の悪性リスクとしてはが挙げられる。一般集団では出生25万人に1例と稀だが、CPAMを有する小児では頻度が4%まで上昇し、死亡率は約20%と報告されている1。⚠️ 4型CPAMが退縮したなのか、が4型の合併症なのかは決着していない1。

鑑別

まとめ

  • はレベルの気道の過剰増殖により正常肺が置換される発生異常で、旧称はCCAM。の5型(0〜4型)に分かれ、1型(径2 cm超の胞)が最も多い。
  • 出生前はCVR(病変体積÷)でのリスクを層別化する。1.6未満なら94%・水腫リスク3%未満、1.6をとした水腫診断の0.86・特異度0.90。ただしは複数報告されている。
  • を来した例ではを検討する。母体への副腎皮質ステロイド投与は病変が適応で、病変が反応するかは不明である1。大きなにはを用いる。
  • とは、との交通の有無と大動脈からのの有無で分ける。両者が混在するも存在する。
  • 症候性は切除、無症候例の方針には合意が無い。成人980例の系統的レビューでは74.4%が症状で発見され、11.7%(CPAMでは20%超)が切除時に腫瘍を伴っていた。
  • ⚠️ 一方、無症候の小児298例(87%が)を保存的に管理した2026年の系統的レビューでは、合併症16%・最終的な切除20%で、悪性所見も死亡も無かった。 逆向きのに見えるのは母集団が違うからで、追跡は12〜96か月・Vという射程を外して読まない。
  • 小児ではの頻度が4%まで上昇するとされ、4型CPAMとの関係は未解決である。

出典

  1. 1.Congenital Lung Malformations: Unresolved Issues and Unanswered Questions(Frontiers in Pediatrics(Annunziata F, Bush A, Borgia F, Raimondi F, Montella S, Poeta M, Borrelli M, Santamaria F)・2019)2002年のStocker分類において先天性肺気道奇形(CPAM)という名称が従来の先天性嚢胞性腺腫様奇形(CCAM)に取って代わり5型を含むこと、0型(気管支型、かつて腺房形成異常と呼ばれた)が豊富な間葉組織のみで隔てられた気管支型気道を特徴とすること、1型(気管支・細気管支型)と2型(細気管支型)がそれぞれ径2 cmを超える嚢胞と多発する小嚢胞を特徴とすること、3型(細気管支・肺胞型)が後期胎児肺に似た気腔で隔てられた細気管支構造の過剰により嚢胞性ではなく充実性であること、4型(末梢型)が末梢の薄壁でしばしば多房性の嚢胞を特徴とすること、先天性胸郭内奇形が全先天異常の5〜18%を占め累積発生率が10万人あたり30〜42例であること、肺分画症が全先天性胸郭内奇形の最大6%を占め気管支樹と交通せず動脈血流を通常は胸部または腹部大動脈から受けること、肺葉外分画症が独自の胸膜を持ち通常は左下葉の下方に位置し15%は横隔膜下にあること、肺葉内分画症の方が頻度が高く主に左下葉に位置すること、分画症とCPAMが混在する病変をハイブリッド病変と呼び肺葉外分画症でしばしばみられること、気管支原性嚢胞が乳児期に報告される最も多い孤立性嚢胞で約50%は気管分岐部近傍の縦隔に位置し壁に軟骨を含むこと、嚢胞性病変ではCTM volume ratio(CVR)が有用な予後指標で病変体積を頭囲で除して妊娠週数を補正すること(CTMは本総説が全編で用いる congenital thoracic malformation の略号であり、同じ指標は一般に CPAM volume ratio と呼ばれる。本総説の表記は原文どおり)、CVR 1.6超では胎児水腫のリスクが80%増加すると予測され1.6未満では生存率94%・胎児水腫のリスク3%未満と報告されていること(いずれも本総説が引用している数値であり本総説自身の解析結果ではない)、胸膜肺芽腫が一般集団では出生25万人に1例と稀である一方でCPAMを有する小児では頻度が4%まで上昇し死亡率が約20%であること、妊娠中期の母体ベタメタゾン投与が一部の先天性胸郭内奇形を退縮させ胎児水腫を改善して生存率を高めることが示されていること、ステロイドが病変内での肺液の産生を減らし再吸収を高めると説明されていること、ステロイド投与の適応が微小嚢胞性(microcystic)病変であり大嚢胞性(macrocystic)病変が反応するかは不明とされていることをPMCの全文で確認した。⚠️ 胸膜肺芽腫の3数値(一般で25万出生に1例、CPAM児では最大4%、死亡率約20%)は本総説自身の解析ではなく参照文献47〜49を引用したものである閲覧 2026-09-02
  2. 2.Risk of malignant transformation and infections in congenital lung malformations in adults: a systematic review(European Respiratory Review(Pederiva F, Dalena P, Pasqua N, Bresesti I, Testa V, Zirpoli S, Gentilino V)・2025)先天性肺奇形が出生2,500人に1人に生じる稀な肺の発生異常であること、1947〜2024年の12,908研究から653研究・成人980例を抽出した系統的レビューで、いずれの症例も出生前診断を受けていなかったこと、手術時の平均年齢が39.4±15.7歳(範囲15〜86歳)であったこと、成人先天性肺奇形の74.4%が症状を契機に発見されたこと、CPAMと肺葉内分画症では肺炎が最も多い症状で30%超が反復性呼吸器感染を経験していたこと、成人の11.7%で切除時に腫瘍を伴っておりCPAMでは20%超が肺腫瘍を伴っていたこと、著者らが感染と悪性化のリスクを理由に無症候例を含む成人先天性肺奇形の全例に外科的切除を推奨し、手術が不可能な場合にのみ保存的管理を考慮すべきと結論したことをPMCの全文で確認した。閲覧 2026-09-02
  3. 3.Diagnostic value of congenital pulmonary airway malformation volume ratio for fetal hydrops due to congenital lung malformations: a systematic review and meta-analysis(Orphanet Journal of Rare Diseases(Zhu P, Cheng K, He M, Wang Y, Shen P, He K, Xu C, Zhang B, Liu Z)・2022)CVRが病変の長径・幅・深さを掛け合わせて0.52を乗じ(回転楕円体と仮定)、これを頭囲で除して妊娠週数を補正した指標であること、報告されているカットオフ値には2.0・1.68・1.26・1.6があること、先天性肺奇形による胎児水腫の診断に対するCVRカットオフ1.6の診断精度を12研究のメタ解析で評価し、統合感度0.86(95%CI 0.72〜0.93)、統合特異度0.90(95%CI 0.88〜0.93)、診断オッズ比58(95%CI 22〜149)、SROC曲線下面積0.93(95%CI 0.91〜0.95)であったこと、出版バイアスを認めずカットオフ1.6が胎児水腫の早期予測に有用と結論したことをPMCの全文で確認した。閲覧 2026-09-02
  4. 4.The safety of conservative management of asymptomatic congenital pulmonary airway malformations (CPAMs) in children: A systematic review(Journal of Pediatric Surgery・2026)無症候の先天性肺気道奇形で生まれた乳児の最適な管理が依然として議論の的である一方、保存的な非手術的方針を支持するエビデンスが増えつつあるとして行われた系統的レビューであること。組入れ基準を満たした10研究・無症候CPAMを保存的に管理した298例のうち、49例(16%)が経過観察中に合併症を来し最も多いのが肺炎と慢性咳嗽であったこと、58例(20%)が合併症・病変の増大・保護者の希望のいずれかにより最終的に外科的切除を受けたこと、切除標本に悪性所見は1例も同定されず死亡例の報告も無かったこと、病変の87%が出生前にX線とCTで診断されていたこと、追跡期間が研究間で12〜96か月と大きくばらついたこと。著者らが、主に出生前診断された病変を持つ無症候例において保存的管理が中期的な追跡の範囲で安全性を支持されると結論し、この情報が患者・家族との十分な情報に基づく安全な共同意思決定を助けることを期待すると述べていること。エビデンスレベルがVと自己申告されていることを、Europe PMC(PMID 41643769)の構造化抄録で確認した。⚠️ 全文は取得できておらず、確認できたのは抄録に記載された主要・副次評価項目の数値までである閲覧 2026-09-05