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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

伝染性軟属腫

Molluscum contagiosum

別名
水いぼモルスクム・コンタギオスム
臓器系
皮膚感染症小児
科目
Medical Microbiology
トピック
微生物学 3/19:ポックスウイルス微生物学 5/25:発疹(皮疹)を特徴とする小児感染症
治療薬
シドフォビル
原因微生物
伝染性軟属腫ウイルス
原因となる疾患
DOCK8欠損症

🧠 全体像:は、のウイルスが表皮のに感染し、を伴う肌色の状丘疹を作る良性のである。免疫正常な小児では「治療しなくても大半は自然に治る」という一点がすべての判断の起点になり、が第一選択になる。一方で、思春期以降は性感染症としての側面(・下腹部の病変)が、感染などのではで難治性の広範な病変が問題になる。診断は臨床像だけで完結することがほとんどで、病理を要するのは非典型例に限られる。

病原体と伝播

はの2本鎖ウイルスで、ヒトの表皮にのみ感染しは起こさない。血清型のうちMCV-1が米国症例の約90%を占め、MCV-2は性感染症や免疫不全患者の広範な皮疹との関連が強い1。

伝播は直接の、タオル・浴槽などの汚染物を介する、自分の病変を掻いて他部位へ広げる、そして性行為による伝播の4経路が主体である1。潜伏期は通常2〜7週間だが、1週間から6か月まで幅がある1。

疫学は年齢層で様相が変わる

  • 小児:8歳未満に好発し、診断時年齢中央値は5歳。米国での年間罹患数は約600万人、小児におけるは5.1〜11.5%と推定される1。
  • :と局所免疫の変化により特にハイリスクとされる1。
  • 思春期・成人:・会陰・下腹部に病変が生じた場合は性感染症として扱い、他の性感染症の検索を考慮する。
  • 感染・:は20%に達しうる。病変は(大型・多発・顔面優位)で難治性になりやすく、進行した感染ではなどの悪性腫瘍に類似することがある1。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central umbilication'>中心臍窩</span>を伴う肌色丘疹"] --> B{"年齢層・背景は"}
    B -->|"小児(8歳未満が多い)"| C["躯幹・四肢・顔面に好発<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='atopic dermatitis, AD'>アトピー性皮膚炎</span>はハイリスク"]
    B -->|"思春期・成人"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vulva'>外陰部</span>・下腹部なら<br>性感染症として扱う"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human immunodeficiency virus'>HIV</span>感染・免疫不全"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-conventional'>非典型的</span>・大型・難治性<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal cell carcinoma, BCC'>基底細胞癌</span>等との鑑別を要する"]
    C --> F["免疫正常なら経過観察が第一選択"]
    D --> F
    E --> G["難治例では<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intralesional injection'>病巣内注射</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic therapy'>全身療法</span>を検討"]

臨床像と診断

皮疹は光沢のある肌色〜白色の状丘疹で、中心にを伴い、直径は通常2〜5 mmである。小児では10〜20個程度が典型だが、重症例では100個を超えることもある1。

診断は特徴的な臨床像だけで大半が完結する。非典型例や免疫不全患者では以下を補助的に用いる。

  • 病理組織:の細胞質内に好酸性の(Henderson-Paterson小体、molluscum bodies)がみられ、これがの集塊に相当する1。
  • PCR:本ウイルスのを標的とした検査で血清型の鑑別も可能1。

自然経過

免疫正常者ではが最大の特徴で、無治療でも12か月以内に約半数、18か月以内に約7割の皮疹が消退する。平均持続期間は13〜18か月だが、一部は2〜5年に及ぶこともある1。このが、以下のの起点になる。

治療は「治療するかどうか」から始まる

⚠️ 免疫正常者では、まず治療しないという選択肢(経過観察)を検討する。 2017年版(22件のRCT、1,650人が対象)は「自然消退を待つことを強く支持するデータがある」としている2。治療を選ぶ理由は、整容面の懸念、によるの広がり、のリスク、心理社会的な苦痛などである。

治療法 位置づけ
経過観察 免疫正常者の第一選択。自然消退を待つ
物理的破壊法の中で最も有効性が高いとされる1
迅速に病変を破壊できるが疼痛を伴う
(VP-102) 2023年に承認された初のMC治療薬。12週時のは46〜54%(対照13〜18%)1
ベルダジマーゲル10.3% 2024年に承認。に対し有意に高い1
・(など) 免疫不全患者の難治性・広範囲病変に限った。詳細はを参照

では、5%はと比較して治癒率に有意差が無く(RR 1.33、95%信頼区間0.92〜1.93)、むしろ10%やのほうが有意に優れ(それぞれRR 0.65、RR 0.60)、加えては塗布部位反応がより多く報告された2。やを用いた局所免疫療法などの新規治療は症例数の少ない観察研究が中心で、対照群を欠きエビデンスの質に限界がある2。

💡 免疫不全患者は別枠で考える。 の対象からは免疫不全患者が除外されており、一般集団向けのエビデンスをそのまま外挿できない。感染などで難治性・広範囲病変となった例では、他の治療に反応しない場合の選択肢としての局所・・静注投与が検討される(外)。

鑑別

  • ・:ヒトパピローマウイルスによる病変でを欠く。
  • :炎症性の膿疱が主体で、臍窩を伴う状丘疹という形態は取らない。
  • :角質によるで、ウイルス性の伝播性は無い。
  • 免疫不全患者の非典型病変:などとの鑑別に病理組織検査を要することがある1。

まとめ

  • はのウイルスによる良性の皮膚感染症で、を伴う肌色状丘疹が特徴。
  • 小児では直接接触・・汚染物で、思春期以降は性行為でも伝播する。と感染はハイリスク因子。
  • 無治療でも12か月で約50%、18か月で約70%が自然消退し、平均持続期間は13〜18か月。免疫正常者では経過観察が第一選択。
  • は自然消退を待つ方針を支持し、の有効性はと差が無い。術は物理的破壊法で最も有効。
  • (2023年)・ベルダジマー(2024年)が承認された初の薬物療法。
  • 感染などの免疫不全患者では・難治性となりやすく、難治例に限りなどのが検討される。

出典

  1. 1.Molluscum Contagiosum(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)MCV-1が米国症例の約90%を占め、MCV-2は性感染症・免疫不全患者の広範な皮疹と関連すること、直接皮膚接触・自家接種・汚染物・性行為で伝播すること、8歳未満に好発し診断時年齢中央値が5歳であること、米国での年間罹患数が約600万人、小児有病率が5.1〜11.5%、HIV感染患者での有病率が20%に達しうること、アトピー性皮膚炎患者が特にハイリスクであること、皮疹が中心臍窩を伴う肌色ドーム状丘疹(直径2〜5 mm)で小児は通常10〜20個(重症例は100個超)であること、潜伏期が通常2〜7週(範囲1週〜6か月)であること、病理組織でHenderson-Paterson小体(molluscum bodies)と呼ばれる細胞質内封入体がみられること、免疫不全患者は非典型的で大きく基底細胞癌等に類似しうること、無治療で12か月以内に約50%・18か月以内に約70%の皮疹が消退し平均持続期間が13〜18か月(一部は2〜5年に及ぶ)であること、免疫正常者では経過観察が第一選択であり、搔爬術が最も有効な物理的破壊法であること、カンタリジン(VP-102)が12週時の完全消退率46〜54%(対照13〜18%)でFDA承認されたこと、ベルダジマーゲルが2024年にFDA承認されたことを確認した。ただし、StatPearls本文は「VP-102, approved by the FDA in 2020」として2020年承認としているが、実際のFDA承認は2023年7月21日(Ycanthとして、複数の医療報道で確認)であり、StatPearls側の年号記載が誤りとみられる。閲覧 2026-09-05
  2. 2.From the Cochrane Library: Interventions for Cutaneous Molluscum Contagiosum(JMIR Dermatology・2023)2017年版コクランレビュー(22件のRCT、0〜36歳の1,650人が対象、免疫不全患者は除外)が「自然消退を待つことを強く支持するデータがある」としていること、5%イミキモドはプラセボと比較して治癒率に差が無く(RR 1.33、95%信頼区間0.92〜1.93)、10%塩化カリウムや冷凍療法のほうが有意に優れる(RR 0.65、RR 0.60)一方で塗布部位反応がより多く報告されたこと、新規治療(光線力学療法・MMRワクチンの局所免疫療法など)は対照群を欠く観察研究が中心でエビデンスの質に限界があることを確認した。閲覧 2026-09-05