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Disease Atlas · 運動器 · 疾患

離断性骨軟骨炎

Osteochondritis dissecans

別名
離断性骨軟骨症
臓器系
運動器
科目
Traumatology and Orthopedics
トピック
外傷学 30:膝関節軟骨・半月板損傷と関節鏡の原則
鑑別疾患
半月板損傷
合併症
変形性関節症
関連疾患
距骨骨軟骨損傷
症状
関節痛腫脹

🧠 全体像:は、に生じる限局性の変化から始まり、その上のを巻き込みながらが母床から分離していく病態である。⭐ 「炎」の字が付くが炎症性疾患ではない——現在用いられている定義は「不安定化と隣接するの破綻の危険を伴う、の限局性・特発性の変化で、のに至りうるもの」であり、炎症を要素として含まない1。名称は1888年にKönigが「外傷を伴わずに関節内へが生じる病態」を指して作った語がそのまま残ったものである1。⭐ 予後を最も大きく分けるのは病変が安定しているかとが閉じているかの2点で、が開いている若年型は保存治療で治癒しうるのに対し、成人の病変は治癒能に劣る。⚠️ 分離したがになればを起こす。生じる関節は多い順に膝・・肘であり、⭐ の病変についてはのノートが詳しい。

名称 — 「炎」は歴史の名残である

Königは1888年に、外傷を伴わずに関節内へが生じる病態を指してこの語を作った1。dissecansは「切り離す」を意味し、していくという現象の記述としては今も正確である。⚠️ 一方で「炎(-itis)」の部分は病態と合っていない。 現行の定義は特発性のの変化であって、炎症性疾患の枠組みには入らない1。名称から機序を推測しない。

💡 では名称そのものが置き換わりつつある。 の病変は現在「」と呼ばれることが多く、のを含む広い語として使われている。「」は関節を問わないの枠組み、「」はに限った現代的な呼称として押さえるとよい。

病態

⭐ が主導的な説である2。ただしヒトにおける正確なはいまだ分かっていない1。

提唱されている段階は次のとおりである2。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epiphysis'>骨端</span>の血管が早期に退縮する"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epiphyseal plate'>骨端軟骨</span>が壊死する<br>osteochondrosis latens"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ossification front'>骨化前線</span>が病変に達しても<br>そこだけ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endochondral ossification'>軟骨内骨化</span>が起こらない"]
    C --> D["壊死した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epiphyseal plate'>骨端軟骨</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subchondral bone'>軟骨下骨</span>の中に残る<br>osteochondrosis manifesta"]
    D --> E["自然に消退することもある"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='repetitive microtrauma'>反復微小外傷</span>が加わる"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteochondral fragment'>骨軟骨片</span>が母床から分離していく<br>osteochondrosis dissecans"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='articular cartilage'>関節軟骨</span>が破綻し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='loose body'>遊離体</span>となる"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='early'>早発</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteoarthritis, OA'>変形性関節症</span>"]
  • に多い理由として、時に突出したから反復して衝突を受けること、内側顆のが比較的乏しくがありうることが挙げられている2。
  • ・・中等度の肥満も寄与因子とされる2。
  • 比較解剖学研究(豚・山羊・馬)とヒトのX線研究は、骨のへの血流喪失と本症の発生との直接のを示している。⚠️ ただし動物のこの病変がヒト小児のものと同じ過程である証拠は無い1。
  • ⚠️ は1つではないかもしれない。 発症前後のを撮っていた小児6例7膝の検討では、病変部の骨化が停止した例・骨化が続いた例・を示した例と反応が一定しなかった1。この不均一さが、治療への反応が症例ごとにばらつく理由にもなりうる。

発生部位

頻度の高い関節は、多い順に膝・・肘である3。

関節 好発部位
膝 が63.6〜85%、15〜32.5%、1.5〜10%、2%2
(→ )
肘 。投球や体操など反復するを負う競技者に多い

⭐ 膝ではが圧倒的に多く、その中でもに面した外側面が典型的な部位である。 顆間隆起との衝突という機序が、この「内側顆の外側面」という一見ねじれた局在をそのまま説明している。

臨床像

部位を問わず、疼痛と機械的症状が出て可動性と運動が制限される3。病変は安定した無傷の病変から、不安定な骨片、まで連続したスペクトラムを成す2。

所見 意味
活動時の関節痛・こわばり 早期の主症状。安定病変でも出る
関節腫脹() 病変が関節面に及んでいることを示唆する
引っかかり・ 骨片の不安定化を疑う
⚠️ を示す。 機械的に伸展が止まる

⚠️ 無症状で見つかることがある。 小児では15〜30%が両側性なので、片側で診断がついたら反対側も撮影して無症候性の病変を確かめる2。

診断

  • 単純X線が第一選択で、の正面・側面に加えてnotch()像でを、sunrise像でを評価する2。⚠️ 早期・安定の病変は写らないことがある2。
  • MRIが検出と安定性評価の双方に優れる。と周囲の骨の間の高信号が不安定性に最も特異的である2。⚠️ が開いている患者では特異度が下がる2。
  • ⚠️ 成長期の骨化変異を病変と読まない。 の骨化が不整に見えることは正常発育でも起こる。対側の撮影が、左右対称の発育変異と本症の鑑別に役立つ2。
  • 肘では、膝・と違って単純X線とが最もよく用いられる検査ではなかった3。関節ごとに診療の型が違う。

分類

⚠️ どの検査で見た分類かによって段階の意味が変わる——単純X線・・それぞれに分類が並存する2。

分類 検査 特徴
Berndt and Harty 単純X線 もとは用に作られ、膝へ外挿された
De Smet 病変下の高信号線・・軟骨の骨折を不安定性の指標とした最初期の体系
ICRS で安定性を見る4段階。深さ10 mmでAとBに分ける
ROCK 可動・不動で大別し、見た目で細分。観察者間0.95・観察者内0.96
Dipaola + 両者を統合し、安定と不安定の境界域を分ける

(表の内容は2による。)

⚠️ は表面しか見ていない。 直視と触知で安定性を判定できる一方、軟骨下の病変は評価できず過小評価しうる——表面は安定に見えても、病変辺縁のが不安定化の予兆であることがある2。とを組み合わせて初めて全体像がつかめる。

治療

⭐ 方針はまず「安定か不安定か」で分かれ、次に「が開いているか」で分かれる。

保存治療

活動またはスポーツの制限が保存治療の第一選択であることには、ESSKA会員への国際調査で回答者の合意(75%超)が得られている3。が開いている安定病変では保存治療で良好な転帰が得られることが広く受け入れられており、最初の4〜6週をとし、高衝撃・反復するストレスの回避を最低3か月続けて、全体で3〜6か月の保存治療を行う2。

手術

少なくとも6か月の保存治療が奏功しない場合、または予後不良因子を持つ安定病変ではより早期に手術を考える2。

病変 術式
安定だが治癒しない または後方(関節面を通さない)ドリリングで治癒を促す
不安定だが救済可能 金属スクリュー・・・による固定
救済不能 、、

(術式の分類は2による。)

⭐ 術式を決める予後因子は関節ごとに違う。 国際調査では、肘では大きさ・安定性・、膝では大きさと安定性、では大きさと部位が重要とされた。⚠️ ただし病変の大きさがすべての関節で重要である点だけは合意が得られている3。

鑑別

疾患 見分け方
を起こす膝の主要な鑑別。の圧痛とで区別する
発育性の骨化変異 成長期のに不整・が出るだけで無症状。対側の撮影が助けになる
に限れば同じ病変を指すことが多いが、のも含む広い語である
を作る他の病態(など) が多発する。原発の病変を欠く

経過

⭐ 若年型(が開いている)は成人の病変より治癒能が高いとみられる3。の開存は「まだ骨が作られている最中である」ことを意味し、病変部のが期待できる。逆にが閉じたあとの病変は自然治癒しにくく、な介入を要することが多い。

⚠️ 放置すればのに至りうる——本症の定義そのものが、この転帰を含んでいる1。無症状の病変を見つけただけで手術する必要はないが、安定性との状態を確かめないまま経過を見ない。

まとめ

  • はの限局性・特発性の変化から始まり、を巻き込んでが分離していく病態である。⭐ 現行の定義に炎症は含まれず、「炎」の字は1888年のKönigのが残ったものにすぎない。
  • が主導説だがは不明で、複数のがありうる。血管の早期退縮→の壊死→骨化の停止→による分離、という段階が提唱されている。
  • 生じる関節は多い順に膝・・肘。膝ではが63.6〜85%を占め、そのに面した外側面が典型的な部位である。の詳細はのノートに委ねる。
  • 症状は活動時痛・こわばり・で、⚠️ はを示す。 小児の15〜30%が両側性なので対側も撮る。
  • 単純X線(notch像・sunrise像を含む)が第一選択だがは写らない。が安定性評価の要で、と骨の間の高信号が最も特異的。開存例では特異度が下がる。
  • 分類はBerndt and Harty(X線)・De Smet()・ICRS/ROCK()・Dipaola(併用)が並存する。⚠️ は表面しか見ておらず、軟骨下の病変を過小評価しうる。
  • 安定病変・開存例はを軸に3〜6か月の保存治療(最初の4〜6週は)。奏功しなければドリリング、不安定なら固定、救済不能ならやへ進む。
  • ⭐ 若年型は成人型より治癒能が高い。 術式を決める予後因子は関節ごとに違うが、病変の大きさはすべての関節で重要という点だけが共通の合意である。

出典

  1. 1.Evaluating the Etiology of Osteochondritis Dissecans of the Knee: The Role of the Articular-Epiphyseal Cartilage Complex(Journal of the Pediatric Orthopaedic Society of North America・2023)PMC12088201として公開されている全文を閲覧した。整形外科文献における離断性骨軟骨炎の定義が「不安定化と隣接する関節軟骨の破綻の危険を伴う軟骨下骨の限局性・特発性の変化で、早発の変形性関節症に至りうるもの」であり炎症を要素として含まないこと、Königが1888年に外傷を伴わずに関節内へ遊離体が生じる病態を指してこの語を作ったこと、虚血・遺伝的素因・反復微小外傷がいずれも成因の候補として挙げられてきたこと、豚・山羊・馬の比較解剖学研究と人のX線研究が骨端骨の原基軟骨への血流喪失と離断性骨軟骨炎の発生との直接の因果関係を示す一方で動物のこの病変が小児のものと同じ過程であるという証拠は無いこと、発症前後のMRIを撮っていた小児6例7膝の後ろ向き検討で病変部の骨化が停止した例・骨化が続いた例・骨壊死を示した例と反応が一定せず成因が複数ありうると考えられること、著者らがこの結果から定義を「軟骨下骨またはその前駆組織の限局性・特発性の変化」と改める余地があると論じていること閲覧 2026-09-02
  2. 2.Management and Outcomes of Osteochondritis Dissecans of the Knee in the Pediatric and Adolescent Population(Current Reviews in Musculoskeletal Medicine・2026)PMC13241550として公開されている全文を閲覧した。膝の病変が大腿骨内側顆に約63.6〜85%・外側顆に15〜32.5%・膝蓋骨に1.5〜10%・大腿骨滑車に2%生じること、反復微小外傷が主導的な成因説であること、骨端血管の早期退縮が骨端軟骨の壊死を起こし(osteochondrosis latens)、骨化前線が病変に及んでも軟骨内骨化が起こらず壊死した骨端軟骨が軟骨下骨に残り(osteochondrosis manifesta)、反復微小外傷が加わるとosteochondrosis dissecansへ進みうるという段階が提唱されていること、大腿骨内側顆の病変が膝屈曲時に突出した内側脛骨顆間隆起から反復して衝突を受けることと関連しうること、内側顆の骨内血流が比較的乏しく分水嶺領域がありうること、遺伝的素因・異常骨化・中等度の肥満も寄与因子であること、病変の安定性が治療方針と予後の主たる決定因子であること、単純X線が第一選択だが早期・安定病変は写らないことがあり荷重位正面・側面に加えnotch像とsunrise像を撮ること、小児の15〜30%が両側性のため対側も撮影されること、MRIが検出と安定性評価の双方に優れ骨端線開存例では特異度が下がること、母病変と病変骨の間の高信号が不安定性に最も特異的であること、分類にBerndt and Harty(X線、もとは距骨用)・De Smet(MRI)・ICRS(関節鏡)・ROCK(関節鏡、観察者間信頼性0.95・観察者内0.96)・Dipaola(MRIと関節鏡の併用)があること、関節鏡は表面しか評価できず軟骨下の病変を過小評価しうること、骨端線が開いている安定病変では保存治療で良好な転帰が得られるのが広く受け入れられており最初の4〜6週を非荷重とし高衝撃・反復ストレスの回避を最低3か月続けて3〜6か月の保存治療を行うこと、保存治療が6か月奏功しない場合や予後不良因子を持つ場合に経関節ドリリングまたは後方ドリリングを行うこと、不安定病変には金属スクリュー・生体吸収性インプラント・自家骨移植・縫合ブリッジによる固定を試み救済できない場合は骨軟骨自家移植・同種骨軟骨移植・自家培養軟骨細胞移植を選ぶこと閲覧 2026-09-02
  3. 3.Physician preferences in diagnostics and treatment of juvenile osteochondritis dissecans are diverse across the knee, ankle and elbow: an ESSKA survey(Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy・2023)PMC10598091として公開されている全文を閲覧した。ESSKA会員50名(膝42名・足関節14名・肘9名が回答)への国際調査で、若年型離断性骨軟骨炎が骨端線の開いた小児に生じる病態であること、頻度の高い関節が多い順に膝・足関節・肘であること、部位を問わず疼痛と機械的症状を生じて可動性と運動を制限しうること、小児の若年型は成人の離断性骨軟骨炎より治癒能が高いとみられること(これら4点は本調査自身の結果ではなく序論で他文献を引用しているもの)、活動またはスポーツの制限を保存治療の第一選択とすることに回答者の合意(75%超)が得られたこと、単純X線とMRIが膝と足関節では評価と経過観察に最も用いられたが肘ではそうでなかったこと、術式を決めるうえで重要な予後因子が肘では大きさ・安定性・骨端線閉鎖、膝では大きさと安定性、足関節では大きさと部位であったこと、病変の大きさがすべての関節で重要な予後因子である点は合意が得られたこと閲覧 2026-09-02